バッハに会ってきた

夫がマスタークラスでベルギーの田舎に1週間、青山財団の表彰式で日本へ5日間(おめでとう!)、アカデミーでドイツへ2週間行く、というので、「1ヶ月もひとり暮らしなの!?暇じゃん!!どっか行こ🤭」と思い立ちました。ブリュッセルはほかのどの都市へもアクセスが良すぎるおかげで選択肢がありすぎて(パリとナポリ&ローマは怖いから除外)、一晩考えてドイツはベルリン&ライプツィヒ旅行を決めました。

日本にいたときは超フッ軽人間で、前日に決めて伊勢神宮まで日帰りしたりしてたんですけど、それは日本が基本的に安全だと思ってるからできたことであって、ヨーロッパ=怖いとこ、だと思って生きてきたので、海外でのマスタークラスもずっと参加してきたことなかったですし、もちろんツアーとかも行ってないし、ブリュッセルに来てからも、旅はヨーロッパ生活にもうちょっと慣れてから…とか思ってました。まぁ慣れる前に急なマスタークラスでひとりでアムステルダムに行ったことで吹っ切れちゃったのですが😂

ドイツ旅行を決める直前、日本のオケで活躍している友達が「オケの休み期間にコンサートを聴きに行く旅」をしていて、いろんな都市でいろんなタイプのコンサートを聴いてたのをインスタにアップしてて、それめっちゃ素敵だな!って思ってたのと、ベルリンフィルのカラヤンアカデミーにいる友達が11月にブリュッセルに来てくれたときに「3月までベルリンにいるからいつでも来て!」と言ってくれていたのとが脳内でガショーンと結びついて、「ベルリンで!!ベルリンフィルを聴く!!!」てなりました。思いついたら興奮しちゃって飛行機取る前にベルリンフィルのチケットを取りました😇
その後Googleマップを見ていたらベルリンとライプツィヒが近いことに気付いて、バッハ好きにとってライプツィヒはやっぱり"聖地"ですから、気付いちゃったらもう出向くしかないでしょう!
その2都市で行きたいことやりたいことが思いつきすぎて、2泊3日じゃ足らないな?!ってなって、結局夫が3泊5日で日本に帰る間、私は4泊5日でドイツにいるという、グローバルな感じになりました。

Yちゃんのインスタを見なかったら、Nちゃんがベルリンフィルにいなかったら、この旅は実現してなかったと思うので、ありがたい限りです。
ちなみにこのドイツ旅行を決めて、各コンサートのチケットも飛行機も取ったあとに、学校でショパンピリオドコンクールのマスタークラスが私のドイツ滞在中に行われることが決まって、いつもヒマなのにこんなのだけかぶらなくてよくない?と3晩くらいへこみました😂1ヶ月後のでっかいマスタークラスが急に決まる国、それがベルギー。

夜にベルリンに着いて、翌日は朝から街を観光してベルリンの壁も見て!、夜には念願のベルリンフィル。すんげーかった。ヤルヴィ指揮のメシアン、細川さん(新作初演!大進さんがソロ!!)、エロイカっていう、ね、鼻血出そうでしょ。Cブロックっていう、後ろのほうだけどとてもいい席で聴けたのですが、いやなんかうますぎて、特に木管チームがまじでやばかった、いわゆる現代楽器でこんな素敵にこんな素晴らしくこんな美しく演奏されちゃったら、もうこれが正解の音楽で、私なぞがHIPやる意味ないやん、みたいな絶望的な気持ちになりました。いやーほんとにわけわからん音楽を聴きました。うますぎる演奏を聴くと、感動するけど、同時に立ち直れないくらいショックを受ける、あるよね。
あとやっぱり友人が弾いてるオケってのはいいですね。高校からの友人たちはもう出会って15年…Oh15年…🤦🏻‍♀️15歳で芸高のツルピカな制服を着てた友人がベルリンフィルでバリバリ弾いてるんですよ、やばくないですか?かっこよすぎる。彼女はこの回でベルリンフィルラスト公演だったみたいなので、駆け込みで観にこられてよかったです。

素晴らしいものを聴いた翌日は、早起きしてついに念願のライプツィヒへ。泊まっていたところから駅まではバスに乗る必要があったのですが、Googleマップに言われた場所に行ってもバス停がなくて、探してるうちにバスが行っちゃって、まあそんなの初めて行く場所じゃあ仕方ないし切り替えてタクシー捕まえて駅に向かったのですが、駅のロータリーが地下だったので電波が悪くてカードが通らず現金払いに。ベルギーはほぼキャッシュレスなのでコインがまだどれがどれだがよくわかっていないのもあってワタワタ。無事に駅構内に入ったら今度は「あなたの財布はあなたの元から離れました」みたいなiPhoneの通知が来て!!!慌ててバッグの中を見たらお財布はあるではないですか。お財布に入れていたAirTagをタクシーに落としてしまったらしく(なんでそんなピンポイントにAirTagだけ…)、落とし場所がタクシーなのでもうすごい速度で移動しちゃって、お財布を落としたならまだしもAirTagだし、ライプツィヒ行きのほうが大事だったので、ショックはやばかったけど諦めてライプツィヒに向かうDBに乗り込みました。
公共交通機関運が悪いワタクシ、悪名高きDBに乗ったらどんなトラブルが起こるんだろうと半ばワクワクしていたんですけど、事故はDBに乗る前に起きちゃったし、DBは行きも帰りも定刻でした。なんでや。
※AirTagってことは、もちろんiPhoneからとってもくわしく追跡できるので、後日取りに行って意地で回収してきました笑

なんやかんやでライプツィヒ着。おおお…ここが…ここでバッハが生きていたんだ…と思うとただの地面すら愛おしくて頬擦りしたくなりますが(ならない)、鼻息荒く&早歩きでトーマス教会へ。その途中でニコライ教会から11時の鐘が聴こえてきて、そっちにももちろん行きたいけど…いやでもまずトーマス教会!ってライプツィヒの駅から歩いて10分、ドーンと構えた教会とその奥にバッハの銅像が見えたとき、身体中に熱いものが広がって、とりあえずその場でえんえん泣いてました。まあそういう人一定数いるんでしょうね、ライプツィヒ在住っぽい感じの人とかがニコニコしながら私を見てました笑
この日は土曜で15時からトーマス教会少年合唱団とゲヴァントハウスオーケストラの演奏がある日だったので、とりあえずその場を一度離れてお隣のバッハミュージアムに行きました。

ミュージアムを見てグッズを買い込んで、ライプツィヒ在住でゲヴァントで契約団員をしている高校からの友人Mちゃんと10年ぶりくらいの再会をして、再びトーマス教会に戻りました。彼女の案内で入った念願のトーマス教会の内部は、もう、すごかった、感動しちゃって(再)、震えが止まらなくて足が動かなくなちゃって。「せっかく来たし、始まるまで教会の中をぐるぐるしてきたら?」と言われたのですが、立てそうもなかったし、すでに感情がキャパオーバーしていたので、これ以上の刺激はもう無理、と思って笑、半泣きでコンサートが始まるのを待ちました。

いざコンサート。映像でしか見たことのないあのトーマス教会合唱団のあの制服を見て、来世はあれを着るんだ、とかどうでもいいことを思いつつ、1時間のプログラムを満喫しました。カンタータだけかと思っていたらなんかいろいろな演目があって、バッハよりも前にトーマスカントルをしていたシャインのモテットとかもあって、これ€2でいいんですか?っていう充実のコンサートでした。途中で会衆全員が一緒に歌うコラールみたいなのがあって、トーマス教会でいま私歌ってる!?と思ったら気を失いそうだったし、メインプログラムのカンタータは22番(バッハがトーマスカントルの採用試験のために作曲したもの)で、この場所でどんなカンタータを聴くより一番意味がある選曲に、演奏会後は放心状態。どうにか気持ちを落ち着かせて、終演後にバッハのお墓に出向いたら…もう大号泣。いつかトーマス教会に行けたらバッハにこんな挨拶をしたいとか、こんなことを聞きたいとか、こういう文句を言ってやる、とかいろいろ思ってたのですが笑、もうなーーーんにも出てこない。
私って演奏とか音楽経験で泣いたこととか記憶の限りほっっっっとんどなくて、ないって断言してもいいくらいなのですが、自分がこんなに音楽で感動できることにまたびっくりしてしまって、いやーバッハは偉大ですね。まあバッハのカンタータのコンティヌオを弾きたいがためだけに専攻を変えた人間ですからね、そらね、感極まります。

翌日、この日は一人だったので、メンデルスゾーンハウスとシューマンハウスに行ってから、これまた念願のニコライ教会に行きました。ニコライ教会は内装がバッハがいたときから大きく変わってしまったそうですが、トーマス教会とはまた違う雰囲気を持つ教会でした。人がとても少なかったので、一番前の席からオルガンバルコニーを眺め、ヨハネ初演時に想いを馳せながらヨハネの最後のコラールを口ずさんでいたら、ああまた何かが込み上げてきて号泣。まったくよく泣く2日間です。もちろんカンタータもたくさん演奏してきましたが、一番弾いたことのあるバッハの宗教作品がヨハネ受難曲で、あっ待てよ、ギリギリマタイのほうが多いか?もしかしてロ短調か?いやまあヨハネということにしておきましょう、人生のハイライト!みたいな気分になってきてしまって、私多分死ぬときにはライプツィヒに来たこの2日間を思い出すなぁ、とかなってました。

電車の時間まで余裕があったので、再度トーマス教会、再度バッハのお墓へ。今度こそちゃんとご挨拶できました。日本語だったのでバッハにはなにも伝わらないと思うけど、まあきっと暑苦しいまでの愛はなんとなくわかってくれたことでしょう。

いまは古典派ロマン派を中心に勉強中で、コンティヌオやバッハの宗教音楽の世界からは少し離れていますが、やっぱり私の一番好きなものはここにあるんだなって実感しました。バッハカンタータクラブinブリュッセル、作るかあ。

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