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【バッハ好きのあなたへ】キリスト教と典礼暦についてよく知らない人のための簡単な紹介文

WHICH BACH CANTATA TODAY?" (「今日のバッハのカンタータは?」)の著者に,日本語版の作成について連絡をとったところ,快諾してくれたばかりか,クリスチャンじゃない読者のためにと,キリスト教についての簡潔な紹介文を用意してくれた。キリスト教のことを全然知らない僕はこの紹介文のおかげで,やっとキリスト教の年間行事の概要がわかった。著者の Micheal に感謝!

以下はほぼその直訳。ただ,キリスト教に関連する用語や表現の翻訳が適切なのかはあまり自信がない。変なところがあったら是非お教えください。

前文

このウェブサイトを購読してくださっている方々の中には、キリスト教という宗教に馴染みがなく、典礼暦の成り立ちや典礼の祝祭日のことをあまり知らない方がいらっしゃることが最近わかってきた。そのきっかけとなったのが、日本の購読者 Jun からのメールだ。Jun は、私のウェブサイトを日本語に翻訳してくれることになった!これがウェブサイトへのリンクだ。

そこで、Jun とそして多く人たちに、バッハのカンタータ・カレンダーを少しでも理解してもらえるよう、キリスト教と典礼暦の基本的な概念について少し説明しよう。

最初に断っておくが、私は宗教的な職業に就いているわけでもなく、現在積極的に信仰しているわけでもない。でも、私はカトリック(キリスト教)として育ったし、カトリックの学校に通ったので、バッハの音楽が何を目指していたのかを十分に理解する上で重要なキリスト教の基本的な知識は持っている。

この文章は、キリスト教について全く知らない、あるいはほとんど知らない人に向けて、バッハをもっと理解し、評価してもらうためのものだ。誰かの気持ちを害するようなことをするつもりは全く無い。だから,もしおかしな表現があったとしてもどうか許してほしい。しかし、もし目に余る間違いを見つけたら、ぜひ教えてほしい。あまり詳細な説明はしないつもりだ。多くなりすぎてもいけないと思うので(間違う確率も高くなっちゃうからね)。

キリスト教の概要

キリスト教は、神の子であり人類の救世主であるとキリスト教徒が信じるイエス・キリストの生涯と教えに基づく一神教だ。聖書はキリスト教の聖典で、旧約聖書(ユダヤ教と共通)と新約聖書から成り、イエスの生涯、教え、死、復活について詳述している。

キリスト教信仰の中心にあるのは、三位一体への信仰だ。父なる神、神の子(イエス・キリスト)、聖霊の3つが一体となって神は存在する。クリスチャンは、イエス・キリストへの信仰による救い、愛と赦しの重要性、死後における神との永遠なる命への希望を信じる。

「イエス」と「キリスト」という言葉は、キリスト教信仰の文脈ではしばしば同じ意味で使われるが、キリスト教の中心的存在である同じ人物の異なる側面を指す。この違いを理解することは、キリスト教神学の全容を把握する上で重要だ。

「イエス」という名前は、現在イスラエルとパレスチナとして知られている地域に紀元1世紀の時代に住んでいた歴史上の人物、ナザレのイエスを指す。この名は、彼の人間性と、指導者、祈祷者、預言者としての役割、聖書の新約聖書に記述されている彼の人生経験を強調する。イエスは人として生まれ、人々とともに生き、たとえ話や説教を通して教え、奇跡を行い、苦しみ、十字架上で死に、そして復活したとキリスト教徒は信じている。

"キリスト "は "選ばれた者 "を意味するギリシャ語 "Christos "に由来し、ヘブライ語 "Messiah"(救世主)の訳語である。「キリスト」という称号は、選ばれた救世主,そして人類を導く者としてのイエスの神聖な役割と使命を表す。これは、イエスが人類を罪と死から救うために神から遣わされ、旧約聖書のメシアに関する預言を成就させたという信仰を強調する。イエスのこの側面は、イエスの神性、永遠の存在、そして世界の救済計画におけるイエスの役割を強調するものでもある。

"イエス・キリスト "と組み合わされるとき、この用語は、完全なる人間(イエス)であり、また完全なる神(キリスト)である存在に対するキリスト教の信仰を伝える。この二重性は、神がイエス・キリストという人の形をとったと説く受肉の概念などとともに、キリスト教の教義の中心をなす。イエスとキリストが一体の存在であることは、キリスト教神学の基礎となる要素であり、ナザレのイエスが人類の精神的救済において唯一無二の役割を担うと期待されたメシアであることを強調する。

聖書はキリスト教の聖典で、旧約聖書(ユダヤ教と共通)と新約聖書からなる。新約聖書は、ローマ時代にユダヤ、つまり現代のイスラエルに住んでいたイエスの生涯を描いている。イエスは大工(ヨセフ)とその妻マリア(聖処女とも呼ばれる)の間に生まれた。30歳頃から弟子(使徒(Apostles)と呼ばれる)を集め始め、教えを説きながら各地を歩いた。しかし、彼は(ユダヤ教に基づく)既存の宗教組織を怒らせ、ローマ帝国への裏切り行為で非難された。彼は弟子の一人(ユダ)に裏切られ、捕らえられてローマ帝国に引き渡され、ローマ帝国に死刑を宣告された。彼は十字架につけられて死に、3日後のイースターの日曜日に復活した。

復活後、弟子たちとともに過ごし、復活祭(Easter)から40日後の昇天日( Ascension day)に天に昇った。弟子たちは自分たちの信仰のために訴追される危険にさらされていたが、聖霊が聖霊降臨の日曜日(Whit Sunday )に彼らの内に降り、外に出て行って言葉を広める勇気を与えた。

キリスト教にはいくつかの分派があり、それぞれ教義の解釈の違いに基づいて、キリスト教発祥以来の2000年にわたって発展してきた。カトリックは最も大きく(私が育ったのもカトリックだ)、次がプロテスタントだ。プロテスタントはそれ自体、英国国教会、カルヴァン主義、そしてバッハの宗教である点で最も重要なルター派など、多くの異なる分派に分かれている。プロテスタントは、宗教改革(カトリックとプロテスタントの分裂)の火付け役となったドイツの修道士、マルティン・ルターの教えに基づいている。

典礼暦

キリスト教の典礼暦は、キリスト教の教会における年間行事(期節と祝日)をまとめたものだ。これは、イエスの生涯、死、復活における主要な出来事を記念し、キリスト教信仰の教えや出来事を振り返るために作られている。ここでは、典礼暦の概要を簡単に説明しよう。

待降節(Advent, アドベント) 典礼暦は、イエス・キリストの到来を待ち望み、準備する時期である待降節(アドベント)から始まる。待降節は,クリスマス(12月25日)までの4つの日曜日の間続く。

クリスマス:ベツレヘムでのイエス・キリストの誕生を祝う。クリスマス・シーズンは12月25日から12日間続き、1月6日の公現祭(Epiphany)で終わる。公現祭とは、3人のマギ(賢者)が幼子イエスのもとを訪れたことを記念する祭りだ。

公現祭(Epiphany, エピファニー):1月6日 - マギ(賢者)に代表される異邦人へのキリストの顕現(公現)を記念する。いくつかの伝統では,イエスの洗礼と最初の奇跡を祝う。

四旬節(Lent, レント): 灰の水曜日(Ash Wednesday)から復活祭(イースター)までの40日間(日曜日を除く)で、断食、祈り、苦行を行う。イエスが砂漠で40日間断食したことに倣っている。バッハの時代のライプツィヒでは、四旬節の間、宗教的な祝宴を開くことは禁じられており、結婚の祝宴は開かれず(沈黙の結婚は許されていた)、ミサにおいてもカンタータなどの音楽は禁止されていた。この期間は「閉ざされた時」《Tempus Clausum》と呼ばれ、待降節(アドベント)の間にも適用された。つまり、バッハがライプツィヒ時代に,待降節と四旬節の期間のために作曲したカンタータは存在しない。一方,ワイマール市では「閉ざされた時」はなかった。

復活祭(イースター, Easter): キリスト教で最も重要かつ喜ばしい祭典。聖金曜日(Good Friday, 受難日)に十字架にかけられたイエス・キリストが死から復活したことを記念する。復活祭は50日間続き、聖霊降臨祭(Pentecost)でクライマックスを迎える。

聖霊降臨祭(Pentecost,ペンテコステ, 五旬祭),もしくは灰の日曜日(Ash Sunday): 新約聖書に記されているように、使徒たちを始めとするイエスに従う者たちの上に聖霊が降ったことを祝福する。教会の誕生を表す意味もある。

年間(Ordinary Time): 上記の主な期節の間の期間(「年間」と呼ぶ)では、イエス・キリストの生涯と教え、教会の成長に焦点を当てる。「年間I」は公現祭(Ephiphany)から四旬節(Lent)の初めまで、「年間Ⅱ」は聖霊降臨祭(Pentecost, 灰の日曜日)から待降節(Advent)の初めまでであり、これで典礼暦の終わりとなる。

典礼暦の計算方法を知りたい方は、私がこのテーマについて書いたページをご覧ください。

アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer , 1471-1528)作「三位一体の礼拝」(別名「ランダウアー祭壇画」)、1509-1511年頃。十字架にかけられたキリストを抱く父なる神と、上空を飛ぶ鳩で表された聖霊が見える。ウィーン美術史美術館蔵。


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