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骨髄異形成症候群(MDS) 114回医師国家試験対策

骨髄異形成症候群(MDS)


[MDSまとめ]
病気の本質を聞く問題が多いため正答率は低め。単純な暗記では通用しない。
MDSとはどういう病気なのかの本質が見えていないのではないかと思われる。医者になった時、MDSってどんな病気か説明できますか?
「造血幹細胞に生じた後天的な染色体または遺伝子異常により、1系統以上の異常クローンを増産し、無効造血を来す疾患(従って骨髄は正形成〜過形成)。高齢者に多く、AMLに移行しやすい」
不均一な疾患から構成され、定義が上記のように曖昧なため、「症候群」であり、中に様々な種類の病態が含まれる(例えば環状鉄芽球を伴う不応性貧血などもこの1種)。従って、貧血は小正大いずれも来たしうる
このような疾患の場合、どのような染色体または遺伝子異常かによって予後が異なること、同じ異常であっても患者ごとに重症度が異なることを理解することが大切。

[出題者の視点]
病態の本質の理解、原因の多様性、重症度の多様性の理解が最重要項目
1系統以上の血球減少、染色体異常のこともあれば遺伝子異常のこともある。無効造血をきたすため、EPO↑、Ret↓、骨髄過形成あたりがポイント。疾患の一般知識を問う問題では、形態異常を来すこと、髄外造血は来さないこと、あたりが過去に何度も出題されている。また、汎血球減少の鑑別問題としても頻出。最近は、予後指標と治療方針が頻出。臨床問題ではなぜかいつも汎血球減少+大球性貧血。
114対策としては、もう一度、year noteの治療を見直しておこう。
低リスクで症状なし→経過観察
低リスクで症状あり→一般的には免疫抑制剤、サイトカイン療法、5q-ならレナリドミド+それぞれの支持療法
高リスクで移植可能→同種造血幹細胞移植
高リスクで移植困難→アザシチジン(DNAメチル化阻害薬)

[正答率]
各種予備校のビデオ講義では病態生理の本質が見えていないのか、正答率は常に低め。そして、治療方針の考え方も毎回正答率は低い。予後の考え方は108D16、110I20と同じ問題でも正答率は上がらない。今後も同じ趣旨の問題は続くだろう。


<絶対に押さえておくべき過去10年分>

[104D31](臨床、治療)正答率15.1%
「68歳男性、貧血、汎血球減少、染色体正常、白血球分画に芽球なし」
相変わらず診断が難しい。
とりあえずMCVを計算すると、大球性。画像を見ると、様々な種類の芽球が増えている、つまり1種類の芽球が増えているわけではないのでAMLは否定的。
汎血球減少を来たす疾患→AA、PNH、AML、MDS、巨赤芽球性貧血、PMF、癌の骨髄転移、肝硬変、SLE、血球貪食など
この中で大球性は巨赤芽球性貧血とMDS。骨髄所見が巨赤芽球ではなく、様々な顆粒球を示しているので巨赤芽球性貧血は否定的→MDSと考えると全てが合理的。
更にこの問題は治療が難しい。
まず低リスク群か高リスク群か。染色体が正常、骨髄での芽球割合低めで、3系統の減少が軽度(Hb<8, Plt<5, 好中球<800あたりが重い)→低リスク群。そして自覚症状がないため、経過観察。
出題者の意図:汎血球減少を来たす疾患の鑑別、MDSの治療フローチャートを覚えているかどうか。
誤答選択肢考察:圧倒的に間違いの多い抗がん化学療法は実はMDSにはあまり行われない。アザシチジン(DNAメチル化阻害薬)を通常の抗がん剤と同じ扱いをしていいのかどうか?WBC2300、好中球も1000を超えていて感染兆候ないので抗菌薬は不要。低リスク群で臨床症状がある場合は、免疫抑制剤。副腎皮質ステロイドはMDSには原則として用いない。

[104G49](臨床、診断)正答率51.3%
「54歳男性、半年前からの労作時の息切れ、貧血、Ret1.2%」から考えられる疾患。
国家試験の鉄則、よく分からない貧血を見たらMCVを計算→大球性貧血になっている。
医師国家試験で大球性といえば→巨赤芽球性貧血or MDS。
誤答選択肢考察
a; 正球性、b,c; 小球性
出題者の意図:原因不明慢性貧血を見た時にMCVを計算する習慣がついているかどうか。大球性貧血の2個を知っているかどうか。
裏のポイント:貧血の割にはRetが低い→骨髄で作ってないか無効造血のため途中で壊されているか(111G59の選択肢cの理由)。

[106I36](一般、疾患の知識)正答率82.6%
「MDSとAAに共通の所見」。
どちらも汎血球減少を来す代表的な疾患→骨髄穿刺で鑑別。
腎臓は問題ない状態で貧血の時はEPO↑
出題者の意図:汎血球減少を来たす疾患の共通所見と鑑別
誤答選択肢考察
医師国家試験でdry tap→PMF, CMLの急性転化
医師国家試験で髄外造血→PMF, 癌の骨髄転移

MDS; 骨髄過形成、AA; 骨髄低形成のため、芽球はMDS↑、AA↓

[108D16](一般、予後指標)正答率57.4%
「MDSの予後判定には、芽球の割合、染色体異常、Hb、Plt、WBCが使われる」
正答率が低いのは104D31からちゃんと学んでいないためと思われる。
出題者の意図:MDSの国際予後スコアリングシステム(IPSS)を知っているかどうか。
総合的な重症度の判定に与える影響は芽球の割合>染色体>何系統に異常があるか?

誤答選択肢考察
LD; 無効造血なので↑、LDが予後指標になるのは悪性リンパ腫
血球の形態異常:MDSの定義ではあるが、予後には関係ない
Ret; 無効造血なので↓が多いが、予後には関係ない

[109D36](臨床、治療)正答率31.4%
「72歳男性、動悸、息切れ、易疲労感、汎血球減少、LD↑、骨髄画像で様々な芽球、5q-の染色体異常」
とりあえずMCVを計算してみる→大球性
この問題は臨床文、画像だけでは、MDSか巨赤芽球性貧血かの鑑別は極めて困難。なぜかというと、赤芽球、巨赤芽球が示されているため。従って、MDSと診断するには、5q-がMDSの一部だと知っておかなければならない。
次に考えるのは治療
画像から芽球の割合は少なめ、染色体異常5q-は予後良好な染色体異常、3系統は1系統が重い(Hb<8, Plt<5, 好中球<800あたりが重い)→全体の判断としては低リスク群
臨床症状ありで、5q-のため、レナリドミドになる。
出題者の意図:5q-がMDSの低リスク群だと知っているかどうか、5q-にはレナリドミドが有効であることを知っているかどうか。
誤答選択肢考察
E; 多剤併用化学療法は、MDSの治療フローチャートには含まれていないが、芽球が増加(AMLへ移行しかけ)の時に行うことがある。
D; 同種造血幹細胞移植はハイリスク群で移植可能な場合に行う。
B;無効造血で鉄はむしろ余っているため意味なし。
A; Pltは9.8と十分にあり、出血傾向ないので適応なし。医師国家試験ではPlt輸血は1万以下の時に行うことが多い。

[110G58](臨床、皮膚合併症)正答率61.8%
「38歳女性、左下腿の潰瘍」
3ヶ月前からの潰瘍で、一般細菌、真菌、抗酸菌がいなくて、真皮に好中球浸潤があって血管炎ではない→壊疽性膿皮症。この画像も覚えておこう。レビューブックの画像とはだいぶ異なる。
「壊疽性膿皮症といえば、UC, クローン、MDS、大動脈炎症候群、白血病」
出題者の意図:壊疽性膿皮症のデルマドロームを知っているかどうか
誤答選択肢考察
DMの潰瘍は易感染性からきて、下腿というよりは足の先。
ポイント:壊疽性膿皮症自体の治療はステロイド、免疫抑制剤だが、基礎疾患の検索が重要。

[110I20](一般、予後指標)正答率49.3%
「MDSの予後判定には、芽球の割合、染色体異常、Hb、Plt、WBCが使われる」
108D16と同じ趣旨の問題なのに正答率は更に下がる。悪性リンパ腫の予後指標(ALPSE)と混同しているのか?
出題者の意図:MDSの国際予後スコアリングシステム(IPSS)を知っているかどうか。
誤答選択肢考察
LD; 無効造血なので↑、LDが予後指標になるのは悪性リンパ腫

<余裕があれば押さえるべき103以前の問題>

[83B16](一般、疾患の知識)
「MDSは汎血球減少を呈することが多い、高齢者に多い、染色体異常をしばしば伴う、AMLに進展しやすい」
出題者の意図:MDSの疾患の基本概念が分かっているかどうか。

[87B50](一般、画像診断)
「環状鉄芽球を認める疾患は不応性貧血または不応性鉄芽球性貧血であり、MDSの一部である」
出題者の意図:環状鉄芽球を見たら、不応性貧血、を知っているかどうか。
ポイント:名前の由来は、鉄剤、葉酸、VitB12などに反応しないことから「不応性」と名付けられた。

[87B51](一般、疾患の知識)
「MDSは、白血球減少、巨大血小板、染色体異常を伴うことがある」
出題者の意図:1系統以上の形態異常、という疾患の概念と基本知識を知っているかどうか。
誤答選択肢考察
髄外造血は、PMF、癌の骨髄転移
骨髄は正〜過形成

[94B49](一般、治療)
「MDSは骨髄移植の適応になることがある」
出題者の意図:幹細胞の異常を来す疾患は骨髄移植の適応になりうることが多い。従って正答はMDSとAA。
MDSで骨髄移植になるのは、ハイリスク群で年齢がある一定以下の場合。AAで移植になるのはstage3以上で40歳未満。
誤答選択肢考察
HSは脾摘、AIHAはステロイドなど。
ポイント:骨髄移植は、AML、CML、MDS、AA、PNH、悪性リンパ腫などが有名だが、大量の抗がん剤投与後または大量の放射線照射後に行われることもある。

[96B35](一般、疾患の知識)
「MDSは血球の形態異常が生じるため、分葉核好中球の過分葉が見られることもある」
出題者の意図:MDSは1系統以上の血球の形態異常を呈する
他の正解は巨赤芽球性貧血、これは有名。
誤答選択肢考察
CML、PMF、PVはいずれも骨髄増殖性腫瘍だが、血球の形態異常は原則として来さない。

[96D33][101A32](臨床、診断と疾患の知識)
「38歳の男性、半年前からの動悸と息切れ、汎血球減少、LD↑」
MDSの臨床問題が出るとなぜかいつも汎血球減少+大球性貧血、そして骨髄塗抹で様々な種類の芽球を見せることが多い。
疾患の知識として問われているのは、高齢者に多い、無効造血をきたす、染色体異常をきたす、AMLへの移行がある、分化誘導療法は有効ではない。
出題者の意図:汎血球減少の鑑別
ポイント:この症例は重症の可能性が高く、年齢も38歳であるため、移植の適応となりうる。

[98H39](一般、疾患の知識)
「MDSでは無効造血のため、鉄が余り、血清鉄が高値になることがある」
もう一つの正当、サラセミアも無効造血である。
出題者の意図:鉄代謝と関係のない貧血では、血清鉄高値となることがある。
誤答選択肢考察
未熟児貧血は、出生後の相対的な鉄不足なので、血清鉄は低下。
妊娠は、胎児の鉄需要が高まるため、母体は血清鉄低下。
慢性炎症に伴う貧血では、肝臓からのヘプシジン産生亢進により網内系から鉄が放出されなくなり、血清鉄は低下。

[99A33](臨床、診断と疾患の基礎知識)
「74歳男性、発熱と咳、汎血球減少、尿酸↑、LD↑、血清鉄↑、フェリチン↑」
またも汎血球減少の大球性貧血。骨髄塗抹で環状鉄芽球を見せており、不応性貧血(MDS)と診断できる。WBC減少のため、肺炎を来しているのだろう。
正答は、無効造血、2相性赤血球(大球性と小球性が混じっている状態)
出題者の意図:鉄芽球性貧血はMDSであること、そしてMDSの基本知識があるかどうか。
誤答選択肢考察
白血球は形態異常もあり、機能異常もある。
AMLに移行する。
PhiladelphiaはCMLやALLの一部。
ポイント:MDSはありとあらゆる形態異常を来たしうるが、機能異常も来しうる。この問題では、無効造血のため鉄が余っており、血清鉄もフェリチンも増加している。

[102I1](一般、疾患の知識)
「MDSは汎血球減少、環状鉄芽球、骨髄過形成、染色体異常を来しうる」
出題者の意図:MDSの基本を知っているかどうか
誤答選択肢考察
髄外造血は、PMF、癌の骨髄転移

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