JKビジネス「やっちゃダメ」より「買っちゃダメ」imidas記事等JKビジネス買春犯罪防止AV出演強要防止に関する資料PDF魚拓。

JKビジネス「やっちゃダメ」より「買っちゃダメ」imidas記事等JKビジネス買春犯罪防止AV出演強要防止に関する資料PDF魚拓。
私はコロナ前2019年以前に、一度だけColaboさんの私たちは買われた展に行けた事があったのですけど、PDF魚拓でJKビジネスの買春犯の問題やAV出演強要事件の資料まとめてるとその時聞いた講演の内容もう一度聞いてる気分になります。
日本も買春被害者救済し、買春ピンフ(業者)及び買春犯を人身取引犯罪者として処罰する買春処罰法が必要であり、日本も北欧モデル導入が必要ですよね。

https://www.iwanami.co.jp/moreinfo/tachiyomi/0613820.pdf



https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-17-03-g559




ある新聞記事に感じた違和感

 2017年2月17日、朝日新聞に「JKビジネス 安易な動機 金銭目的・性行為 抵抗感薄く」というタイトルの記事が掲載された。内容は以下の通りである。
「警視庁は、女子高生による接客などを売りにする『JKビジネス』で勤務経験がある少女たちへのアンケート結果を公表した。家庭や学校に不満がない『普通の女の子』たちの多くが、金銭目的でJKビジネスに関わっていた実態が明らかになった。
 少年育成課は、昨年6~7月に児童福祉法違反などで摘発した都内のJKビジネス2店舗に勤務した15~17歳の少女42人に聞き取り調査を行った。いずれも警視庁が補導し、現役高校生が7割に上った。
 42人のうち、約半数が勤務を通じて、客との性行為の経験が『ある』と回答。見知らぬ客と性行為をすることについて『場合によってはやむを得ない』と回答した人は28%にのぼり、抵抗感の希薄さが浮き彫りになった。
 家庭での生活に満足していると答えた人は全体の66%を占め、学校生活に満足している、とした人も全体の33%いた。
 勤務のきっかけは、友人からの紹介が66%と最多。7割は、家庭で小遣いをもらっていなかった。お金が必要な理由では、アイドルの追っかけなどでライブチケットを購入するための遊興費や、洋服や化粧品を買うため、との回答が多かった。1カ月あたりの勤務収入は、10万円未満が最多だが、50万円以上の収入を得ていた少女も1割いた。
 同課は『安易な考えで、ごく普通の子がJKビジネスで働いている。ストーカーや性犯罪の被害に遭う可能性もあり、楽観的にとらえないで欲しい』と注意を呼びかける。今回の調査結果を教育機関やPTA組織に提供し、生徒指導に役立ててもらう予定だという」(17年2月17日、朝日新聞朝刊)
 私はこの4年間で、JKビジネスに関わった120人以上の中高生と関係を結んできた。そうしてJKビジネスの実態についてまとめた『女子高生の裏社会』(14年、光文社新書)では、JKビジネスに関わる少女は三つの層に分けられると書いた。「貧困層」(家庭が経済的に困窮している)、「不安定層」(経済的には困窮していないが、家庭や学校の人間関係などに不安を抱えている)、「生活安定層」(家庭や学校での生活にも満足している)であり、どの層も3分の1程度ずつ存在する。警察の発表も、それに近い結果であると思った。
 朝日新聞の記事ではこの発表を受けて、少女たちの「抵抗感の希薄さが浮き彫りになった」とまとめており、私はこの記事のまとめ方は印象操作だと思った。デジタル版のタイトルは「JKビジネスで補導の10代、『性行為やむを得ぬ』3割」となっている。
 記事では「家庭での生活に満足していると答えた人は全体の66%を占め、学校生活に満足している、とした人も全体の33%いた」とあるが、家庭や学校が安心できる、帰りたいとか行きたいと思える場所だと答えた人が「66%や33%しかいない」ということにこそ、目を向けるべきではないだろうか。少女たちと客との性行為も、相手が「見知らぬ客」でなくても問題であり、常連客もたくさんいるのに「見知らぬ客」と限定していることにも違和感があった。

本当に目を向けるべきところ

 この記事が掲載された日、女子高校生サポートセンターColabo(コラボ)のシェルターに宿泊していた16、17歳の女子高生3人がこう話していた。
「警察発表を鵜呑みにしてどうすんの? (見知らぬ客との性行為について)『場合によってはやむを得ない』『性行為やむを得ぬ』なんて高校生が言うわけないじゃん(笑いが起きる)、そんな言葉で勝手に語らないでほしい。怖くて体固まったり断れなかったり、抵抗できなかった理由とか背景があるかもしれないし、ウチはそうだった」
「もし補導されて、やった理由を聞かれたら『お金が欲しかったから』って私だって言うわ。何に使ったのか聞かれたら『遊び』って言う。家が生活保護で大変でー、とか、親の彼氏に暴力振るわれててお金取られますとか、そんな話できないし、生活に満足してるかと聞かれたら『幸せです』って言うし、本当のことなんて言ったらどうなるか分からないから言わないわ」
「警察で『家に帰りたくないです』なんて言えるわけないし、言ったら保護されて嫌な目に遭うかもしんないし」
「50万も稼げるなんて子は見たことないし、そんなに稼げる仕組みじゃないから、その子は学校行かずに毎日出勤して売春し続けてたんじゃないかな。それだけの理由があったんじゃないの?」
 中高生時代にJKビジネスなどで性被害に遭ったり、抵抗できない状況で売春させられたり、レイプされたりした経験を持つ彼女たち。ある高校1年生は「女の子を追い込むようなこと書いてどうすんの?」と、大人たちに対してあきらめたような表情でつぶやいた。この記事のように、子どもの「抵抗感の希薄さ」を問題や原因にすることは本質を見失わせる。
「場合によってはやむを得ぬ」の「場合」には、断れなかったり抵抗できなかったりした場合、強制された場合、お金に困っていた場合、他の仕事への就労が難しい場合、福祉や教育からこぼれ落ちて行き場がなかった場合、他に頼れる人がいなかった場合など、いろいろな「場合」が含まれている。
 目を向けるべきは、「やむを得ぬ」と言わせてしまう状況があることであり、10代の少女たちにはそこで働くまでの背景や働き続ける理由があること。困難を抱えていない子たちまでも、気軽な気持ちで取り込む「手口」や「組織」があること。JKビジネスは「売りたい大人」と「買いたい人」の需要と供給で成り立ち、そこで「子どもが商品化」されていること。買う側の存在やその暴力性。加害者には大学生などの若者も多いこと。被害に遭った子どものトラウマとケア。危険からの身の守り方や、困っている友だちがいたらどうしたらいいか教えたり、加害者にならないための教育やケアがないこと、などである。
 さらにはJKビジネスが成り立ち、「普通」の少女も働く大前提として、女子高生に性的な価値や高い価値を見出すような社会があること。女子小中学生の性ですら「萌え文化」などといって消費されていること。女性の性を商品化し、それを買うことが当たり前のようになっている男性や、お金を介することで子どもへの暴力を正当化しようとする大人がたくさんいることなど、これらを「大人側の問題」として本気で考えないといけないと思う。18歳未満だからダメということではなく、「女子高生」というものに性的な価値を見出すようなことが、「ビジネス」として認められてしまう社会そのものを見直す必要がある。

どんな人が「世論」を作るのか?

 朝日新聞に問題の記事が掲載された翌日、産経新聞に「女子中高生ら『夜の仕事は小遣い稼ぎ感覚』 LINEやSNSで求人拡散 昨年の大阪、69人補導」というタイトルの記事が掲載された。
「大阪府内で昨年、風俗店などで違法に働いたとして、女子中学生19人、女子高校生22人が深夜に補導されたことが18日、大阪府警への取材で分かった。ガールズバーや、制服姿で客にマッサージをする『JKリフレ』での勤務が目立ち、未成年全体では69人が補導された。会員制交流サイトなどを通じて小遣い稼ぎ感覚で気軽に手を出すケースが増えているといい、捜査関係者は『性犯罪などの事件に巻き込まれる恐れもある』と指摘する(17年2月18日、産経新聞夕刊)
 ここでも「少女が遊ぶ金欲しさに気軽に手を出す」ことが問題とされ、大阪府警幹部の「安い給料で女性を雇いたい店側と、合法的に働けない中高生らとの利害関係が一致している」というコメントが紹介されている。このコメントには「買う側」への視点が欠けている。
女子高生を買いたい客と、儲けたい店の利害関係が一致している。巧みな手口で中高生を取り込み、子どもの性が商品化され、安く(値段の問題ではないが)売られている」とし、少女の気軽さ以上に、JKビジネスを通して少女を買う大人の気軽さや抵抗感の希薄さにこそ注目すべきだ。
 こういう報道があるたびに悲しくなる。被害に遭った少女たちが、報道によってまた傷つけられていることが悔しい。児童買春や子どもへの性暴力の問題が、「少女売春」や「援助交際」などの言葉で、積極性のある明るいものであるかのように、時に少女たちのアイデンティティーであるかのように語られ続けてきている日本社会は異常だ。
 児童買春は「援助」や「交際」と呼べるような対等な関係性の中で行われるものではなく、「支配」と「暴力」の関係性で成り立つ。しかし、買春者の中には、性行為を求めながらも、若い女の子を支えているつもりになっている人もいる。また、お金を介することで、子どもへの性虐待や暴力を正当化する人がたくさんいることも活動を通して実感している。そういう人たちは、「売っていたから買った」「売るのが悪い」と、売る・売らない論に話をすり替える。
 JKビジネスの経営者やスカウトたちは、ペンネームでJKビジネス関連本を出したり、週刊誌やウェブメディアで記事を書き、世論を作ることまで徹底してやっている。そういう人が「遊ぶ金欲しさに売春し、会社員より稼ぐ女子高生!」などと書くのは何のためかということも、考えてみてほしい。
「売る/売らない」の自己責任で語るのではなく、少女たちの背景や大人たちによる手口や暴力に目を向け、「指導」ではなく「ケア」の視点をもって子どもに関わることが必要だ。

少女たちではなく大人側の問題

 今回、この連載を書くために先の朝日新聞の記事を読み返していたら、いつの間にかデジタル版(www.asahi.com/articles/ASK2H51V1K2HUTIL01R.html 有料会員限定記事)の内容が修正されていた。タイトルや配信日時は変わっておらず、修正報告も掲載されていないが、本誌に掲載されていたものとは次の2点が変わっている。
(1)家庭や学校に不満がない「普通の女の子」たちの多くが、金銭目的でJKビジネスに関わっていた実態が明らかになった。 →家庭や学校に満足しているという少女でも金銭目的でJKビジネスに関わっていた実態が明らかになった。
(2)見知らぬ客と性行為をすることについて「場合によってはやむを得ない」と回答した人は28%にのぼり、抵抗感の希薄さが浮き彫りになった。 →見知らぬ客と性行為をすることについて「場合によってはやむを得ない」と回答した人は28%だった。
 この記事の内容が変更されたことについて、何の説明もないことに疑問は残るが、読者からの指摘を受けて後日修正されたのではないか。こう変更されるだけでも、ずいぶん印象が変わる。「おかしい」と思った時に、声をあげることの大切さを改めて感じた。
 悪意なく、当事者を追い詰めてしまうことがある。その悪意のなさが一番怖くて、深刻な問題だ。しかし批判に耳を傾け、態度を改められる大人がいることは、子どもたちにとっても希望につながる。そういう大人の姿勢こそ、少女たちにも伝えたい。だからこそ、修正したのならその経緯を追記してほしいと思った。そうでなければ、あたかも初めからそういう報道をしていたかのように見えて、いい顔をしたいのかなと思ってしまう。
 児童買春事件について、報道で「少女売春」「援助交際」という言葉を使っているのか、「児童買春」という言葉を使っているのかという違いだけでも、印象は変わる。「援助」や「交際」などという言葉で児童買春について語る国は、日本以外にない。日本では、「少女が好きでやっているんだろう」というイメージを持っている人は多い。その決めつけが、子どもたちを苦しめている。
 17年3月、内閣府男女共同参画局が、女性に対する暴力に関する専門調査会の調査結果「若年層を対象とした性的な暴力の現状と課題 ~いわゆる『JKビジネス』及びアダルトビデオ出演強要の問題について~」を発表した(www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/index_bo0314.html)。
 調査には私も協力し、朝日新聞は次のように報じた。
「携帯充電できます――。こんな誘い文句で女子高生らに声をかけ、接客サービスをさせる『JK(女子高生)ビジネス』の勧誘実態が14日、政府の専門調査会による報告書でわかった。無料で食事や宿泊場所を提供したり、既に働いている少女に友人を誘わせたりするなど、抵抗感を弱めて誘い込む手口が多かった。
 調査は昨年6月から12月にかけて民間の支援団体などにヒアリングで実施。「無料休憩コーナーあります」「お茶、お菓子あります」などと呼びかけるケースもあった。被害者の背景には、家庭や学校に居場所がない▽経済的に苦しい▽発達障害などの障害がある――という傾向がみられると分析。こうした少女らをスカウトとして雇い、同じような境遇にある少女を勧誘させていた実態も明らかになった」(17年3月16日、朝日新聞朝刊)
 政府の調査結果として、実態が取り上げられることは大きな一歩だ。調査では、公的支援に結び付きにくい少女たちに、必要な「衣食住」と「関係性」を与えるふりをして業者が近付くこと、性被害に遭った少女たちが自傷行為や自殺未遂をするなどのケースも後を絶たないのでケアが必要であること、などがまとめられている。読者のみなさんにも、子どもの自己責任で片付けず、大人の問題として考えられる人であってほしい。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-17-03-g559
JKビジネスで補導の10代、「性行為やむを得ぬ」?

"ここがおかしい"

仁藤夢乃

(社会活動家)

https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/gaiyo17_0314.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/honbun17_0314.pdf




https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-01.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-02.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-03.pdf


女性に対する暴力は、犯罪となる行為をも含む重大な人権侵害である。その予防と被害 からの回復のための取組を推進し、暴力の根絶を図ることは、男女共同参画社会を形成し ていく上で克服すべき重要な課題であり、国としての責務である。 配偶者等からの暴力、ストーカー行為等の被害は引き続き深刻な社会問題となってお り、こうした状況に的確に対応する必要がある。また、近年、ソーシャル・ネットワーキ ング・サービス(以下「SNS」という。)など、インターネット上の新たなコミュニケ ーションツールの広がりに伴い、これを利用した交際相手からの暴力、性犯罪、売買春、 人身取引等暴力は一層多様化しており、そうした新たな形の暴力に対して迅速かつ的確 に対応していく必要がある。 また、被害者が子供、高齢者、障害者、外国人等である場合は、その背景事情に十分に 配慮し、これらの被害者の支援に当たっては暴力の形態や被害者の属性等に応じてきめ 細かく対応する視点が不可欠であるとともに、とりわけ、配偶者からの暴力においては、 被害者のみならずその子供にも悪影響を与えることを考慮する必要がある。 こうした状況を踏まえ、女性に対する暴力を根絶するため、暴力を生まないための予防 教育を始めとした暴力を容認しない社会環境の整備等、暴力の根絶のための基盤づくり の強化を図るとともに、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(平成 13 年法律第 31 号。以下「配偶者暴力防止法」という。)を始めとする関係法令の近年の 改正内容等の周知徹底及び厳正な執行に努め、配偶者等からの暴力、性犯罪、ストーカー 行為等の形態に応じた幅広い取組を総合的に推進する。

第4次男女共同参画基本計画(平成 27 年 12 月閣議決定)(抜粋) http://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/4th/index.html 第7分野 女性に対するあらゆる暴力の根絶


https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-04.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-05.pdf




https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-07.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-08.pdf



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https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-17.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-18.pdf



https://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/boryoku/houkoku/pdf/bo0314s-19.pdf



https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-17-07-g559




京都の危険啓発サイトに疑問

 2017年7月1日、18歳未満の女子高生などに男性客の接待をさせる、いわゆる「JKビジネス」を禁止する東京都条例「特定異性接客営業等の規制に関する条例」(JKビジネス規制条例)が施行された。
 これに合わせて都は危険啓発サイト「STOP JKビジネス!」(http://www.stop-jk-business.tokyo/)を公開。小池百合子都知事は定例会見で、JKビジネスによる性被害が問題となっていることを挙げ、「女子高生をはじめとした青少年に向けて、情報発信を強化する取り組み」として、このサイトを紹介した。
 女子高生に人気のファッションモデル、タレントの藤田ニコルさんを起用し、「ほんっとに、ヤバイよ。そのバイト。」をキャッチコピーに、彼女からのメッセージを発信するというもので、都のホームページやツイッターを使って広く告知を行い、このサイトのリーフレットは学校を通じて都内のすべての高校生に配布すると発表した。
 小池知事は、このサイトを通して「友だちとSNSで情報共有し、互いに注意喚起し合う機会になれば」とか、「(被害に遭うと)将来の不安がずっと残るのだということをよく理解してもらいたい」「こうした取り組みを通じて、性被害から自分自身の身を守る力をつけてほしい」などとも話した。
 しかし、この啓発サイトは「ずれまくっている」と私は思った。

「ダメ、絶対」的な啓発は逆効果

 公開されたサイトを見ると、「JKビジネスはハマると危険なコワイ沼」「ほんっとに、ヤバイよ。そのバイト。」「絶対、やっちゃダメ。」などのコピーが並ぶ。
 しかし本連載の前回で対談した精神科医の松本俊彦先生の話にもあったように、薬物依存などと同じで、「ダメ、絶対」的な啓発は当事者を追い詰めるだけだ(17年6月22日、対談! 10代のあなたへ)。家庭や学校生活に困難を抱えていなかったり、自分を大切にしたいと思っている人に「危ないんだな」と感じさせる効果はあるかもしれないが、そもそもそうした人はJKビジネスなどに関わる可能性は低い。
 一方、実際にそこで苦しんでいる子は、「やっちゃダメ」と言われれば言われるほどSOSを出しにくくなる。つまり、まったく逆効果だ。
「藤田ニコルは許さない!」とも書かれているが、サイト内で「ヤバイ」とするJKビジネスのバイトをしたら許さない、という意味なのだろう。女子高生に対して、10代のニコルさんに「許さない」と言わせ、少女たちを「JKビジネスに関わる人」とそうでない人に二分していることにも危機感を覚える。JKビジネスに取り込まれる人の中には、家庭や学校で孤立を感じている人も多いが、こうしたメッセージは友人関係の中でJKビジネスに関わる人がいた時に、その人をコミュニティーから排除することにもつながり、さらなる被害へのリスクを高めるからだ。
 子どもを騙したり、巧みに誘惑する手口が横行している中にもかかわらず、こんな啓発のやり方をしていたら、被害に遭った時、子どもたちは「悪いことをしてしまった」と自分を責めることになるだろう。
 サイトには、「JKビジネスは、青少年と性犯罪被害をつなげるものです」と書いてあるのに、JKビジネスに取り込もうとする大人たちの具体的な手口は紹介されておらず、被害に遭った時の相談先についての情報も不十分。あちらこちらをクリックして、匿名で相談できるサイトが小さく紹介してあるのをようやく見つけることができた。

子どもを脅し、責任を押し付ける

 さらに、このサイトでは「お金と引き換えに失うものは大きいよ…!」「商品(モノ)扱いされて嫌じゃないの!?」などと呼びかけている。お金に困って関わる人がいることを把握しているのなら、そういう時にはどうしたらいいかを教えるべきだ。しかも女子高生の性を商品化しているのは大人たちなのに、少女の性をモノ扱いし、商品化を容認してきた人の責任については一切書かれていない。ただ「ストップ!」とだけ言う東京都、無責任すぎる。
‪「断らないと、友達減るより怖いことに巻き込まれるよ!」「後から後悔しても、なかったことにできないんだよ?」「ほんとにヤバかった子は言えないんだよ…!」「利用されてるだけだよ!」とも書いてある。必要なのは、こんな脅しをすることではなく、友だちに誘われたらどうしたらよいか、もし被害に遭ったらどうしたらよいかを教えることである。‬‬
 大切なのは、困った時に信頼がおける大人に相談できるようにすることであり、大人たちには子どもが相談しやすい環境づくりをする責任がある。これでは「足を踏み入れたあなたが悪い」と言っているのと同じで、被害者はますます声を上げられなくなる。
 少女を利用しようとする人がいることや、被害に遭った人が声を上げたり、助けを求められないことが多いのを把握しているのなら、どうしてこんなサイトを作ったのかと疑問が湧くばかりである。‬
 性犯罪の被害者の多くは、「抵抗できなかった」と自分を責める。抵抗できない状況を加害者が用意したり、加害者との支配的な関係性の中で抵抗できなかったり、命だけは守るという本能が働いて抵抗しないこともある。
「もし被害に遭っても、あなたは悪くないよ。ちゃんと大人が守るから」と伝え、支えていくのが大人の責任ではないか。万一、JKビジネスに関わって困っていることを誰かに打ち明けられたら、「そんなことしちゃダメ」「危ないってわからなかったの?」「もうしないって約束して」などという気持ちを押し付けるのではなく、「話してくれてよかった」と伝えてほしい。その上で、どのような経緯や理由でそこにかかわったのか、背景に目を向けながらその子の安全や安心をどう作っていくかを考えてほしい。

子どものケアと加害防止策が欠如

 JKビジネスは、女子高生という商品を「売りたい大人」と「買いたい大人」との需要と供給によって成り立ち、子どもたちが商品化されているのが現状である。需要を絶たない限り、供給する側はどんな手を使ってでも売ろうとするだろう。都のサイトには「JKビジネスはハマると危険なコワイ沼」「ドロ沼にハマるな!」とも書かれているが、その沼を作り、巧みに中高生を誘っているのは大人だ。売り買いする大人に目を向け、「売っちゃダメ」「買っちゃダメ」「性犯罪や、子どもの性の商品化を許さない!」と書くべきだ。
 さらには、「すぐそこのリスク JKビジネスに関連する被害事例」として、淫行(性交渉)、強制わいせつ、児童買春、ストーカーなどの被害があり、法律違反などにつながるともある。「将来のリスク」としては「売春や危険ドラッグにつながる」「進学や就職に悪影響」とし、「危ない商売はつながってる」「やりたいこと できなくなるかも」「そんなつもりじゃなかったのに」などと書いてある。
 売春や危険ドラッグにつながっていることがわかっているなら、子どもに「性被害から自分自身の身を守る力をつけてほしい」なんて無責任なことを言わずに、まず子どもを売り買いする人に対して啓発しなければ。性犯罪被害に遭うことで進学や就職に悪影響が出たり、将来やりたいことができなくなる危険性があるような社会であることを認めるのなら、被害者のケアに力を入れたり、世の中の偏見をなくすための発信が求められよう。
 子どもを脅すことに税金を使うのではなく、少女を売り買いする大人の側にこそ「お金と引き換えに子どもの性を売り買いしていいの?」「少女の性をモノ扱いしていいの?」「友だちや家族や会社に話せるの? 犯罪だよ?」「後から後悔しても、無かったことにできないんだよ?」と言い、条例や法律に違反することを啓発してほしい
「JKビジネスで女子高生を買うことは人身取引です。子どもへの性暴力は犯罪です」という啓発サイトを作って、大人たちにこそリーフレットを配るべきだ。
 しかし今回施行されたJKビジネス規制条例でも、買う側への規制や少女へのケア、被害に遭った時にどうすればよいか、また加害者にならないための教育についての視点は欠けており、営業を届出制にしたり、少女の補導に力を入れ、警察が従業員名簿をチェックするなど、女性に対する取り締まりばかり強化されている。

「リアルJK」でなければ解決か?

 そんな中、警視庁は「STOP‼ リアルJK」という、ショッキングなコピーのパンフレットを製作した。JKビジネスの問題の本質は「本物の女子高生が被害に遭っているかどうか」ではないのに、これでは「リアルJK」でなければ18歳未満でも問題ない、と堂々と言っているようなものだ。
 問題の本質は、国連やアメリカ国務省が日本の人身取引に関して報告書で指摘するように、貧困や虐待などで孤立したり騙されたりした少女たちが、手を差し伸べるふりをした大人によって取り込まれ、被害に遭う搾取や暴力の構造があることや、女子高生を「JK」という記号で性的に価値の高いものとしてブランド化し、商品化し消費する社会そのものにある。そのことに目を向けなければ現状は変わらない。
 私はこれまで、JKビジネスに取り込まれた中高生120人以上と関わり、支援してきた。自著『女子高生の裏社会』(14年、光文社‪)で、JKビジネスの実態をまとめることもした。国連やアメリカ国務省の調査に当事者たちと共に協力し、15年には東京都の青少年問題協議会委員になり、都の子ども支援に関する方針をまとめた「東京都子供・若者計画」にJKビジネスの危険啓発や対策について、意見を入れることができた。国会議員などとの意見交換や情報交換も行い、17年になってようやく自民党も「女性活躍・子育て・幼児教育プロジェクトチーム」などの勉強会に呼んでくれて、条例制定まで来たと思っていた。‬
 しかし条例の検討会には、中高生に現場で関わっている支援団体のメンバーは入っていない。そのせいか、取り込む側の手口や買う側への視点、被害児童へのケアの視点が不足し、子どもの取り締まりばかりが強まるような条例になっていることにがっかりしている。‬‬
 また、内閣府と警察庁は17年7月を青少年の非行・被害防止全国強調月間とし、こんなポスターを製作した(http://www8.cao.go.jp/youth/ikusei/h29hikokyo.html)。ファッションモデル、タレントの岡田結実さんがにっこり笑いながらこちらを向き、真ん中に「#はしゃぎ過ぎダメ」という啓発コピーが大きく入っている。さらに「危険はあなたの身近なところに潜んでいます!!」「#出会い系 #JKビジネス #援助交際 #ポルノ #ストーカー #ドラック #お酒 タバコ #いじめ #夜遊び #万引き #振り込め詐欺 #まず相談」と書いてある。
「なんのポスターだよ?」と思った。清楚で若い女性モデルを使って目を引かせ、「ダメ」を言わせていることがまずひどい。女性の商品化を国や警察が率先して行っているようなものだ。
 それに子どもたちが性犯罪被害に遭うのは、決して「はしゃぎ過ぎている」からだけではない。「ダメ」は加害者に対して言うべきだ。買春容疑で逮捕・連行されるおじさんや男子大学生の姿をポスターにしたら、効果があるはずだ。ドラックや酒・タバコへの依存、万引き、詐欺の手伝い、夜遊びと呼ばれるような非行や深夜徘徊についても、貧困や虐待や孤立や不安が背景にあることがほとんどだ。いじめの多くも「はしゃぎ過ぎ」が原因ではないのに、どうしてこんな決めつけ方をするのだろう? 青少年の自己責任ということにしたいのか?
「#まず相談」とあるが、こんな発信をしておいて「相談したい」と思われると本気で思っているのだろうか。
‪ JKビジネスが「日本における人身取引」と、世界から指摘されるのはなぜなのか。搾取の構造や暴力には目を向けることなく、子どもに責任を押し付ける大人たちによって物ごとが決められ、処理され、切り捨てられていく現実に絶望しそうになる。こうして、いちいち説明を繰り返さなければならないことにも疲れてくる。‬
 それでも声を上げ続けなければ、現状は悪化するばかりである。読者のみなさんも一緒に考え続けて、声を上げてほしい。それが、子どもの性の商品化を許さない社会をつくるために必要なことなのだ。

https://imidas.jp/bakanafuri/?article_id=l-72-001-17-07-g559
JKビジネス「やっちゃダメ」より「買っちゃダメ」

"ここがおかしい"

仁藤夢乃

(社会活動家)

2017/07/26



口頭声明
日本、沖縄の表現の自由
(6月12日)
要約: 特別報告者の日本公式訪問報告書と勧告を歓迎し、日本政府に勧告を実施するよう求めました。また、日本政府が書面回答において特別報告者の報告書の大幅な内容修正を働きかけたこと、および勧告を建設的に受け止めなかったことを憂慮するとともに、抗議参加者の逮捕が乱発している沖縄の表現の自由の現状について指摘しました。最後に、日本政府がその書面回答で頻繁に他国との比較をしたことを指摘し、人権保護はすべての国が持つ普遍的責任であると強調しました。
声明(英文)はこちら:https://imadr.org/freedomofexpression-okinawa-japan-hrc35-2017-os/
ダリットと部落女性と少女に対する複合差別と暴力(6月13日)
要約:「女性と少女による十分な人権の享受に関する人種主義、人種差別、外国人嫌悪および関連する不寛容の文脈における複合的および交差的差別と暴力への取り組み」に関する報告書を歓迎しました。普遍的定期審査(UPR)においてこれまでダリットおよび部落女性に特化した勧告が出ていないことを指摘し、第3サイクルが始まったUPRにおいてダリットと部落を含むマイノリティおよび先住民族女性に特化した勧告を出すよう各国政府に呼びかけました。
声明(英文)はこちら:https://imadr.org/multiple-discrimination-violence-dalit-buraku-women-girls-hrc35-2017-os/
沖縄の人権活動家に対する恣意的逮捕と拘留(6月15日)
声明(日本語)はこちら:https://imadr.org/wordpress/wp-content/uploads/2017/06/JPN_Joint-Oral-Statement_HRC-35th_item-4-General-Debate_15June2017.pdf 
*1この声明は山城博治さんが読み上げを行いました。
*2この声明はフランシスカンズ・インターナショナルとの共同声明であり、沖縄国際人権法研究会の賛同を得たものです。
*3メディア報道
朝日新聞:https://www.asahi.com/articles/DA3S12991645.html
毎日新聞:https://mainichi.jp/articles/20170617/k00/00m/040/077000c
東京新聞:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017061702000135.html
時事通信:https://www.jiji.com/jc/article?k=2017061600040&g=soc
琉球新報:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-516462.html
沖縄タイムス: https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/103014
産経新聞:https://www.sankei.com/politics/news/170618/plt1706180005-n1.html
対テロリズムにおける人種差別と闘う人権擁護者の困難(6月19日)
要約:特別報告者の「対テロリズムの文脈における人種主義と外国人嫌悪根絶の挑戦」のテーマ報告書を歓迎しつつ、同様のテーマで国連総会に提出される報告書において市民社会組織に対する「反政府」といったネガティブな描写の問題に目を向けるよう特別報告者に促しました。また、報告書作成において広範な市民社会組織と国連人種差別撤廃委員会と協議するよう求めました。最後に、特別報告者が繰り返し訪問リクエストを出しているインド、日本、南アフリカ共和国、タイへの訪問が新しい特別報告者によって実現されるよう求めました。
声明(英文)はこちら:https://imadr.org/humanrightsdefenders-racialdiscrimination-counterterrorism-hrc35-2017-os/




サイドイベントの開催
「日本、沖縄の表現の自由」
(6月16日)
共催:フランシスカンズ・インターナショナル、アムネスティ・インターナショナル
賛同:沖縄国際人権法研究会
司会:ジェーン・コナーズ(アムネスティ・インターナショナル)
スピーカー
・デビット・ケイ(意見および表現の自由に関する国連特別報告者)
・山城博治(沖縄平和運動センター議長)
・金高望(弁護士)
・阿部岳(沖縄タイムス)
概要:沖縄からのスピーカー3名から沖縄と日本の表現の自由の現状について報告いただきました。まず、金高弁護士は山城さんの逮捕・拘留が恣意的とされる理由を説明し、国際人権基準から照らした上での問題点を指摘しました。さらに、日本の刑事司法の欠陥と新たに成立した共謀罪について懸念をあげました。続いて、山城さんが拘留中における弁護士以外の接見禁止、手紙のやり取りの禁止、厳しい取り調べ、時間の感覚を失ったことや、主治医の診察を受けられなかったことといった自身の過酷な体験を話し、日本政府に人権侵害を止めるよう求めました。阿部記者は沖縄メディアに対する政府関係者からのプレッシャーや現場での取り締まり行為について報告し、今後さらに沖縄メディアが標的とされる危機感を伝えました。最後にケイ特別報告者は自身の公式訪問報告書について説明し、日本において抗議活動は概して可能であるが、沖縄の状況は異なると指摘しました。抗議参加者や山城さんに対する措置について、それらが相応なものであるのかという視点が重要であることを指摘し、山城さんの長期拘留およびその間の処遇は不相応に過度なものであり、それによって抗議運動に委縮効果をもたらすことを懸念しました。
イベントの様子をYouTubeでご覧いただけます:https://www.youtube.com/watch?v=1LhOud8GTr8 

メディア報道
朝日新聞:https://www.asahi.com/articles/DA3S12991645.html 
東京新聞:https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201706/CK2017061702000135.html
毎日新聞:https://mainichi.jp/articles/20170617/k00/00m/040/077000c 
琉球新報:https://ryukyushimpo.jp/news/entry-516462.html
沖縄タイムス:https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/103014
スイス・インフォ:https://goo.gl/9goaCr  
産経新聞:https://www.sankei.com/world/news/170618/wor1706180001-n1.html

https://imadr.net/reportunhrc35_2017/
国連人権理事会35会期報告(2017年6月)

日本、そして沖縄の表現の自由について日本政府と国際社会に訴えました





米国務省人身取引監視対策部は6月27日、2017年版の「人身取引報告書(Trafficking in Persons Report)」を発表した。同報告書は略して「TIPレポート」とも呼ばれている。この報告書での「人身取引」とは、暴力、詐欺、威圧等の手段を通じて他人に労働や商業目的の性行為を強いる行為を指す。今回の報告書では、遠洋漁業船での長時間強制労働の事例や、性行為ビジネスに巻き込まれたLGBTIの若者等の事例が取り上げられている。

 米国務省人身取引監視対策部は、米国の「2000年人身取引被害者保護法」(TVPA)第110条に基づき、この報告書を毎年報告している。報告書では、世界のほぼ全ての国を対象として、人身取引への関与度が小さい順に「Tier 1」「Tier 2」「Tier 2 Watchlist」「Tier 3」の4段階に分類している。作成にあたっては、ワシントンにある人身取引監視対策部のオフィスと各国の米国大使館が協力。さらに、各国官庁、NGO、宗教団体、専門家、国際機関等幅広い機関からも情報を収集している。

 報告書は、人身取引の取締の現状について、現在世界で2,000万人以上が人身取引被害者であると言われているのに対し、起訴件数は15,000件、有罪判決は10,000件に過ぎないとした。そのため報告書は、各国に対し、人身取引に関与した有罪判決数を数えるだけでなく、罰則による取締強化を求めた。また、人身取引被害者自身の犯罪行為については、保護・救済措置が必要だとも説いた。

 報告書の中で、日本は上から2番目の「Tier 2」と判定された。日本での人身取引実態については、外国人技能実習制度を含むアジア人労働者における強制労働、ナイトクラブや売春などで外国人女性を働かせる強制労働、援助交際や「JKビジネス」などの慣行、国際結婚で生まれた少女の性ビジネスへの関与などを問題視した。日本政府の取組では大きな努力があると一定の評価をしながらも、これらの実態が続いていることで、「Tier 1」にはならなかった。日本政府は2014年に官房長官を議長とする「人身取引対策推進会議」を設立し、国内で発生した売春強要や強制労働等の人身取引に関する年次報告を行っている。今年5月に発表された昨年の状況では、国内で保護された人は50人。このうち日本人が25人と過去最多だった。

 「Tier 1」の評価を得た国は全部で36ヶ国。米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクなど欧米先進国は全てこのカテゴリーに入った。また、韓国、台湾、フィリピン、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、コロンビア、チリなども「Tier 1」だった。

 一方、最低の「Tier 3」と評価された国は、中国、北朝鮮、ロシア、ベラルーシ、イラン、ベネズエラなどの他、ブルンジ、スーダン、南スーダン、ギニア、マリ、赤道ギニア、エリトリア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、モーリタニアなどアフリカの国々が多く、全部で23ヶ国。リビア、イエメン、ソマリアの3カ国は「特別地域」として、欄外の評価となった。

【報告書】Trafficking in Person Report 2017  

https://sustainablejapan.jp/2017/07/13/trafficking-in-person-report-2017/27394
政府・国際機関・NGO

公開日:2017/07/13

【国際】米国務省、2017年版人身取引報告書発表。日本は最高位の評価取れず



*下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です。


国務省人身取引監視対策部

2023年6月15日

日本(第2階層)

日本政府は、人身取引撲滅のための最低基準を十分には満たしていないが、満たすべく相当の取り組みを実施している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による政府の人身取引対応力への影響が仮にあったことを考慮しても、政府は前年の報告書対象期間と比較して、全体的に取り組みを強化していることを示した。ゆえに、日本は引き続き第2階層となった。こうした取り組みの中には、強制労働への陥りやすさを減らすため技能実習制度の見直しを勧告する有識者会議の設置、労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の児童の人身取引に焦点を当てた人身取引対策行動計画の承認、性的搾取目的の人身取引に対する有罪判決を増加させることが含まれていた。しかし、政府はいくつかの重要な分野で最低基準を満たしていなかった。労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の児童の人身取引事案を刑事捜査し、訴追する政治的意思の欠如を政府は引き続き示した。法執行機関は引き続き、人身取引の兆候を十分に審査しないまま商業的性産業において搾取を受けた何百人もの児童を特定し、児童の性的搾取を目的とする人身取引犯を罰することなく活動させた。当局は引き続き、厳しさが十分ではない刑を規定している法律に原則基づき、人身取引犯を訴追し、有罪判決を下した。また、少なくとも6年連続で、裁判所は、有罪判決を受けたほとんどの人身取引犯に対して、実刑の全ての執行を猶予するか、罰金刑のみを科した。技能実習制度における移住労働者の労働搾取目的の人身取引の報告が依然としてあったが、政府は技能実習制度内での労働搾取を目的とした人身取引被害者や男性の人身取引被害者を1人も認知しなかった。技能実習制度において、政府と送り出し国との協力覚書は、借金を理由に技能実習生を強要する主な要因の一つである、外国に拠点を持つ労働者募集機関による過剰な金銭徴収を防止する上で、依然として効果を発揮しなかった。当局は、統一性のない非効果的な認知・照会手順に依然として頼り、その結果、公務員は、人身取引の被害者となり、その直接の結果として犯した違法行為のみに基づき、被害者を不適切に処罰した。これらの手順のいくつかは、報告書対象期間に改定された。全ての都道府県が人身取引被害者に対して十分な保護支援サービスを提供したわけではなく、男性の被害者に対応できる政府のシェルターはなかった。人身取引の被害者となった女性と児童は、シェルターでの保護支援サービスを受けるために仕事や学校をやめなければならないことが多かった。

優先すべき勧告性的および労働搾取目的の人身取引を精力的に捜査・訴追し、有罪判決が下された人身取引犯に対する相当長期の刑期などの十分な処罰を求める。

技能実習制度やその他のビザ制度の下で日本にいる人たちや、入国者収容施設に収容されている人たちなど、労働搾取目的の人身取引被害者の認知とケア提供の紹介に関する政府全体の標準作業手順を新たに策定し実施する。

第三者のあっせんを介すことなく商業的な性的搾取を受けた児童や、技能実習制度や特定技能ビザ制度の下で働く移住労働者などの被害者が、認知され、かつ支援サービスを受けられるようにし、人身取引の被害者となり、その直接の結果として犯した違法行為のみによって不適切に拘束または強制送還されることがないよう審査を強化する。

移動の自由があり、かつ外国人や男性の被害者向け支援サービスを提供するサバイバー中心のシェルターなど、人身取引被害者ケアのための資源を拡充する。

国際法に沿って明白に人身取引を定義した人身取引対策法を制定する。これには、強制、詐欺や強要、または第三者によるあっせんを示すことを要件としない性的搾取を目的とする児童の人身取引を含む。

外国人技能実習機構および出入国在留管理庁の職員を対象とした被害者認知の研修、外国人技能実習機構と非政府組織(NGO)との連携の向上、認定前の技能実習計画と契約の精査、職場の徹底的な調査、労働者が支払う過剰な手数料やその他金銭を課す機関や雇用主との契約解除、労働搾取を目的とした人身取引を示唆する労働違反の法執行機関への照会などにより、技能実習制度改革法の監督および執行措置の実施を強化する。

要望があれば、全ての外国人労働者が雇用主や産業を変更できる公式な仕組みを確立する。

実刑の代替として罰金刑を認める量刑規定を削除し、少なくとも4年を上限とする刑務所収容を含め、人身取引犯罪に対する処罰を強化するため、人身取引対策関連法を改正する。

雇用主が外国人労働者のパスポートやその他の個人文書を保持することを禁止する法律を制定する。

全ての労働者に支払いが課される募集費用およびサービス料を廃止することにより、移住労働者が借金による強制の被害に陥りやすい状況を減らす。

労働搾取を目的とした人身取引の一因となる組織や雇用主による「処罰」合意、パスポートの取り上げ、その他の行為の禁止の実施を強化する。

海外児童買春旅行に参加する日本人の捜査、訴追、有罪判決、処罰を行う。



訴追

政府の法執行の取り組みは依然不十分なままであった。日本には、国際的な法律に沿った定義を含む、包括的な人身取引対策法がなかった。日本は、成人および児童の商業的性行為、児童福祉、入国管理、雇用基準に関する異なる刑法を通して、性的搾取目的および労働搾取目的の人身取引犯罪を違法とした。「売春防止法」第7条は、人に商業的性行為をさせることを犯罪としており、詐欺的または威圧的な手段を用いた場合には最長3年の懲役、もしくは最高10万円(759ドル)の罰金を規定しており、暴行または脅迫が用いられた場合には最長3年の懲役および最高10万円(759ドル)の罰金に処した。同法第8条は、被告が第7条に規定された犯罪の対償を収受し、もしくは収受する契約を結び、または同対償を要求した場合には、最長5年の懲役および最高20万円(1520ドル)の罰金を科して処罰を強化した。「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」は、児童を商業的に性的搾取する行為、周旋、および勧誘を犯罪とし、最長5年の懲役もしくは罰金、またはその両方の処罰を規定していた。同法はまた、商業的性行為や児童ポルノ製造による児童の搾取を目的とした児童の売買を犯罪とし、最長10年の懲役を規定した。政府はまた、児童福祉法を用いて人身取引関連犯罪を訴追した。同法は、児童にわいせつもしくは有害な行為をさせる目的での児童の移送、または隠匿を幅広く犯罪とし、最長10年の懲役もしくは最高300万円(2万2760ドル)の罰金、またはその両方の処罰を規定していた。職業安定法および労働基準法はいずれも、強制労働を犯罪とし、最長10年の懲役もしくは300万円(2万2760ドル)以下の罰金を規定していた。しかし、厚生労働省は、労働基準法における「強制労働」の定義は国際法の人身取引の定義よりも狭く、実際のところ、労働基準法の「強制労働」の罪とされた稀な事案は、人身取引犯罪としては処理されなかったと報告した。性的搾取を目的とした人身取引に対し、懲役に代わる処罰として罰金刑を認めた場合、当該罰金刑は強姦のような他の重罪に規定される処罰と同等ではなかった。市民社会団体は、こうした重複する法律に頼っていることが、人身取引犯罪、特に心理的威圧の要素を持つ労働搾取目的の人身取引を伴う事案を認知や訴追する上での政府の能力を引き続き妨げていると報告した。報告によると、相対的に厳しい処分を下すと控訴を引き起こす可能性が高まり、それが全体的な有罪率の低下につながり、検察官の職業的地位に悪影響を及ぼすという認識のため、多くの検察官が職業安定法と労働基準法の適用を避けた。政府には、雇用主、募集を行う者、労働あっせん業者による日本人あるいは外国人労働者のパスポート、渡航書類または身分証明書の取り上げを禁じる法律がなかった。技能実習生のパスポートおよび在留カードの取り上げは禁じられていた。前年の報告書対象期間と同様に、政府からこの法律を執行する取り組みに関する報告はなかった。関係筋は、主要な法執行機関と司法関係者の人身取引に関する深刻な認識不足を引き続き報告した。

2022年1月から12月まで警察庁と厚生労働省は、60件の人身取引事案において22人の被疑者を捜査した。2021年は44件で、捜査した被疑者は61人であった。2022年、政府は32人の人身取引被疑者の訴追に着手し、7人の訴追を継続した。この7人全員が性的搾取目的の人身取引被疑者であった。2021年は37人(性的搾取目的33人、労働搾取目的4人)、2020年は50人の人身取引被疑者が訴追された。報告書対象期間末時点で、6人の訴追が継続していた。政府は、33人の性的搾取目的の人身取引犯に有罪判決を下した。2021年は24人(性的搾取目的20人、労働搾取目的4人)、2020年は50人の人身取引犯に有罪判決を下している。技能実習制度内での労働搾取を目的とした人身取引に関連する訴追および有罪判決はなかった。NGOが特定・支援した技能実習制度内での人身取引が疑われる被害者数と比べて、児童の性的搾取を目的とした人身取引に対する有罪判決数は極端に低いままであった。有罪判決を受けた人身取引犯33人のうち、27人は1年から8年の実刑を受けた。その中の16人は、刑の全部の執行が猶予された。裁判所は、6人の人身取引犯に対して、罰金刑だけの判決を下した。少なくとも6年連続で裁判所は、有罪判決を受けたほとんどの人身取引犯(67%、2021年は69%)に対して刑の全てを猶予するか、罰金刑を言い渡した。人身取引犯罪に加担した政府職員について捜査や訴追が行われた、あるいは有罪判決が下されたという政府の報告はなかった。

技能実習制度の下で労働搾取を目的とした人身取引の兆候が広くみられることが知られていたにもかかわらず、政府から技能実習生を搾取する人身取引犯に刑事責任を負わせるという報告はこれまでなく、また政府は、刑務所収容期間を含む、相応な処罰を用いた刑を下したこともなかった。NGOの支援サービス提供者は、再三にわたり技能実習制度の実習の事業場内で起きている具体的な労働搾取目的の人身取引の申し立てに注意を喚起したと報告した。政府は報告書対象期間の年にこのような実習事業場の調査を数千回も実施したにもかかわらず、当局は概してこれらの申し立てを潜在的な人身取引犯罪として積極的に捜査しなかったとNGOは主張した。NGOは、外国人被害者を巻き込んだ労働搾取目的の人身取引事案に対して、心理的威圧を裏付ける証拠ではなく虐待の物理的兆候に過度に依存するなど、裁判所が極端に高い証拠基準を設定しているため、適切な法執行措置を妨げていると報告した。政府は、ベトナムとの間に刑事共助条約を調印した。

性的搾取を目的とする児童の人身取引というまん延する問題に政府は対応せず、商業的性行為が第三者によりあっせんされたのでない限り、当局は実際に商業的性的搾取を受ける児童を性的搾取目的の人身取引被害者として正式に認知しなかったため、人身取引の法律の下で商業的性的搾取を受ける児童に関する事案を、通常は捜査・訴追しなかったと報告した。政府は2022年、少なくとも516人の加害者と422人の被害者が関与する性的搾取を目的とする児童の人身取引を630件報告した。前年の報告書対象期間と同様に、政府は、第三者であるあっせん者の関与の有無にかかわらず、加害者を潜在的な人身取引犯罪として訴追もせず、有罪判決も下さなかった。また、これらの事案に関係する児童の大多数を人身取引被害者としては認知しなかった。当局はここ数年でも、性的搾取を目的とする児童の人身取引に関する何百件もの事案(2017年から2021年は年間627件から956件で推移)を、正式に人身取引犯罪として捜査せずに処理した。2022年、政府は、未成年の女子高生と成人とをつなぐ出会い系サービスを容易にする、もしくは出会いに利用される場所である「JK」ビジネス関連の事案5件で9人の被疑者を逮捕した。8つの主要都道府県は、「JK」ビジネスを禁止し、18歳未満の少女が「援助交際」業で働くことを禁じるか、または「JK」ビジネスの営業者に対し、各地の公安委員会に従業員名簿を登録することを義務付ける条例を維持した。政府は、人身取引の法律や規制に関して、外国人技能実習機構、警察庁、厚生労働省などさまざまな政府省庁に対して人身取引対策研修を引き続き実施した。

保護

政府の保護への取り組みは依然不十分なままであった。政府は、29人の女性人身取引被害者を認知したが、前年の47人から減少した。外国人2人を含む29人の被害者には、性的搾取を目的とした人身取引の少女の被害者20人と女性被害者7人、強制労働の被害者2人が含まれていた。前年に認知された労働搾取目的の被害者は16人であり、前年より減少した。これとは別に、あるNGOは15人の強制労働被害者(男性10人、女性5人)を認知した。うち14人は外国籍であった。また、ある労働団体は、労働搾取を目的とした人身取引が含まれた可能性のある搾取的な状況に置かれた外国人労働者55人を認知した。また、性的搾取目的の人身取引被害者を支援しているあるNGOは、性的暴行や性的搾取、あるいは両方の被害者820人(女性532人、男性89人、性別不明199人)から支援の要望を受けた。この中には、性的搾取目的の新たな人身取引事案が含まれていた可能性があった。標準化された適切な指針の不足、省庁間の不十分な連携、全関係省庁間での性的および労働搾取目的の人身取引に関する不十分で統一性のない一連の法律が、被害者を認知し保護する政府の取り組みが不十分であったことの要因となった。政府は、人身取引事案の対応手順が含まれた法執行職員向けのハンドブックを改定したが、公務員が被害者を認知する政府の指針は、2010年に作成されてから改定されていないため、包括的でなく不十分なものであった。その結果、多くの被害者がケアを利用する妨げとなった。報告によると、公務員は商業的性的搾取を受ける女性と技能実習制度下の外国人実習生の間で人身取引の審査を行ったが、政府は技能実習生の中で人身取引被害者を1人も認知せず、「買春に関与させられた児童」数人のみを性的搾取目的の人身取引被害者として引き続き認知した。関係府省庁の従事者は、統一性のない不十分な被害者認知手順に従った。同手順には、あらゆる形態の人身取引、特に、性的搾取を目的とした児童の人身取引や移住労働者の労働搾取を目的とした人身取引は網羅されていなかった。専門家はさらに、特に外国人に関する事案に関して、さらに多くの継続した兆候があった事案においてさえ、警察と入管職員には人身取引の兆候に対する認識が不足していると報告した。商業的な性行為を禁止する法律の範囲が限定的なため、児童や成人の搾取が、合法化されてはいるもののほぼ規制されていない「デリバリー・ヘルス・サービス」や都市部の歓楽街にある商業的性行為の範囲内で広く起きた。政府による被害者の審査および認知手続きが不十分であり、性的搾取や労働搾取目的の人身取引に対する当局の誤った認識があったため、政府は引き続き、被害者を出入国管理法違反など、人身取引の被害者となり、その直接の結果として犯した違法行為のみを理由に逮捕、拘束、強制送還した可能性が高い。

2022年、9006人の技能実習生が職場から失踪した。その中には、搾取的または虐待的環境から逃げた者もいたが、当局は人身取引被害者として1人も認知しなかった。これは、7167人が失踪した2021年より大幅な増加となった。当局は、虐待的な雇用主や環境から逃れてきた技能実習生を引き続き強制送還の対象とした。労働契約の中には、日本で就労中、妊娠あるいは罹患した実習生を自動的に帰国させる違法な条項を含むものもあった。契約終了前に日本を出国する技能実習生に対して、出入国在留管理当局は1万3111件の面接審査を実施した。これは、前年の1万2865件からの増加となった。法務省は、出入国在留管理庁の職員が人身取引被害者を認知したかどうかについて報告はしていない。5人の技能実習生が、出国は強制されたものであったと報告した。

当局は、商業的性行為が第三者によりあっせんされたものでない限り、児童を性的搾取目的の人身取引被害者と認知せず、このことにより、何百人もの児童が、必要な被害者保護支援サービスを受けることも損害賠償請求権を利用することもできなかった。政府はまた、2000年に採択された国連人身取引議定書の定義上の基準に反して、性的搾取を目的とした児童の人身取引は、加害者による「被害者の支配」を要件とする理由で、全ての児童の商業的性行為事案を、性的搾取を目的とした児童の人身取引事案として扱わなかったと報告した。地方の法執行職員の中には、これまでの報告書対象期間に、13歳という異例に低い日本の性的同意年齢が、商業的性的搾取を受けた児童を、人身取引被害者として公的に認知する取り組みを一層複雑にしていると述べる者もいた。2023年3月、政府は性的同意年齢を16歳に引き上げる法案を国会に提出した。市民社会団体は、警察はレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィアもしくはクエスチョニング、インターセックスなど(LGBTQI+)の児童を含む、性的搾取目的の人身取引被害者となる可能性がある一部の児童を、引き続き非行少年として扱い、人身取引の確認審査も、これら児童の事案の捜査も、または専用の支援サービスへの紹介も行わず、代わりにこうした児童に対して素行に関する助言を行ったと主張した。

ここ数年間と同様に、政府は、あらゆる形態の人身取引被害者に対して、サバイバー中心のシェルターや精神的・社会的ケア、法的支援などの、全体的に十分な保護支援サービスを提供しなかった。当局は、認知された人身取引被害者29人のうち9人のみについてケア提供を紹介した。その中の8人は児童であった。これは、15人の性的搾取目的の人身取引被害者および労働搾取目的の人身取引被害者を婦人相談所や児童相談所に紹介した前年よりも減少となった。政府は、男性被害者を1人も認知しなかったため、男性被害者にケア提供を紹介することはなかった。これとは別に、あるNGOは、労働搾取目的の人身取引被害者である可能性があった15人に支援サービスを提供した。政府から提供される被害者が利用できる支援サービスやその質は、都道府県ごとに大きく異なった。政府は、女性や児童の人身取引被害者とその他の犯罪の被害者のためにシェルターを提供することができた婦人相談所や児童相談所と、性的搾取目的の人身取引の一部の形態も含む性暴力被害者のための「ワンストップ支援センター」に資金を提供した。各都道府県には、婦人相談所、児童相談所、ワンストップ支援センターが少なくともそれぞれ1カ所ずつ設置されていた。婦人相談所のシェルターは、食料や、その他の生活必需品、精神的ケアおよび医療費を提供し、被害者は自由に出ることができた。しかしNGOの中には、こうした施設の物理的状況や支援サービスは貧弱で過度に制限されていると主張を続けた団体もあった。報告によると、シェルターの秘密保持のため、資源が不十分な都道府県にある婦人相談所は、保護を求める女性や児童に対して、仕事や通学をやめるよう求めた。さらに、市民社会の支援提供者は、人身取引被害者が支援を求めた場合、政府が被害者を正式に認知しない限り支援をすることができないと報告した。その結果、支援サービス提供が遅延した。婦人相談所は、LGBTQI+の人たち全員を収容することはできなかった。また、政府のシェルターは男性の人身取引被害者を収容することができなかった。政府は、男性の人身取引被害者にその他の一時的な収容施設を提供することが可能だと述べたが、それを実施したかについての報告はなかった。

合法的に日本に居住する被害者であれば受けることのできるその他の政府提供の社会支援サービスについては、外国人人身取引被害者の利用は限定されていたか、全く利用できなかった。政府は、女性人身取引被害者2人に在留許可を与えたが、2021年の11人から減少した。政府は、人身取引犯が日本で搾取した外国籍者への保護支援サービスについては、駐日外国公館からの提供に依存・期待した。報告によると、出身国へ帰国することに伴う影響を恐れる外国人被害者は、一時的もしくは長期的に、または定住者として在留する便益を受けることが可能であったが、被害者がこの便益を受けたかどうかについて、政府からの報告はなかった。政府は、日本で認知された外国人人身取引被害者に帰国支援や社会統合支援を提供する国際機関に対して、引き続き資金提供を行った。

被害者は人身取引犯に対して損害賠償を求める民事訴訟を起こすことができたが、前年の報告書対象期間と同様に、政府から被害者が訴訟を起こしたかどうかの報告はなかった。しかし、2017年に7人の被害者が起こした民事訴訟に対して、裁判所は未払い賃金への損賠賠償を一部認めた。ただし判事は、被害者が追加で求めた損害賠償請求を却下した。雇用主の中には、技能実習生に対して行われた労働虐待への損害賠償請求の機会を減らすため、労働組合を脱退するよう実習生に圧力をかける者もいた。

防止

政府は人身取引防止のための取り組みを強化したが、全体的な取り組み、特に被害を受ける危険の高い移住労働者の人身取引を防止する取り組みは、依然不十分なままであった。政府は、人身取引対策について全国レベルでの関係府省庁の連携機関と下位レベルでの法執行連携グループを維持し、それぞれが2022年に1度会合を開いた。政府は、政府による人身取引対策のための行動について第8次年次報告書を作成し、2014年人身取引対策行動計画で表明した目標に照らして、施策の取り組み状況を追跡調査した。2022年12月、政府は2014年以降初となる新たな人身取引行動計画を策定した。計画は、有罪判決を受けた人身取引犯への処罰の強化、児童の性的搾取を目的とする人身取引の認知向上、技能実習制度内での労働搾取目的の人身取引を含む労働者の虐待防止を優先事項とした。当局は、警察庁の公式ウェブサイトを含むオンライン、ラジオ番組、ポスター、冊子を通じた情報発信と、NGO、出入国在留管理局、労働基準監督署、日本内外の外国公館へのリーフレット配布を通して、人身取引に対する啓発活動を引き続き行った。政府は、商業的性行為の需要削減に十分な努力を払っていなかった。政府は、海外で児童の性的搾取に関与した日本国民を訴追する域外管轄権を有していたが、3年連続で、そのような事案の捜査を1件も報告しなかった。複数の省庁は、人身取引の可能性がある事案を特定できるホットラインの運用を継続したが、これらのホットラインへの通報が人身取引被害者の認知や人身取引に関する捜査に至ったかどうかの報告はどの省庁からもなかった。

2022年1月から11月にかけて、16万6728人の技能実習生が入国した。2016年成立の「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習制度改革法)」は、新規の技能実習生と雇用主が共同で作成する、生活環境、労働時間、その他の要素の概要である実習計画を、厚生労働省が認定するよう義務付けた。外国人技能実習機構は、新たな実習計画を審査し、18万5000件超のうち3565件を認証しなかった。しかし、このような初期審査にもかかわらず、専門家は、当局が送り出し機関の契約と受け入れ機関の契約との一体性、あるいはこれらの契約と実習生の実習計画との一体性を確保する監督手続きを十分に実施せず、その結果、内容に齟齬が生じ、多くの実習生が労働搾取目的の人身取引を含む労働虐待を被りやすくなったと主張した。外国人技能実習機構は、監理団体と技能実習実施機関の検査を引き続き実施したが、検査を行った団体数については公表しなかった。外国人技能実習機構は、労働者の身分証明書を取り上げて保管した、もしくは認証済み技能実習計画に応じた研修を提供しなかった数百人の雇用主に対して、法的拘束力のない指導を行った。法務省と厚生労働省は、技能実習制度への参加を5年間禁止するなどの処分を79カ所の監理団体・雇用主に下し、政府のウェブサイトに名前、住所、賃金未払いや認証済み技能実習計画の不履行などの処分理由を公表した。外国人技能実習機構は、実際の労働条件が認証済み技能実習計画内で雇用主が約束した労働条件から大きく逸脱している事案として358件を認知し、該当する実習計画を無効にした。これは、前年に無効にした実習計画157件から増加となった。このような行政処分に関して、外国人技能実習機構や厚生労働省が人身取引事案を認知したか、また外国人技能実習機構や法務省が刑事捜査に委ねたかどうかについて、政府からの報告はなかった。政府は概して、技能実習制度内の問題を、潜在的な人身取引犯罪ではなく、雇用主と従業員との間の個人的な争い、あるいは労働基準法下での行政違反として扱った。市民社会団体や国際機関は、外国人技能実習機構は職員数が不足しており、技能実習生の審査や労働搾取目的の人身取引などの虐待の申し立てを十分に調査することができなかったと引き続き報告した。例えば、報告によると、外国人技能実習機構は過剰な金銭徴収をめぐる労働契約の審査を行ったにもかかわらず、2021年~2022年に2100人のベトナム人およびカンボジア人技能実習生を対象に法務省が実施した調査では、80%があっせん手数料として平均4000ドルを課されていたと回答した。さらに、妊娠した技能実習生の4分の1は、辞めるよう言われたなどの嫌がらせを受けたと報告した。実習生の中には、雇用主による突然の契約変更や終了に関する仲裁を求めても、外国人技能実習機構は無反応であったと報告した者もいた。外国人技能実習機構は、雇用問題を報告し、母国語で支援を求めることができる技能実習生向けのホットラインを設けていた。ホットラインは191件の人身取引に関する報告を受け、前年の69件から増加した。このような苦情が人身取引被害者の認知や捜査に結びついたかどうかについて、政府からの報告はなかった。

2022年7月、法務省は、技能実習制度に明記されている外国人の研修という目的と、労働者虐待という実態との乖離を埋めるため、関係府省庁による技能実習制度の見直しを行うと発表した。2022年11月、政府は、技能実習制度の改革または廃止、労働者が負う募集費用への対処、労働者に雇用主を変更する権限を与えるかどうかを決めるよう提言を行うため、企業、労働組合、学者、弁護士の代表者から構成される有識者会議を立ち上げた。法務省と有識者会議は、市民社会との会合を複数回開催したが、有識者会議には市民社会の代表者は含まれなかった。有識者会議の最終提言は、2023年秋に取りまとめられる予定となっている。

政府は、14の送り出し国との間で技能実習制度に関する協力覚書を維持した。協力覚書は、依然として、募集行為を規制する日本政府の主要な手段であり、政府は協力覚書を通じて送り出し国と3回の会合を開催した。しかし、協力覚書は依然としてほぼ効力を発揮しないままであった。技能実習生に高額の借金を負わせるような「過剰な金銭」の徴収など、募集機関や送り出し機関による虐待的な労働慣行や労働搾取目的の人身取引犯罪に対応していない国からの実習生受け入れを中止する義務を、政府が多くの場合順守しなかったからである。日本とベトナム政府は、まだ実施されていないが、ベトナム人技能実習生を直接募集できる仕組みをまとめた。報告によると、この仕組みにより、双方の政府にとって、手数料を含む募集プロセスの可視化が向上することになる。政府は複数の送り出し国政府に対して、送り出し機関による10件の不正行為疑惑を報告した。法務省は23の送り出し機関の認証を無効とした。これは、前年の19機関から増加した。

政府は、建設、造船、介護など13産業分野の人材不足を補充するため、特定技能ビザ制度を引き続き実施した。専門家は、同制度は技能実習制度と同様、労働搾取目的の人身取引を含む労働者の虐待への脆弱性を高めており、政府の監督措置が同じく欠けているとの懸念を引き続き示した。特定技能ビザ取得者は、同じ業種内であれば雇用主を変更することができ、資格試験が同じであれば職種を変えることもできる。技能実習生は、技能実習制度内での人権侵害が立証されたなど、限られた場合においてのみ雇用主を変えることができる。NGOは、技能実習生が雇用主を変更する際のこのような構造的かつ実質的な妨げが、依然として大きな障害や搾取の手段となったと引き続き報告した。2022年、技能実習生による転職申請は6700件あった。そのうち何件を認可したかについて、政府からの報告はなかった。NGOは、搾取された技能実習生による合法的な転職申請の約10%を当局が認可したと報告した。日本の法律により、営利目的の人材あっせん機関や個人が免許要件のない「登録支援機関」となり、労働者を募集するブローカーと雇用主との間を有料で仲介することが可能であった。専門家は、このような業務料は、この制度下で入国する移住労働者に対して、借金による強要への危険性を生み出す可能性があると報告した。

人身取引の概説

過去5年間に報告されたように、人身取引犯は、日本人および外国人の男女を労働搾取目的の人身取引および性的搾取目的の人身取引の被害にさらし、日本人および外国人の児童を性的搾取目的の人身取引の被害にさらしている。人身取引犯はまた、東アジアや北米など、日本を越えた送り先で搾取する前に被害者を域内のどこからでも日本経由で輸送する。人身取引犯は、主にアジア出身の移住労働者の男女を労働搾取目的の人身取引の対象とするが、その場所は、日本政府が運営する技能実習制度などの事業に参加する企業なども含まれる。日本で急速に増加する外国人留学生は、虐待的でしばしば詐欺的な就労・就学契約条項のため、単純労働の分野において人身取引の被害者になる危険性がある。北東アジア、東南アジア、南アジア、中南米およびアフリカからの男性、女性および児童は、雇用または偽装結婚のために来日し、性的搾取目的の人身取引の被害にさらされる。人身取引犯は、バー、クラブ、売春宿およびマッサージ店での性的搾取を目的とした人身取引のために外国人女性を日本へ入国させやすくしようと、外国人女性と日本人男性との偽装結婚を利用する。人身取引犯は、時には募集に際して給与の1年分以上に相当する借金を負わせるなど、借金による強制、暴力または強制送還の脅迫、恐喝、パスポートやその他書類の没収、その他の精神的な威圧手段を用い、被害者を強制労働や商業的性行為の状態にとどめる。雇用主は、多くの移住労働者に、生活費、医療費、その他の必要経費を支払うよう要求し、労働者を債務による強制にさらしている。売春宿の運営者は、素行が悪いとして恣意的に被害者に「罰金」を科すことがあり、それにより被害者が借金を負っている期間を強制的な措置として引き延ばしている。報告書対象期間に、人身取引犯が求人情報ウェブサイトやソーシャルメディアを介して高齢の外国人と接触し、宗教あるいは退職関連を装った詐欺を用いて、隠蔽された薬物をアフリカ諸国から日本を経由して米国にだまして運ばせたとの報告が複数あった。報告書対象期間にはまた、ある国際機関がカンボジアの電話詐欺拠点にて、少なくとも1人の労働搾取目的の日本人人身取引被害者を認知した。

人身取引犯は、日本人と外国人、特に十代の家出した少年少女を、性的搾取を目的とした人身取引の被害にさらしている。組織犯罪とつながりがあることが多い「援助交際」やさまざまな形態の「JK」ビジネスが、性的搾取を目的とした日本人児童の人身取引を依然として助長している。報告によると、中国、韓国、ラオス、フィリピン、シンガポール、ベトナムからの児童が、こうした場所で搾取されている。COVID-19の感染拡大により、失業および家庭内暴力が急増し、それにより、特に家出した児童など、一部の日本人女性や少女が「援助交際」に従事する危険性が高まった。「JK」バーの経営者は、LGBTQI+の青少年を含む一部の未成年の少年少女を、ホステスやクラブのプロモーターとして労働搾取目的の人身取引の対象にする可能性がある。高度に組織化された商業的な性のネットワークが、地下鉄、若者のたまり場、学校、インターネット上などの公共の場で、被害を受けやすい日本人女性や少女を標的として、商業的性的行為を目的とした施設、小規模音楽演奏会場、小売店舗内、リフレクソロジー店にて、多くの場合借金による強要により性的搾取を目的とした人身取引の被害者とする。こうした女性や少女は貧困状態で生活しているか、または認知障害がある場合がある。モデルや芸能事務所に見せかけた団体の中には、詐欺的な募集手段を用いて、日本人男性、女性、少年および少女に不明瞭な契約書に署名するよう強要し、その後、法的手段をとる、あるいは不名誉な写真を公表すると言って脅し、ポルノへの出演を強要する団体もある。トランスジェンダーの若者や大人の中には、自身のジェンダーを肯定するケアの資金源として、規制されていない都市部の歓楽街で雇用を求め、その結果、労働搾取や性的搾取目的の人身取引に利用される者もいる。入国を仲介する日本の民間業者は、日本人とフィリピン人との間に生まれた児童とそのフィリピン人の母親が日本に移住し、日本国籍を取得することを、多額の手数料を取って支援する。日本到着直後、借金を返済するため、性的搾取目的の人身取引の被害者となる者もいる。入国仲介業者に見せかけた組織犯罪集団もまた、仕事があると偽って、このような家族を日本に誘い、女性を歓楽街で労働搾取目的の人身取引や性的搾取目的の人身取引の対象とする。日本人男性は依然として、アジアの国々における児童買春旅行への需要の源泉の一部である。

労働搾取目的の人身取引の事案は、技能実習制度において引き続き起きている。送り出し国と日本との間で過剰な金銭徴収の慣行を抑制することを目的とした二国間合意があるにもかかわらず、バングラデシュ、ブータン、ビルマ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、ラオス、モンゴル、パキスタン、フィリピン、タイ、トルクメニスタン、ウズベキスタン、ベトナムからの技能実習生は、漁業、食品加工業、貝類養殖業、造船業、建設業、繊維生産業や、電子部品、自動車、その他の大型機械の製造業で職を得るために、数千ドルの過大な労働者負担金、保証金や不明瞭な「手数料」を母国の送り出し機関に支払っている。技能実習制度の雇用主は、明記された技能実習制度の本来の目的に反して、多くの実習生を技能の教授や育成が実施されない仕事に従事させている。事前に合意した職務と一致しない仕事に就かされている技能実習生もいる。これら40万人の労働者の中には、移動と通信の自由を制限され、パスポートとその他個人的な法的文書を没収され、強制送還や家族への危害といった脅しを受け、身体的暴力、劣悪な生活環境、賃金差押え、労働搾取目的の人身取引を示唆する状態に置かれた者もいた。技能実習生に「処罰合意」への署名を義務付け、妊娠したことなどで労働契約を履行できない場合、何千ドルもの違約金を科す送り出し機関もあった。契約を結んだ技能実習の仕事を辞めた実習生は法的地位を失う。このことを利用した人身取引犯の強要により、労働搾取目的や性的搾取目的の人身取引に追い込まれる者もいる。元技能実習生を含む、特定技能ビザ制度下の外国人労働者の一部は、人身取引の危険性にさらされている可能性がある。

https://jp.usembassy.gov/ja/trafficking-in-persons-report-2023-japan-ja/
2023年人身取引報告書(日本に関する部分)