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始まりの日:知らないまちで親しみのある記号を見つけるとホッとする

引っ越し初日、手荷物のスーツケースをガラガラと引きながら、引っ越し先の最寄駅に降り立った。

スーツケースのバランスをとるのに、下を向いて歩いていたら、目に入った「片手袋」。

*「片手袋」とは、道端に片方だけ落ちてしまった手袋のことで、石井公二さんという方が、2004年より写真に収め、集め、その種類の分類をしている。その集大成は『片手袋研究入門:小さな落としものから読み解く都市と人』(2019年、実業之日本社)で楽しめる。

2019年2月に、知人がマニアフェスタに出店する際に、ブースのお手伝いをしていた、隣のブースが、その石井さんを中心にした「片手袋を見守る会」。

片手袋マニアのほか、万物に宿るマニアたちのブースを一日中を眺めていて、まちの中で見る本来は無機質な物質に、人の営みを感じ取る視点に私は感銘を受けた。

私にとって、そこまで愛おしいものってなんだろう?
を一日中考えた結果、私がまちで見つけてなんとなく写真に撮りためていた椅子たちを思い起こし、「ノラ椅子」と名付け、収集を始めるきっかけとなった(マガジン「ノラ椅子図鑑」)。

マニアフェスタをはじめとして、マニアの視点を知ると、まち歩きの楽しみが増える。もともといろんなものを楽しんでいた私ではあったが、とりわけマニアフェスタを知って以降、親しみのある記号をたくさん手に入れた。

で、冒頭の片手袋である。

引っ越し先は、誰も知り合いがいない。下見と住むところ探しに2、3度きてはいるが、まだ自分のまちではない。

そんな、まだ知らないまちで、片手袋という親しみのある記号を、到着して数分とたたないうちに発見したので、

まったくそんなことはないとおもうが

長い移動で疲れていた中で、まちに歓迎してもらっているような、そんな気分を与えてくれた。

知らないまちで親しみのある記号を見つけるとホッとする。

こんにちは、あたらしいまち。

少しづつ、親しんでいけたらいいとおもう。