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ドライ実習トレーニングツール・バイオ・マイスター®ver 2.0 “細胞培養室への入室編” 解説

バイオ・マイスター®ver 2.0  “細胞培養室への入室編”で、なぜ、内履きをすのこの上に置いてはいけないのか、解説します。
“細胞培養室への入室編”は、こちらに掲載されています。

細胞培養室はなぜ部屋なの?

細胞培養室では、ヒトやサル、また動物由来の細胞を取り扱います。ヒトやサルは、まだ、知られていない未知のウィスルや病原体を持っているかもしれません。動物も、人畜共通のウィスルや病原体を持っている場合があります。したがって、それら由来の細胞も、未知のウィルスや病原体を持っている可能性はゼロではありません。そのため、これらの細胞を部屋に封じ込めて、作業を行うことが、より安全となります。そのため、細胞培養室という部屋を作ります。

セーターやコートは脱いで来てね。

入室する前に、コート、セーター、ジャケット等は、ロッカーなどに置いて、できるだけ身軽にして入室します。培養室内では白衣を着ます。培養室内は、通常、気温が20~25℃に設定されています。厚手の上着の上から白衣を着ると暑いのです。

さて、ドアを開けて、中に入りましょう。

細胞培養室のドアを開けましょう

外界と内界の境界

下駄箱があります。下駄箱から室内履きを出して、外履きと履き替えます。
実は、この場所は、外界と内界の境界とも言えるのです。

外は、細菌やウィルスなどが飛んでいます。私達の体や手にも埃や微生物が付いています。私達は、皮膚があり、また、免疫細胞があるため、微生物から守られています。ですが、培養細胞は生体から取り出しているので裸の状態です。微生物から守るために、できる限り、微生物を培養室に持ち込まないようにしなくてはなりません。

一方、実験室では、危険な試薬も取り扱います。試薬がもしかしたら床に落ちて、靴で踏んでるかもしれません。細胞は未知のウィルスを持っているかもしれません。その細胞を培養している培養液の上清が、もしかしたら床に落ちて、靴で踏んでるかもしれません。

細胞培養室の前室は、外界と内界の境界エリア

すのこは、その外と実験室の間にあります。
もし、すのこの上に内履きをおいて、外履きを脱いで、すぐに内履きに足を入れるのであれば、問題ありません。
ですが、外履きを脱ぎにくい、内履きを履きにくい時、すのこの上に、靴を脱いだ足で乗りませんか?
もし、内履きをすのこの上に置いたなら、危険な試薬が付いているかもしれない裏底がすのこについて、そこに靴を脱いだ足を乗せることになるのです。危険ですよね?
お解りいただけたでしょうか?
そうなんです。
だから、すのこの向こうに、内履きを出してください。

すのこの上に、内履きを置かないでね!

外履きを脱いで、すのこの上に上がり
外履きを靴箱の下の段に入れ、
内履きをすのこの向こうに置きます。

手を洗う

さて、次は、手を洗います。
上にも書いたように、私達の手には、埃や微生物が付いています。それらを培養室に持ち込まないようにしっかり洗います。
ハンドソープを十分量取って、泡を立て、20秒以上両手をしっかりこすり合いながら手を揉み洗いして、流水で15秒以上洗い流します1,2,3
流水でしっかり洗ったら、ペーパータオルで手を拭いて水気を取ります。
ただ、手術ではないので、手を上にあげる必要はないですよ。
 

手はしっかり洗いましょう!


次に白衣を着ます。
手袋をして、マスクをして、手袋をした手を消毒用エタノールをつけて、準備完了です。
内履きを履いて、培養室の中に入りましょう。

無事に培養室に入れました。

注意

手袋は、ラテックス、あるいは、その類似品でできています。アレルギーのある方もいるので、その場合は、ポリプロピレン製の手袋をします。

参考文献


1)   WHO Guidelines on Hand Hygiene in Health Care: First Global Patient Safety Challenge Clean Care Is Safer Care. Geneva: World Health Organization; 2009. PMID: 23805438.
2)   Hammond PS. Will we ever wash our hands of lubrication theory? Phys Fluids (1994). 2021 Aug;33(8):081908. doi: 10.1063/5.0060307. Epub 2021 Aug 17. PMID: 34471336; PMCID: PMC8404380.
3)   山本 恭子, 鵜飼 和浩, 高橋 泰子, 手洗い過程における手指の細菌数の変化から見た有効な石鹸と流水による手洗いの検討, 環境感染, 2002, 17 巻, 4 号, p. 329-334