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雑草を育てる

我が家には裏庭がある。

表庭は車をとめる場所の他には芝生があるのみ。いたってシンプルな庭だ。

一方、裏庭では雑草を育てている。

雑草を育てるというとピンとこない人もいるだろう。

雑草は、勝手に生えてくる「ただ迷惑なだけのもの」と感じる人が多数派であることは承知してはいる。

しかしながら、我が家は、その雑草に魅力を感じている夫婦ふたり暮らし。それゆえ、裏庭で雑草を育てようという試みをしているのだ。

雑草とひと言でいっても、実際は多種多様な植物たち。あまり手入れをしなくても繁殖していく力があるものは総じて雑草と位置づけてよい。

裏庭で雑草を育てているとはいえ、雑草が無法地帯のようにはびこってしまっては困ってしまう。ある程度は手を入れてスズメバチの巣を小さなうちに取り除くといったことは必要だ。

雑草を育てて好みの庭を手に入れる秘訣は、雑草を選別する手入れをしていくことだという。

その選別は、どのようにするのか?

いまはただシンプルに「伸びてくる草を定期的に刈り込む」ことをしているのみ。セイタカアワダチソウのような背が高くなる草を刈り取ると、背の低い草に光があたるようになり、カタバミやクローバーが勢いを増すのだ。

刈り込むだけという大雑把な方法ではあるが、着実に裏庭の植生(しょくせい)は変化してきている。

地面に光が届くよう草を刈りこむ。

ただそれだけのことなのに、光を求めていた小さな雑草たちが勢いを増していく。その姿はとても美しい。

雑草と呼ばれ、世の人々から疎まれることの多い役回りであっても、ひとつひとつに目を配り、意識を向けることで、小さな命の輝きをしっかりと受け止めることができるのだ。

変化していく裏庭を眺める時間が、ただひたすらに愛おしい。