LSDに似た成分入りの製品摂取後 飛び降り死亡 ことし相次ぐ2024年4月5日 12時20分NHK.違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり方について(提言:要旨)違法ドラッグ対策に関する提言.「危険ドラッグ」の根絶に向けた総合的な対策の強化を求める意見書(12月8日)PDF魚拓



法律で規制されていない合成麻薬のLSDに似た成分が入った製品を摂取した人が、マンションから飛び降りて死亡するケースがことしに入って2件、相次いでいたことが捜査関係者への取材でわかりました。
危険ドラッグをめぐっては、法律で規制されると、未規制の類似の成分が作られるいたちごっこの状態が続いていて専門家は「安易な使用は絶対に避けてほしい」と注意を呼びかけています。

捜査関係者によりますと、ことし1月から翌月にかけて、西日本の大学に通う20代の男子学生と、都内に住む20代の女性が、合成麻薬のLSDに似た成分が入った製品を摂取したあと、マンションから飛び降り、死亡していたことが相次いで確認されたということです。

マンションの部屋からは、いずれも「1DーLSD」という法律で規制されていないLSDに似た成分の名前が書かれた製品などが見つかっていて、警視庁や厚生労働省の麻薬取締部は、この製品を摂取したことで錯乱状態に陥り、飛び降りにつながった可能性があるとみているということです。

厚生労働省は2人の死亡が確認されたあと「1DーLSD」の名称で流通している薬物が含まれる製品など6種類について、医薬品医療機器法に基づき全国の店舗やインターネットでの販売を禁止する命令を出しました。

しかし、大麻やLSDなどの違法薬物に類似した危険ドラッグをめぐっては、法律で規制されると、未規制の類似の成分が作られるいたちごっこの状態が続いているということです。

薬物の有害性に詳しい湘南医療大学の舩田正彦教授は「新たに合成された危険ドラッグの中には規制薬物よりも強い作用を示すものがあり、規制されていないからといって安全なわけではない。危険ドラッグを使用することは、自分の体を使ってその有害性を調べるような非常に危険な行為で、安易な使用は絶対に避けてほしい」と注意を呼びかけています。

都内で摂取した影響とみられる事案が相次ぐ

捜査関係者によりますと、都内では去年からことしにかけて「1D-LSD」という法律で規制されていないLSDに似た成分を摂取した影響とみられる事案が相次いで確認されています。

ことし2月には、東京・新宿区で22歳の女性が「1DーLSD」と書かれた製品を摂取したあと、マンションの8階から飛び降りて死亡しました。

一緒にいた男性の説明では、女性は摂取後に急に様子がおかしくなり、「新しい自分になる」とか「飛んじゃう」などと意味のわからないことを話したあと、男性が目を離した隙に飛び降りたということです。

「1D-LSD」はインターネットで購入したものでした。

また、去年8月には町田市で16歳の男子高校生が「1DーLSD」を摂取したあと意味のわからない言動を繰り返し、通行人に暴行を加えたり、路線バスや車を壊したりして逮捕されています。

このほか同じ去年8月には、台東区で「1D-LSD」を摂取した27歳の男性が屋外で全裸でいたところを警察官に保護されました。

男性には首を切った痕が5か所あり、病院で手当てを受けたということです。

危険ドラッグによる死者数と検挙数

「危険ドラッグ」が社会問題になったのは10年前の2014年で、警察庁によりますと危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は1年間で112人に上りました。

東京・池袋では危険ドラッグが原因の暴走事故で歩行者7人が死傷し、取り締まりや規制が強化されました。

その後、危険ドラッグを使ったことが原因で死亡したとみられる人は2015年は11人に減り、2016年は6人、2017年は3人、2018年と19年はそれぞれ1人、そして、2020年から去年までの4年間はひとりも確認されていませんでした。

一方、危険ドラッグを使ったなどとして検挙された人は
▼2015年の1196人をピークに、
▼2021年には145人まで減りましたが、
▼おととし(2022)は279人、
▼去年(2023)は424人と再び増加傾向になっています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240405/k10014413041000.html
LSDに似た成分入りの製品摂取後 飛び降り死亡 ことし相次ぐ

2024年4月5日 12時20分



違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり方について
(提言:要旨)



1. 違法ドラッグの現状

○  薬事法違反(無承認無許可医薬品)である疑いが強いにもかかわらず、「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」などと呼ばれ、公然と販売され、近年、青少年を中心に乱用が拡大。 ○  乱用拡大に伴い、死亡事故を含む健康被害が発生。また、違法ドラッグの使用をきっかけに麻薬等の使用に発展する危険性が増大(ゲートウェイ・ドラッグ)。


2. 違法ドラッグとは

○  麻薬又は向精神薬には指定されておらず、それらと類似の有害性が疑われる物質であって、人に乱用させることを目的として販売等がされるもの。 ○  どのような物質が含まれているか不明な製品が多い。 ○  規制を逃れるため、目的を偽装(芳香剤、研究用試薬等)して販売等がされる。


3. 現行制度における規制と問題点

○  麻薬及び向精神薬取締法では、麻薬等に指定された物質については厳しい取締りを行えるが、指定には当該物質の有害性(依存性、精神毒性等)を立証する必要があるため、指定までに時間を要し、次々に含有成分の異なる製品が出現する違法ドラッグに対する迅速かつ広範な規制は困難。 ○  薬事法では、人体に影響を及ぼすことを目的とするものを医薬品として取り締まることが可能で、違法ドラッグもその対象である。しかし、違法ドラッグの多くは用途が偽装されているため、実効ある取締りに支障。また、個人が外国から直接購入すること(個人輸入)については規制がないことも問題。


4. 違法ドラッグ規制の具体的方策

○  含有成分の有害性につき積極的に調査し、麻薬又は向精神薬と同様の有害性が立証された物質については麻薬等として指定し、厳しい取締りを行うべき。 ○  麻薬等への指定に至らない物質については、薬事法により迅速かつ広範な規制を確実に実施していくため、以下の法的整備を行うべき。

 ・ 違法ドラッグの成分をあらかじめ明示し、規制根拠を明確化  ・ 違法ドラッグであることが疑われる製品に対する危害防止措置  ・ 販売等に対する取締りに加え、個人輸入についても一定の規制を行い、違法ドラッグの入手機会を可能な限り制限


5. その他の違法ドラッグ対策

○  違法ドラッグ乱用防止のための啓発活動 ○  関係機関間の連携強化 ○  インターネット監視の強化







平成17年11月25日

違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり方について

(提言)

脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会 はじめに

   「脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会」は、平成17年2月22日に設置され、これまで6回にわたり、いわゆる脱法ドラッグの現状やその特徴を踏まえながら、その規制方策や乱用防止のための啓発活動のあり方等について議論を重ねてきた。今般、これまでの議論、検討結果をとりまとめたので、ここに報告する。
 なお、従前の「脱法ドラッグ」という呼称は、これらが薬事法違反である疑いが強いにもかかわらず、法の規制が及ばないかのような誤ったメッセージを与えかねないため、本検討会では、これを「違法ドラッグ」と変更すべきとの結論に達した。ただし、これまで脱法ドラッグと呼ばれていたものと異なるとの誤解・混乱を生じないよう、当面は「違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)」と括弧書きを付すこととした。そこで本報告書でも、これまでの脱法ドラッグという呼称を改め、違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)(以下単に「違法ドラッグ」と表記。)の呼称を用いている。



1. 違法ドラッグの現状
 人為的合成か天然物由来かを問わず化学物質には、麻薬等と同様に多幸感、快感などの効果を期待して摂取されるものがある。それらの中には、やがて乱用に伴う保健衛生上、社会上の危害が顕著となり、また、依存性、精神毒性等の有害性が解明され、麻薬に指定されるなど法的な規制がなされるものもある。(例えば、昭和45年(1970年)に麻薬に指定されたLSD、同じく平成元年(1989年)のMDMAなど。)
 違法ドラッグは、平成10年頃から一部の薬物マニアの間で流行し始めたと推定され、現在、以下のような状況にある。

 (1)  違法ドラッグは、薬事法違反(無承認無許可医薬品)である疑いが強いにもかかわらず、麻薬や向精神薬に指定された成分は含有していないため、アダルトグッズショップ、インターネット等の通信販売などで「合法ドラッグ」「脱法ドラッグ」などと称して半ば公然と販売されており、最近では青少年を中心にその乱用が拡大する傾向にある。  (2)  そうした乱用の拡大を背景に、違法ドラッグの過量摂取や数種類の違法ドラッグの併用によるものと疑われる中毒等の健康被害や事故(死亡例を含む。)が発生している。さらに、違法ドラッグの使用をきっかけに麻薬や覚せい剤の使用に発展したと思われる事例も知られており、違法ドラッグを通じて薬物乱用に対する罪悪感や抵抗感が薄れる、あるいは、より強い刺激を求める欲求が生じることで、麻薬や覚せい剤等へのゲートウェイ(入り口)となる危険性が高くなっている。



2. 違法ドラッグとは

 (1) 本検討会で検討した違法ドラッグ
 本検討会においては1.の現状を踏まえ、違法ドラッグの範囲を、実際に依存性等を有するか否かによらず、できる限り幅広くとらえて乱用対策のあり方につき検討を行うため、検討対象を「麻薬又は向精神薬には指定されておらず、麻薬又は向精神薬と類似の有害性を有することが疑われる物質(人為的に合成されたもの、天然物及びそれに由来するものを含む。)であって、専ら人に乱用させることを目的として製造、販売等がされるもの」とした。
 (なお「乱用」とは、本来あるべき用途や目的から外れる使用等を指し、麻薬及び向精神薬取締法(以下「麻向法」という。)第1条にいう「濫用」に相当するものであるが、医学的な定義は必ずしも定まっていないところである。そのため本検討会では、法に抵触するか否かによらず、我が国の社会規範に照らして逸脱と見なされる行為としてより広い概念で捉えている。)

 (2) 違法ドラッグの特徴
 こうした違法ドラッグ対策のあり方を検討するに当たって、まずその特徴的な事項として留意すべき点として、以下が挙げられる。
(限られた情報・科学的知見)
 麻薬の化学構造を部分的に変化させた新たな物質や、これまで我が国ではほとんど知られていなかった幻覚性植物等に由来するものが次々と出現しており、また、含有成分がある程度判明した違法ドラッグであっても、容易に販売名や包装形態等を変えて販売がなされるなど、実際にどのような物質が含まれているか不明なまま流通している製品が多い。
 製品に含まれる成分として物質が特定された場合であっても、ほとんどの場合、依存性や精神毒性等の有害性に関して現時点で得られている科学的知見は非常に限られている。
(目的を偽装した販売等)
 違法ドラッグは専ら乱用に供する目的で流通しているが、規制を逃れるため、芳香剤・防臭剤、ビデオクリーナー、研究用試薬、観賞用等と称した上、幻覚等の作用を「誤用防止の注意書き」等で偽装し、あるいは用途を一切標榜しないまま、輸入、販売等がなされているものがほとんどである。
 このような場合でも、違法ドラッグを購入、乱用する者は、別途インターネット等を通じて、その摂取方法や効果等に関する情報を得ている。



3. 現行制度における規制と問題点
 これまで違法ドラッグへの規制対応は、麻向法と薬事法の2つの法律により行われており、その具体的な規制内容と問題点は以下のとおりである。



(1) 麻向法による対応
 国では、麻薬又は向精神薬と類似の有害性が疑われる化学物質や基原植物につき、依存性、精神毒性等に関する科学的データの収集、調査を積極的に実施し、かかる有害性が裏付けられ次第、速やかに麻薬等に指定している。いったん麻薬等に指定されれば、それを含有する製品に対しては厳しい取締りがなされることになる。
 平成14年6月、サイロシビン又はサイロシンを含有するきのこ類(いわゆる「マジック・マッシュルーム」)が麻薬原料植物に指定された。また、本年4月には、違法ドラッグの成分からAMT及び5-MeO-DIPTの2成分が麻薬に指定された。更に現在、MBDB及び2C-T-7の2成分について麻薬に指定すべく準備が進んでいる。
(問題点)
 しかしながら麻向法では、個々の物質について有害性を立証した上で、当該物質を麻薬等に指定するため、規制範囲は指定対象となった物質を含有する製品に限定される。そのため、化学構造の類似した新たな物質等が次々と出現し、それらを含有する製品が目まぐるしく交代して流通している違法ドラッグを迅速かつ広範に規制することは難しい。また、有害性が疑われる物質が特定されてから、最終的にそれが麻薬等に指定されるまでには、科学的データの収集等のため少なくとも1~2年の時間を要するという問題がある。

(2) 薬事法による対応
 違法ドラッグは、専ら人に乱用させることを目的として販売等がなされている。このため国及び各都道府県では、薬事法で定義する医薬品「人の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」(第2条第1項第3号)に該当し、薬事法に基づく承認や許可を受けずに業として輸入、販売等がなされている医薬品、すなわち無承認無許可医薬品の疑いがあると判断し、監視指導を行っているところである。
(問題点)
 2.(2)で述べたように、違法ドラッグは、人体への摂取を目的としていないかのように偽装される等、薬事法の規制対象となることが立証困難な場合があり、取締りの実効性に支障が生じている。
 また、乱用者自らが違法ドラッグを外国から直接購入し、郵送等で取り寄せる行為(個人輸入)については、現行の薬事法で規制が設けられていない。近年、インターネットの普及に伴い、一般消費者でも安易に個人輸入を行える状況にあり、特に、青少年が興味本位で違法ドラッグを輸入するおそれが大きくなっている。さらに、国内での販売を目的としながら個人輸入と称して違法ドラッグを大量に輸入している事例や、個人輸入の代行を謳いつつ、実際は国内で販売を行う事例があるなど、個人輸入という形態が悪用されている実態もある。



4. 違法ドラッグ規制の視点
 上記3.に示した現行制度における規制とそれらの抱えている問題点を踏まえ、今後、違法ドラッグ対策の強化を進める上で、次の事項を考慮して具体的な方策を検討する必要があるものと考えられる。

(1) 迅速な規制

 ○  麻薬又は向精神薬と同様の有害性を有することが確認されたものについては、速やかに麻薬等として指定し、厳しい規制を行っていくべきである。  ○  化学構造の一部を変化させる等により、新たな物質が次々と出現することから、含有物質の有害性に関する科学的知見が必ずしも十分集積されていない段階であっても規制がなされるべきである。

(2) 広範な規制

 ○  乱用に供する目的で流通している疑いのあるものに対しては、用途の標榜等の如何にかかわらず、危害発生の防止を図る措置がとられるべきである。

(3) 確実な規制

 ○  取締りが効果的に実施されるような仕組みがとられるべきである。  ○  乱用者自らが外国から直接購入すること(個人輸入)を含め、違法ドラッグの入手機会を抑えることが考慮されるべきである。



5. 違法ドラッグ規制の具体的方策の検討
 こうした視点に立ち、本検討会において違法ドラッグ規制の具体的方策につき、各分野の専門的観点から議論を重ねたところ、おおむね以下のような意見に集約された。



(1) 麻向法による規制
 まず、違法ドラッグ対策を講じていく上での基本的な前提として、麻薬等と類似の有害性が疑われる化学物質や基原植物について、引き続き依存性、精神毒性等に関する科学的データの収集、調査に積極的に取り組み、かかる有害性が確認され次第、速やかに麻薬等に指定していくこととする。
 その一方で、麻薬等の指定に至るまでの間は有効な規制ができないこと、また、麻薬等と類似の有害性を見出せない物質については、現行の麻向法の枠組みでは規制できないといった諸問題を解決する必要がある。
 これらを解決する方策として麻向法の下で新たに「一括指定制度」あるいは「暫定指定制度」を導入することが可能であるかどうかについて検討を行ったが、次に示すように、我が国の法体系上困難であると考えられる。

 (1)  一定の化学構造を有する物質群を一括して規制対象とする「一括指定制度」については、指定された化学構造を有する物質でも有害性の程度には大きな違いがあり、中には有害性が全く認められないものも含まれる可能性があるため、それらを一律に厳しく取り締まることは、罪刑法定主義及びそれより派生する諸々の刑法理論に照らして問題がある。  (2)  麻薬等に相当する有害性が疑われる物質について、それが立証されるまでの間、暫定的に規制対象とする「暫定指定制度」についても、一定期間内に有害性が立証されずに指定を解除することになった場合、指定期間中に摘発されて有罪となった者の取扱い等について刑事立法上の問題(処罰の必要性及び根拠の問題、国家賠償の問題等)が生じるおそれがある。

 したがって、上記の問題を解決するためには、麻向法とは別の法体系による、迅速かつ広範な規制を講じる方策を検討する必要がある。

(2) 薬事法による規制
 薬事法は、いわゆる「目的規制」の体系を採用し、有害性の程度や表向きの標榜等の如何によらず、「人の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物」を全般に規制対象としていることから、麻向法に比べて格段に迅速かつ広範な規制が可能である。
 しかしながら、現行の薬事法では、上記3.(2)で述べたように、医薬品への該当性を立証しにくい場合が多いほか、乱用に供する目的が疑われる段階での規制や、個人的に使用するためとして輸入される違法ドラッグへの規制が困難である。
 こうした現行の薬事法における規制の問題点について改善策を講じることによって、違法ドラッグに対する取締りに、より一層の機動性、実効性を持たせることが可能となるものと考えられる。具体的には、以下の事項に関する法的整備を検討すべきである。

 (1)  規制根拠の明確化
 違法ドラッグの有効成分として使用(乱用)実態が認められる物質又は物質群(植物及びその加工品等を含む。)をあらかじめ明示し、それらを正当な理由なく含有する製品(=違法ドラッグ)は、表向き人体摂取を目的としない旨を標榜していたとしても薬事法の規制対象となることを明確にする。  (2)  製品の違法性が疑われる段階での対応
 違法ドラッグの有効成分とみなされる物質を含有する可能性がある不審な製品が輸入や販売をされている等、乱用に供する目的で流通していることが疑われる場合には、保健衛生上の危害を未然に防止するため必要な措置を採ることができるようにする。  (3)  流通(輸入)の規制強化
 違法ドラッグについては、販売等に対する取締りに加え、個人が外国から直接購入すること(個人輸入)に関しても一定の規制を行い、その入手機会を可能な限り制限する。


(3) 違法ドラッグの所持及び使用の規制に関する考察
 3.(1)で述べたように、違法ドラッグ成分の中にはやがて麻薬に指定されるものが含まれており、麻薬に指定された場合には、それらを含有する製品を所持したり、使用することも取締りの対象となる。そこで、違法ドラッグについても所持や使用を規制することができれば、青少年等の乱用の抑止に一層効果的であり、その方向で検討すべきではないかとの議論があった。
 また、違法ドラッグを人に摂取させる目的で販売や授与を行うことや、そのために所持することは、薬事法により無承認無許可医薬品として規制されている。しかし、現時点で麻薬相当の有害性が立証されたといえない違法ドラッグについて、販売等を予定しない個人的な使用のための所持等までも規制することは、有害性の程度に応じた規制の均衡という観点から、基本的に困難ではないかとの指摘がある。また、5.(2)において可能な法的手当を検討すべきとしたような、流通段階における規制・取締りの強化を図ることによって、興味本位や無思慮、あるいは無規範な考えによる違法ドラッグの入手や使用は相当程度抑制される可能性が高いとの意見もあった。
 違法ドラッグの乱用は決して容認されるものではないが、上記のように、単純所持及び使用の規制について、現時点で直ちに法的な措置として実現の途を探ることは難しいのではないかと考えられる。よって、本提言を踏まえた違法ドラッグ対策の帰趨や成果、また、それら対策が講じられた結果としての違法ドラッグの乱用実態等を十分に把握・検証した上で、麻向法における麻薬や向精神薬の規制とのバランス等を含め、今後検討すべき課題でないかと考えられる。



6. 違法ドラッグ乱用防止のための啓発活動
 違法ドラッグの乱用防止を包括的に推進するためには、供給側に対する規制と併せて、違法ドラッグに手を出しやすい層に対して啓発を図っていく必要があり、保健教育、乱用予防等の観点から議論がなされた。



(1) 啓発の重要性
 WHOが発行した2001年世界保健報告(World Health Report 2001)によれば、精神作用物質の使用による精神及び行動の障害(麻薬、アルコール、タバコ等)は、HIV/AIDS、結核等と並んで、国民の健康寿命を損なう原因疾患の上位を占めている。薬物乱用は精神を蝕み、長期にわたる障害や後遺症を引き起こす。薬物乱用防止の啓発は、薬物が人生を破壊することを防ぐための重要な方策である。
 一方、我が国では、青少年において、違法ドラッグを含めた薬物の危険性に関する認識、理解が十分でないことが指摘されており、青少年と日頃接する機会のある委員からも、これを裏付ける発言があった。
 青少年に違法ドラッグの乱用が誘発される背景には、それが法律に抵触しないものであり、また、無害であるかのように誤解し、抵抗感を薄れさせていることが多いと考えられる。青少年の薬物乱用は、後の人生に大きく影響を及ぼすため、興味本位で手を出してしまうのを防止する啓発活動が特に重要である。

(2) 啓発活動のあり方
 小学校から高校にかけての教育現場において、また、地域社会においても、違法ドラッグを含めた薬物の乱用に関する正しい知識や規範意識を根付かせることを第一とし、教育的観点からの啓発を継続的に行う必要があり、そのための体制を整えることが重要である。
 青少年に対する乱用防止の啓発活動においては、“その薬物が違法であって、乱用は犯罪につながり、社会のルールに反するものだからいけない”というアプローチに加え、“薬物乱用は心身に害を及ぼす(特に違法ドラッグは、将来如何なる障害を生じるか全く未知であるという危険性がある。)ので、自分自身の心身を大切にして、いたずらに薬物に手を出すべきでない”というアプローチが有効であり、こうした両面からの啓発が重要である。

(3) 乱用実態の把握の必要性
 そもそも違法な薬物の乱用については、乱用者がその事実を他人に知られたくないと考えるため、乱用実態の把握は一般に困難である。
 更に違法ドラッグの場合、内容成分の表示もなく販売され、その実体が明らかでないことが多く、また、異なる販売名等で次々と製品が登場するため、如何なる物質が乱用されているのか把握することすら困難である。
 しかしながら、薬物の乱用実態(乱用者の性別、年齢、社会階層等、乱用される薬物の種類、量等)のデータは、その薬物の乱用防止策を策定・実施する際の基礎となるものである。特に乱用防止啓発活動においては、ターゲット集団を特定することが極めて重要である。このため、違法ドラッグの乱用実態についても、可能な範囲で早急に調査を行うべきである。
 また、何らかの薬物によると思われる急性中毒で救急治療を受けた症例の報告を集積することによっても、違法ドラッグの乱用実態の一端を知る有益な情報が得られると考えられ、このような症例をモニターするため、病院ネットワークの構築等を検討すべきである。



7. その他の対策
 5.及び6.に示した対策の実効性を高めるため、積極的に取り組むべきその他の対策としては以下が挙げられる。



(1) 関係機関間の連携強化
 麻薬や覚せい剤等の乱用防止については、内閣総理大臣を本部長とする薬物乱用対策推進本部の下、薬物乱用防止新5カ年戦略が策定され、政府一丸となって取り組みが推進されている。
 違法ドラッグが麻薬や覚せい剤等の乱用のゲートウェイ(入り口)となるおそれがあることにかんがみれば、違法ドラッグに関しても乱用防止に向けて連携が欠かせない。取締りや啓発等を行う国の機関間はもとより、国と地方自治体の間においても、関係者が日頃から円滑な情報共有を図る等、緊密に協力して効果的な乱用防止対策を実施していく必要がある。

(2) インターネット監視の強化
 違法ドラッグは、インターネット上で販売広告、宣伝されていることが多い。インターネットはその手軽さや匿名性等の特性から、青少年が違法ドラッグを安易に入手する環境を形成しやすい。また、違法ドラッグの摂取方法や効果等、乱用を助長する情報の流布に、販売業者等が関与しているケースもあると考えられる。
 国及び都道府県等は、インターネット監視の一層の強化を図り、問題のある広告等を発見した場合には、警告メールの送信や改善指導・命令等の措置を迅速に採ることによって、違法ドラッグの入手機会を減少させるよう努めるべきである。

おわりに

   今般、違法ドラッグの乱用が青少年を中心に拡大している現状にかんがみ、早急に対応を検討し、措置すべきとの認識から、違法ドラッグの規制についての具体的方策、啓発活動のあり方等をここに提言としてとりまとめた。
 今後、本提言を踏まえ、政府において、法的措置を含めた違法ドラッグ対策を検討することとなるが、本検討会の成果が十分に活かされることを期待するとともに、引き続き違法ドラッグを含む薬物乱用対策について、国と都道府県等の地方自治体がこれまで以上に連携して取り組んでいくことを切に要望するものである。







(別添1)

脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会メンバー





いたくら      こ
板倉 ゆか子   独立行政法人国民生活センター商品テスト部調査役 いまい たけよし
今井 猛嘉   法政大学大学院法務研究科教授 くらわか まさお
倉若 雅雄   神奈川県衛生部薬務課長 ごうだ ゆきひろ
合田 幸広   国立医薬品食品衛生研究所生薬部長 こぬま きょうへい
小沼 杏坪   医療法人せのがわKONUMA記念広島薬物依存研究所長 さとう みつもと
佐藤 光源   東北福祉大学精神医学講座教授 すずき つとむ
鈴木 勉   星薬科大学薬品毒性学教室教授 ながおか くにこ
長岡 邦子   埼玉県立越谷総合技術高等学校保健体育科教諭 ふじおか じゅんこ
藤岡 淳子   大阪大学大学院人間科学研究科教授 まちの さく
町野 朔   上智大学法学研究科教授 みなみ まさご
南 砂   読売新聞東京本社編集局解説部次長 みわ りょうじゅ
三輪 亮寿   弁護士(三輪亮寿法律事務所長) わだ きよし
和田 清   国立精神・神経センター精神保健研究所薬物依存研究部長

(敬称略 五十音順

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/11/s1125-21.html
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)対策のあり方について
(提言:要旨)





河 上 委 員 長 発 言
-違法ドラッグ対策について-



平成24年月12月4日
消 費 者 委 員 会



消費者委員会は本年4月24日に、「違法ドラッグ対策に関する提言」
として、市場から「違法ドラッグ」を排除するため、①成分構造が類似
していれば薬事法違反として一括して規制の対象にできる「包括指定」
の導入や②麻薬取締官(員)に指定薬物を独自に捜査、摘発できる司法
警察職員としての取締権限などを持たせるなどの体制強化の検討を要請
しました。

厚生労働省では、本年11月28日に、薬事・食品衛生審議会指定薬物部
会において、指定薬物の「包括指定」制度の導入についての答申をとり
まとめました。この答申に基づき改正厚生労働省令が施行されると、新
たに760種の「違法ドラッグ」が指定薬物として規制されることにな
ります。
また、麻薬取締官(員)に指定薬物の取締権限を与えるための「麻薬
及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律案」が議員立法と
して策定中と承知しています。

20121205_121204_hatsugen.pdf


違法ドラッグ対策に関する提言

1.背景

違法ドラッグ(注1)については、平成10年頃から一部の薬物マニアの間で流行し始めたと言われており、違法ドラッグを吸引等した場合、麻薬に似た幻覚症状、興奮、多幸感だけでなく、頻脈、痙攣などの重篤な中毒症状などの健康被害が多発しており、また、青少年を中心に乱用が広がるなど社会問題化している。最近では、都内や大阪市で薬物中毒による緊急搬送が多発したほか、今年2月には名古屋市内、4月には横浜市内で薬物中毒による死者が出るなどの事実もあり、このまま見過ごすべきではない状況にある。
こうした薬物中毒の多くは、麻薬や大麻といった違法な薬物に指定された薬物による中毒ではなく、いわゆるヘッドショップ等で市販されたハーブや芳香剤などに含まれる成分を被害者(消費者)が意図的に吸引等をすることにより、薬物中毒を発生させたものである。
違法ドラッグとは、薬事法第2条第14項に規定する「指定薬物」及びこれに含まれないもののその化学構造式が指定薬物に類似したものであって、事実上、吸引などの人体への摂取目的で販売されている場合には、無承認・無許可医薬品に該当し、薬事法上の取締りの対象となるものである。しかしながら、薬事法以外に違法ドラッグを規制する法律がないため、個人の所持や摂取、また、売買は販売者が人体への摂取を示唆しない限り違法とは言えない状況にある。これらの違法ドラッグは、店舗販売のほか、インターネット等を通じて販売されており、薬事法に抵触しないようにハーブ、芳香剤や観賞用などとして販売されているケースが多い。

(注1)違法ドラッグとは、いわゆる「脱法ドラッグ」と称されるものである。







2.消費者問題としての違法ドラッグ

今回、消費者委員会が違法ドラッグ問題を消費者問題の1つとして取り上げたのは、次の事由による。
まず、違法ドラッグは、強い常習性を持つ麻薬や覚せい剤などへの入門薬物(ゲートウェイドラッグ)と言われており、また、違法ドラッグの中には、製造管理工程が劣悪な場合もあることから麻薬などより強い毒性を含んでいる場合もあり、使用することにより精神錯乱等身体に重大な影響を与え、場合によっては死に至らせるものもある。
こうした薬物乱用のきっかけとなる商品が、市中において、また、インターネット取引等を通じてオープンマーケットで自由に販売され、青少年も簡単に手に入れることができる状況にあり、消費者安全の観点から大いに問題があると考える。
また、販売主は、当然予想される結果に目をつむり、違法性を認識しつつ販売していることが容易に推測される。この行為は、仮に違法ドラッグの使用方法等を消費者へ示唆した場合は、無承認・無許可医薬品の販売に当たり、薬事法の処罰対象となるとともに、あたかも危険な薬物でないかのように偽って販売するといった取引上の問題、重大な副作用等の不利益事実に関する不告知に当たる可能性もある。
また、容易に販売名や包装形態等を変えて販売されるなど実際にどのような物質が含まれているか不明なまま流通したり、用途が偽装されたり、用途を一切標榜しないまま輸入・販売されるなど、違法ドラッグの多くは、実効ある取締りが難しい。
このように、違法ドラッグについては、市場適合商品であるかのような様相を呈しつつ、消費者の健康に対して非常に有害なものが市場に出回っており、消費者問題として違法ドラッグ問題に取り組み、積極的にこれを市場から排除していくことが重要である。





3.違法ドラッグ対策に関する消費者委員会の提言違法ドラッグによって派生する種々の問題を踏まえ、消費者委員会としては、違法ドラッグを消費者問題の一つ(消費者安全、消費者取引)として捉え、厚生労働省をはじめとする薬物乱用対策推進会議(注2)関係府省に対し、以下のとおり提言する。



(1)指定薬物への指定の迅速化
指定薬物に指定されている薬物は平成24年4月現在68物質となっているが、ヨーロッパ等で販売・製造されている違法ドラッグについては、これに該当しないものが日本で新たに輸入・販売される傾向がある。
このため、日本で販売される前にそれら違法ドラッグの成分を調査し、販売前に指定薬物に指定するなどの方法により、指定の迅速化を速やかに図る必要がある。こうした指定をすり抜けて日本で新たに販売された違法ドラッグについては、その事実が確認でき次第、指定薬物に指定することが有効である。
また、厚生労働省にあっては、新たな違法ドラッグに関する情報収集・監視力を高めるとともにより一層の基礎的な研究・分析体制の整備を行い、指定薬物の指定の迅速化を図るよう要請する。

(2)取締りの強化のための方策
指定薬物以外の薬物等については、薬事法では、「人体に影響を及ぼすことを目的とする物質」を医薬品として取り締まることが可能であり、違法ドラッグもその対象である。しかし、違法ドラッグについては、化学構造式を若干変えた新規の違法ドラッグが相次いで出現しており、実際にどのような物質が含まれているか不明なまま流通し、また、用途を一切明示しないままで輸入・販売がされるなど、実効ある取締りが難しい状況にある。
そこで、厚生労働省に対しては、(i)成分構造が類似していれば薬事法違反として一括で規制対象とする「包括指定」の導入や(ii)現状では麻薬や覚せい剤などの捜査権限しかない麻薬取締官(員)に違法ドラッグを独自に捜査、摘発できる司法警察職員としての取締権限などを持たせるなどの体制強化を検討するよう要請する。
さらに、薬物乱用対策推進会議関係府省が連携して、(iii)個人輸入等による入手機会を抑制するための施策の実施(違法ドラッグの仕出地や中継地となっている国と国際協力の新たな枠組みを構築する等、水際対策を徹底する。)、(iv)合法商品としての様相を呈しつつインターネットを利用して販売活動を行う広告の監視・規制強化についても検討し、必要な対応を行うよう検討することを要望する。
当委員会は、重大消費者被害の発生又は拡大の防止を図る観点から、上記の規制強化など、所要の措置が適切に講じられることを求める。

(3)取締当局との連携強化
これまでも、政府全体では、薬物乱用対策推進会議のもと、厚生労働省をはじめ警察など関係行政機関が連携した対応を行っているが、平成24年度より、厚生労働省により情報を関係者が共有できる協議会の設置が予定されており、これを基にして今後の取組がより強化されることを期待する。当委員会は、今後とも、さらに関係府省等の間の連携を進めて、消費者被害の効果的抑止が実現できるよう、より一層の努力を求めるものである。

(4)実態把握と消費者への情報提供・啓発の実施
違法ドラッグに関する全国レベルの乱用実態・健康被害情報については、各都道府県単位でそれらの被害数やその程度等を統一的に把握するのは難しいことから、厚生労働省が関係行政機関と連携の上、それらの情報を一元的に把握し、効果的な対応策を検討する必要がある。実態把握の上、健康被害や危険性に関する消費者への情報提供・啓発の強化を求める。その際、特に青少年への影響を踏まえ、大学等をはじめとした学校における啓発の一層の強化を求める。
また、薬物問題相談窓口や消費生活センターを活用する等して違法ドラッグによる健康被害に関する消費者等からの相談窓口の設置の検討を要望する。

(注2)薬物乱用対策推進会議

議長:内閣府特命担当大臣(薬物乱用対策)、副議長:国家公安委員会委員長、法務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、国土交通大臣、

構成員:総務大臣、外務大臣、経済産業大臣









皆様へのメッセージ(PDF形式:8KB)




河上委員長発言(12月4日 第106回消費者委員会)(PDF形式:63KB)



提言の概要指定薬物への指定の迅速化
取締りの強化のための方策
(i)「包括指定」の導入
(ii)麻薬取締官(員)に違法ドラッグを司法警察職員としての取締権限などを持たせるなどの体制強化の検討。
(iii)個人輸入等による入手機会を抑制するための施策の実施(水際対策の徹底)
(iv)合法商品としての様相を呈しつつ販売活動を行う広告の監視・規制強化についての検討
薬物乱用対策推進会議関係府省が連携した取締当局との連携強化
乱用実態・健康被害情報の一元的な把握と消費者への情報提供・啓発の実施


主な成果提言以降、指定薬物部会を随時開催。違法ドラッグを指定薬物とすることについて審議し、妥当とされたものについて、省令改正により順次指定。
2013年2月20日、「合成カンナビノイド類」の1骨格を有する物質群を指定薬物として包括指定(772物質)する省令を公布し、同年3月22日より施行(指定薬物は92種から851種に拡大)。
2013年5月10日、麻薬及び向精神薬取締法及び薬事法の一部を改正する法律が可決され、麻薬取締官(員)が指定薬物に係る薬事法に違反する罪について、司法警察員として職務を行うこと等が可能に。
2012年8月30 日、薬物乱用対策推進会議において、「合法ハーブ等と称して販売される薬物に関する当面の乱用防止対策」を取りまとめ。
毎年7月の「青少年の非行・被害防止全国強調月間」において、薬物乱用防止啓発ポスター及びチラシ等を青少年の目につきやすい場所へ掲示、配布。

https://www.cao.go.jp/consumer/iinkaikouhyou/2012/0424teigen.html
違法ドラッグ対策に関する提言


2012年4月24日
消費者委員会



更新日:2014年12月8日

 昨今、危険ドラッグの吸引による事件や事故が全国で相次いで発生している。特に、その使用によって幻覚や興奮作用を引き起こしたことが原因とみられる重大な交通事故の事案が度々報道されるなど、深刻な社会問題となっている。危険ドラッグは、規制薬物と似た成分が含まれている等、大麻や覚せい剤と同様に、好奇心等からの安易な購入や使用についての危険性が強く指摘されている。
 厚生労働省は、平成25年3月から「包括指定」と呼ばれる方法を導入し、成分構造が似た物質を一括で指定薬物として規制した。また、平成26年4月には改正薬事法が施行され、指定薬物については覚せい剤や大麻と同様、所持、使用が禁止された。
 一方で、指定薬物の認定には数か月を要し、その間に規制を逃れるために化学構造の一部を変えた新種の薬物が出回ることが依然として繰り返されており、危険ドラッグの鑑定には簡易検査方法がないため、捜査に時間がかかることも課題となっている。
 こうした状況が続けば、危険ドラッグの吸引による事件や事故により、区民の安全・安心な暮らしが著しく脅かされることとなる。大田区では、薬物乱用防止大田地区協議会等が、啓発活動等を通じて取組を推進しているところであるが、全国的にも事件や事故が多く発生しており、危険ドラッグ等不正薬物の蔓延は、決して看過することはできない。
 よって、大田区議会は政府に対し、危険ドラッグの根絶に向けた総合的な対策を強化するよう下記の事項を強く要望する。

                                       記

1 インターネットを含む国内外の販売・流通等に関する実態調査及び健康被害との因果関係に関する調査研究の推進、人員確保を含めた態勢及び撲滅に向けた取締体制の更なる強化を図ること。

2 簡易鑑定ができる技術の開発をはじめ、鑑定時間の短縮に向けた研究の促進、指定薬物の認定手続きの簡素化を図ること。

3 薬物乱用防止のために、危険ドラッグの危険性の周知、学校等での薬物教育の強化を図ること。

4 危険ドラッグ再使用防止のため、相談体制の整備を図ること。

 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

                                                               平成26年12月8日

 内閣総理大臣
 総務大臣
 文部科学大臣
 厚生労働大臣
 国家公安委員会委員長 宛
                                                               大田区議会議長

https://www.city.ota.tokyo.jp/gikai/kugikai_katsudou/ketsugi/h_26/kikendrugtaisaku.html
「危険ドラッグ」の根絶に向けた総合的な対策の強化を求める意見書(12月8日)




「危険ドラッグ」の根絶に向けた総合的な対策の強化を求める意見書




昨今、「合法ハーブ」等と称して販売される薬物、いわゆる「危険ドラッグ」(脱
法ハーブ、脱法ドラッグ)を吸引し、呼吸困難を起こしたり、死亡したりする事件が
全国で相次いで発生している。特に、その使用によって幻覚や興奮作用を引き起こし
たことが原因とみられる重大な交通事故の事案がたびたび報道され、本市においても
平成 26 年8月及び9月に発生しており、深刻な社会問題となっている。
危険ドラッグは「合法」と称していても、規制薬物と似た成分が含まれているな
ど、大麻や覚醒剤と同様に、人体への使用により危険が発生するおそれがあり、好奇
心などから安易に購入したり、使用したりすることへの危険性が強く指摘されている。
厚生労働省は、省令を改正して平成 25 年3月から「包括指定」と呼ばれる方法を導入
し、成分構造が似た物質を一括で指定薬物として規制した。また、平成 26 年4月には
改正薬事法が施行され、指定薬物については覚醒剤や大麻と同様、単純所持が禁止され
た。しかし、指定薬物の認定には数カ月を要し、その間に規制を逃れるために化学構造
の一部を変えた新種の薬物が出回ることにより、取り締まる側と製造・販売する側でイ
タチごっことなっている。また、危険ドラッグの鑑定には簡易検査方法がないため、捜
査に時間がかかることも課題とされている。
そこで、国においては、下記の事項について取り組み、危険ドラッグの根絶に向けた
総合的な対策を強化することを強く求める。



1 インターネットを含む国内外の販売・流通等に関する実態調査及び健康被害と
の因果関係に関する調査研究の推進、人員確保を含めた取り締まり態勢の充実を
図ること。
2 簡易鑑定ができる技術の開発を初め、鑑定時間の短縮に向けた研究の推進、指
定薬物の認定手続の簡素化を図ること。
3 薬物乱用や再使用防止のために、「危険ドラッグ」の危険性の周知及び学校等
での薬物教育の強化、相談体制・治療体制の整備を図ること。


以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。


平成26年10月15日

hatsu8-2609.pdf