角川『短歌』投稿欄掲載歌まとめ
葉の月と呼ばれたるもの去りぬれば曼珠沙華こそ野辺に咲くらめ
惜しみたる夏の別れに野良猫は野薔薇にキスのごとき小便
〈ユートピア〉を生きる僕らの叛逆の証としてのネコ耳である
駅前でボブ・ディランとか弾いてゐる陽気な外国人におやすみ
わたくしの青空を翔く一篇の詩であることの白亜の記憶
残業の夜に火星の影を追ふサラリーマンの銀縁メガネ
たくさんのスーツの人が終電に たくさんの僕がゐる世界です
曇り夜の惑ふひとりの晩酌を咎めるやうに麒麟が睨む
はじめての冬にとまどふ猫の仔の額に落つるひとひらの雪
凍星の輝きたれば氷点下丸まる猫を抱き寄せてをり
タンバリン鳴らしつづける猿がゐて課長は僕の名で呼びにけり
かたんかたん貨物列車の音がして埼玉の夜にひとりきりです
神紋を背中に刻みし青年へ吹き荒るる海の激しき夜風
号砲をいくども鳴らす こゑもなく泣く僕たちが走りだすまで
青色の表紙は褪せぬ 其のひとの褪せることなき歌を包みて
古本に赤き線あり 聾の子の一首になにを想ひしひととや
いつの日かだれかを愛するひとになるみどり児のまだあたたかき手よ
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角川『短歌』の掲載歌まとめです。最近はあまり出せてないし、出しても載らないので、こちらも気合を入れていきたいです!
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