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10.本当に会わなくなったその後のこと その2(最終回)

別れた日から6年がすぎて、なかやまは今31歳、俺は34歳だ。
なかやまとは今でもLINEしている。

なかやまは岐阜で楽しく家族3人で暮らしているし、
俺はSHIGETAのあと、きちんと好き過ぎる女と出会って、去年の秋に結婚した。比べる次元の話ではないが、今の俺にはなかやまより合っているし、なかやまより断然好きだ。当たり前だけど。

嫁は知らないが、嫁と付き合った日は、なかやまと付き合った日と同じ。
本当に偶然だけど、俺はド本命と付き合うとその日に付き合うのかな。

嫁と付き合っても、なかやまとの日々はたまに思い出していて、なかやまとの写真も残したままだった。キスプリの画像すらあった。もう何も思わないけど。

今まで俺はなかやまが思い出になってしまう日が来ると思ってなかった。
いつも俺は25歳の空間にいた。それでも、俺は今本当に嫁が好きで、好きで。
ただ、あのドラマチックな恋を思い出にする方法だけがわからなかった。

しかし、この間、嫁と結婚写真を撮りに行ったときのこと。
俺が「絶対に似合うからドレスを着て欲しい」とお願いをして、着てもらったんだ。

その時、パチン!よりも強烈に思い切り心境の変化があったことに驚きすぎてTwitterに俺は呟く。

今のお嫁さんと会うだいぶ前に好き同士のまま別れた元カノがいた。今は友達。なんとなく写メとか消せないままだった。でも、この間結婚写真を撮ったら、「あ。もう元カノと恋人だった時の写メ消そう」と思えた。俺は今のお嫁さんと付き合ってから、幸せだと思ってたけど、それが俺の1番楽しい時期の気持ちを本当に超えたのは、今のお嫁さんがドレスを着たときだった。俺は「今が1番幸せだなあ」と思ったんだろうな。さっき、2人の写メは消した。さよなら。もうほとんど思い出さないかもな。

君はいつか思い出になる。―そう思って俺は付き合い始めからずっとなかやまの写真を取り続けた。別れた後もずっと写真を眺めていた。

いつか想像したなかやまのおばあちゃんになった姿は、なかやまと別れた後の俺の姿だったんだな。写真を見ている時、あの頃が今も続いてるような感覚だった。

この回想録は、結婚写真を撮る前に、「これを書ききったら、思い出に出来るんじゃないか?俺はもう過去ではなく、今、嫁といる自分を生きたい」と思ったから書き始めた。

写真を撮るまでに書き上げることはできなかったが、写真を撮った今は君はもう思い出になっていた。

なかやま。
わがままでやさしくてすぐ肝心なこと忘れて理不尽でむかついてかわいかったなかやま。
俺は、そんなお前のことが本当に大好きだったし、心から愛していた。
悲しい思い出も、むかつく思い出も、楽しい思い出も、嬉しい思い出も、あのころの俺に全部くれてありがとう。

もう、「いつか」ではないけど、君と過ごした日々は俺の大事な思い出になりました。

これで、本当にさようなら。ありがとう。


おしまい。

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