1オクターブ53鍵盤くらいに...
以前の記事「ぇ? 調律なんかしないほうがいいんじゃないの?」に書いたが,
ドの周波数を3/2倍した音をソ
ソの周波数を3/2倍した音をレ
レの周波数を3/2倍した音をラ
…
と順次名前をつけていくのを12回繰り返すと概ねドの音に戻る。で,1オクターブを12個に分割しようなんて議論をピタゴラスがしたわけだ。音が1オクターブ以上高くなったら,周波数を半分にする(1オクターブ下げる)。
でも,こうやって12回繰り返したあと音は,元のドと微妙にズレる。どのくらいズレるかというと周波数が1.3%程度ズレる。消費税に比べれば可愛いものだが,このズレを12音にどう割り振るかが歴史的大問題で,数えきれない位多くの調律方法が提案されてきた。どれも音程の知覚に影響しない程度の差なら議論にもならないが,異なる調律の鍵盤楽器を弾くと,びっくりするくらい響きが違う。
そもそも,1オクターブを12音に分割することに問題があるわけなので,もっと良い分割を考えれば解決するはずだ。
というわけで,ドの周波数を3/2倍する…というのを何回繰り返したら,よりドに近い音程になるか計算した。左の数字が掛けた回数,右の数字が元のドの周波数の何倍かを示す。
特に精度が良いのは1オクターブを53音に分ける53平均律。誤差は0.2%程度。これを上回る精度は,上には示していないが359音(!)に分ける場合となる。この53平均律の精度の高い良さは,物理学者のアイザック・ニュートンも気づいていたらしい。(音律のことを調べるとガリレオとかホイヘンスとか物理学者がよく登場する)
この53平均律を採用すると,平均律では濁ってしまう完全五度の音程が,大変綺麗にハモる。長三度や短三度も同様だ。
もっとも,1オクターブ53音と言われても,1オクターブ12この鍵盤弾くのも大変だし,楽譜だって5線譜じゃ全然足りなくなりそうなので実用的に思われなしかもしれない。しかし,この53平均律はオスマン・トルコの古典音楽の調律法になっているとか。
密かなファンも多いようで,Youtubeでも色々な演奏が公開されている。ちなみに楽譜表記は,C𝄫𝄫, C𝄫♭, C𝄫, C♭, C, C#, C𝄪, C#𝄪, C𝄪𝄪 みたいに臨時記号を駆使して書く方法があるらしい。
1オクターブ31鍵盤のチェンバロと24鍵盤のチェンバロを組み合わせて,53平均律を実現したぞというマニアックなデモもある。31鍵盤とかでも作る職人さんは大変だ。3Dプリンタとかで作っちゃいたいところ。
こんな53平均律での演奏を気軽に楽しめる美しいLED付きキーボードも発売されている。今ならお得な$3,795だ。(ぁ,私は関係者ではありませぬ。。。) 以下が紹介動画。美しいハモリを楽しめることを色々紹介している。
こんなにキーが多いと慣れるのは大変そうだが,ハモリの構造を理解するのにも,とても役立つのではと思う。もう少し安かったらなぁ。。。。
ぇ? ハモリを理解したければ歌えばいいって? 音程も1オクターブ無限分割?
いやぁ,それはわかってるけど,こういうの見ると欲しくなっちゃうんだよね〜。
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