アメリカ連邦証拠規則(FRE) 404(a)(2) 性格的証拠の例外 Character Evidence Exemptions

【FRE404 Character Evidence】

404(a)性格的証拠

(1) 禁止された用途:人の性格または性格的特徴の証拠は、特定の機会にその人がその性格または特徴に従って行動したことを証明するために容認されるものではない。

(2) 刑事事件における被告人または被害者の例外:刑事事件においては、以下の例外が適用される。

 (A) 被告人は、被告人の該当する特徴について証拠を提出することができ、その証拠が認められた場合、検察官は、反論のための証拠を提出することができる。

 (B) 規則412の制限に従い、被告人は、被疑者である被害者の該当する特徴の証拠を提出することができ、その証拠が認められる場合、検察官は以下を行うことができる。

  (i) 反論するための証拠を提出すること、および

  (ii) 被告人の同じ特徴についての証拠を提出すること。

 (C) 殺人事件において、検察官は、被害者が最初の加害者であったという証拠に反論するために、被疑者の平和主義という特徴の証拠を提出することができる。

(3) 証人に関する例外:証人の性格に関する証拠は、規則607、608、および609の下で認めることができる。


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FRE404(a)(1)によれば、基本的に原告・被告の性格に係る証拠を提出することはできない。例えば、「この人物は過去にも傷害事件を起こしたことがあるから凶暴な性格だ」「この人物は今まで○回交通事故を起こしたことがあるから不注意な性格だ」といったものがこれに当たる。

一方、404(a)(2)は以下の4つの例外を定めている。

①被告人が自分自身の性格を証明すること

被告人自身の防御手段として、自身の性格を立証することが可能。検察(原告)側から立証を開始することはできない。

但し、②にも共通することであるが、被告人側が立証を始めれば、その性格的証拠について検察側も反論が可能になるため、議論が開始されてしまう恐れがある。(性格に関する議論のドアを開ける"open the door"ことになってしまう。

また、立証できる「性格(character)」は、事件に関連する性格に限られる。例えば、傷害事件なら暴力性という性格、偽証事件なら信頼性という性格、等。

検察側が反論できるのも、被告人側が提示した特定の性格に限られる。例えば、「被告人は平和的な人物である」という証拠に対しては「被告人は平和的な人物ではない」といったものに限られ、「この被告人は嘘つきだ」といったものは許容されない。

②被告人が被害者(原告)の性格を証明すること

相互傷害や互いに過失がある事件の場合、被害者(原告)側が先に攻撃を開始した、先に過失があった等の事情を証明するため、被告人は被害者(原告)の性格を立証することが可能。

この場合も、上記①と同様、検察側は反証が可能となる。

反証ができるのは、①の場合は被告人側が提示した特定の性格に限られたが、②の場合はこれに加えて、被告人の同じ性格についても可能である。つまり、被告人側が「被害者は暴力的な性格だ(だから怖くなって私も殴ったんだ)」ということで被害者の暴力的な性格的証拠を提示した場合、検察側の反論としては、(1)被害者は暴力的ではない、(2)被告人も暴力的である、の2つが可能となる。

③(殺人事件に限り)検察が被害者の平和的な性格を証明すること

①、②は被告人側のみが立証を開始できたが、殺人事件に限り、検察側は被害者が平和的な性格だったことを立証できる。例えば被害者と被告人しか現場にいなかった場合で、死人である被害者に口なし、という場合の被害者側の保護のためである。

④証人の性格を証明すること

これは被告人側と検察側の双方が提示可能。つまるところ、相手側(自分側でもいいが)の証人が信用に当たるかどうかの性格的証拠ということである。


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404は、アメリカが陪審員性を採用しているからこそ、被告人(あるいは被害者)がどんな性格であったかで陪審員の判断が無用に傾かないようにするための条文である。

しかし、(日本においてもだが)とりわけ刑事事件については被告人側の立証が不利な場合が多いところ、ある種被告人側の防御手段についてアドバンテージを与えるために、例外的に性格的証拠を提示する機会を与えている。他方、これは反論のリスクを伴うため、その手段を取るか取らないかについては弁護人は慎重な判断を強いられるものと思われる。実務的にはどの程度頻繁にこの性格的証拠の議論に立ち入ることになるのか、今度機会があれば調べてみたいと思う。

それにしても、例外を定めたとしても、それを「特定の行動」と分けて立証することは難しいように感じる。人の意見や評判によって表現される性格とは、結局のところ現実世界においてその人物が表現した行動の積み重ねである以上、特定の行動なしには信頼性の薄い証拠になると思うが…。例えば「彼は暴力的な性格だ(OK)」「この前もイライラしてゴミ箱を蹴っていた(NG)」というのはどうしても違和感が拭えない(後者がNGな理由と認められる場合については、次の記事405参照)。
 

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