第7回毎月短歌 2024年1月自選部門 結果発表および総括

2024年1月自選部門

本醸造酒賞(3席)

義父母からロンする時は深々と一礼してから裏ドラめくる/アゲとチクワ

「深々と一礼」しながらも、ちゃっかり「裏ドラ」を確認する行為にどこかユーモアがある。「義父母」との距離感が絶妙に伝わってくる。遠慮しているように見えて、実は仲が良いのだろう。どこか暖かい雰囲気も感じた。


2024年1月自選部門

吟醸酒賞(2席)

囚われてガラスの中をさらさらと落ちゆくことで時を生む砂/悠久


恐らくは砂時計のことを詠んでいるのだろう。それでいながら、時間そのものを本質的に捉えたような表現には、哲学性がある。「囚われて」「さらさら」「落ちゆく」、その全てがまるで時間そのもののようなのだ。浮遊感のようなものも感じ、不思議な魅力がある一首である。



2024年1月自選部門

大吟醸酒賞(1席)

子を送り作業着を着て母を脱ぐ帰宅するまで研究者である/水川怜


「着て」と「脱ぐ」の対象的な表現が効いていて、そこに主体の感じている「母」と「研究者」の気持ちの差異が表現されている。結句の「である」というどこか説明的なところも、ここでは効果的で、そこには母としての主体は居ないのだということを強調しているかのようである。


生活の中の出来事を詠むということは、どうしても同じような内容な歌が生まれがちだが、このように主体が感じていることを自分の感覚で詠めば充分に魅力ある歌になるのだ。もちろん短歌は短詩である以上詩性は必要であるが、それに囚われすぎると表現の本質を見失ってしまう。まずは自分の感覚を素直に、そして具体的に表現することが大事だと思う。今回選んだ9首には、どれも作者なりの感覚、そして作者として感覚があった。


ちなみに、1席2席3席の順に大吟醸酒賞、吟醸酒賞、本醸造賞としたのは、日本酒の価格順です。吟醸酒が大吟醸酒に劣るわけではありません。それぞれに個性があり、良さがあります。わたしは短歌も同じだと思ってます。


たくさんの応募、ありがとうございました。これからも皆様の生活が短歌で豊かになることをお祈りいたします。

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