見出し画像

「#オンライン7分演劇祭」感想

先日、ムナポケさん主催の「#オンライン7分演劇祭」に参加・出演させてもらいました。

徳島⇔香川の合同チーム「チームすだちうどん」で参加。
徳島県の名産の「すだち」と香川県の名産「うどん」をがっちゃんこさせたネーミング。ゆるい感じが好き。
しかし、現実的に「すだちうどん」ってお目にかかったことがあまりない。今度、見かけたら食べてみよう。

作家さんは徳島県の「西浦真弓」さん。
役者としての西浦さんは拝見した事ありましたが、作家としての西浦さんは初めまして。

タイトルは「隠し事」

とてもシンプルなタイトルだけに「隠し事とは何か?」っていうのをずーっと探っていける面白さ。
「世にも奇妙な物語」的な面白さがあって、「絶対にあり得ないけれど、もしかしたら、あり得るかも」と想像してしまう。

演出家は、これまた徳島の「大木茂実」さん。
以前、江戸川乱歩のお芝居を創作する際にお世話になった演出家さんです。
オンラインで演出を受けるのは初めてでしたが、やっぱり流石だなと思いました。
多分、最初にある程度の構想を練ってくれているのですが、役者の演技に応じて臨機応変に対応してくれる。
ZOOMとオンラインの特性をフル活用してくれるので、リアルな演劇とはまた違った面白さを改めて実感できました。

共演者は徳島県の藤本康平さんと、香川県の与力さん。
兎にも角にも安定性抜群の2人です。安心感が段違い。
オンラインという離れた場所(与力さんは同空間にいましたが……)にいながら「相手を感じて演技をする」というのは、最初はなかなかに苦難の連続でした。
自分の画面に自分も映っているから、それを見てしまって「自分の演技は大丈夫か」という、ベクトルが自分方向にしか向かない事が多かった。
でも、徐々に稽古を重ねるにつれて、それも手放すことができた。
安易な言葉ですが、やっぱり「信頼感」というのは大切だな、と思いました。小学生の作文みたいな感想だけど。

この「直接感じる事ができないけれど感じる」という経験は不思議なものです、毎度の事ながら。

作品も拝見していたのですが、自分の出番を待つ緊張感で、なかなかに全てに集中する事はできなかったのですが……簡単に感想も残しておこうかなと思います。

●チーム三世帯(タチコレ有志ユニット)「リアルドッキリマリッジ」

「オンライン挙式」ってフィクション?ノンフィクション?いきなり現実と虚構がちぐはぐになる。
オンライン演劇で、このスピーディな会話を繰り広げるのって、結構、力が必要だと思っている。凄いよね。
名前のネタは笑いと共に「へー、そうなんだ」と感心する。地元の人たちにとってはあるあるネタなんだって。

●演劇ユニットFOX WORKS「コーヒーの冷めない時間で」

同空間にいながら、それぞれが自分の顔を映しながら物語が進行する。
この形式のオンライン演劇は初めて見たので「その手があったか!」と感心する。リアルの空間でも演技しつつ、カメラに向かっても演技しなくちゃいけないのは、頭が混乱しそう……。
「顔がよく見える」という特性を活かした結果だからなのか、それとも最初からななのか、皆様、表情を使った演技が達者。

●チームしゅんさん「好き好き大好き桃太郎」

落語のような軽快な喋りに引き込まれる。しかし、部屋が生活感溢れまくりで、それが何故か面白い。
途中で女優さんもカットインしてきて、語りだけではなくて絵的にも工夫してくれている感じいいな、と思う。
飾らない・気取らない感じがとても好感を持てる。果たして演技なのか?それとも、この方の素の姿なのか?

●半漁ドン「私による私のための走馬灯」

走馬灯かと思っていたら、「あれ?これは悪夢?」って思ってみたり。
ZOOMの共有機能を使用するという発想は、この作品を観て知った。これはいい使い方。
段々と走馬灯が現在を追い越していくストーリーなのに、終わるまで気が付かなった。それだけ自然に流されていってたのかな。「理想の走馬灯」っていう発想が面白かった。

●劇団みちくさ「狼煙」

繋がっているようで、現実的には繋がっていない。繋がっているのに。その中で狼煙を使って「繋がろうとする」という発想が好き。
人は何をもって他人との繋がりを感じて、それを確かなものに思うのだろうか……世の中は便利になっていくけれど、私たちは段々と分断されていってるのかな?
個人的にかなり好きなタイプの作品だった。

●清水宏「拝啓あこがれの演劇さま」7分ダイジェスト版

オンラインなのに暑苦しい……いや、下手すれば劇場で見た時よりも暑苦しいかもしれない……そんな熱量大爆発の演技。
ぼっこぼこに殴られ続けている感じがして「果たして、私は演劇に全てを捧げる事ができるのか?」と自問自答しながら、絶対に叶わない恋、みたいなものを感じる。この数分間で泣かされるとは思わなかった……悔しい……。
やっぱり清水さんの人を見る視点って暖かいな、と思った。

●演劇ユニット デッグデッグアー「なめんな」

オープニングのセンスよ!最高に好き!
まさかの手持ちカメラで、まさかの車を運転するなんて……度肝を抜かれっぱなしでした。最初から最後まで緊張感でドキドキしっぱなし。現場で事故が起きないか、という所でもドキドキしてしまった。物語と現実の両方でドキドキ。
リアルの舞台ではどんな演出をしてくれるのか……無茶苦茶に気になる。

●モリのTんかつ屋さん「あの日常~さっきハゲって言ったから~」

自分の出番が終わったばかりで、あまりちゃんと見れなかったけれど……熱で苦しんでいる時に見る夢、って感じ。
こんなにハチャメチャな演劇を見る事があまりないから、多分、上手く感想を述べられない。
コンテンポラリー・アートを見ているような感じかな……違う?違うかな?

●モジッターの民「オンライン牢獄」

一番、出演数が多い団体。そして、リアルの現場とオンラインの現場が行き来する。駄目押しで生演奏までしちゃう。てんこ盛り。画面共有も使ってたかな?
ニコニコ動画とツイッターが混ざった、インターネットのカオスの様相。そして、風刺的な要素も多くて、サブカル要素満載で好み。
演出家の頭の中、どうなってるんだ?というか、こんなカオスな現場、回せる自信がない。

●劇団Z・A「中山さんちの日常」

演劇作品をカメラで映しながらZOOMで共有してくれている感じの、一番スタンダードなはずなのに、オンラインになったら異端になってしまうという不思議。
セットの創り込みも凄くて、何処かの喫茶店で実際に演じてるのかと錯覚する……というか、最後まで気が付かなった。
芝居のテンションと熱量も高くて、物凄く生で観たいと思わされた……あぁ、劇場に行きたくなる。

●空宙空地「言わなきゃダメですか?」

カメラの傾きが演出かと思っていたのに、まさかの事故という事にびっくりした……ある現場を覗き見しているような感じの構図が好き。
劇王の作品だけあって、物語は2転3転して面白い。最初はずっと頭に「?」が浮かんでいたけれど、段々と回収されていって、最後にもうひとひねり加えられ、良い満足感。
文句なしに面白い作品だった。

最後に……

この「#オンライン7分演劇祭」には「見届人」システムがありまして。
劇団あおきりみかんの「鹿目由紀」さんが、お芝居が終わる度に「見届けました」と言ってくれる。それだけのシステム。
それだけのシステムなんですが、これが「ある」のと「ない」のでは全く違ってくる。
Youtubeライブとかならコメントが流れたりしますが、今回の様にZOOMのみを使用していると、何処までいっても「孤独」なのです。
でも、見届人がいる事で「演者」と「観客」を繋いでくれている感じがして、「繋がっているな」と思う。不思議なんだけど。
とっても画期的なシステムだった。

また、最近「感染者」が増加している。
いつになったら劇場に何の心配もなく、何の後ろめたさを感じる事無く通える事ができるのか……とってもモヤモヤとした時間が続いています。

私は「演劇は生が良い」と今でも思ってる。
それは「劇場という閉鎖的な空間で、観客と演者が、空間と時間を共有しながら、一緒に事件に遭遇する」という体験が好きだからだ。

でも、だからと言って「オンラインが駄目」という事もない。

全く別ジャンルとして位置しているように感じる。

そして、まだまだ発展途上。可能性がじゃんじゃか埋まっているような気がしている。

選択できるものが増える事が豊かだと思うので、これからも好き嫌いすることなく、色んな事に取り組んでいかなくちゃな、って思う。
取り残されないように。でも、ちゃんと感じながら。

最後までお付き合いただきまして誠にありがとうございます。 「サポート」も嬉しいですが「スキ」も嬉しいです。 思ったり感じたりしたことがあれば、是非「コメント」もしていってくださいね。 本当にありがとうございました。