少年犯罪の裁判所記録保存報告書に関する資料PDF魚拓。



事件記録は公文書であり、国民共有の財産である。失われたものは戻らない。  神戸市須磨区で1997年に起きた連続児童殺傷事件など重大な少年事件の記録が廃棄されていた問題で、最高裁は調査報告書を公表した。  保存を抑制する最高裁の不適切な対応が原因とし、「国民の皆さまにおわびする」と謝罪した。  最高裁は64年の内規で、少年事件の記録は26歳に達するまで保存し、史料的価値が高い記録は事実上の永久保存に当たる「特別保存」にするよう定めた。  だが92年ごろ、記録の膨大化防止に取り組むべきとのメッセージを発して特別保存への消極的な姿勢を強め、「保存期間満了後は原則廃棄」の考え方が組織内で定着したという。  問題が発覚した連続児童殺傷事件は、殺害容疑で当時14歳の少年が逮捕され、少年審判を経て医療少年院に収容された。  日本の少年事件史上、最も衝撃的な事案の一つであり、少年法改正のきっかけとなった。神戸家裁が全ての記録を廃棄したと分かり、多くの国民は耳を疑った。  同様の廃棄は全国で相次ぎ判明し、2012年に児童ら10人が死傷した亀岡市の集団登校事故でも、保護処分を受けた少年らの記録を京都家裁が廃棄していた。  特別保存は地裁や家裁の所長が判断するが、廃棄は首席書記官の指示で行われていた。神戸家裁では所長の判断を経ずに廃棄されたといい、こうした現場任せの構図も報告書は指摘している。  内容も確認せず、機械的な廃棄が常態化していたようだ。  非公開の少年審判で記録まで廃棄されれば、後世になって過程を検証し、学術的な利用を含めて教訓を生かすことが困難になる。  亀岡事故の遺族が「被害者感情を踏みにじられたようで、司法の身勝手さにあきれる」と非難したのは当然である。  背景には記録の保管場所の確保や、情報流出への懸念があったようだ。だからといって廃棄は乱暴すぎる。国民主権をなおざりにした司法の閉鎖性を感じる。  最高裁は特別保存に関する判断に国民の意見や専門家の知見を取り込むため、常設の第三者委員会を設置するという。  他にもずさんな業務はないか、疑問は尽きない。安倍晋三政権での公文書改ざんをはじめ、記録軽視は民主社会の根本を損なうと改めて政府でも共有すべきだ。

社説:事件記録廃棄 国民財産損ねた無責任
2023/5/26(金) 16:06配信京都新聞


重大少年事件の記録などが事実上の永久保存に当たる「特別保存」とされずに廃棄されていた問題で、最高裁が25日、調査報告書を公表した。浮かび上がったのは、プライバシー保護や更生の観点から通常は人目にさらされることのない少年事件の記録などの中に「国民共有の財産」があるという意識を欠いたまま廃棄を続けた裁判所の「意識の甘さ」だった。 【写真】記者会見に臨む最高裁の小野寺総務局長 「組織として、記録を後世に残すという意識がなかった」。25日午後、記者会見した最高裁の小野寺真也総務局長は責任を認めて頭を下げ、一連の問題を招いた原因をこう述べた。 最高裁は平成4年、歴史的な資料になるような記録は特別保存とすべきだとする運用の指針を各地の裁判所に通達。一方、この前年には、保管スペースの問題があることから、特別保存とする記録が「膨大にならないように」との指示も出していた。 報告書では36家裁・支部の少年事件52件に民事裁判を加えた計約100件が調査対象となり、少年事件の廃棄に至った経緯が類型化された。最も多かったのは「家裁で事件の記録が保存されている認識がなく、廃棄対象に含まれることも認識していなかった」で、39件に上った。 共通するのは、事件処理のみを考え、「終わったものは廃棄する」という原則を漫然と行っていた裁判所の体質だ。 例えば、今回の問題の発端となった9年の神戸連続児童殺傷事件の場合、廃棄担当の管理職が特別保存の要件に当たる可能性があると考え、当時の家裁所長ら複数の管理職に相談したものの、所長に自身が検討すべき立場だとの認識がなく、明確な判断を示さなかった。 本来、特別保存を判断する権限を持つのは所長だが、そういった意識は所内で共有されておらず、担当者は「自身で判断しなければならない」と考え、所長に正式な判断を諮らずに廃棄の手続きを進めた。 「前代未聞の事件であり、貴重な資料となるから保存すべきだ」と述べる裁判官もいたが、一般の民事事件とは異なり原則非公開の少年事件であること、特別保存は「例外中の例外」という意識が働いたことなどから、保存されなかったという。 その他の少年事件についても、担当者が「地域限定的な事件という印象を持っていた」(長崎・佐世保小6女児同級生殺害事件)、「少年記録はプライバシーの問題から原則廃棄と考えた」(京都・亀岡暴走事故)などとして、所長に諮ることなく廃棄を進めていたことが明かされた。 調査報告書では、重要な事件記録を保存する意義を規則に明記し、組織内で共有することなど、意識面を改善する必要性が指摘された。「(廃棄ありきの感覚は)変わっていくと思うし、変わっていかなくてはならないと思う。職員すべてにそういう意識を持ってもらう必要がある」。小野寺局長は強調した。(原川真太郎)

非公開でも「共有財産」意識欠く 最高裁の記録廃棄
2023/5/25(木) 21:59配信産経新聞








 国民の財産である裁判記録。その保存の基準が、大きく見直されます。  1997年の神戸連続児童殺傷事件や、2012年の亀岡暴走事故など、重大な事件の記録が裁判所で廃棄されていた問題を受けて、最高裁は事件記録の保存のあり方に関する報告書を公表しました。  これによりますと、主要日刊紙のうち2紙以上に掲載された事件の記録などは、保存期間の満了前でも事実上、永久に保存する「特別保存」とする手続きを直ちにとるよう、認定基準を見直すといいます。  また、適切な保存の仕組みをつくるため、第三者委員会を常設する方針です。  亀岡暴走事故で妊娠中の娘を亡くした、中江美則さん(59)は、今後、裁判所に求めることについて、「被害者のための裁判記録だということをもっと重く受け止めてほしい」と話しました。  (中江美則さん)「僕らの報われんかった娘たちの悔しい思いがね、全部あそこに詰め込まれている、その記録をね、残してもらわんことには、僕らの娘が、また殺されてしまうっていうんですかね」  また、神戸連続児童殺傷事件の遺族・土師守さん(67)は、「あるべき記録の保存管理体制の検討を裁判所に求めてきました。報告書を読み込んで、内容を十分に精査し、検討したい」とコメントしています。

亀岡暴走事故遺族「被害者のための裁判記録、もっと重く受け止めて」 事件記録廃棄問題で最高裁が報告書 保存基準見直しへ

2023/5/25(木) 22:02配信ABC


 神戸児童連続殺傷事件など、重大少年事件の記録が、全国の家庭裁判所で廃棄された問題で、最高裁判所は25日、廃棄の経緯や原因を示した報告書を公表しました。  25日、最高裁判所が開いた会見。  最高裁判所・小野寺真也総務局長 「今回の一連の問題は、最高裁による不適切な対応により起因しております。後世に引き継ぐべき記録を失わせてしまったことについて深く反省をし、事件に関係する方々を含め、国民のみなさまにお詫び申し上げます」  報道陣に配られたのは150ページを超える最終報告書でした。 「少年事件の記録は速やかに廃棄すべきものという認識」 「特別保存(永久保存)に対する消極的な姿勢が定着」  重大事件の記録は、なぜ廃棄されたのか?そして、同じ過ちを繰り返さないための対策とは?  26年前に起きた神戸児童連続殺傷事件。当時10歳の山下彩花さんと11歳の土師淳くんが殺害され、遺体の一部は神戸市須磨区の中学校の正門で見つかりました。  加害者は、自らを「酒鬼薔薇聖斗」と名乗っていた当時14歳の少年です。事件当時、少年審判の傍聴や事件記録の閲覧は遺族ですら認められていませんでした。  これに異を唱え続けた淳くんの父・土師守さん。  亡くなった淳くんの父・土師守さん 「加害少年がなぜどうして私たちの子どもの命を奪ったのか。知ることは亡くなった子どもに対する遺された私たちの義務だと思っていました」  この事件を機に少年法は厳罰化され、資料の閲覧やコピーも3年以内に限り可能に。  しかし去年10月に「記録廃棄」が発覚。  最高裁判所が"社会の耳目を集めた事件"の記録は、事実上、永久保存することを求めていたにもかかわらず、神戸家庭裁判所は、すべての記録を12年前に廃棄していたのです。  神戸家庭裁判所では、資料を永久保存する場合、所長が判断するものの、廃棄する場合には、所長の決裁は必要ないとしています。  当時の所長は…。 「永久保存(特別保存)について相談を受けた記憶はない。当時の人たちがどのような手続きがあったのか、理解していなかったのでは」  亡くなった彩花さんの父・山下賢治さん 「なんでそんな簡単に廃棄できるのか。伝えていくっていうのが、だんだんおろそかになっていく、終わったことじゃないかと、みんな捉えてしまう。でも遺族からみれば終わっていない」  その後、事件記録の廃棄が全国の家庭裁判所で起きていたことが発覚。事態を重く見た最高裁は有識者委員会を立ち上げ、記録の保存と廃棄のあり方について、検討を重ねてきました。  亡くなった淳くんの父・土師守さん 「一般国民の常識と司法の常識には乖離があるなとものすごく思いました」  淳くんの26回目の命日となった24日、土師守さんは、手記を寄せました。 「遺族の事件記録を閲覧したいという思いを蔑ろにするような行為は、絶対に許されるようなことではない」  最高裁の幹部が、25日午後3時から記者会見を行い、記録廃棄の経緯について説明しました。  最高裁判所の小野寺真也総務局長 「廃棄担当の管理職が、破棄時の所長を含む複数の管理職に話を持ち掛けたものの、所長は廃棄の前提として、自身が特別保存(永久保存)するか否かの検討をしなければならない立場にあるという認識がなく、明確な判断を示さず、他に意見を述べる者もいなかった。そのため、廃棄担当の管理職が、自分で判断しなければならないという風に考えて、本件記録を2項特別保存(永久保存)に付するかどうかについて、廃棄時の所長に対して、正式に諮らなかったものである。(最高裁は)2項特別保存(永久保存)の具体的かつ客観性のある基準や、認定プロセスの整備について、指示をすることはなかった。下級裁判所を指導監督するべき立場として、これらの最高裁の対応は、誠に不適切であったと言わざる得ない」

少年事件の記録廃棄問題で最高裁判所が謝罪「不適切な対応だった」経緯や原因を示した報告書を公表

2023/5/25(木) 18:08配信ytv


1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめ、全国で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題で、最高裁は25日、廃棄経緯などに関する調査結果の報告書を公表する。後世に残すべき記録を永久保存する制度が存在したにもかかわらず、多くが捨てられていた理由や今後の記録保存の在り方などが示される。司法行政の現場の意識を変革する契機となるかも注目される。 【図表】神戸連続児童殺傷事件 記録廃棄の経緯 ■選定基準の見直し  昨年11月以降、最高裁が個別調査の対象としたのは36家裁・支部の少年事件52件に民事裁判を加えた計103件。一連の問題が発覚するきっかけは、神戸新聞が昨年10月に報じた神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄だった。以降、各地で記録廃棄の事実が次々と明らかになった。  なぜ、重要な文書の数々が捨てられたのか。事件記録等保存規程の8条をみると、少年事件記録はまず、少年が26歳になるまで保存した後に「廃棄する」と定める。ただし続く9条2項は、史料的価値が高いものは保存期間満了後も残す「特別保存(永久保存)」を義務づける仕組みとする。  加えて、その運用方法を定めた最高裁通達は、特別保存の対象として「世相を反映した事件」や「全国的に社会の耳目を集めた事件」など6項目を例示する。  それに当てはまるはずなのに、神戸連続児童殺傷事件や、2004年に長崎県佐世保市で起きた小6女児殺害事件の記録は捨てられた。永久保存に選定されていないとして、廃棄担当者は仕事に徹した可能性が高い。「保存は特別」で、担当者はあくまで「廃棄する」のが仕事だからだ。  事件記録の廃棄を巡っては4年前の2019年、重要な民事裁判記録の廃棄も判明していた。その反省で、「主要日刊紙2紙以上の記事掲載」などを特別保存の対象とする運用要領も定められたが、抜本的に見直されるかどうかも焦点だ。永久保存すべき記録を「いつ、誰が判断するのか」という点も問われている。 ■保管場所も焦点に  もう一つの重要な論点に「保管場所」がある。事件記録が原則廃棄される理由は「場所がないから」に尽きる。毎年、次々と新しい事件が入るのに、永久保存の記録が書庫を埋めていればいずれ収容できず、破綻するのは明らかだ。  少年事件は、行政府と司法府の申し合わせによって、国立公文書館に移管できる記録の対象となっていない。国会で質問を受けた際、内閣府は「取り扱いが機微」と答弁した。未成年での事件記録を永久に保存するのは、少年の立ち直りを重視する少年法の精神に反するという指摘は、法律家の間に根強く存在する。 ■史料価値の再評価  神戸連続児童殺傷事件から26年。次男の土師(はせ)淳君=当時(11)=を亡くした父親の守さん(67)は「なぜ息子は命を奪われなければならなかったのか」と問い続ける。遺族と被害者にとって、事件に「終わり」はない。  また事件記録は、日本の歴史や司法の判断を今に伝える史料でもある。問題の発覚後、見解を問われた最高裁の総務局長は「国民に申し訳ない」と述べた。全て廃棄されれば、後世の検証もかなわなくなる。  最高裁の戸倉三郎長官は今月の憲法記念日に先立つ記者会見で「適切な運用がされていたとは言いがたい状態にあった。重く受け止めている」と述べた。事件記録の意義を再び定義し、今度こそ、保存に向けた確かな道筋を示してほしい。(霍見真一郎)

事件記録廃棄問題、焦点は保存基準と保管場所 後世に残す意義見直しを 25日に調査報告書公表

2023/5/25(木) 7:00配信神戸新聞


 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、各地で重大少年事件の記録が永久保存とされず廃棄されていた問題で、最高裁が25日、調査報告書を公表したことを受け、神戸連続児童殺傷事件で次男の土師淳君=当時(11)=を亡くした父の守さん(67)が同日、代理人弁護士を通じてコメントを発表した。全文は以下の通り。 【写真】最高裁「国民の皆さまにおわび」    本日、最高裁が、事件記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書を公表しました。  このたび判明した事件記録の廃棄は、いつか全ての事件記録を閲覧でき、事件の真相に近づけるかもしれないという私たち遺族の淡い期待すら奪い去るものであり、また、事件記録の公的資料としての重要性に照らしても大きな問題をはらんでいると言えます。このため私は、裁判所の杜撰な記録管理体制を強く非難するとともに、記録廃棄に至った原因や背景事情の徹底した調査及びあるべき記録の保存管理体制の検討を裁判所に求めてきました。  今回公表された調査報告書が、これらの問題提起に十分にこたえ、被害者遺族の苦しい心情に配慮してくれていると言えるかどうか、これから報告書を読み込んで、その内容を十分に精査し、検討したいと思います。最高裁からは今回の調査報告書の内容について、直接ご説明を頂けると聞いていますので、その説明も伺った上、適切な時期に、調査報告書を受けた私の見解や心境を皆様にお伝えしたいと考えております。  報道機関の皆様にはご理解とご了承を頂けますよう、お願い申し上げます。 令和5年5月25日 土師 守

事件記録廃棄 最高裁の報告書公表受け、土師守さんがコメント「適切な時期に、私の見解や心境をお伝えしたい」
2023/5/25(木) 19:19配信神戸新聞






 重大少年事件の記録廃棄問題で、最高裁判所が責任を認めて謝罪したのを受け、兵庫県の斎藤元彦知事は26日、コメントを発表した。神戸連続児童殺傷事件の遺族である土師(はせ)守さんに最高裁が説明の機会を設けることについて、「心情に寄り添った丁寧な説明が行われることを期待する」とした。 【写真】事件記録の文書デジタル化、事実上見送りへ 最高裁、調査報告書で「慎重に検討」  今後については「歴史的、社会的な意義を有する記録が後世へ確実に引き継がれる」よう注文。裁判所に記録保存の意識が希薄だった点を念頭に、「被害者の心情理解や配慮の視点を重視した対応への見直し」も強く求めた。  コメント全文は以下の通り。  5月25日に、最高裁判所が「裁判所の記録の保存・廃棄の在り方に関する調査報告書」を公表しました。兵庫県では、神戸連続児童殺傷事件の当事者遺族である土師守氏にも検討委員会に参画をいただきながら、今年4月に「犯罪被害者等の権利利益の保護等を図るための施策の推進に関する条例」を制定しました。  昨年11月24日には、検討委員会とともに、最高裁判所に対し、事件記録が廃棄された経緯等に係る厳格な調査および公表、犯罪被害者遺族への丁寧な説明などを求めてきたところです。  今回の報告書では、最高裁判所による不適切な対応に起因していることを認め、適切な運用が確保されるよう態勢整備を行うことが示されました。今後、最高裁判所が土師守氏に同報告書について説明する機会をもたれるとのことであり、犯罪被害者やそのご遺族の心情に寄り添った丁寧な説明が行われることを期待します。  本件を契機に、裁判所において歴史的、社会的な意義を有する記録が後世へ確実に引き継がれるとともに、被害者の心情理解や配慮の視点を重視した対応への見直しが図られることを強く願います。

事件記録廃棄で兵庫県知事がコメント 最高裁の遺族への説明「心情に寄り添い丁寧に」

2023/5/26(金) 11:52配信神戸新聞


1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件をはじめ、各地で重大少年事件の記録が永久保存とされず廃棄されていた問題で、最高裁は25日、記者会見を開き、記録保存の在り方を検証した有識者委員会(座長・梶木寿元広島高検検事長)の議論を踏まえた調査報告書を公表した。最高裁が行った調査によれば、一連の問題の契機となった神戸連続児童殺傷事件では、永久保存(特別保存)を判断するべき当時の神戸家裁所長にその認識がないなど、裁判所組織全体に認識の甘さがあったと認めた。 【写真】すがる思いで託した重大事件記録、なぜ破棄 娘亡くした父の怒り  最高裁は調査報告書で「一連の問題は最高裁による不適切な対応に起因し、後世に引き継ぐべき記録を多数失わせてしまった」とした上で「深く反省し、事件に関係する方々を含め、国民の皆さまにおわび申し上げる」と陳謝した。  また、今後適切な事件記録の保存・廃棄ができるよう、歴史的、社会的な意義をもち史料的価値がある記録を「国民共有の財産」として保存する意識を共有するため、理念規定を追加すると説明。特別保存などで外部の意見を聞く第三者委員会の設置も挙げた。  さらに、民事、家事、少年という事件の種別を問わず、行政文書と同様に事件記録を歴史的公文書として国立公文書館に移管することも検討すると踏み込んだ。  一連の問題では昨年10月、神戸家裁が連続児童殺傷事件の全事件記録を廃棄していたことが発覚し、これを契機に、全国の家裁で重大少年事件記録の廃棄が次々と判明。同年11月、最高裁は記録保存の在り方を検証する有識者委員会を立ち上げ、全国の重大少年事件や民事裁判の記録計104件が廃棄されたり、永久保存されたりした経緯や原因などを調べていた。(霍見真一郎)

記事に関する報告

最高裁「国民の皆さまにおわび」 事件記録廃棄問題で報告書公表
2023/5/25(木) 16:32配信神戸新聞







 1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめ、各地で重大少年事件記録が廃棄されていた問題で、岸田文雄首相は26日に開かれた参院予算委員会で、永久保存を決めた少年事件記録などの国立公文書館への移管を検討するとした最高裁の方針について「政府として最高裁と連携し、必要な対応を進めたい」と述べた。 【写真】神戸連続児童殺傷 元少年A、改名して生活か 「匿名の森」に消える  最高裁は25日に公表した調査報告書で、適切な事件記録の保存に向けて、裁判所職員が「歴史的、社会的な意義を有する国民共有の財産」と認識することが重要と指摘。その上で今後、内規にこのような趣旨の理念規定を新たに設け、民事、家事、少年という事件種別を問わず国立公文書館へ移管していく方針を挙げた。  国立公文書館に移管する対象は、現在は民事訴訟の記録に限られ、少年事件は対象となっていない。最高裁は問題を受け、特別保存(永久保存)とした少年事件なども国との申し合わせで移管の対象に入れ、速やかな移管を目指す。  岸田首相は26日、自民党の加田裕之議員(兵庫選挙区)から、最高裁の調査報告書の受け止めや見解を問われた。岸田首相は、廃棄の責任を認めた最高裁の謝罪や再発防止策に触れたが「司法の取り組みなので、行政府、政府としては見守りたい」とした。一方、内閣府が所管する国立公文書館に記録を移管する見直しに対しては、行政府として連携するとした。(霍見真一郎)

少年事件記録、国立公文書館移管へ 岸田首相が「最高裁と連携」と答弁 参院予算委

5/26(金) 19:52配信神戸新聞


 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の記録が廃棄された問題で、最高裁が廃棄の責任を認めて謝罪した調査報告書の公表を受け、事件で次男の土師淳君=当時(11)=を亡くした父の守さん(67)が6月2日、最高裁の担当者らと神戸家裁で面会し、調査結果について説明を受けることが分かった。 【写真】神戸連続児童殺傷 元少年A、改名して生活か 「匿名の森」に消える  最高裁は25日の記者会見で、連続児童殺傷事件での少年審判の処分決定書や捜査機関の供述調書などの事件記録は、神戸家裁が2011年2月に全て廃棄したと明言した。調査報告書では、同家裁の当時の管理職が所長らに特別保存の話をもちかけたが、誰も明確な判断を示さなかったため、管理職が廃棄を決めたと結論付けた。  最高裁の担当者は6月2日、土師さんや代理人弁護士に対し、改めてこうした廃棄の経緯や再発防止策を説明するとみられる。(篠原拓真)

事件記録廃棄 最高裁が6月2日にも土師さんに調査結果を説明 経緯や再発防止策も

5/26(金) 19:31配信神戸新聞









小学生2人が殺害された1997年の神戸連続児童殺傷事件をはじめ、各地で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題で、連続児童殺傷事件で次男の土師淳君=当時(11)=を亡くした父親の土師守さん(67)が神戸新聞社の取材に応じた。最高裁は記録を廃棄した経緯などをまとめた調査報告書を5月中に公表するとしており、土師さんは「事件記録は(息子の)最期を残す重要な記録だった。最高裁は自分たちに立場を置き換えて問題を考えてほしい」と訴える。

 最高裁の内規では、少年事件記録のうち、史料的価値が高いものなどは保存期間満了後も廃棄せず、特別保存(永久保存)を義務付けている。しかし、昨年10月、神戸家裁で連続児童殺傷事件に関する事件記録の廃棄が判明。全国でも相次いで廃棄が発覚した。問題を受け、最高裁は経緯の調査に乗り出し、有識者委員会(座長・梶木寿元広島高検検事長)で記録保存の在り方を検証している。

 「淡い希望は永久にかなわなくなった」。昨年10月、事件当時14歳で逮捕された「少年A」に関する全ての事件記録が神戸家裁によって廃棄されたことが分かり、土師さんが会見で述べた言葉だ。

 事件が起きた97年当時の少年法では、被害者や遺族らによる事件記録の一部閲覧謄写や少年審判の傍聴はできなかった。法改正で現在は可能となったが、改正前の事件は対象外。土師さんは今も記録を見ることはできていない。「記録が残っていれば、法改正で記録を見られる日がいつか来るかもしれない」。家裁の記録廃棄はそんなわずかな期待も打ち砕いた。

 土師さんは少年事件記録を「被害者が生きた証し」「最期の生きざまが書かれた記録」と表現する。淳君の最期を記録したのは少年事件記録だけだという。「分からないことはいろいろある。事件記録だけで全てが分かるわけではない。でも、非常に重要な記録だった」と強調する。

 事件記録が失われた今、事件の真実を知る方法として残るのは、加害男性からの手紙のみとなった。「加害男性の弁護人や関係者らが事件記録に関する資料を残していれば話してほしいが、可能性は低いだろう」と土師さん。加害男性からの手紙は2017年を最後に途絶え、今年も届いていない。そうした状況を踏まえるとなおさら、記録廃棄への憤りは強くなる。「ええ加減にしてくれ」と。

 最高裁による調査で詳細な廃棄の経緯が判明したとしても、どれだけ優れた再発防止策が講じられたとしても、廃棄された事件記録が戻るわけではない。土師さんは「司法は(廃棄を巡る)被害者や遺族のつらく、切ない心情を少しでも理解してほしい」と述べる。「記録が戻らない中で大切なのは、今後を見据えること。廃棄の経緯や対策をどうしていくかを説明するのは、彼ら(最高裁)の責任であり、当然の義務だと思う」。(篠原拓真)

2023/5/18 11:00神戸新聞NEXT


「最高裁は自分たちに置き換え考えて」重大少年事件記録廃棄、報告書公表前に土師守さん語る



「事件記録は、被害者が生きた証し。廃棄されたことに驚きと憤りを感じている」。神戸連続児童殺傷事件の遺族代理人を務めた弁護士、井関勇司さん(80)は語気を強めた。公益社団法人「ひょうご被害者支援センター」理事長として活動し、全国の家庭裁判所で重大少年事件の記録が廃棄されていた問題に厳しい目を向ける。記録の管理に関する法整備も求めた。

 -神戸連続児童殺傷事件の全記録が廃棄されたことを知ってどう感じたか。遺族は記録に対し、どんな思いを抱いていたか。

 「あの事件は戦後最大の少年事件であり、当然、永久保存されるものだと考えていた。なぜ『少年A』が事件を起こしたのか、なぜ被害者が殺されなければならなかったのか、遺族はずっと知りたかった。だが発生当時から、事件の内容もどう処分されたかも何も知らされず、マスコミ報道で間接的に知るしかなかった。遺族側には『いつか公開されるかもしれない』という期待があったが、もうかなわない。少年審判は非公開だからこそ保存が必要だった」

 -2001年の少年法改正で、遺族や被害者は事件記録の一部を閲覧できるようになった。

 「遺族らが記録を閲覧する道が開かれた点はよかった。ただし閲覧できるのは審判の終局から3年間に限られており、短すぎる。気持ちを一生整理できない遺族や被害者がいるのに、3年で閲覧期限を区切るのはおかしい。時間は被害者の心を安らかにするわけではない。もう少し配慮があってもいいのでは」

 -少年事件記録の管理はどうあるべきか。

 「日々起きる事件の量は膨大。記録文書のデジタル保存を進めるべきだが、ある程度の廃棄はやむを得ないだろう。ただ国民の財産である記録の管理を内規で定めるのはおかしい。保存のあり方は法律で定めないといけない」

 「永久保存するか否かを、裁判所が単独で判断するのはよくないだろう。すべての記録について、弁護士や学識者ら第三者による諮問機関をつくり、個別に議論して決めてほしい。そこには当然、遺族や被害者の声も反映させるべきだ」

(聞き手・金 慶順、撮影・坂井萌香)

▽いせき・ゆうじ 1942年生まれ。71年から弁護士として活動。神戸連続児童殺傷事件では、次男の土師淳君=当時(11)=を殺害された父の守さんの代理人を務めた。2002年の発足当初から「ひょうご被害者支援センター」に携わる。

■【特集ページ】失われた事件記録

2022/11/17 05:30神戸新聞NEXT






「事件記録は被害者が生きた証し」 「少年A」事件の遺族代理人を務めた井関勇司さん、記録管理の法整備求める




 神戸市須磨区で1997年に、小学生5人が襲われ、2人が殺害された連続児童殺傷事件で、14歳で逮捕され、少年審判を受けた「少年A」の全ての事件記録を神戸家裁が廃棄していた問題で、家裁の担当者が20日、報道各社の取材に応じた。廃棄に至った経緯については不明としたうえで、当時の判断について「適切ではなかった」と改めて説明した。

 一般的な少年事件の捜査書類や審判記録は、少年が26歳に達するまで保存するよう規定。史料的価値や参考資料となるべきものと判断した事件については、最高裁の内規や通達で永久に保管する「特別保存」が定められている。

 神戸家裁の担当者は、廃棄された書類の詳細について「廃棄されているので不明」としつつ、一般的には、警察や検察から送付された捜査書類などが含まれるとした。廃棄の時期や判断理由、検討の過程などについても「不明」と繰り返した。

 その一方で、特別保存としなかった判断については「現在の運用からすると、(廃棄の判断は)適切ではなかった」と述べた。同家裁における特別保存の適用例は、家庭内の紛争などを取り扱う「家事事件」で3件あるが、少年事件ではないという。

(霍見真一郎、篠原拓真、小川 晶)

【神戸連続児童殺傷事件】1997年2~5月、神戸市須磨区の住宅街で小学生5人が次々と襲われ、2人が殺害された事件。中学3年で当時14歳だった「少年A」が殺人容疑などで逮捕された。刑罰の対象年齢を引き下げる法改正のきっかけとなった一方、犯罪被害者の支援に目が向けられる契機にもなり、2001年施行の改正少年法では、被害者に記録の一部の閲覧・コピーを認め、08年施行の改正法では、重大事件の被害者や遺族に少年審判の傍聴を認めた。兵庫県では心の教育を見直そうと、98年から中学2年での職場体験学習「トライやる・ウィーク」が始まった。

【特集ページ】成人未満

2022/10/20 12:41神戸新聞NEXT






神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄 家裁、改めて「適切ではなかった」 経緯は「不明」繰り返す




 1997年に起きた神戸連続児童殺傷事件の全事件記録の廃棄について、神戸新聞は最高裁に事実関係を確認し、受け止めも取材した。最高裁の広報担当者への主な質問と、それに対する電話での回答は次の通り。(霍見真一郎)

 -神戸連続児童殺傷事件の記録が廃棄されていたことは、どの程度重く考えているのか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況は不明であり、当時の神戸家裁における廃棄の判断が適切であったかどうかについて、最高裁として見解を述べることは差し控えさせていただきます」

 -最高裁は、この事件の記録を廃棄するかしないかについて、神戸家裁から相談を受けた可能性を示す記録などはないか。

 「最高裁には、当該記録などはありません」

 -最高裁通達には、「世相を反映した事件で史料的価値が高い」「全国的に社会の耳目を集めた事件」「少年事件に関する調査研究の重要な参考資料になる事件」などとある。これらは、特別保存(永久保存)が適切に運用されるよう出した通達において、各裁判所が判断しやすいように挙げた基準と思われるが、間違いないか。もし違うのであれば、具体的にどこが違うのか指摘してほしい。

 「それらは、それぞれ特別保存に付して保存期間満了後も保存する必要があるか-の検討対象とするものの例示として挙げられたものです。事件記録等保存規程の運用通達で例示されている事件の記録に当たれば全て2項特別保存に付するという規律ではなく、あくまで保存裁判所が保存期間の満了後も保存するのが必要であると判断したものについて、2項特別保存に付するという趣旨です」

 -通達の基準は、神戸連続児童殺傷事件に当てはめた場合、最高裁として特別保存対象に該当すると考えるか、考えないか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であるため、最高裁としては見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 -今回の廃棄行為は、規程ないし通達違反の恐れはあるのか、ないのか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であるため、最高裁としては見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 -廃棄の経緯が「不明」であること自体が、最高裁として問題とは考えないのか。

 「個々の記録の廃棄の判断は、記録を保管する各裁判所において行っており、また、廃棄したことを記した記録を保存すべき取り扱いを定めた通達などはありません。したがって、神戸家裁において、本事件記録の廃棄年月日を記載した事件簿や廃棄に関する書類などが残っていないため、特別保存に付されなかった理由や廃棄された当時の状況が不明であることについて、最高裁として問題があったとは考えておりません」

 -廃棄は訟廷管理官が立ち会うことなどが定められており、こういった職員名だけでなく廃棄した可能性がある期間の神戸家裁の所長名も明確に分かる。当時の担当者や管理者に聞き取り調査する考えはないか。

 「特別保存の認定は、司法行政上の裁判所が行うことになりますので、仮に当時の職員に聴取したとしても、あくまで個人の記憶や見解の範囲にとどまるものと考えています」

 -最高裁として、神戸連続児童殺傷事件の記録廃棄は、「当時の運用」において、廃棄が不適切であったと考えるか、考えないか。

 「神戸家裁において、本件事件記録が特別保存に付されなかった理由や、廃棄された当時の状況については不明であり、当時の神戸家裁における廃棄の判断が適切であったかどうかについて、最高裁として見解を述べることは差し控えさせて頂きます」

 「なお、現在各裁判所で定められている特別保存の運用は、以前重要な憲法判断が示された事件などの記録が、全国の裁判所において廃棄されていたことが広く報道されたことも踏まえ、最高裁が情報提供した特別保存に付すべき事件記録などの選定手順などが具体的に定められた運用要領も参考にして令和2年以降に定められたものです」

 「本事件記録が保存されていた当時は、事件記録等保存規程、および少年調査記録規程、並びにそれらの運用通達により、特別保存に付すための仕組みはあったものの、現在のような特別保存に付すべき事件記録等の選定手順などが具体的に定められた運用要領はありませんでした。当時、そのような具体的な運用要領がなかったことは問題であると考えられるため、そのような運用要領がない中で行われた本事件についての記録の保存の運用も適切ではなかったものと思われます」

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2022/10/20 06:00神戸新聞NEXT






最高裁「見解を述べることは差し控えさせて頂きます」 「少年A」事件記録の廃棄に【一問一答】



https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/00report_essential-hozon_haiki-.pdf


https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/01report_summary-hozon_haiki-.pdf



https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/02report-hozon_haiki-.pdf



https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/03report_appendix-hozon_haiki-.pdf