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女だけじゃない。男だって生きづらいんだ! 髭男爵が社会学者と語る、男たちによる「男性学」のススメ

髭男爵こと山田ルイ53世が、男を取り巻く世の中の窮屈さについて、「男性学」を提唱する社会学者、田中俊之氏とたっぷり語りあった。女の私からみても素晴らしいトークだった。アメリカで「女性学」を学んだ私から見て、「男性学」はまさに表裏一体の鏡のようなもの。お笑い芸人がここまで深く、広く、面白く、鋭い洞察を提供してくれるとは! まさに感嘆の2時間だった。

普通じゃなくたっていいじゃないか!

~現代の日本社会における男性の生きづらさ~

お二人がそもそも「男性学」に目覚めたきっかけは?

 田中:僕は大学時代にバンドを組んでいたんですけど、卒業が近くなった頃、バンド仲間が次々にスーツを着てネクタイ締め始めたんですね。就職活動だって言って。あんなにバンドに燃えていたのに、みんなあっさり就職していくことに、どうしてみんなは疑問を持たないんだろうと僕は疑問に思ったんです。振り返れば、そこが僕の「男性学」への始まりでしたね。考えてみれば、日本は昔はみんな農家だったから、就職といっても農業を継いだ。だから歴史的に見れば、就職イコール会社で働くという概念が生まれたのは比較的最近のことなんです。

山田ルイ:僕は思春期にひきこもり人生を送っていました。あの頃は、自分は人生を余らせてしまった、もう普通にはなれないと思ってましたね。

田中:そう、まさにそれです。男性にはいつもひとつの生き方しかないんです。学校→卒業→就職→結婚→親になる→仕事で昇格する→定年退職。男の人生には、いつも一本のレールしかなく、しかもそのレール通りに進むことを社会から求められる。だからドロップアウトできないし、一度、ドロップアウトしたら髭男爵さんのように人生が終ってしまったと感じるでしょうね。日本ではいったんドロップアウトしたら、リカバリーできにくくなる。リカバリーに何年もかかるんです。

山田ルイ:僕は中学を一年留年した時、保健室登校みたいな感じで中学に復帰したんですけど、教室に入るとものすごい違和感を覚えた。一歳年下のクラスメートたちと一緒にいるのがものすごく苦痛なんですね。保健室登校は辛かった。ああ、人生はいったん外れると、もう元には戻れないんだな~と思いましたね。

田中:でも世の中には、卒業できない人もいるし、就職でうまくいかない人もいる。結婚だって今は、50代で一度も結婚したことがない男性は男性全体の20%もいる時代です。それに、定年まで体が健康で働ける人ばかりとも限りません。失業したり、病気で働けなくなったりした場合、女性よりも男性の方が社会からのプレッシャーや劣等感を強く意識してしまいます。「男性学」はこういう問題を考えていこうとするものです。

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