今週の家族

大好きなうさぴーへ

三日分くらいをまとめて書いています。お読みになるならくれぐれも、飽きたらやめてくださいね。

先週の月曜日から、イギリスの農家に居候しております。働くから食住を賄ってくれるというシステム。まず家族を紹介しましょうか。すごいよ、これ私が小学生の時に夢見た生活だよ、友達と架空の(とは認めたくないですが)村を作って、私は親友と2人でカカオ豆の形をした離島に住んで、飼っている動物のリストを作ったものでした。台湾の形を初めて見た時、私たちのカカオ島が実在したのかと思いました。形は違うけれど内実はここに、たしかに実在しています。

まずは人間。Patrick は想像する白人のお父さんより少しだけ痩せていますが、髭は生やさず、すっきりした人です。目が合うと必ず微笑んでくれます。すごくいい人なのですがやけに几帳面で、私たちがもういいかなと思ってから倍くらい作業に時間がかかります。でもそのおかげか、畑も倉庫もすごくきれい。捨てる予定のものの上になめくじを見ると、Everything is precious.  といって丁寧にはがして地面に戻してやっているのが印象的です。Christine はすごく大きな人で、多分Patrick と同じくらい背が高いです。スパッツみたいなズボンとフリースをよく着ています。見た目より声が甲高くて最初少し怖かったけれど、そして確かに和歌山の農家のお母さんみたいに可愛くて優しい感じではないけれど、親しみやすく安心感のある人です。金髪がすこし残る白髪をハーフアップにしています。みんなご飯中に黙りこくっているのに最初は戸惑ったけれど、誰かがいなくても待たずに食べているのを見ると、料理が冷めないように早く食べようというマナーなのかもしれません。とにかく食事はすごくおいしいです。ちょっと足りないこともあるけれど。最近は、プチ夫婦喧嘩みたいなものも見えるようになって、当たり前だけれど国が違っても変わらないな、なんて思って見ています。この前はChrisがグリーンハウスの野菜を手入れしてね、と私たちにお願いしたのにPatrickが手入れはいらない、と言い返して、その次戻ったらChrisがかごいっぱいの野菜を収穫して、「これで手入れはいらないっていうの?ほっといたら腐っちゃうよ!」みたいなことを言っていました。でも水に流すスピードが速いのか、基本的にずっと仲の良い夫婦です。子供が4人いるらしく、みんなもう仕事を持って独り立ちしています。でも今ちょうど、末娘のRosieが近くで働いているので一緒に住んでいます。彼女もすごく親しみやすくて、やっぱり私から見たらすごく大きいけれど、めちゃくちゃいい人です。途中まで言うだけで言いたいことをわかってくれて、英語が不自由な私にはありがたいです。穏やかで学校にいたら仲良くなれるのかな。今は彼女にいろいろ教えてもらっている格好なので、対等になった時にどうなるかな、と想像するのは結構見えなくておもしろいものです。いつからこの家があるのかわかりませんが、Patrickはずっと農家をしている訳では無いらしく、前はコンピュータ関係の仕事をしていたみたいです。

続いて動物たち。まずは4匹のわんこたちからいきましょう。Poppyという2歳のママと、その子供たち。Sassy, Teddy, Paddingtonといいます。ちなみに、スペルは全部勘です。Sassyだけ女の子で、明らかに小さくて毛も少し短くて、私は彼女が結構好きです。みんなまだ5ヶ月だそうで、一様におてんばです。PaddingtonとTeddyはすごく似ているけれど、背中に筋が走っている方がPaddington。ケージに入っていない時に通りかかると絶対に飛びついてきますし、しょっちゅうケンカにも見えるくらい激しいじゃれ合いをしています。犬種はわかりませんが、後ろ足で立ち上がると腰より高くて、土の上を走り回った足で飛びついてくるので泥だらけ。でもいつでも元気いっぱいのpuppiesはみんなのアイドルです。たれた耳とカールした毛が愛らしい。Poppyだけ家の中にいつもいて、甘えるのがまあ上手だこと。ちょうどいい完璧なタイミングでひっくり返ってお腹を見せたりします。Sassyはちょっとぶきっちょで、かまって!というふうにこちらが別のことをしようとした時にお腹を見せてこっちを見てきます。わざとらしいなぁと思いながらも、戻ってなでてしまうくらいにはかわいいです。自分の犬というのがいるらしくて、PoppyはChrisの犬、PaddingtonはRosieの犬です。PoppyはChrisが行くところどこにでもついていく、本当に忠実なわんこです。私は…ここ数日はSassyとばかり遊んでいます。

次に会ったのは馬たちです。私が馬が好きだというと、着いた日の夕方にすぐPatrickが馬のいる草地へ連れて行ってくれました。放牧されているのかな、と思って歩いていくとびっくり、まるまると太った6頭の馬が走り寄ってきました。来て一週間くらいしてからやっと覚えたのですが、栗毛のLucy、鹿毛の親子はTangoとAstra、芦毛の大きい方がDaisy、小さい方はまた忘れちゃった、そして青毛のBeautyというポニーがいます。人も馬も全く怖がらず、優しく好奇心旺盛にこちらを伺ってくる馬たちはかわいくて仕方ありませんでした。後肢どうしが触れ合わんばかりの近さに立っていて耳を伏せない馬なんて見たことがありませんでしたから。洗ってはいないはずなのに毛並みは美しく、前から見ると胴体は完全な円形なんじゃないかというくらいふとっちょ。なんでも、夏の終わりだから1番太っているんだそうです。冬は草もあまり食べられないので、冬越しのために蓄えておくんですって。冬も建物には入らないのだと、雨風を凌げて暖かそうな木陰をいくつか指さしながら教えてもらいました。一年中同じ量の干し草を与えられて馬房に飼われている大学の馬たちとあまりにも違いすぎて、でも間違いようもなくどちらも馬なのです。夢中になっているうちに周囲を馬に囲まれてしまって、その時に誰かが噛んだのか馬たちが少しだけ緊張して、危うく蹴られそうになりました。馬たちに悪気はなくても、人間という傷つきやすいものが傍にいることなんて簡単に忘れてしまって、ふとした瞬間に私を蹴り殺してしまうかもしれない。それからは馬たちに取り囲まれないように、必ずどこかに逃げ道を確保するようにしています。舌鼓や愛撫が伝わるのかどうかも、彼らにとって人間がどういうものなのかも、何も分からないけれど、見ていたら何かわかるかもしれません。そんな淡い期待を抱きながら、毎日夕方頃には抜け出して馬のところに遊びに行く日々です。

geeseは、のどかのひとことです。白いあひるのような見た目をしていますが、多分日本語にするとガチョウ。10羽いて、朝草地に歩いていって、一日そこで馬と一緒に草を食み、日が沈む頃に揃って列になって小屋に戻っていきます。1羽1番年老いて歩くのが遅い子がいて、その子だけ名前がついています。gooseという名前だけど。白い鳥たちが緑の草地にいる光景は、心の中を限りなく静かにしてくれます。草地と家の間の小径には無数の白く柔らかい羽が落ちていて(羽根布団の羽根だそう!)、全然違うけどヘンゼルとグレーテル気分を味わえます。

それから、鶏たちでしょうか。5羽のレディたちは、コケコッコーとは言わないけれどクックックといって、いつも地面をつつき?回しています。彼らは生ゴミを卵へと変える恐るべき生物です。トマトのへたも、果物の皮も、腐ったパンまで、鶏肉以外の生ゴミは全てチキンズの元へ行くのです。それと少しのタンパク質ペレットだけで、毎日卵が2~3個とれる訳ですから、ほんとうにすごいものです。と思っていたんですけど、この間鶏小屋の掃除をして、かなりしんどかったのでやっぱり自分では飼わないかな。どうだろう(追記)。ここにも1羽、おばあさんがいるそうなのですが、ここ数日元気がなくてずっと小屋の中にいて、いつ死んでも驚かないでね、と昨日に言われました。鶏は元気か死んでしまうかどちらかで、その間はないのだそうです。

最後は猫。2匹いて、黒と白のが1匹、白と茶色のが1匹です。私はあまり交流はないのですが、とても良いハンターなのだそうです。それぞれMaxとArnieといいます。裏の畑にも放牧場にも鶏小屋にも、どこにでもいつの間にか姿を現します。でも何を考えているかわからないから、私は犬派かな。

それから、来て二日目にあと2人のWWOOFer(私と同じように農家に居候している人たち)にも出会いました。HetherとRiekoさんです。Hetherは40くらいかな、多分イギリス人の女の人です。自分でも小規模な家庭菜園を持っているらしく、農業のことをすごくたくさん知っていました。この農家に数ヶ月いるらしいのでそのせいかもしれませんが、ここの農家のやり方とはまた違う信条のようなものを持っているようなので、やっぱり自己流である程度農業に詳しいのだと思います。私は2日目の午前中に基本的な作業のほとんどを彼女から教わったのですが、はっきり物をいうけれど優しい人です。最初に少し話したら、英語力を測られていたみたいで、あなたの英語はOKだね、と言われました。でも、ちょっとレベルの高い英語、例えば慣用句みたいなのを使う時には、必ず私が理解しているか確認してくれて、分からない時は的確な説明を加えてくれるのですごくありがたいです。最近はずっとパソコン仕事の方をしているのがすこし残念です。また一緒に作業したい!小麦粉アレルギーだそうで、(英語にはそれを表す一つの単語があってびっくりしました)食事も別なのでなかなかしゃべらないのだけれど、でも他の人に負けずに会話の機会があるのはHetherがすごいですね。Riekoさんは、なんと同じ日本人!すごい偶然です。正直に言うと、隣の部屋に日本人が来ると聞いた時は少し残念でした。ひどいことだけれど、せっかく外国に来たのに絶対甘えてしまうだろうな、と。確かにそれは正しかったけれど、最初だからちょうど良い逃げ道なのかもしれません。それから、それ以上に、ものすごい人でした。東京で働いていたけれど、仕事を辞めて家も引き払って、学生ビザで働けるアイルランドに行ってからイギリスに来たのだそう。ビザを得るためだけに語学学校に少しだけ通って、そのあとはずっとWWOOFをしているそうです。初めは全然英語もわからなかったから、ホストファミリーと子供用の絵本を読んでいたとか。今もそんなにしゃべれるわけではないけれど、コミュニケーションは私よりも上手なくらいです。少ない単語で、自分の言いたいことを伝えるやり方を知っています。本当に尊敬します。そして同じ日本人だから、私にそれができないわけはどこにもないみたいな気がして、余計に迫ってきました。それから私の話したことをすごくよく覚えていてくれます。ずっと牛の農家にいたそうで、馬のことを牛というのは一週間たっても変わらないけれど、(私が牛という時は馬なのでわかってください、といわれました)馬の話にすごく興味をもってくれて、他にもいろいろ、折に触れて前の会話を持ち出してくれるのは嬉しいものです。これは言語なんか関係ないので私も習得したい技術です。

好き勝手に紹介したので長くなりました、読んでくれてありがとう。植物も紹介したいのだけれどもう今日はおしまい。暮らしぶりと一緒に、もしかしたらこっちにも書きますね。

2023/09/06


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