演奏中の写真撮影について思うこと。

ライブ中の写真撮影について、もう何年も悩んできた。
ずっとずっと考えてきたこと、ブログに書いてみようと思います。

私がライブを始めた高校生の頃は、みんなが持っていた媒体といえば、画質が荒くて、遠くから光の強いステージ上のミュージシャンの表情や指先を写真に捉えるには、まだまだとても難しいガラケーだった。
携帯電話で写真を撮る、ということはしていたけれど、今ほど多くなかったように思います。
今はスマホ時代ですね。
一眼レフカメラを持って会場に足を運ぶ人も、以前よりとても増えたように思います。
instagramやtwitter、FacebookなどのSNSで写真を簡単に公開できるようになったし、画質はとてもいい。
簡単に思い出を残したり、情報発信や自己表現ができるようになりました。
それはとてもいいことだと思います。
実際にミュージシャン側もすぐに告知画像や、ライブ報告などもすることができます。
動画をあげることもできる。
革新的です。

でも、ちょっと待った。
ライブ中にカメラをミュージシャンに向けているそこのあなた。
ミュージシャンに許可をとりましたか。
SNSに「こんなライブ行ってきたよ〜」と写真をアップしているあなたはどうでしょうか。
音楽を楽しむ場で、パシャパシャと音を出していませんか。
フラッシュをたいていませんか。
写真を撮ろうと頭上に上げた携帯電話や、あなたの体は、他のお客さんの視界を妨げていませんか。
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もちろん、写真撮影や動画撮影、SNSのような媒体にあげることをOKにしているイベントやミュージシャンもいます。
けれど、会場や演者に確認もせずにOKな場合ってあるのでしょうか。
私はないと思うのです。

そもそも、メジャーのミュージシャンのコンサートに行って、写真をパシャパシャ撮りますか。
きっと、会場スタッフに止められると思います。
チケットやWEBページなどに禁止事項などが書いてありますよね。
そこに写真撮影、動画撮影禁止と記載されていることが多いです。
野外フェスでも、転換中のステージや会場を写真に撮ることはOKでも、
ミュージシャンからOKを出されない限り、ライブ中の撮影は禁止されていることの方が圧倒的に多い。

海外アーティストのライブでは写真撮影も動画撮影もOKな場合がありますが、日本の場合、基本的にはNGだと思います。
それなのに、インディーズシーンになると、どうして許可も取らずOKになるのでしょう。
とても不思議です。

もちろん、良識ある方で「写真を撮りたいのですが、許可をいただけますか」という方はいらっしゃいます。
その場合には、当日のイベントの内容や会場をご説明して、可能か不可能かお伝えしています。
そして、SNSなどに写真を掲載する場合は、事前に必ず写真データを送っていただいています。
ライブ後の物販でお客さんと一緒に写真を撮ることもあります。

それでも。
圧倒的に上回る、無断で撮る人の数。
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Chanoというミュージシャンの立場から申し上げましょう。
私は音楽をするためにステージに立ちます。
写真を撮って欲しいという旨は、カメラマンさんやスタッフにしかお伝えしたことがありません。

私の音楽はアコースティックというシーンの中でもとても音が少ない。
私の声やギターの音がふっとなくなった瞬間に、切られるシャッター音。
その音によって、音楽を聴きたくて足を運んでくれたお客さんの集中が切れる姿を幾度となく目にしてきました。
アンプラグドの生音ライブでもです。

ワンマンライブでは毎回「演奏中の写真&動画撮影禁止」とお伝えしています。
撮影しようとする人の動きや、音、カメラやスマホの液晶の明るさを気にしないでライブを観ていただきたいからです。

それでもそれ以外のイベントでは毎日のように無断で写真を撮られます。
あろうことか白目を剥いているような写真までネットにあがります。
街中の音楽フェスなどでは、もう無法地帯。
「音楽を楽しむ≠写真を撮る」
「ミュージシャンを応援する≠写真を撮る」
ではないと思うのです。
そしてそれは、音数が多い、少ない、バンドか、ソロか、有名か、無名かは関係のないことです。
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街中で開催されるあるフェスに出演した時のこと。
私のことを知らない、初見のお客さんが前列にびっしりカメラを並べて場所取りをしていました。
リハーサルの時からシャッター音が凄まじい数聞こえてきて、ライブを始めるとさらに増えました。
もしも私がそのミュージシャンの歌が好きなお客さんの立場だったら、とてつもなく悲しい。
「自分は歌を聴きに来たのに。」と。

実際にライブの後に、どんな風にお伝えしたら良いか悩みながらお客さんやカメラマンさんに話したこともあります。
逆ギレされたり、もうライブに来なくなった方もいます。
挨拶一つ返してくれなくなった方もいます。
でも、後悔してない。
だって、私は私の音楽を聴きに来たみんなに楽しんでもらいたいから。

休日に遊びに行った先でも、勝手に被写体にされることがよくあります。
正直な話、スマホがこちらを向いていたり、シャッター音が聞こえてくると、少し怖く感じることが増えました。

例えば、自分の子どもが見ず知らずの人に無断でパシャパシャ写真を撮られていたら、ストップをかけませんか。
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撮影について、いろんなミュージシャン仲間と話し合ったことがあります。
「全会場、全部のステージで、お客さんに撮影禁止のアナウンスをしないといけないのか」という話もよく出ます。
確かに、アナウンス不足な場面はあります。
それは反省点として次はどうするか、考えることは大事だと思う。
けれどライブ中に、「写真撮らないでください」と言われるのは、きっと撮る側も嫌でしょう。
まして、限られた演奏時間の中で伝えるようなことでしょうか。

写真を撮りたい気持ちもわかります。
ただ、その会場のみんなが気持ちよく楽しめるために、何が必要なのか、考えてみてほしい。
それは演者も、会場も、お客さんも。
ミュージシャンはフリー素材じゃない。
シャッター音は、スナック菓子をボリボリ音をたてて食べることと何ら変わらない。

実際にこのブログを読んで、びっくりする方もたくさんいるでしょう。
後ろめたい気持ちにさせてしまった方もいるのでしょうか。

誰を責める気も、誰かを排除する気も、私にはありません。
「いつもありがとう」「これからもよろしくお願いします」の気持ちを込めて、このブログを書きました。

音楽は自由です。
ライブはステージに上がる演者だけではなく、
その日足を運んでくれるみんなとつくるものです。

だから、一緒に考えてほしい。

気持ちよく、また会いたいから。
そして、観てくれるみんなのことをもっと大事に、唄をうたいたいから。



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