何度も読める本は無限大に安い。 佐々木大輔の「僕らのネクロマンシー」が割安でオススメ

「一度も使わなかった物は無限大に価格が高い」

知り合いが娘にこうアドバイスしていた。

「よくママが安いからといって一度も使わないものを買ってくるだろ?覚えておきなさい。価格ってのは何回使ったかによって決まる。一度も使わなかった物は無限大に高いんだよ」

そんなことを思い出したのは、佐々木大輔さんの「僕らのネクロマンシー」を3回目に読んでいるときだ。「本の価格=価格÷読書回数」だと思う。この本は限定販売で13,500円なのだが、3回目なので現在4,500円だが、100回読めば1冊135円だ。

この本は情報量が多いので1回では消化できない。何度も読んで楽しむ本だと思う。ジブリの鈴木プロデューサーが「ジブリ映画のTV視聴率が良いのは、情報量が多いからだ。情報が多くて1度では消化できないから何度も見たくなるんだ」と言ってたが似た話だ。

この本の情報が多いのは、元・LINE株式会社執行役員、現スマートニュースの佐々木大輔さんが「ササキル」の異名をもつ必殺仕事人であり、ネット業界に精通していることからも来ている。この本の舞台は少し未来の日本で、攻殻機動隊の手前の時代。AIとネットが次の段階に進化した様子を描いている。

そこで展開されるテクノロジーは一見ファンタジーに見えるが、実際に今後起こりううサービスと事業を想定して書かれている。そもそも事業を考える人と作家は似ている。想定する時間軸が違うだけだ。

事業家は利益が回収できる範囲で未来を考えるというリミッターを市場からかけられている。作家の醍醐味はこのリミッターが特にないところだ。仕事で直近の未来予想を行い続けた佐々木さんは、リミッターに苦しんだことも多かったのだろう。

その鎖を噛みちぎり、リミッターを外した思考と想像で書き上げた本書は、未来予想図の一つとして輝いている。私からみた佐々木さんは、本来作家である方が、たまたま仕事が抜群にできたために仕事をしているというイメージだった。なので佐々木さんの作家性が発揮された作品ができたのは嬉しい。

メディア、広告、AI、自意識、記憶、オリジナリティなど色々なテーマが盛り込まれているけど「すべての記憶を失ったとしても、その人はその人と言えるか?」というテーマが非常に面白かった。映画の「イノセンス」でも人間の命とは何か?が問われていたけど、この本ではその答えの一つが書かれていると感じた。

おもしろかったです!

購入と試し読みは次から。

「僕らのネクロマンシー」佐々木大輔著

読んでくれてありがとう!