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【絵本原作】262匹のウサギと1匹のカメ

マラソン大会で誘導ミス 完走児童は1人→ビリの子が優勝」という嘘のような本当なニュースに触発されて童話かいてみた。

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ある所に、262匹のウサギと1匹のカメがいました。

足の速いウサギたちは、ノロマのカメをいつもバカにしていました。

「おいカメよ、どうしたらそんなに遅く走れるんだい?」

カメは言いました。「昨日より少し速くなったからいいんだよ」

ウサギたちは笑いました。「じぶんと競争するなんておかしいよ。本当に速くなったのか、俺たちと競争してみろよ」

カメは「うん、いいよ」と答えました。

262匹のウサギと1匹のカメは、3キロのマラソンレースに参加しました。

スタートと同時にウサギたちは一斉に走り出し、カメだけが取り残され、ノソノソと動いていました。

ウサギたちはカメをバカにしました。「まるで話にならないな」
「つまらないから、俺たちの中で誰が速いかを決めようぜ」

けれでもウサギたちなみんな速いので、なかなか差が開きません。だからお互いにカラダをぶつけたりして、なんとか相手を遅くしようとしたり、「もう少し手は小さく振った方がいいよ」と嘘のアドバイスをしたり、「どけどけ!」と大きな声で脅かしたりしていました。

それでも差はなかなか開きません。先頭のウサギはあせって、「俺が一番のうちに、速くゴールにつかなくちゃ」と思いました。そしてマラソンコースに近道があるのを思い出しました。

「先頭の俺がこっちに行けば、みんなついてくるだろう。近道も、みんなで行けばこわくない」そう思った先頭ウサギが近道に向かうと、やっぱりウサギたちはついてきました。

一方、カメはまだ500メートルしか進んでいませんでした。「ずいぶん走ったな」とカメは楽しそうな顔をして思いました。カメは走るのが好きだったのです。

やがて、ウサギたちが向かった近道にさしかかりました。ウサギの毛が近道の方に落ちていたので、カメはウサギたちが近道をしたことを知りました。

カメは不思議な顔をして思いました「ウサギは走るのが速くていつも自慢しているのに、走ることが嫌いなのかな?だってこの道を行けばすぐゴールに着いてしまう」

そう思ったカメは、近道をせずにマラソンコースを走り続けました。冬の寒い日でしたが、木漏れ日がカメに当たって、少し春の匂いがしました。「ああ気持ちいいなあ」とカメは思いました。

ずいぶん時間がたって、カメはようやくゴールに着きました。そこでは先についたウサギたちがうなだれていました。近道がバレて全員失格になってしまったのです。

「優勝、カメくん。あなたは1人だけ正しいコースを走りました」

表彰台の上でカメはニッコリとしました。
そして明日はもうちょっと、今日より速く走れるかなと思いました。

(おわり)

※参考:マラソン大会で誘導ミス 完走児童は1人→ビリの子が優勝

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