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メランコリック

まったく観る気がない映画を前知識もなしに観られることはありそうでなかなかない。

今回は久しぶりに映画とそういう珍しい接し方ができた。

嫁さんの音楽家の友人がFBでこの映画をべた褒めしていたらしく、彼女とは価値観が共鳴するらしい嫁さんはすぐに公開日と上映館を調べたんだそうな。

単館系の映画らしく全国の映画館で封切られるまで時間がかかるのかと思いきや、去年の「カメラを止めるな!」の全国順次上映のタイミングのもたつきを反省してなのか、あれは鹿児島に住んでいた時だったからもたついたように感じたけれど、京都では本作と同様にサクサクと上映したのかはそういえばよくわからない。

鹿児島で「カメラを止めるな!」を劇場で観ることができたのは東京よりも二ヶ月か三ヶ月遅かったと記憶する。

そんなわけで、先週封切られた映画が京都でも今週末封切りということで、さっそく観てきた。

実のところ「カメラを止めるな!」は前評判が暑すぎ、高過ぎで僕は今ひとつその熱に乗り切れなかったというのが正直な感想だった。

そんな記憶がまだ残っていたので、本作にも「過度な期待は禁物」「ほんの少しでも見るべきポイントがあればめっけもの」くらいの底ハードルモードで臨んだ。

スクリーンに大写しになる主人公の歪んだ笑顔と挙動不審な身のこなし、これを見ただけで「もうオッケー!」となったが、ストーリーが淡々と進むにつれて謎が解け、解けた謎がまた絡み、ボタンを掛け違え、歯車の回転が狂い、と非日常的な設定の中の生活をする登場人物達があるときは飄々と、またあるときは淡々と来るべきエンディングに向かって歩き走る。

「絶対にバッドエンドだ」そんな予感は裏切られる。

いや、映画が終わった後にそのバッドエンドは来るのかもしれない。

そんな空気を孕み、観たもの達を素敵な共犯者に変えてしまい、それが全然嫌ではない、むしろ仲間になりたくなるという鑑賞後の気分がここ数年に観た映画の中では最高の映画だった。

オススメいたします。



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