英ジョンソン首相、「トランス女性は女子競技に出るべきではない」と発言2022年4月7日.イギリス政府の転向療法禁止法案、トランスジェンダーの人を対象に含めず2022年4月3日.イギリス議会が開会、新型ウイルス対策で女王演説は簡素に2021年5月12日等BBC記事PDF魚拓



イギリスのボリス・ジョンソン首相は6日、トランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)の女性は女子スポーツ競技に出場するべきではないと発言した。一方で、この考えが「物議をかもす」だろうと認めている。

トランスジェンダーのスポーツ選手についてはかねて、インクルージョン(包摂性)やスポーツの公平性、安全性などの観点から議論の的になっている。

イギリスではこのところ、自転車競技のエミリー・ブリッジズ選手(21)が国際自転車競技連合(UCI)から女子部門での出場を認められなかったことを受け、この議論に注目が集まっている。

ジョンソン首相はこの日の取材で、先に発表した「転向療法」禁止法案などについて発言。その後、「生物学的男性が女子スポーツに出場するべきではないと思う。これは物議をかもす発言かもしれないが、理に適っているように私は思う」と述べた。

「また、病院や刑務所、着替える場所などでも、女性専用の場所が必要だと思う。この件について、私の考えが及ぶようになったのは、今のところここまでだ」

「この考えが他の人とのあつれきを生むなら、それを解決する必要がある。ジェンダーを変えたい、性別を移行したいという人に私がものすごく同情していないということではない。そういう決定をするにあたっては、最大の愛情と支援が必要だ」

「複雑な問題なので、すぐに決まる簡単な法律1本で解決できるようなことではない。きちんと上手にやるには熟考が必要だ」

イギリス政府は先に、イングランドとウェールズで性的指向を変える「転向療法」を禁止する法案を発表。ただし、ジェンダー・アイデンティティーは禁止対象に含まれておらず、トランスジェンダーを除外していると批判が上がっている。

「複雑かつ急速に展開している問題」

LGBTQ+(性的マイノリティー)の慈善団体ストーンウォールはジョンソン氏の発言について、「トランスジェンダーの人々は、他の人々と同様にスポーツの利益を享受する機会を持つべきだ。トランスジェンダーの人々を一括で除外するのは根本的に不公平だ」と述べた。

「これは複雑かつ急速に展開している問題で、学術的にも発達していない領域だ」

「インクルージョンの方針は競技ごとに考慮されるべきものだし、怒りをあおるような言葉を避けることも重要だ。そうした言葉によって、トランスジェンダーの人は、愛するスポーツをできなくなることが多い」

ストーンウォールはまた、こうした議論ではプロスポーツが「論争の中心になる」ことが多いが、トランスジェンダーの人々は地域社会のスポーツでも「少数派」で、「疎外感を感じている」と指摘した。

その上で、「スポーツには大勢を団結させる独特の力がある。トランスジェンダーの人々が除外されたり虐待されたりすることなく、そうしたスポーツの利益を享受する機会を持つことが重要だ」と述べた。

トランスジェンダーとスポーツ、現在のルールは?

国際オリンピック委員会(IOC)が昨年11月に改訂した最新のガイダンスは、トランスジェンダーの選手が自動的に女性競技で不公平な優位性を持つと推測するべきではないとしている。

また、陸上競技や重量挙げ、体操、水泳といったオリンピック競技については、それぞれがトランスジェンダー選手についてのルールを定めるよう推奨している。

陸上競技の国際団体「ワールドアスレティックス」は、テストステロンの血中濃度を1リットル当たり5ナノモールに、国際自転車競技連合(UCI)は5ナノモール以下と設定している。

「ワールドラグビー」は、プロ競技へのトランスジェンダー女性の参加を禁止ししている。イングランドのラグビー・フットボール連盟は、一定のテストステロン値であることを条件に、トランス女性の出場を認めている。

IOCのガイダンスについては今年1月、38人の医療専門家が批判の書簡を発表。トランス女性選手のテストステロン値抑制をめぐる方針に疑問を投げかけた。

IOCは、トランス女性選手が不公平な優位性を持つかどうかをテストステロン値だけで判断するのは、すでに十分ではないと述べている。

しかし一部の医療専門家は、このガイダンスは人権の観点から作られており、医学的・科学的問題が考慮されていないと指摘した。

イギリスではアマチュアスポーツにも波及

イギリスでは2021年、イングランド、スコットランド、北アイルランド、ウェールズ、そしてイギリス全体のスポーツ業界団体が、18カ月にわたって協議や既存研究の検討などを重ね、アマチュアスポーツにおけるトランスジェンダーの人々のインクルージョンについてガイダンスを発表した。

このガイダンスでは、「多くのスポーツにおいて、トランスジェンダーの人々のインクルージョンと公平性・安全性は、ひとつの競技モデル内では共存できない」と説明。

「ジェンダーの影響が大きい協議では、テストステロン値の抑制だけでは、トランス女性と生まれつきの女性の間の公平性は保障できない可能性が高い」と結論付けた。

また、「平均的な女性と平均的なトランス女性、生まれつきの性別が男性のノンバイナリーの人では、体力やスタミナ、体格の違いが残ってしまう」と指摘した。

その上で競技団体に対し、「誰もが疎外されないような、革新的・創造的な方法を考え出す」よう要請。各スポーツがインクルージョンか「競技上の公平性」を選び、それを規約に明記するべきだと訴えた。

ガイダンスでは、もし安全性や公平性が損なわれる可能性がある場合には、男子や女子とは別に、「オープン」や「ユニヴァーサル」といった種目を設けるべきだと示唆している。

https://www.bbc.com/japanese/61019271
英ジョンソン首相、「トランス女性は女子競技に出るべきではない」と発言

2022年4月7日



イギリス政府は3月31日、イングランドとウェールズで同性愛者やバイセクシュアル(両性愛者)の人々に対する「転向療法」を禁止する法案を発表した。ただし、トランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)は含めないとしている。

政府は当初、転向療法の禁止そのものを全面的に中止すると発表したが、数時間後に方針を転換した。非合法の転向療法を規制する方法を模索するとしているが、この発表に、性的マイノリティ―(LGBT)の権利団体や議員らからは批判の声が上がった。

国民保健サービス(NHS)イングランドによると、転向療法とは性的指向やジェンダー・アイデンティティーを変更しようとするもの。

しかしNHSイングランドや心理学団体などは、あらゆる転向療法は「非倫理的であり、有害な可能性がある」と警告している。

政府関係者によると、今回の転向療法禁止は、次の議会開会式の女王演説に盛り込まれる予定だという。

<関連記事>ハリポタ作者、プーチン大統領に擁護され反発 「キャンセル・カルチャー」めぐり
英俳優レッドメインさん、トランスジェンダー役を演じたのは間違いだったと
米国初のトランスジェンダー大将が就任 公衆衛生局士官部隊


新法案では、人の性的指向を変えようとする行為は違法となるが、ジェンダー・アイデンティティーについてはこの限りではない。

転向療法の禁止項目にジェンダー・アイデンティティーを含めないこの法案に、慈善団体や議員からは批判の声が上がっている。

権利団体「レインボー・プロジェクト」は、トランスジェンダーの人を対象に含めない法案は「本当の禁止法案ではない」と指摘。最大野党・労働党のナディア・ウィットム下院議員は、「この法案は不十分だ」とした上で、「LGB(同性愛と両性愛)とT(トランスジェンダー)は一体なのに、保守党は我々の味方ではない」と述べた。

転向療法の被害者で、「 #BanConversionTherapy (転向療法を禁止せよ)」連合の会長を務めるジェイン・オザンさんはBBCのラジオ番組で、ボリス・ジョンソン首相がLGBTの人々を見捨てたと批判した。その上で、トランスジェンダーの人への転向療法が禁止対象に含まれないのは「全く馬鹿げている」と述べた。

転向療法の禁止をめぐっては、トランスジェンダーに批判的な団体などが、トランスジェンダーの人を含めないよう求める活動していた。

ウェールズ政府は「受け入れられない」と反発

ウェールズ自治政府はイギリス政府の方針を「受け入れられない」と反発。トランスジェンダーの人々への転向療法を禁止できないか、法律家の助言を受けることにしたと発表した。

自治政府のソーシャルパートナーシップ担当次官で、自分は同性愛者だと公表しているハナ・ブライジン氏は、イギリス政府の「部分的Uターン」は「信頼を裏切る、残念で恥知らずの行為だ」と述べた。

ブライジン氏は、イギリス政府は当初、「性的指向かトランスジェンダーかは関係なく、すべての人が守られる」法案になると話していたと指摘。

だが、「3月31日のトランスジェンダー可視化の日に、ジョンソン首相は私たちのコミュニティーの一部を守らないという選択をした」と批判した。

権利団体「トランス・メシア・ウオッチ」のジェイン・フェイ氏はBBCの取材に対し、「がっかりした。驚きはしなかったが、コミュニティーのことが本当に不安だ」と語った。

フェイさんによると、トランスジェンダーの人々の間では、転向療法が広く使われているという。しかし、「これは療法でも、対話でもなく、虐待であり、拷問の一種だ」と、フェイさんは指摘した。

信教の自由をめぐる議論も

政府報道官は当初、転向療法の禁止そのものが廃案となり、既存の法律やその他の施策で禁止の道を模索していくことになると述べていた。

これには慈善団体のほか、保守党の性的少数者団体も「ショックで失望した」と述べ、首相に書簡で抗議するとしていた。

一方、キリスト教徒協会のサイモン・カルヴァート副会長は、転向療法の禁止は欧州人権条約や信教の自由を侵害するものだと主張し、全面廃案を歓迎していた。しかし政府が廃案方針を転換すると、「性的指向について福音派が何を信じるかを嫌い、福音派を罰しようとする勢力に、政府は屈服してしまった」として、「失望」を表明した。

3500の教会を代表するという福音派同盟などのグループも、転向療法の禁止は信教の自由を侵害すると指摘した。

しかし、多くの宗教指導者はこの禁止を支持している。

イギリス政府の対応は

トランスジェンダーの人の生活に関わる政策は、民間でも政治の場でも常に激しい議論の的になっている。そのため、イギリス政府の方針転換で事態が収拾する可能性は低い。

2017年にイギリス政府が行ったLGBT調査では、トランスジェンダーの人が転向療法を勧められる頻度は、同性愛や両性愛の人々の2倍に上ることが明らかになった。

10万8000人以上が参加したこの調査の結果、当時のテリーザ・メイ政権は2018年、転向療法を禁止する方針を示した。

この方針はジョンソン政権にも引き継がれた。2020年7月に同首相は、転向療法は「全く忌まわしいものだ」、「イギリスに存在して良いものではない」と発言している。

2021年5月のイギリス議会の開会式では、転向療法禁止の措置を「推進する」という文言が女王の演説にあらためて盛り込まれた。

女性・平等相を兼任するリズ・トラス外相はこの演説の後、「世界でLGBTの権利を主導する立場として、イギリス政府は常に、転向療法の根絶に努めてきた」と話した。

しかし一方で、「市民や重要な関係者の意見」を聴取した上でなければ、禁止には至らないと述べていた。

(英語記事 Conversion therapy ban will not cover trans people

https://www.bbc.com/japanese/60964297

イギリス政府の転向療法禁止法案、トランスジェンダーの人を対象に含めず

2022年4月3日



エリザベス女王の演説、新型ウイルス対策でどう変わった? 英議会

イギリスで11日、議会の新しい会期が始まり、エリザベス女王(95)が政府の施政方針演説を読み上げた。4月に夫のフィリップ殿下が亡くなってから初めての、主要公務となった。

ジョンソン政権が原稿をまとめた約10分間の演説では、政府が成立を目指す法案30件を説明したほか、政府は「パンデミックからの全国的な復興を通じて、イギリスをより強く、より健康的で、さらに豊かな国にする」と強調した。

女王が議会を開く際の「女王の演説」は、女王がウェストミンスター宮殿に6頭立ての馬車で到着するなど、さまざまな典礼がつきものだが、今回は新型コロナウイルス対策の一環で、その多くが簡素化された。



画像提供, PA Media

画像説明, 議事堂では女王の到着に先立ち、親衛隊が爆発物が仕掛けられていないかを捜索する



エリザベス女王は今回、馬車ではなく車で議事堂に向かった。隊列などはなく、単独での到着だった。

服装も、通常は王冠や礼服を身にするが、今回は日中用の平服に帽子といういでたちだった。

議事堂内では、ウェールズ公チャールズ皇太子と妻のコーンウォール公爵夫人が女王に付き添った。議会での演説には、2017年に公務を退くまで故フィリップ殿下が同席していた。



画像提供, Getty Images

画像説明, 議会開会のため、大英帝国王冠がバッキンガム宮殿から議事堂へ運ばれた

<関連記事>【評伝】 エディンバラ公爵フィリップ殿下 揺れる幼少期から英女王の伴侶へ
【追悼】 写真で振り返る 英王室のフィリップ殿下、99歳で死去
故エディンバラ公爵フィリップ殿下、英ウィンザー城の礼拝堂で葬儀




画像提供, PA Media

画像説明, 王冠に続いて入場するエリザベス女王とチャールズ皇太子、コーンウォール公爵夫人。ロイヤル・ギャラリーで議員が出迎えた



画像提供, PA Media

画像説明, 王冠に続き、皇太子に手を取られて議場に入る女王



画像提供, Getty Images

画像説明, 上院の玉座に座った女王。これまで王の玉座の向かって右隣でフィリップ殿下が座っていた王配玉座は、その死去を受けて取り除かれている



女王が上院の玉座に着いた後、下院議員が上院に呼ばれ入場した。ボリス・ジョンソン首相や最大野党・労働党党首サー・キア・スターマーが社会的距離を保ちながら入場した。

女王の演説には、通常は上下両院の議員のほか、外交官や招待客など600人近くが集まる。

しかし今回は感染対策のため、外交官や招待客は呼ばれず、出席者は全体で108人に限られた。ロイヤル・ギャラリーには、上下両院からそれぞれ議員17人が集まった。



画像提供, PA Media

画像説明, 議会招集を受け、上院へ向かうボリス・ジョンソン英首相(左)。その後ろには感染対策で距離をあけ、労働党のサー・キア・スターマーが続く



演説ではまず、インフラ整備による格差是正が発表され、第5世代移動通信(5G)の普及やデジタル製品の安全基準の新設をめぐる法案が提出された。

またイギリスの欧州連合(EU)離脱を受け、これまでEUが担っていた法人への補助金制度や、民間からの政府調達について代替法案が発表された。

さらに、革新的な科学研究を行う「先進研究・発明庁」創設の提案もあった。

一方で、議論を呼んでいる「警察、犯罪、量刑と裁判所法案」も演説に盛り込まれた。これは抗議デモを警察が規制する権限を拡大する内容が含まれており、4月には南西部ブリストルで、これに反対するデモ参加者と警察が衝突する騒ぎがあった。



画像提供, Getty Images

画像説明, 玉座に向かって右側にはチャールズ皇太子とコーンウォール公爵夫人が座り、左側には王冠が配置された



通信関係では、インターネット上の有害・違法コンテンツの取り締まりや、ネットワーク・セキュリティーの強化を大手企業に求める法案が出ている。

人権関係では、性暴力や家庭内暴力の被害者支援の基準を定めるなど、犯罪被害者の権利を保障する「被害者法案」が発表された。

このほか、人種や民族による格差を是正する法案、イングランドとウェールズで同性愛の「転向療法」を禁じる法案なども盛り込まれた。

一方、介護制度改革に関する法案がなかったことを、野党や介護団体は批判している。



画像提供, Getty Images

画像説明, 政府の施政方針演説を読み上げるエリザベス女王



エリザベス女王は演説を、「全能なる神の祝福が皆さんの議論にありますように」という言葉で締めくくった。

演説で明らかにされた政策はその後、5日間にわたって議会で審議される。



動画説明, 運ばれる王冠や職杖、黒杖官の役割……イギリス議会の伝統的な開会式(2019年10月)



写真は全て著作権者に属します

(英語記事 In pictures: Queen's Speech 2021 / What was in the Queen's Speech?

https://www.bbc.com/japanese/57082480
イギリス議会が開会、新型ウイルス対策で女王演説は簡素に

2021年5月12日



今から60数年前、最初のパラリンピックが開催された。障害のある人たちを対象に、多様な存在を受け入れる「インクルーシヴ」なスポーツ大会を開くのが目的だった。

そのパラリンピックが現在、東京で開催中だ。性的少数者のLGBTQだと公言している選手が、過去最多となる28人以上出場しており、インクルーシヴの度合いはさらに進む見通しだ。

スポーツニュースサイトのアウトスポーツによると、28人という人数は、2016年リオデジャネイロ・パラリンピックと比べると2倍以上だ。

「東京オリンピックやパラリンピックの状況は、自分のセクシュアリティーを理解しようとしていた、クィアの若者だった私が初参加した2004年アテネ大会とは大違いだ」。シンガポール代表のパラリンピック水泳選手テリーサ・ゴーさん(34)は、BBCにそう話した。

生まれつき脊椎披裂のゴーさんは、2016年リオ大会で銅メダルを獲得した後、クィアだと公表した。

公表にあたっては、両親の支援が大きな役割を果たしたと、ゴーさんは言う。彼女が14歳のとき母親から、ジェンダーに関係なく、ゴーさんが愛する人を見つけることだけを願っていると言われたという。

「最初はどう反応したらいいかわからなかった。こうした状況に関する説明書は存在しないからだ」とゴーさんは話した。

「私の両親にすれば、初めての子どもが障害と共に生まれ、その後にクィアだとわかった。それが両親にとって大したことではなかったなんて、想像がつかない」

しかし、もっと予想できなかったのが社会の反応だった。

公表後、練習に戻るのが怖かった。プールで他の子の親たちから、いやな目つきで見られるのではないかと心配した。しかしゴーさんは、応援しか受けなかったと話す。

「ここまで長かった。だけどこれからも長い」と、ゴーさんは話した。

<関連記事>【東京パラ】 感染拡大の中で力強い開幕 同じ都市で史上初2度目の夏季大会
【東京五輪】 「僕はゲイで五輪金メダリスト」 ベイビーの夢実現……トム・デイリー選手の物語
【東京五輪】 トランスジェンダー女性選手、重量挙げで2日に歴史的出場へ




画像提供, Getty Images

画像説明, アメリカのダネル・レヴィア選手は、リオデジャネイロ五輪で銀メダルと銅メダルを獲得した

高いハードル

今月上旬に閉幕した東京オリンピックは、性的少数者をめぐる運動にとって重要なものとなった。メダル獲得者を含む選手100人以上が、自らのセクシュアリティーについて公に発言した。

「公表はとても難しい。多くの選手が支援を表明してはいるが、スポーツ界の文化はまだ圧倒的に『男性的』だからだ」と、アメリカのオリンピック体操選手ダネル・レヴィアさん(29)は言う。

彼は昨年、ツイッターで自らのセクシュアリティーを公表。ローリー・ヘルナンデス選手やシモーン・バイルス選手など、多くのオリンピック金メダリストたちから応援されたという。

「もっと多くの変化を生むため、もっと多くの支援をトップ選手たちは表明できる」とレヴィアさんはBBCに話した。

だが、先は長い。米アメリカンフットボールリーグ(NFL)の100年の歴史で、現役時代にクィアだと公表した選手は1人しかいない。

その1人というのは、カール・ナシブ選手だ。性的少数者の関連行事が各地で開かれた、プライド月間の今年6月、公表した。

ナシブ選手はインスタグラムに、これまで15年間、公表しようと思ってきたと投稿。家族や友人、チームメート、コーチらに対し、公言しても大丈夫だと感じさせてくれたことへの感謝を表明した。

「選手たちは、公表したらチームメートやコーチが支えてくれると思える必要がある」と、権利擁護団体アスリート・アライのジョアナ・ホフマンさんはBBCに話した。

「男性スポーツ界は、公表した選手や支持者の数で、女性スポーツ界にこれまでずっと差をつけられている」

ただ、選手が声を上げるたび、そうした状況は変わっていくと、ホフマンさんは付け加えた。



画像提供, Getty Images

画像説明, イギリスのトム・デイリー選手は、他の同性愛の選手たちを勇気づけられることを誇りに思うと話している

未来に向けて

シンガポールのパラリンピック選手のゴーさんは、公表によって一種の自由を得て、不安を覚えずに本当の自分として競技に臨めるようになったと話す。

「私たちは注目を浴びる存在だけに、公表すれば影響力が少し大きいのではないか」

米オリンピック選手のレヴィアさんは、他の人々を支援したいという思いが、自らの背中を押したと話した。

「人に右利きか左利きかと聞くのと同じくらい、ふつうのことにするのに協力したいと思った」

もちろん、オリンピックとパラリンピックに参加するすべての国が、同性愛の権利に対する取り組みにおいて同程度の前進をしているわけではない。

同性愛がまだ違法とされている国と地域が69存在する。そのうち2つは東京大会に選手を送っていない。

それでも、世界で最も有名なスポーツ大会は、徐々にではあるが変化が生じている。

LGBTQだと公言した選手は、東京オリンピックの180人に東京パラリンピックの選手が加わり、さらに増える。その数は、リオ大会の3倍に上る。

そうした選手の中には、イギリスの飛び込みのトム・デイリー選手や、アメリカの陸上砲丸投げのレイヴン・ソーンダース選手、ニュージーランドのウェイトリフティングのローレル・ハバード選手のように、それぞれの競技で新たな波を起こしてきた人たちがいる。

ゴーさんは、こうしたリストに名前が挙がる人たちは今後も増え続けていくと楽観的だ。

「より多くのクィアが公表するための時間は常にある」

(英語記事 The summer of pride at Tokyo 2020

https://www.bbc.com/japanese/58327528
【東京パラ】 史上最多のLGBTQ選手が出場 東京五輪でも

2021年8月25日

デレク・チャイ、BBCニュース、東京




東京オリンピックで1日、アメリカの陸上砲丸投げのレイヴン・ソーンダース(25)が銀メダルを獲得し、表彰台で今大会初のデモ行動を見せた。

ソーンダースは写真撮影の際、両腕を上げて頭上で交差させた。「抑圧されているすべての人が出会う交差点」の象徴だという。

黒人で同性愛者。うつ症状の苦労についても率直に語ってきたソーンダースは、「自分らしくいて、謝らない」ようにしたいのだと話した。

競技後には、「世界中で闘っていて、声を上げる舞台がない人々」に光を当てようと思ったと述べた。

最後の投てきを終えた時には、腰を振って喜びを表現。「私はたくさんのコミュニティーの一員だ」と語った。

金メダルは鞏立姣(中国)、銅メダルはヴァレリー・アダムズ(ニュージーランド)が勝ち取った。アダムズは4大会連続でメダルを獲得した。

<関連記事>英陸上選手、「抗議することは基本的人権」 五輪での抗議全面解禁求める
【東京五輪・パラ】 選手らの抗議行動、IOCが規制を緩和
世界陸連会長、五輪での人種差別抗議を支持 東京で表明


国際オリンピック委員会(IOC)は東京オリンピック開幕を前に、抗議行動の禁止ルールを緩和した。選手が記者会見で「個人の意見を表明」するのを認めたが、表彰台での政治的なデモ行動は引き続き禁止している。

IOCの広報は、今回のジェスチャーについて「調べている」とした。IOCは罰則を明確にしていないため、ソーンダースがどのような処分を受ける可能性があるのかは不明だ。



画像提供, Reuters

画像説明, ソーンダースは黒人の心の健康について積極的に主張してきた

「私の世代は気にしないと、心から思う」とソーンダースは話した。

「結局は、誰も気にしない。黒人の仲間みんなにエールを送る。LGBTQコミュニティーの仲間みんなにエールを送る。心の健康に対処している仲間みんなにエールを送る。結局のところ、私たちより大きく、権力者たちより大きいものだと、みんな理解している。たくさんの人たちが私たちを見上げて、私たちが何か言うのか、みんなの代弁をするのかと、気にしていることを分かっている」

選手の心の健康は、今年の五輪で大きい関心を集めている。アメリカ体操界のスーパースター、シモーン・バイルスが、健康を優先していくつかの種目を棄権したことがきっかけとなっている。

ソーンダースは2016年リオデジャネイロ五輪で、オリンピックに初出場した。2018年に心の健康が悪化し、自殺を考えたことを明らかにしている。

自らのアイデンティティは砲丸投げに吸い取られ、そのことから生じるプレッシャーから逃れられないと感じていたという。かつてのセラピストに支援を願い出たことで、大成功を収めてきた砲丸投げとバランスの取れた関係を築くことができたという。

「強くなっても大丈夫」、「常に強くならなくても大丈夫。誰かを必要としても大丈夫だ」。

ソーンダースは表彰台でポーズを取る前から、緑と紫の髪の毛で注目を集めていた。さらに、マーベル・コミックスのキャラクターのハルクや、バットマンのジョーカーをもとにデザインされたマスクでも人目を引いた。



画像提供, EPA

画像説明, ソーンダースは自らをコミックキャラクターの「ハルク」になぞらえている

ソーンダースは、テニスのヴィーナス、セリーナ・ウィリアムズ姉妹という、「髪の毛にビーズを編み込んで、悪びれない若い黒人の女の子」を見て育ったと話す。

彼女は今、自分の成功と、そして自分が誠実でいることによって、他の人を応援したいと願っている。

(英語記事 What's behind Olympian Raven Saunders' X protest

https://www.bbc.com/japanese/58053366
【東京五輪】 表彰台で初のデモ行動 砲丸投げ米女子選手が腕を交差

2021年8月2日



アメリカでは、2019年春にホルモン補充療法を開始するまでの3シーズン、男子選手として活動していたペンシルヴェニア大学のトランスジェンダー選手、リア・トーマスさんが女子の競技に出場したことをきっかけに、議論が巻き起こっていた。

トーマスさんは昨年12月にオハイオ州で開催された大会で、2位のチームメイトに38秒の差をつけて優勝。全米大学体育協会(NCAA)主催の選手権大会への出場権を獲得した。

チームメイトたちは1日、トーマスさんを支持する声明を発表した。

「ペンシルヴェニア大学女子水泳・飛び込みチームのメンバーとして、またリア・トーマスのチームメイトとして、私たちはリアのトランジション(ホルモン治療や性別適合手術などで身体の性を自認する性に適合させること)への支持を表明する」

「私たちは彼女を人として、チームメイトとして、友人として大切に思っている」と、チームメイトは米メディア宛ての声明で述べた。そして、チームの一部メンバーが匿名で報道機関に送った声明は、「多様な背景を持つ39人の女性で構成されるペンシルヴェニア大学チーム全体の感情や価値観、意見を代表するものではない」と反発した。

本人や学生の親は

トーマスさんはこの議論について公の場で言及するのを拒否しており、水泳専門サイトSwimSwamのポッドキャストで1度だけインタビューに応じた。

「これについて読んだり、関わったりするのは健全ではないので、そうしないようにしている。これについて言えるのはそれだけです」

チームに所属する学生の家族は先月、NCAAに書簡を送り、トランスジェンダーの競泳選手のためにルールを変更するよう求めた。

ある保護者は匿名で、「今年はもうチャンスがない。選手たちは一生懸命練習しているが、リアに勝てないと分かっている」と米紙ワシントン・ポストに語った。

(英語記事 US unveils new policy for transgender swimmers

米水泳連盟、トランスジェンダー選手の出場めぐり新方針 「不当な優位性」など判断

2022年2月4日



「世界を変えようと思っているわけじゃない」。ローレル・ハバードは2017年、女性ウエイトリフティング選手として初の競技会に臨み、そう話した。

「いつもの自分になって、やっていることをやりたいだけ」。世界選手権で銀メダル2個を獲得して地元ニュージーランドに帰った彼女は、記者に言った。

その2年後、サモアであった大会パシフィック・ゲームズの87キロ超級で優勝すると、不公平だとする非難が湧き起こった。生まれて30年間、男性として生き、2012年に性別を変え、33歳でトランスジェンダー女性だと公表。その後、競技生活を再開させたためだった。

2017年に米アナハイムであった世界選手権で優勝してから、ハバードはめったにメディアの取材に応じていない。トランスの権利をめぐる二極化しやすい議論から距離を置くことを選んでいる。

2017年のインタビューでは、彼女が女性として競技をすることを人々が理解し、受け入れることを望んでいると語った。

「みんな自分が知っているのと違う新しいことに触れたとき、自分が信じてきたことを信じる」

「みんなが考えることや感じること、信じることを変えようとしているわけではない。ただ、本能的な感覚だけを頼りにせず、視野を広げてもらいたいだけだ」

ハバードは2日、生まれた時とは違う性別のカテゴリーでオリンピックメダルを争う、トランスジェンダーだと公表した最初のアスリートとなる。

<関連記事>トランスジェンダー選手が東京五輪代表に、五輪出場は史上初 「不公平」と物議も
東京五輪、トランスジェンダーの女性選手はどうなる?
【東京五輪】 BBCが選ぶ、「世界の注目10選手」


どんな人なのか

ハバードはジュニア時代、ニュージーランドの男子記録を保持し、国内の男子大会で計300キロを挙げていた。2001年になり、23歳で競技をやめた。

その後、「耐え切れなくなった。(中略)私のような人のためには作られていないであろう世界に自分を合わせようと、プレッシャーがあった」と語った。

現在43歳の彼女は、オリンピック史上で3番目に高齢のウエイトリフティング選手になる。ニュージーランド・オリンピック委員会のアシュリー・アボットはハバードのことを、「あらゆる人を受け入れることへの対話を始める」うえでの「とても重要な模範的人物」だとした。

「自分と同じような人が世界の舞台で活躍するのを目にすれば、道は開けていると思える。その素晴らしい機会だ」

ハバードは競技に戻ってから、世界大会の金メダルを7個手にしている。

2018年のコモンウェルス・ゲームズでひじを負傷した時には、選手生活は終わったと彼女は思った。だが努力して復帰し、翌年のパシフィック・ゲームズで優勝。世界選手権では6位に入った。

東京オリンピックでは87キロ超級に出場し、金メダルを獲得する可能性もある。ただ、現在の世界ランキングと成績からは、メダル獲得は厳しいとみられている。

五輪予選で出した計285キロの最高成績は、出場選手の中で4番目だ。だが、優勝候補の李雯雯(21、中国)と比べると50キロ少ない。



画像提供, Getty Images

画像説明, ハバードは2017年の世界選手権で銀メダル2個を勝ち取った

世界を変えるのが最大の目的ではないかもしれないが、個人種目初のトランス選手となるハバードの選出は、スポーツ界の長年の伝統を変えていくうえで重要な影響を与えている。

ハバードは五輪代表に選ばれた後、「とても多くのニュージーランドの人々からやさしさと支援を受け取り、感謝し恐縮している」と、簡潔な声明を出した。

7月30日には、彼女のコメントを国際オリンピック委員会(IOC)が発表。「オリンピックは希望と理想、価値を世界が祝福する場だと考えている。スポーツがいろんな人を受け入れ、誰もが参加できるようになるため、IOCが努力していることに感謝したい」とあった。

アボットによると、ハバードは「目立たないようにしている」という。アボットは30日、ハバードが「ソーシャルメディア上のネガティブなものには一切」触れないようにすると、記者団に語った。

「テクニカルな疑問の裏には人がいることを、みんなが改めて認識する必要がある」

この会見には、IOCの医療・科学部門のリチャード・バジェット統括責任者も同席。「ローレル・ハバードは女性であり、彼女が所属する連盟の規定の下で競技する」と述べた。

「五輪予選を通過した彼女の勇気と粘り強さに、私たちは敬意を表するべきだ」

規則はどうなっているのか

IOCは2004年、トランスジェンダー選手のオリンピック出場を認めた

2015年からは、男性から女性に変わった選手について、過去4年以上自分は女性だと公言し、過去1年以上テストステロン(男性ホルモン)の血中濃度が1リットルあたり10ナノモル未満であれば、外科手術なしに、女性の競技に出場できると明示している。

IOCはさらに、個人種目については、各スポーツ連盟が独自の基準を設けることを認めている。世界陸連は1リットルあたり5ナノモルを基準値としており、ウエイトリフティング連盟など他の競技連盟も、IOCが進めている研究の結果を待って、同じ基準を採用する予定だ。

英国民保健サービス(NHS)のデータによれば、男性のテストステロン値は、1リットルあたり10~30ナノモルで、年齢や1日のうちの時間によって変化する。若い健康な男性だと、20~30ナノモルが一般的だ。女性はこれが0.7~2.8ナノモルの幅に収まる。

ハバードら何人かの選手たちは、テストステロン値を下げるため、ホルモン抑制剤を摂取しなければならない。



画像提供, Getty Images

画像説明, 2018年のコモンウェルス・ゲームズでは90キロ超級決勝に進んだ

IOCはトランスジェンダーに関する方針を明確にするよう勧告しているが、それを実行したスポーツ連盟はごくわずかだ。IOCのルールさえ、今後多くの見直しが予想される。

事実、IOCは現在、自らの方針の見直しを進めている。BBCの取材には、「この問題の複雑さに対応するため、包括的かつ権利を尊重する新たなアプローチ」を検討していると話した。

「医療や科学、法律の面だけでなく、人権」についても考慮するという。

その結果、「すべての競技の選手にとって、あらゆる人を受け入れ、差別せず、公平で、バランスが取れ、安全であることを確実にする、適切なメカニズム、方針、アプローチ」が生まれるだろうとしている。

団体によって異なる取り組みもみられる。ラグビーの国際統括団体ワールド・ラグビーは昨年、トランス女性をトップレベルの試合に出場することを禁じた。研究によって、けがの危険性が非常に高くなることが示されたと説明した。英イングランドのラグビー・フットボール・ユニオンは、テストステロン値に基づく一定の条件の下に、トランス女性の出場を認める国内向けの方針を示している。

IOCのバジェット氏は、トランスジェンダーの最新ガイドラインを作るには時間がかかっていると、各スポーツ連盟を擁護した。また、オリンピック直前に新たな基準を発表するのは「不適切」だっただろうと述べた。

「スポーツ界全体に多くの反対がある」とバジェット氏は言った。「種目に合わせて各競技団体が、場合によっては種目ごとに、ルールをどうするか決めるべきだ」。

(英語記事 The reluctant history-maker at the centre of sport's transgender debate

https://www.bbc.com/japanese/58053291

【東京五輪】 トランスジェンダー女性選手、重量挙げで2日に歴史的出場へ

2021年8月2日