見出し画像

濃ゆいの歓迎! 和樂webスタッフが選ぶ2022年上半期「オモシロカッタ!」記事

最近めっきり着る機会が減ったクローゼットのスーツにうっすらカビが生えていて、近くのクリーニング店に持って行った。ググって出てきたショッピングモールの1階にあるチェーンの店。初めてだけど、こういう所はきっと支払い方法がいろいろあって便利そうだし。

「すいません、実はスーツにカビが……」
「ちょっといやだーん!」

出てきたおばちゃんは僕が「カb」と言った瞬間に腰に両手を当ててそう叫んだ。力道山で画像検索すると出てくるあのポーズに、ビューティーディレクターIKKOさんみたいな口ぶりで、こちらとスーツを見比べている。

「なんでこんなにしちゃったのもうー!」

笑って返すべきだろうか。それともガチで怒っているなら謝るべきか。力道山ポーズのままのおばちゃんにどういうテンションで返すべきかわからず「え、あの、いや……」とまごついていたら夏のクローゼット講習が始まった。

「閉めっぱなしだったんでしょクローゼットほんとにもーダメよークーラーかけたときにクローゼットも開けとくのよそんで扇風機当てるの床には新聞紙ね湿気吸ってくれるからあと……」

こんなに強制的な講習を受けたのは免許更新のとき以来だろうか——。受講しながら、自分の意識はまさに一瞬にして、おばちゃんの「The world of クリーニング」の中に連れ去られてしまった。全然行きたくないのに。でもまあまあ勉強になる。そしてこのワールドにはなんとなく心地よさがある。情報量が多すぎて半分以上入ってこないけど自分はもうおばちゃんのファンになっている気がする。現に今おばちゃんのことをこうして夢中で書いている。

これほどいとも簡単に他人を自分の世界へ引き込むなんて。力道山ポーズが何らかの権威を象徴しているから? IKKOさんのトーンに潜む若干の威圧感のせい? いや、おばちゃんは至ってやさしいし、むしろ可愛げすらある。そうだ、和樂webにもこんなふうに驚き心地よさがあり、そして独自の世界へと僕らを連れ去ってくれる記事がたくさんあったら……

ナンダカオモシロソウダ!の基準

どうも、和樂web編集部スタッフの安藤です。無駄に800字も費やしてしまいました(スーツは無事に帰ってきました)。さて、和樂webではいつもライターの皆さんから寄せられる企画を編集部で検討し、「ナンダカオモシロソウダ!」と思ったものについて取材・執筆を進めていただいています。

企画会議では、「日本文化の入り口マガジン」を土台に置きつつ、書き手独自の視点や世界観をゴリゴリ推し出した、上の「おばちゃん」みたいな記事を積極的に取り上げています。単なる「へー」では終わらない、万人受けはしないかもしれないけれど濃ゆーいファンが生まれそうな記事。そこから濃厚なコミュニティを創造できるのではないか——僕はあのおばちゃんのYouTubeチャンネルがあったらお金を払ってでも観たいと今では思っています——このように考えているのです。

日々公開される一つひとつの記事に対してなかなか個別にフィードバックを伝えることができないため、ここで和樂webスタッフ皆で、今年上半期に公開された記事の中から「オモシロカッタ!」と感じた記事を各自1つずつ選ばせていただきました(PVなどの数字には一切とらわれず、編集部内のスタッフが書いた記事も含めて選んでもらいました)。
普段編集部がどんな記事を「コレハオモシロイゾ!」と思っているのか、よろしかったらご覧ください。

上半期 私のNo.1「オモシロカッタ!」(順不同)

「そうめんゆでるな!」チャンネル登録者数37.5万人、 75歳のユーチューバー川原恵美子さんって誰だ?

書いた人:北村由起さん
選んだ人:瓦谷さん
理由:「そうめんゆでるな!」えっ、どういうこと?タイトルが気になって読んだら、この記事で紹介している川原さんのファンになっちゃいました!「田舎そば川原」をオープンしたのも自然な流れからで、75歳にして人気ユーチューバーになったのも、たまたま。。。このユルさ最高! ライターの北村さんが川原さんに対してリスペクトしているのも、伝わってきます。そうめんをしっかりゆでていた私は、この記事を読んでから改めました。お蔭で、この夏は、美味しいそうめんを頂いてます♡

九州人はなぜキレンジャーなのか?源流は古事記・日本書紀にあった!?

秘密戦隊ゴレンジャー Blu-ray BOX 3(amazon.co.jpより)

書いた人:角谷正樹さん
選んだ人:平安暴走戦士~chiaki~さん
理由:九州にふんわりもっていたイメージが、古事記・日本書紀から刷り込まれていたことがわかり面白かった! ちなみにアイキャッチ画像が「酢豚ではないか」とtwitterで書かれていた。私も酢豚じゃないかと疑っていたので、よーく目を凝らしてちゃんとカレールーであることを確認した。なぜこのカレーを選んだのか聞きたいなと思う。

不安になると求める色?「紫」はなぜ“ゆかり“と読むか、理由や意味を解説

書いた人:さないちえさん
選んだ人:アキナスさん
理由:歴史の授業などでなんとなくインプットがあった「紫は高貴な色」その由来たる冠位十二階最高位カラーというところに留まらず、日本の文化・芸術との関わりから、な・なるほど〜!と膝をうつ紫の呼び名の意味、心理的イメージまで「紫」にとことんこだわった記事です。シンプルな題材ながら、読み進めるごとに奥へ奥へと連れて行ってくれるところが魅力的です。とまこさんのダジャレ合いの手もじわっと面白いです(笑) 紫をなぜ「ゆかり」と読むか?その答えはぜひ記事をチェックしてみてください!

マジで悲劇の5秒前☆ヘレン・ハイドの浮世絵に「育児あるある」アテレコしてみた【誰でもミュージアム】

書いた人:平安暴走戦士~chiaki~さん
選んだ人:安藤整
理由:子供が描かれた浮世絵にアテレコしただけで、マジでママの悲鳴が聞こえてきた。浮世絵そのものがおもしろいわけじゃないのに、編集する人の目線ひとつでオモシロクできるんだなーと。しかも「子育てあるある」的なことも共感できちゃう。マニアックなネタを拾ってくる必要はなく、書き手の目線次第でパブリックなものもおもしろくできるし、ふざけられる、ということがよくわかりました!

オッペケペーだけじゃない!日本の演劇「新派」を知る7つのヒント

書いた人:塚田史香さん
選んだ人:サッチーさん
理由:①出だしから音を交えた設定で引き込まれる
②3人に話を伺うので、新派の理解が深まった(偏った感じがしない)
③総合して、歴史や社会的背景、楽しみ方などが一本でわかる、まさに日本文化の入り口となる記事だと思います!

ちょっと何言ってるか分かんない。ガンプラが静岡で作られる理由は徳川家康にあるって?

書いた人:角谷正樹さん
選んだ人:あきみずさん
理由:企画タイトル見たときには、本当に何言ってるか分からなかった。意外すぎる繋がりにびっくりすると同時に、「歴史」の根本を見た気がした。

ひいひいひいおじいちゃん召喚!東京・上野の歴史を183歳の御家人が解説します【妄想インタビュー】

書いた人:安藤整
選んだ人:鳩さん
理由:2022年は藝大アートプラザのことでいっぱいいっぱいで、和樂webの記事は一読者として読ませていただきました!昨年に比べると専門的なテーマの記事が多いような印象がありましたが、この記事は今までありそうでなかった「妄想インタビュー×街歩き×歴史」という組み合わせのテーマがおもしろかったです! 妄想インタビューってめちゃくちゃ難しいと思うんですけど(コント力、試されません?)安藤さんの塩梅が絶妙で、最後まで読んじゃいました。



和樂を応援してくださる方の投げ銭お待ちしております。