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【レポート】配信ジャッジから見たチャンピオンズリーグ

チャンピオンズリーグ公認大会千葉、皆さまお疲れ様でした!

様々なことが起きた大型イベントでしたが、いちボランティアジャッジとして参加させていただいた僕の視点から、レポートを書かせていただきます。

前提として、運営方針や母体については一切触れません。あくまで現場のいちレポートとしてお楽しみいただけると幸いです。

■そもそもボランティアジャッジとは

ポケモンカードには公式資格があります。

●イベントオーガナイザー

●公認ジャッジ

のふたつです。

詳しくは別記事にてまとめさせていただきますが、株式会社ポケモンが実施する「資格試験」に合格した人間が所持できる、ポケモンカードを盛り上げたいひと向けの資格ですね。

公認ジャッジは、上記両方の資格を持っている、ルールのエキスパートです。

[参考]ポケモンカード公式ホームページ

公認ジャッジは、今回のような公式大会を含め、大会でジャッジを務めることができます。もちろんこれは仕事ではないため、主催会社のスタッフとは異なり、ボランティアでの稼働ですね。

ボランティアジャッジとは、公式大会に参加する公認ジャッジたちのことを指します。


■実際の業務

一言にジャッジといっても、実際に行う業務は多岐にわたります。

今回でいえば

・ジャッジマネージャー

・フロアジャッジ

・配信ジャッジ

と分けられていますが、自分の持ち場のジャッジ対応はもちろん、それらに紐づくすべての業務が対応の範疇となります。

例えば、対戦スペースの確保。導線の変更や、備品の移動。周囲への呼びかけに、落ちたものの回収、会場案内などなど。

「大会が円滑に進むためにできることすべて」

が、ジャッジの対応範囲と言えます。

もちろん、明確に組織や体制が組まれており、指揮系統も可視化されていて誰が誰にどう伝えるかなども考えられていますから、そこは安心。

何かを対応するにしても「すぐ連携、すぐ調整」ができるようになっています。


今回、僕は「配信ジャッジ」を担当させていただくことになりました。配信されるプレイヤーの一挙手一投足を見守り、トラブルを未然に防いだり何か起きたときに裁定をする、という責任あるポジションです。

前日までにスタッフ共有資料は当然として、上級ルールの見直し、発売されたカードのQ&Aを洗い、使われそうなカードのテキストの勉強など、限られた時間の中でできる限りの準備をしてその日に臨みました。


■チャンピオンズリーグ、当日!

ジャッジの朝は早い。

つってもスタッフの方はもっと早くいらしてるんですけどね。ジャッジは「7時に稼働可能な状態」ということで、今回6時半前には現地つきたいなと思い、前日に起床時刻を4時に、アラームを爆風スランプにして寝ました。

当日。

完全に外は暗くて、日によっては仕事でまだ起きてる時間に目を覚まし、「はしるーはしるーおれーたーちー」つってリピートで歌ってるサンプラザ中野の声を横目に冷たい水で顔を洗い、リュックを背負い、スニーカーに足を突っ込んで白い息を吐きながら有楽町線に走りました。

海浜幕張に着いたのが6時20分ころ。

にも関わらず、既に会場外に長蛇の列が出来上がっており、目を丸くしながら集合場所に向かいました。

途中でジャッジマネージャーアシスタントと合流し、集合場所へ。マネージャーやほかジャッジたちと「おはよー」「さっみーねー」などと話しながら控室に向かいます。

途中、ほかスタッフさんにもご挨拶しながら、控室でわいわいと準備します。「すんげー人だけど、がんばろー!!」とみんなで談笑しながら着替え、7時にフロアへ。


階段を下り、重い扉を開け、広い広いイベントフロアに入りました。

途端、全員の顔が変わります。緩んだ顔は引き締まり、背筋を伸ばすのです。ここからは業務。趣味でも仕事です。

総勢約70名ものジャッジミーティング。全体で挨拶と大枠の認識合わせをして、そこからはチームに分かれて別途ミーティングです。

ここから、僕の配信ジャッジとしての業務が始まるのでした。


■持ち場に立つだけが業務じゃない

配信ジャッジチームは4名。今回卓はひとつなので、うまくローテーションする形になりました。僕は2戦目からの担当。

ジャッジマネージャーによる開会式も終わり、いよいよ予選第1回戦がスタート。総勢2,000人ものプレイヤーが一度にバトルを始める姿は何度見ても壮観ですが、なんとかうまく進めていきたいところ。

1回戦が終わり、ここで問題が発生。

比較的クリティカルな問題で、大会進行に非常に大きな影響を与えることになる内容でありましたが、ここで運営側は大幅にスイッチを切り替え、対応していくことになりました。

とにかく人手が必要です。手が空いているジャッジも総出で動き出し、動かせる手、出せる声はすべて使い、2,000人の選手の方々の命ともいえる勝敗カードをさばいていきました。

「お前が言うな」という話ですが、ここですごいのがジャッジチームです。本質的な問題がどこかを瞬時に理解し、連携し、指示し、共有し、動いてフィードバックする。その体制が既に出来上がっており、抜群の信頼感でやれることをやれるだけ行い、運営・集計の対応を少しでも円滑にできるよう動いていきました。

ジャッジチームは学生・社会人も年齢も性別も関係なく編成されていますが、少なくとも僕が見えている範囲ではみな、物事を自分ごと化として、自分のやれることを探してやれる限り動いていました。仕事以上に仕事人。

それでも、時間的には力及ばずといった形ではありましたが……

2回戦の準備も始まり、いよいよ次は僕の出番です。


■いくぜ配信卓!

配信卓を担当させていただくのはこれが初めてではありません。以前も同様の場に立たせていただいたことがあり、そのときも(二人のプレイヤーのその後を決めることになるかもしれないんだ)という重圧を感じながら、ステージに上がっていました。

しかし、今回はその重圧すら心地よく思える感触。プレイヤーの方と同じく、僕にとってもここは戦うべきフィールドなのです。

準備はした。

気持ちは落ち着けた。

緊張で(ちょっと)オナラ出た

よし。いくぞ。



卓担当のジャッジとして、行うべきことはある程度決まっていますが、逆にそれ以外は特に決まっていません。

ただ僕は卓に座った選手に対し、注意点や連絡事項を伝えるほか、必ず名乗ることにしています。

この狭い空間で戦う二人に対する礼儀のつもりで、また何かあったときに戦場に立つ三人目の人間として呼んでもらえるようにするためです。まあ、実際に覚えてもらえるかどうかはさておき、ですけどね。


視線の下でカードたちは混ぜられ、ぱちんと場に置かれ、トラッシュに向かっていき、勝利への道を切り開いていきます。


ジャッジはどちらかの目線になってはいけません。対戦そのものを見るということは、二人の選手それぞれの目線になって休む間もなく盤面を見て、それぞれの頭になって脳をフル回転させるということです。

片方の盤面と手札からあのプランだろうと考え次のカードがこれでおそらくこのゴールであろう、やはりそうだ、返す相手はその手札ならこの手を引きにいくかな、あ違う、なるほど、その手があるか、でも引けなかったか、では何ダメージだな、なんと入れ替えるのか、なるほどなるほど。


増加減少の変数はもちろん、効果の打ち消しや使用の条件なども考えながら、対戦を見守っていきます。

よくある話としてはエレガントソールのように2ターン目にダメージが変化する場合など、特殊な条件が介入する場合の確認。「2回連続でエレガントソール使ったんですけど、次は?」「前のターンに使っているのであれば、60ダメージは続行です」といったようなものなど。


基本的に、配信卓は常に盤面を見て介入することが前提であるため、トラブルは殆ど未然に防ぐことができます。

もちろん人間である以上ジャッジも見逃し等のミスをしますが、「実は2ターン前に●●〜」といったトラブルはあまり発生しません。実際、僕の担当させていただく対戦では1件も巻き戻しやペナルティ、裁定は発生しませんでした。


■8と6

当日の予選・本線の試合数です。時間にして約10時間。

試合と試合の合間は手薄なジャッジステーションの業務を引き受け、受付案内も行いながら、合計14戦を進めていきました。

不思議なことに、僕はイベントをやるとなるとあまり疲れない人間です。疲労感の代わりに、ひたすらカロリーを使って空腹になっていきます。

それでも、目の前で繰り広げられる刺激的な戦い、その管理をするという業務はとても楽しく、一時も場を離れたくない気持ちでいっぱいでした。

とはいえ、それで倒れてはいけません。きちんと連携して、休めるときに休んでいきます。

ちなみに、今回ボランティアジャッジには昼食と夕食が振る舞われました。昼のお弁当を平らげてもまだまだ足りず、朝余分に買ったおにぎりと、差し入れでいただいたチョコでエネルギーを摂取します。

一息ついたら、すぐに現場に戻ることにしました。

もっと休むこともできますが、このイベントを少しでも肌で感じていたい。1秒でも現場で動いていたいと思ったからです。

これは僕がイベントジャンキーであるだけで、本来は1時間なりなんなりと時間を取って休むことができますから、無理せず身体を回復させることができます。


■「ちょっと待った!」ジャッジのプレイ介入

僕は今回、2−3回程プレイに介入し指摘を行いました。

使用条件を満たしていないサポートの使用見逃しを止めたり、1ターンに1回しか貼ることができないエネルギーを2回め貼ってしまったものを戻す、などです。

いずれにせよ、その場で修復可能なものであったために重いペナルティなどを付与することはなく、場を回復することができました。

とはいえこれは結果論で、プレイヤー同士、更にジャッジが見逃してしまったことがあった場合は巻き戻しやミスとして、裁定がくだされることもあります。

今回配信ジャッジは一定以上のペナルティを独断で与える権利を有しており、だからこそ慎重に事を進める必要がありました。そういった意味では、トラブルを未然に防ぐことが出来て良かったのかなと思います。

人にペナルティを与えるのって、プレッシャーもありますし、なるべくならしたくないものなんです。

プレイを円滑に進めることが、ジャッジの役目ですしね。


■終了・撤収・そして打ち上げ

決勝戦の決着がついた頃には、すでに21時を回っていました。

その他ブースについては既に撤収が始まっており、大きく開けられた搬出口からは冷たい風はひゅるりと滑り込んできます。

それでも準決勝・決勝戦には多くの方が決戦を見守り、それぞれ良い対戦が繰り広げられ、大きな盛り上がりを見せていきます。

僕のメイン担当は準々決勝で終了。その後は伝達やサブジャッジのフォローなどに奔走していました。


優勝者が決まり、それと同時に備品の片付けを始めとした撤収準備。ジャッジの控室に戻り、備品返却なども行います。


控室に戻ると、緊張の糸が途切れた同僚たちが椅子に倒れ込み、怒涛の一日を力なく笑いながら労い合っていました。

「今日はおつかれ!」「あれはありがとう、本当に助かった」「すげーキツかったけど、よーやった!」「シャワー浴びてー!」

確かな疲労はあるけれど、そこには死ぬ気でそれぞれの一日を過ごした達成感と、お互いの信頼に満ちあふれていました。たしかに色々あったし、参加してくださった全員を笑顔にすることは出来なかったかもしれないけど、僕らは僕らのできることをできるだけやったのです。

そこには、プレイヤーとは違う形の、仲間同士のつながりがあったように思えました。


ありがとう、チャンピオンズリーグ。

バイバイ、ピカチュウ&ゼクロム。



そして、恒例のジャッジ打ち上げ!

近くの居酒屋を有志で予約し、広いスペースを借りた上で約30名ほどが集まり、どこにそんなに元気が残ってたのかと思うほどテンション高くビールを飲み、肉を引きちぎり、鍋をかっこみながらバカ笑いしていました。


でも力が残ってたのは、そこまで。


電車に乗るまで高笑いしてた僕らは、京葉線に乗り込んで席に座るや否や、泥のように力尽きていました。

みんなと別れ、新木場で有楽町線に乗り込んだあとは一瞬で記憶が途絶え、気がつくと地元の駅付近に。


僕は明日もまた仕事だなぁとため息をつくと、軽い足取りで家に帰ったのでした。


■最後に

チャンピオンズリーグに限らず、ポケモンカードのイベントには様々なドラマがあります。

そんなドラマの中には、選手としてでもなく、付き添いでもなく、裏方として切磋琢磨する人たちがいます。

それは僕らのようなボランティアに限らず、主催であったり、運営会社であったり、協力会社や、そのアルバイトの方や、それらを支援する業者の方々など、それこそ数え切れないほど存在しているのです。


今回は、そんな中の配信ジャッジをやってみた人のお話でした。

選手側とはまったく違う視点の内容、いかがでしたでしょうか。

たまにはこんなレポートもね。




それでは皆さん、明日も正々堂々、ルールを守って楽しく対戦をしましょう。

おしまい。


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