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国土地理院の最適化ベクトルタイル試験公開データ鉄道関連データには何が入っている?(図解)


はじめに

こんにちは。
前々回は道路データの話をしましたが、今回は鉄道データの話です。
なかなか、味わい深いデータになっています。

鉄道中心線、軌道の中心線の2種類のデータがある

データには「鉄道中心線」と「軌道の中心線」の2つがあり、軌道の中心線には、さらに、普通鉄道や特殊鉄道などの細分があります(属性等の仕様詳細参照)。鉄道中心線はズームレベル4~16で作成されているのに対して、軌道の中心線は17(データはズームレベル16に統合)で、軌道の中心線のほうが、データとしてはより細かいデータになっています。

注記分類コード・地物種別コード一覧から鉄道部分抜粋

一方で属性を見ると、鉄道中心線に多くの項目が入っているのがわかります。

データ項目一覧から鉄道部分抜粋

ここから先は実際のデータで説明します。まずはシンプルに形状のみ示します。なお、この記事執筆時の地図のデータは2023/4/1時点のデータです。現状と違う可能性があります。ご注意ください。

「鉄道中心線」「軌道の中心線」の比較

下の図は属性で色分けしたりせず、シンプルに鉄道中心線(赤線)と軌道の中心線(黒線)を示したものです。これだけで場所が分かる人は、地元の人以外では、なかなかすごいと思います。
近年発展している町で、交通の要衝にもなりつつあります。答えは後ほど。

鉄道中心線(赤)と軌道の中心線(黒)の比較

一目でわかるように、黒の線のほうが複線状態、ポイントも含め、忠実に細かく表示されていることがわかります。ついでvt_code種別コードで軌道の中心線を示してみます。鉄道中心線はコードが1つしか無いので省略します。この場所には、普通鉄道の4凡例に該当するデータがありますが、細かく区分されていることがわかります。
なお、属性はズームレベルで値の構成が代わります。地物等の属性一覧を参照。ここではズームレベル16(17含む)の場合を示しています。以下も同様です。

軌道の中心線をvt_codeで表示したもの

下の図は鉄道中心線のvt_sngldblで表示したものです。属性はコードではなくて文字で入っています。
この範囲で表示されているのは複線以上、駅部分の2つだけです。複線部分が図形として複線で表現されるのではなくて、コードで示されていることが特徴です。また、駅部分も明示できます。
しかし、属性として駅名は入っていないですし、そもそも路線名も入っていないので、注記データなどを使って補完しないといけません。

鉄道中心線をvt_sngldblで表示したもの

下の図は鉄道中心線のvt_rtcodeで表示したものです。これも属性はコードではなくて文字で入っています。この範囲で表示されているのはJRかJR以外かの2つだけです。

鉄道中心線をvt_rtcodeで表示したもの

下の図は鉄道中心線のvt_railstateで表示したものです。これも属性はコードではなくて文字で入っています。この範囲で表示されているのは通常部、橋・高架、トンネルの3つです。線路が交差しているところがどうなっているかよくわかります。

鉄道中心線をvt_railstateで表示したもの

下の図は鉄道中心線のvt_lvorderで表示したものです。これは数字で属性が入っています。交差している場合、数字の大きいほうが上にあることになります。この範囲で表示されているのは0、1、2の3つです。通常は0ですが、線路が交差しているところで、どちらが上にあるのかがよくわかります。

鉄道中心線をvt_lvorderで表示したもの

そろそろ正解です。
背景に地理院地図の淡色地図をつけて表示したのが下の図です。

鉄道中心線をvt_sngldblで表示したもの 背景は地理院地図の淡色地図

武蔵小杉駅の周辺でした。
駅を東西に走るのがJR南武線、南北に走るのが東急東横線、中央から大きく東に曲がって多摩川を超えていくように走る2本の線が、東海道新幹線と湘南新宿ラインです。
vt_railstateの図で示されていた地下の線路は、湘南新宿ラインから分岐して南武線方向に繋がっていく貨物線で、武蔵野南線と呼ばれています。
地下の線路でしかも貨物線ですので、Google Mapなどでは表記されていませんが、地理院の地図やこの最適化ベクトルタイル試験公開データでは掲載されています。

県央部、県西部に目を転じてみれば、単線、トンネル、ロープウェーがどこにあるのかも少しずつ見えてきます。

鉄道中心線をvt_sngldblで表示したもの(神奈川県 県央部・県西部)


鉄道中心線をvt_railstateで表示したもの(神奈川県 県央部・県西部)


鉄道中心線をvt_rtcodeで表示したもの(神奈川県 県央部・県西部)
一番西に延びている索道は箱根のロープウェイ

一方で、横浜駅周りの状況を軌道の中心線で見てみると、このように詳細な情報が載っていることもわかります。

軌道の中心線をvt_codeで表示したもの(横浜駅周辺)

横浜駅を鉄道中心線で示すと下の図のようになります。だいぶ簡略化されていますが、必要な情報は載っていることがわかります。

鉄道中心線をvt_sngldblで表示したもの(横浜駅周辺)

追記(不通状態の地図の表記について)

近年は地方路線の赤字により、鉄道が災害で長期不通になったまま廃線になってしまう区間も出ています。
そんな中、久しぶりの明るい話題として、南阿蘇鉄道の全線開通のニュース(2023/7/15)がありました。

先立つこと2023/2/9には締結式の情報も出ています。

さて、この記事の執筆当時で最新のデータは2023/4/1とお伝えしましたが、データにもその状況が反映されており、興味深いのでここで追記しました。現在ではすでに繋がっているのに、作成時点の差で繋がっていない状態を示していることになり、そこだけ見てしまうと、意味がないように見えますが、これらの情報がある程度溜まっていくと時系列の情報を追うこともできるようになるので、これも貴重な情報には有ると思います。
データの時点の違いは、地図に限りませんが、データの使い方として重要な注意点です。
この開通情報が地図に反映されるタイミングは不明ですが、次回以降になると思われます。https://github.com/gsi-cyberjapan/optimal_bvmapのページの最後の履歴をみるとこれまでの経緯がわかります。

鉄道中心線のvt_railstateデータを使って、南阿蘇鉄道の路線を見ると立野駅~中松駅間が運休中というデータになっていること、立野駅から東に1kmほど行ったところの線路がまだ繋がっていないこともわかります。NHKのニュース通りですね。
背景は地理院地図の淡色地図ですが、そちらは繋がっていることもわかります。現行でサービスされている地理院地図(非Vector)が即時性を高めるようになっていることがわかりますね。
軌道中心線のデータも、何故か線路が繋がっているというのも興味深いです。運休中であること自体は同じです。

鉄道中心線をvt_railstateで表示したもの 背景は地理院地図の淡色地図
鉄道中心線をvt_railstateで表示したもの(立野駅付近の拡大)
背景は地理院地図の淡色地図だが、そちらでは繋がっている
鉄道中心線をvt_railstateで表示したもの(立野駅付近の拡大)


軌道中心線をvt_codeで表示したもの(立野駅付近の拡大、凡例は少し違う)
背景は地理院地図の淡色地図

まとめ

今回は最適化ベクトルタイル試験公開で提供されているデータのうち、鉄道関係の2データについて図解してみました。
鉄道中心線と軌道の中心線の2つがあるわけですが、線路形状と属性の詳細度に違いがありますので、目的に応じて使い分けると良いのかと思います。
このデータはコンサベーションGISコンソーシアムジャパン のホームページでも、秋田県、宮城県、神奈川県分について、公開を行っています。ご興味のある方は、登録は必要となりますが、アクセスしてみてください。

最後に

ここまでご覧いただき、ありがとうございました。

普段は北海道に本拠地を置くNPOに所属し、環境保全を主な題材としてGISやリモセンに関する仕事をしています。

コンサベーションGISコンソーシアムジャパン の活動もその1つです。
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