20190420_村田沙耶香_コンビニ人間_

ちょい前の芥川賞受賞作「コンビニ人間」をようやく読んでみた感想

ちょっと前の芥川賞受賞作、村田沙耶香著「コンビニ人間」をようやく読みました。簡単に感想を綴ります。貧乏性で実際に貧乏なので、話題書は文庫になるまで or B00K OFFの100円棚に並ぶまで読まない一派です。なんだかんだB00K OFF好きなんですよね。。作家の方や出版業界には少し悪いですが、出世払いでつけといてください。。

主人公、かなり変わっています。マニュアルがあれば、それを模倣して生きていける。わかりやすいモデルがいたり、こうした方がいいよ、と一度教えられるとそれはできるんですね。一方、定型から一歩ずれると、途端に何もできなくなる。この主人公には暗黙知とされる社会的な基本通念を読み取る(社会で生きていく上でかなり大事な)能力が全くないので、空気の読めない、突拍子のない言動をしてしまう。小鳥の死骸を食べようと言ったり。かなりいかれている男性を部屋に住まわせちゃったり。

例えるなら、主人公は"コンビニという狭く機械的な水槽の中でしか生きていけない小さな魚”のような生物です。かなり特殊な生態を有している。少なくとも”普通の人間”の描写ではない。

この主人公は物語中盤~、かなりいかれている男性の手によってコンビニという水槽の外に掬い上げられてしまいます。周囲の普通の人間たちもそれを肯定する。変な魚が、普通の人間になれるチャンスがくるんです!主人公も、周囲の好意的な反応を受けてむしろ積極的に水槽の外に出ようとする。

が、見事に干上がってしまう。結局、コンビニの中でしか、泳ぐことができない。そこでしか息ができない。そういう、うぁーーーって言いたくなるお話。息苦しい読後感。

「かなり特殊で普通ではない生き物の生態」を描写しているのに、この小説には「普遍性」があります。ただ、その普遍性が具体的に何かは掴ませてくれない。「この一文は共感できる!自分のことだ!」て思える箇所はありません。しかし確かに、どこかで感じたことのある感情が疼く。この感情の名前はなんだ?どこで感じたものだ?

この「普遍性」はなんだろう?生き難い社会の渦中にいる私たちに、もやもやした薄気味の悪い、確かなしこりを残す小説でした。これだけこの本が読まれているということは、多くの人が”治せない性”を患いながらもなんとか生きているんでしょうね。

蛇足です。この主人公、私の兄に少し似てます。車が嫌いだからという理由で突然車を蹴りだしたり、てんとう虫の敵だからと蟻を延々と潰したりする。その兄もスーパーで深夜品出のバイトして生きてます。全く他人事でこの物語を読むと、「ここでしか生きられない」と見えるけれど、そういう自分の身近な人の視点が絡むと「そこでなら生きられるんだね」と少し解釈が変わります。まとめると、コンビニ店員に高圧的な人にまともな人はいないですよね。そうです、眠いんです。。一週間、お疲れ様でした。

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