映画「セブン」にみる成長の演出がスゴい

川田十夢さんが絶賛してたので今さら見た映画「セブン」。確かに素晴らしかった。言葉で説明せずに象徴で見せる演出と余韻がすごい。

記事を作るとき、ライターとよく話すことに「どこまで説明的にするか?」ということがある。暗喩にしたほうが深みと余韻がでて印象的になるが、分かりにくくもなる。かといって言葉で説明するとダサい。

セブンではこのジレンマを解消するため、象徴が上手くつかわれている。十夢さんも指摘していた、主人公が寝るためにつかっていたメトロノーム。単調に音を刻むこのアイテムは、できるだけ物事から距離を置き、単調に平穏に暮らしたい、という主人公の無関心を象徴している。

もちろん最初から一気に分からないのだが、メトロノームのような人物である、という描写が繰り返されることで、それがわかってくる。キャラ設定は一言で表現できると最高だがおそらく最初から「メトロノームのような人」という性格のトーンを決めることによって、一貫した演出を作っている。

その単調なメトロノームに、乱調でパンクな相棒が加わり、リズムが乱されていく。ドラマとはトラブルのことなので「でこぼこコンビ」は脚本の鉄板の一つだが、リズムの違いによってこのでこぼこを作るのが素晴らしい。

そして主人公の成長も、このメトロノームによって象徴される。ドラマでの成長は、同じ物事に対して、違った反応をするようになることだ。それをこのメトロノームに対する主人公の態度の変化によって演出している。

ヒッチコックも映画は小道具が全て、と言ってたが、映画に登場する小道具に人物を象徴するものを置いておくて、それによって成長を象徴する、というのはすごく上手いやりかただな、と思った。

セブンは、史上まれにみるバッドエンディングで知られているが、本当にひどいエンディングだ。しかし一方で主人公の成長によってフォローがあるのでバッドでありながら素晴らしいエンディングになっている。

PR記事をつくる場合、商品をつかってたらバッドエンディングになった、というわけにはいかないので基本ハッピーエンディングで作るのだけど、セブンのような構成なら意表をついてバッドエンドで作るのもいいかも。

ドラマは基本、次のように主人公の成長を描く。

・主人公の苦手なものを描写する
・苦手なものによるトラブルの発生
・トラブルによる主人公の葛藤
・主人公の成長(苦手なものが消えている)

なので、成長をどう表現するか、というのが肝心なシーンになるが、これを例えばセリフで「俺めっちゃ成長したわ!」というとめっちゃダサいので、そういった意味でもセブンは素晴らしかった。

ちなみにコメディの主人公は永遠に成長しない。
これについては余談なのでプレミア向けで。

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