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「もう1度食べたいポロ。」②カシュガルでのポロ

 前回の記事に引き続き、「もう1度食べたいポロ」の思い出について。
 西安の留学生活でポロ(プロフ)は身近なものだった。シルクロードに興味のあった私は留学中に1人旅に出る。前回の記事で書いたように、この時の旅行は敦煌と嘉峪関がメイン。ウイグルは美味しい料理を食べよう、という理由で行くことに決めた。色々な遺跡を巡り旅は順調に続く。初の新疆ウイグル自治区。ウルムチでは近代的な街並みにちょっとびっくりしたが、美味しいポロやラグメンは食べることができた。

(2008年初めてのウイグル旅。ウルムチの屋台で食べたポロ)

大学近くのウイグル食堂で教えてもらっていたウイグル語の単語で人との交流ができるとだんだん楽しくなってくる。トルファンでも遺跡を満喫し、友達の帰国日も迫っていたので慌ただしく西安に戻った。西安に帰ってなんだかホッとしたのを覚えている。 
 その後、留学から帰国して7年ほど同じ職場で働き、2015年に仕事を辞めることになった。留学中には行けなかったカシュガルに行ってみたかった。初めて行ったときと違い、今回はウイグルがメイン。「もう1度食べたいポロ」とはこの時の2015年カシュガルで出会う。
 なぜかカシュガルの観光地で偶然チベット族と知り合い一緒に観光をした。翌日に郊外の観光を予定していた私に、チベット族の子が前日にチャーターしていたタクシーの運転手を紹介してくれた。朝、ホテルの前まで迎えに来てくれたのは私と同い年くらいのウイグル族の男性。ウイグルで一番西にある仏教遺跡、モール仏塔へと向かう。車で2〜3時間かかるのでいろいろな話をした。中国語が上手で、見た目より若くて(失礼…)私より2つ年下、結婚して子供が二人いるという。仏塔では遺跡の管理人のウイグル族のお兄さんも共に一緒に写真を撮ったりした。

(管理人のお兄さんに謎ポーズを指示され、運転手のお兄さんと記念撮影)

 仏塔の周辺は農村で、そこを通って帰る際「ウイグルは葡萄有名だよ。食べたい?」と聞かれ、「食べたい!」と答えるとその辺りの道端にいたおばあちゃんにお兄さんは声をかけた。そこでお庭に実っている葡萄やいちじく、ナツメなどをごちそうになった。突然見ず知らずの外国人が来たのにおばあちゃんの息子さんも一緒に歓迎してくれる。何もお返しできるものも無かったけれど持ってきていた日本のお茶をお礼にわたした。

(農村のお家にて)

 その後、街に戻りお昼を食べることになった。「カシュガルで1番美味しいポロの店に行こう!」とお兄さん。はっきりと覚えていないが街の中心地から少し離れたところ、周囲にはお客さんの車やバイクが泊まっている。席は20席ほど。特別豪華なお店ではなく街の食堂といった感じ。ほとんど満席だった。8割ウイグル族、2割漢族。付け合せにニンジン?の酢漬けのようなもの。「ポロに肉も入れる?」と聞かれて「もちろん!」と答えた。斜め向かいには漢族の家族。小さい男の子も美味しそうにポロを食べている。西安の食堂の様にここでもまた美味しいものには民族関係なく人が集まっている。待っている間に「ここの店はよく来るよ。地元の人しか来ない。ここが1番おすすめの店!」とニコニコ話すお兄さん。周りの人が食べているポロを横目で見ながら待つ。少しするとドンッとテーブルにポロが置かれた。ウイグルの黄色い人参のポロ。

(お兄さんオススメの店のポロ)

お兄さんは私が写真を撮ってる間にもう食べ始めている。ワクワクしながらスプーンを手に取る。
…おいしい…黄色いにんじんの甘みたっぷり、羊の旨味たっぷりの油も…新鮮な羊肉も…。大盛だったのに食べきってしまった。
入り口近くには大きな鍋。家の近くにこのお店があったら幸せだなぁ、なんて考えていた。

(どんどん注文され無くなっていくポロ)


 その後お兄さんはバザールへの買い物に付き合ってくれて、クチャに移動するため列車の駅に送ってもらった。1日分のチャーター代を支払おうとすると「友達からお金なんて貰えない。」と悲しそうな顔をするお兄さん。「友達だけど、これはちゃんと仕事してもらった代金だから家族のために貰って。」と受け取ってもらった。「これは私の身分証。またカシュガルに来たら連絡して。」と身分証の住所まで見せてくれた。その後もウイグルの旅は続き、私は無事に帰国する。

 またウイグル行きたいな、と思いつつ時は過ぎ、2018年の年末に友達と3回目の旅に出た。カシュガルでお兄さんに会えたらいいなぁと思うが、ウイグルの状況も気になるので相手が変な疑いをかけられて大変な目にあっては困る。カシュガルに着いた翌日、観光地に向かう前にポロを食べに行くことになった。タクシー運転手のお兄さんに2015年に撮った写真を見せて「このお店分かる?前に行ったんだけど。」と聞くが、この写真だけで分かるはずもない。「お兄さんがカシュガルで1番美味しいと思うポロのお店に連れて行って。」と話した。奇跡が起きて同じお店だったら良いなぁと思ったが、やはり違うお店だった。

(3回目の旅で食べたポロ)

 その後、ホテルの電話で以前教えてもらっていたお兄さんの携帯電話に電話をしてみた。つながった。「〇〇ですか?四年くらい前にカシュガルに来た日本人〇〇です。」とウイグル語の単語も混ぜて話した。相手は「…違います…。」と。ちょっと困ったような声、お兄さんの声に似ていた気もする。私は「そうですか。すいません。」と電話を切った。実はクチャの他のウイグル族の友達と定期的に連絡を取り合っていたが「会える?」と聞くと「ごめんね。会えたら嬉しいけど。分かってね。」と返事があった。友達やお兄さんにそれ以上連絡しなかった。願う事しかできないけれど、お兄さんも家族と元気で暮らし、あのポロを今も食べていてくれればいいなと思う。いつかカシュガルに1週間くらい滞在してポロのお店を探してみたい。

 私の中で1番美味しかったポロは2015年に食べたカシュガルのお兄さんオススメのポロ。今回「もう1度食べたいポロ」というテーマで記事を書かせてもらったが、西安のポロもカシュガルのポロも忘れられない味。美味しい料理は人との出会いも鮮明に思い出させてくれる。もしかしたら今日食べた美味しい料理は、二度と食べれなくなってしまうかもしれないけれどいつまでも記憶に残ると思う。
 楽しい思い出、悲しい思い出、これからも旅に出るたび、ポロを食べるたびにまた忘れられない思い出が増えて行くと思うとワクワクする。
 皆さんももう1度食べたいポロに出会えますように。 

ありがとうございました。

Yoshikawa Kazuyo 

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