「プロフ美味しかったですか?」

突然ですが、カザフスタンと聞いて何を連想しますか?日本人にとって「スタン」のつく国は「こわそう」というイメージがあるようで、決まって「治安は大丈夫?」と聞かれます。


実際に2014年には、多くのカザフ国民から父と慕われるナザルバエフ大統領閣下も、「~スタンという国名は印象がよくない。モンゴルはスタンがつかないから人気がある」として、国名の変更を示唆したことさえありました。その後、国民的議論が巻き起ったものの、結局いまもその国はカザフスタン共和国のままです。妻は「なんか強そうだからいいじゃん」と気に入っているようですが。


そんな数年過ごしたカザフスタンから昨年帰国。ある夏の日の午後、都内で開かれたイベントに参加しました。会場で一緒になった青年に対し、「実はカザフスタンに行っておりまして…」と伝えたところ衝撃的なリアクション。


「プロフ美味しかったですか?」


つい先取りして「いやいや独裁国家なので安全でしたよ」という、絶妙な返答をしそうになりましたが、それもそのはず、カザフシックにかかる妻とカザフの国旗を縫い付けたキャップを誇らしげに深々とかぶる3歳の息子と参加したそのイベントは、我らが山田会長の「おいしい中央アジア協会」が主催したものだったのです。そんな僕の動揺をよそに、妻は次々とスライドに映し出される中央アジア料理の画像にときめき、心を奪われていました。


さて、中央アジア各国では、市民の食卓から各国首脳が臨席する晩餐会・午餐会に至るまで、期待を裏切ることなく必ず現れるのが、我らが麗しのプロフ。オオカミの次に肉好きとされる遊牧騎馬民族カザフ人のふるまう大皿の上では、とにかくドデカい馬肉・羊肉が豪快に躍るなか、プロフはそこまで肉々しさを主張せず、外国人にとっても親しみやすく、かつ病みつきになる代表的な伝統料理のひとつと言えます。

数年前、カザフスタンで友人宅に招かれた時も、とても美味しいプロフでもてなされました。彼が言うには、プロフはそれぞれの家庭によって味が異なるとのこと。似たような味のプロフが出されると「我々は遠い昔、同じ家族だったに違いない」と盛り上がり、「ウラ~!」と言いながらウオッカやコニャックで何度も乾杯するそうです。そう、彼らが遊牧騎馬民族だった時代、プロフは部族と部族をつなぐ「絆」のひとつでもあったのです。


「肉好きがその場に残ってカザフの民となり、魚好きが東にわたって日本人となった」という有名なアネクドートがカザフスタンにあります。


日本人とカザフ人のルーツを辿ると元は同じ民族だったという、なんだか心温まる言い伝え。いつかどこかで中央アジアの友人が作ってくれたプロフの味にピンときたら、もしかしたら二人は遠い昔、遊牧民の伝統的なテント式家屋「ユルトゥ」の天窓シャニラクの下で共に過ごした大きな家族の一員であったかもしれませんね。


さあ家族を訪ねる壮大なプロフの旅のはじまりです。どうぞ良い旅を(жолыныз болсын )!


広川隆史

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