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「エラ呼吸」を思い出した私は「備えよ、生き延びよ、風よ吹け」と歌う2023年を過ごしている

ミュージカル映画が好きである。
ここ十数年だと「La La Land」「In the Hights」「ticktick…Boom」はベスト3で、不動の第一位はフレッド・アステア「バンドワゴン」。
もっというと、劇的なストーリーというより、日常的ななんてことないストーリーで、え?ここで?踊って歌い出す?あれ、この作品ってミュージカルっていってなかったよね?みたいな1曲だけ唐突に入ってくるような作品も大好物である。ドキュメンタリー調の作風なら、なおのこといい。

この”好き”の原点はなんだろう?

去年2022年の秋のこと、友人と話してたとき「エラ呼吸」の話題が出た。
そして思い出したミュージカル仕立てのドラマの、とある曲の歌詞「私のエラ呼吸」。

私が子どものころ、日曜の朝に放送していた「魔法少女ちゅうかないぱねま!」「不思議少女ナイルなトトメス」。トラブル解決のために、主人公の少女が魔法のステッキとかコンパクトで変身したりして敵をやっつけるパターンの特撮ヒロインものだ。

荒唐無稽なストーリーが目立つ魔法少女シリーズの中でも突出して不思議な、「あれ、夢だったんじゃないかな?」と思うミュージカル仕立てのドラマがあった。

私の記憶の限り、登場人物たちは、もともと海の生き物という設定で、人間界に普通に(?)暮らしている。劇中歌で「私のエラ呼吸〜」とロマンチックに歌い上げるメロディが、人生の節々で突如思い出される心のベストソングだった。

ただ、ドラマのタイトルが長い間思い出せず、「ドラマ エラ呼吸 エド山口(出演していた役者さんの一人。放送当時、あまりの衝撃にエンドロールで出てくる役者さんの名前をチェックして、覚えやすかったので覚えていた)」など検索をかけてもうまく見つからなかった。
が、先日のエラ呼吸が出てきた会話がきっかけに、改めて検索し直したら、エド山口さんが自身のYoutubeチャンネルで、このドラマについてお話しされている!

そして判明した、ドラマのタイトル。「うたう!大龍宮城」。脚本は、現在も「名探偵コナン」や「忍たま乱太郎シリーズ」を書かれている浦沢義雄さんで、劇中のうたの歌詞も作詞している。

「うたう!大龍宮城」をWikipediaでみると、東映不思議コメディシリーズの一作品で「地球環境の汚染によって壊滅的な被害を受けた竜宮城の乙姫らが人間界にやってきて、様々な騒動を巻き起こすコメディドラマ」となっている。プロデューサーがミュージカルでやると決めて挑んだ、かなりチャレンブルな作品。

蘇っていく、ドラマの記憶!

そして「エラ呼吸」の歌詞が入った歌のタイトルは「ラブ ラブ ラブ」。恋心が高まり呼吸が苦しくなる様子を歌っていた。

*「特撮ヒロイン・ファンタジー主題歌・挿入歌大全集」というCDを買いました

ところで、先日友人と、なぜ「エラ呼吸」の話題になったのかというと、
仕事の仕方や生き方について、友人が「酸素呼吸」と「エラ呼吸」という喩えをしたのだ。

ここでいう酸素呼吸は、
しっかり働いて稼いで自立して生きていくこと。時に頑張らねばならず、苦しいこともある。うまくいっている時は、お金も地位もあり、キラキラと楽しそうにも見える。

反対にエラ呼吸は、
何を生業にしているかよくわからないが、沼地にひそんで、なぜだが生きていられる暮らし方。こちらも酸素呼吸がメインの地上が通常の生息世界なので、エラ呼吸が過ぎると、お金も地位もないので時に苦しい。が、酸素呼吸に疲れたときには、ゆるゆる楽しそうにも見える。

京都府に越してから約3年が経つが、
京都というまちには、「エラ呼吸」でなんとかなっている人がまちの片隅で生息していても許容される土壌がある。

そうでした、私は、生粋のエラ呼吸人間だった。

なのに、酸素の世界で通用するか自分を確かめたくなったり、
一つ所にいるのに飽きてしまって、地上に出て行ってしまう。

そんなことしなくていいのに。
そんなことしなくて、もういいのだ。
「私のエラ呼吸」で生きていく方が私に向いている。

地上の酸素の世界でも、エラ呼吸的に生きていてもいい、ということをつくづく心に留めてみたら、今いる世界も悪くないし、今いる世界であがくことがどうでもよくなった。

そんな私のエラ呼吸を思い出した最中、Vogue Japanのyoutubeで見た俳優の山口智子さんのカバンの中身紹介がさらに私の生きる道を決めた。

通常、女優さんのカバンの中身紹介といえば、
財布やスマートフォン、お気に入りのコスメなどが入っていて、素敵なライフスタイルだなあと憧れてみたり、同じの欲しいなあとか思ったりする。
が、山口智子さんのスタンスは、「いざという時に備える」というもので、
仕事時に欠かせない荷物を紹介。毛色が違う。

まず出だしから「風」があればなんとかなる!と、手持ち扇風機(あとからもう1台でてくる)。とにかく、風が大事、癒しが大事と強調。

彼女にとって、外は、安全ではない。
自分の体、精神を守る術が必要なのだ。次々と紹介されていく外界から心身を守るためのサバイバルグッズ。
そして、動画の最後に、「みなさん、一緒に生き延びよう」と締めた。
かばんの中身紹介で、そんな締めの言葉、かつてあっただろうか。

しかし、大いに鼓舞された。
「備えよ、生き延びよ、風よ吹け。」というメッセージ。

世間的に見れば地上で成功している彼女ほどの人が、
外に出るのにサバイバル体制で仕事に向かっているならば、

なるほど、何者でもない私なんぞも、
「備えよ、生き延びよ、風よ吹け。」と歌ってみよう。

人間、「これがあれば、なんとかなる」を持っていることは強い。

2023年は私のエラ呼吸を携えて「備えよ、生き延びよ、風よ吹け。」と歌って過ごしている。