漫画の敵役キャラは社会の成功者とサラリーマンであり、主人公は常に幼児である。

WEBライターのヨッピーさんがPCデポについて書いている記事を読んで、次の話を思い出した。

仮面ライダーの敵、ショッカーはサラリーマンをモチーフにして作られたという。組織の国際的な発展をかなえるため、命令に忠実で死をもいとわない組織人だ。そしてあれだけの組織は合理的に統制しないと作れない。

一方で主役の仮面ライダーは個人プレイで、学生や無職であることも多く、働かずに「人間の自由のため」に戦う。あらためて書くと幼稚な人間だ。

面白いのは、上記のような設定は、漫画では王道だということだ。漫画「HOTEL」など多数の漫画原作を手がけた大石賢一氏は著書「マンガ原作 感動をつくる法則」の中で、

「悪役キャラというのは悪いというよりも、よくいる合理的な大人の組織人であり、反対に主人公は、損得勘定よりも自分のやりたいことを優先する幼児のような人間なのだ」といった意味のことを書いている。

敵キャラは合理性を推し進めていった結果、冷血に至る。そして社会で成功するが、いつのまにか人間性を忘れている。そこを自由に生きている幼児が指摘し、王様は裸だ!と激しいツッコミをいれる。これが王道だという。

あらためてこの話を思い出したのは、WEBライターのヨッピーさんがPCデポが起こしている問題について切り込み、「きれいな隊長」などと絶賛されている記事を読んだからだ。

PCデポ 高額解除料問題 大炎上の経緯とその背景

これがすごいのは、損得勘定でいえば、ヨッピーさんにとってこの問題にかかわるメリットはないということだ。ヨッピーさんとはこれまで数多くの仕事を一緒にしたが、真面目で正義感が強いので、義憤で書いたのだろう。

ヨッピー砲と呼ばれているのを見て、昔撮影したこの写真を思い出した。

ちなみにこの写真は合成用なので、撮影現場ではこんな感じだ。

漫画の敵キャラは自分が悪いとは思っていない。ただ合理的な人間であり、その合理性によって売り上げをあげてショッカーの雇用をつくっている。ショッカーが人を襲うのも、組織を大きくする命令に従っているだけだ。

この社会では強くなければ生きてはいけないからだ。しかしそこで、
「やさしくなければ生きる資格がない」と言えるのがヒーローなんだろう。社畜な大人には、そのようなことはとても言えない。

あまりヒーローというとお笑い記事を書く営業妨害になるのでこのへんで。

■関連リンク
・書籍「マンガ原作 感動をつくる法則


ちなみに漫画だけでなく、こういった「合理性と人間性のトレードオフ」はどちらが正しいという結論はでないので小説やドラマ、あらゆるところでテーマになっているし、物語をつくるときに必須だ。特に参考になるのはドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」だけど、それについては余談なので興味のある方だけ。

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