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第3章【15】平野先生の即興講座②追記

注)写真は記事とは関係ないのですが、私が音大に入学する前にアフリカで働いていた時の写真です。たくさんあるので、毎回公開しています。小学校1年生の授業です。(撮影:いちあ)

平野先生の即興講座①のつづきです。

平野先生の即興講座の授業で、わたしは、クラシックギター専攻の茂木くん、ピアノ専攻の同級生の、のどかちゃん、そして、チェロ専攻の1学年上の方と、4人で一緒になった。

4人で平野先生を独占できるのはとても贅沢な時間であった。

平野先生からは、即興に必要なノウハウをすべて教えて頂いた。

即興のリードを握るには、自分から始めたほうが良い、実は、メロディーより、伴奏が音楽の形を決める、クライマックスに高音にのぼったら、再びそれより上にはいかない、相手から自分に音楽を戻すチャンスはどうつかむか、とか、、、

今考えるとそうだな、と思うことも、その当時はわかってないことだらけで、新鮮だったりした。本当はまだまだ高いレベルのお話しをしてくださっていたのだが、きっと私は理解できていなかったのだろうと思う。

平野先生は、私が、4人のなかでもとにかく何にもまともに即興できなかったり、私が理解が追いつかないで、どーんと暗くしていると、授業中、パリ音楽院に留学されていた当時の話をよくしてくれた。

中でも面白かったのが、平野先生のルームメイトのお話しだった。なんとか君(名前は失念)というフランス人のルームメイトが、かなり間が抜けた人で、授業にサックスのケースだけ、サックスを入れ忘れて持ってきたり、冷凍庫のドアを閉め忘れて、買った大箱のアイスクリームが冷蔵庫の下にべっとり流れてきていたり、台所の電気の鍋をかけるクッキングヒーターを切り忘れて、平野先生が帰宅すると、真っ赤にヒーターが染まっていて、部屋がぬくぬくしていたり、、、どことなく安心できない人であったらしいが、『でも、そんな彼は、ふとした時に、俺でもかなわないな、と思うような、素晴らしくいい音を出すんだよ。』なんていう話をして、何かと励ましてくれたりした。

1年の通年の授業で、私はもう今よりさらにずっと下手で、まったくダメだったのだが、ここでも、周りのみんなに我慢してもらいながらどうにか終了した。

この授業で一緒だったのどかちゃんには、そのあとも、私の実技試験の伴奏をしてもらったり、卒業まで、とてもお世話になった。その話はまた後の回で。

この授業は、全専攻の学生が履修していたので、いろんなプレーヤーがいて、とても刺激になった。

例えば、音響デザインコースの石川くんは、MAX/MSPだかで、電子音で即興したり、ギターを弾けば、おそろしく素敵なメロディーを奏でたり、私には凄い人であった。風貌も、なんとなく、空気のような、ちょうど、のだめカンタービレで、テルミンを操る、変わった雰囲気の女の子が出てくるが、そんな不思議な雰囲気をまとっていた、音楽センス抜群の男の子だった。

ジャズコースでウッドベースを弾いていた金子くんは、2年上だったが、これまたセンスよくウッドベースやベースギターを操り、とにかくカッコ良かった。金子くんは人気のあるバンドグループに属していて、そののち、テレビに出たりしていたらしかった。

私と同じグループになったクラシックギター専攻の茂木君は、コンクールなどでも優勝経験があったそうで、そのクラシックギターから出る音は、とても創作意欲を駆り立てるもので、いい音は、それだけで人をクリエイティブにしてくれるんだとわかった。

トランペットを吹いていて、とてもいい音を出す大河原君は、トランペットのミュートの形態によってこんなに音がちがう、などと教えてくれた。彼はこよなくトランペットを愛していて、トランペットについて、隣に座った私が何か尋ねると、授業中でも、20分くらいは平気で話しつづけるので、話しかけるタイミングを気をつけなければならなかった。

きっと、今述べた人たちだけでなく、その多くの人たちがこれからいろんな場面で有名になっていくんだろうな、と思った。

平野先生の即興講座は、1年生のときしか履修しなかったのだが、私は、それから1年半くらい、平野先生に副科実技でサックスを教えて頂いた。そのお話はのちに。

即興は本当はとても難しいので、4年生くらいに履修したほうがよかったのだが、しかし、1年次に平野先生に出会っていろんなお話、たとえば、レッスンへの取り組み方、音楽そのものへの平野先生の考え方を伺ったことや、他コースのいろんな学生と知り合って、視野を広げたことは本当に大いに意味のあることだった。

今は、音楽療法を少し通信教育で資格取得を目指して勉強し始めていて、そこでは即興がもとめられるので、これから勉強していかなければ、と思っている。

即興をしている平野先生は、もちろん普段の演奏もかっこよいのだが、またちがうはじけ方で、とてもカッコ良かったのであった。

次回は音大で出会った友達、です。



チェロで大学院への進学を目指しています。 面白かったら、どうぞ宜しくお願い致します!!有難うございます!!