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今朝の夢

大家「お世話になっている方から大きな海老をいただいたんだが、海老の甲羅を塀の上に飾っておくと金運が上がると聞いたことはないかい。クマさん。どんな風に飾るのがいいかちょっと相談に乗ってくれないかい?」

熊「はい。いいですよ。(カゴの中を覗きながら)しかし大きな海老ですねぇ。一体何匹いるんですか?」

大家「さぁねぇ。昨晩何匹か茹でて食べてしまったんだが、10匹よりはたくさんいたはずだがねぇ」

熊「(小声で)呼ばれてないな」

大家「ん?クマさん、何か言ったかい?よく聞こえなかったが」

熊「いえいえ、こっちの話です。ところで昨日召し上がった海老の甲羅はもう捨てちゃったんですか?もしあるんならそれを飾りましょうよ。こんな活きのいい海老を飾るんじゃ勿体無いったらありゃしないでしょう」

大家「あ?え?あ、ああ、それはそうなんだがクマよ、この海老は甲羅と身の離れがどうにも悪くてだな、食べる時に甲羅を割りながら食べるしかなかったんだ。だから、食べる時に甲羅はバラバラに・・・」

熊「ってことはですよ大家さん、甲羅を飾ると言っても食っちまうことはできねぇってわけですよね?だって、食う時に甲羅をバラバラにしちまうわけなんですから」

大家「・・・そう言うことになるなぁ・・・」

熊「なんだか勿体ねぇ話ですねぇ」

大家「(気を取り直して)だがクマよ、クマさんよ、なんのために海老の甲羅を塀の上に飾るのか?私の話を聞いてたかい?」

熊「ええ。まぁ。なんでしたっけ?」

大家「なんでしたっけ?じゃないだろう。金運ですよ。金運が上がるって」

熊「ああ、そうでしたね。それがどうしました?」

大家「どうしました?じゃないだろう。この海老はどうせいただいた海老だ。タダの海老だ。食べちまったら胃袋に収まって『はい、それまでよ』だ。しかしだ。海老の甲羅を塀に飾ればだな、金運が上がって、もっと大きな海老だって、烏賊だって、蛸だって買って食えるんだぞ。どうだい、クマさん」

熊「(小声で)どうせ俺は呼ばれないんでしょうけどね。しかも、烏賊と蛸って海老より下がってんじゃねぇか」

大家「ん?クマ、今何か言ったかい?」

熊「いいえいいえ。するてぇと『海老で鯛を釣る』と言った具合ですね」

大家「その例えがあってるかどうか急には判断できないが、まぁそんなようなところだ」

熊「(小声で)だいたい合ってるんだからいいじゃねぇか」

大家「ん?」

熊「いや、なんでもありません。てことはですよ。生のまんま塀に上に飾るか、茹でてから飾るか。できるのはこのふたつにひとつってわけだ。勿体ねぇなぁ」

大家「クマよ。私の話を聞いて・・・」

熊「(大家を遮って)ハイハイ!聞いてました!わかりました!じゃあ、どうします?茹でます?このまま行っちゃいます?」

大家「そこを相談したかったんだ。最近のこの日照りだろう。生のまんま海老をしかもこの大量の海老を塀の上に置いておけばすぐに匂いが出ると思うんだが」

熊「(小声で)そりゃあ茹でたって時間の問題・・・」

大家「え?なに?なんだい?」

熊「それはですね、茹でたとしても匂いはすぐに出ますよ。なにしろこの真夏のカンカン照りなんですから」

大家「そこなんだよ。困ったな」

熊「行き詰まりましたね」

大家「話は変わるがクマさん、茹でた海老の匂いっていうのは動物の本能を揺さぶるんだねぇ」

熊「藪から棒に一体どうしたんです?」

大家「いやね、昨日食べた海老の甲羅をうちの猫、ミケにね嗅がせたんですよ。そしたら喜んじゃって喜んじゃって」

熊「(小声で)そんなの当たり前じゃねぇか。俺だって喜ぶさ」

大家「え?まぁいいか。ちょっとここに昨日の食べ残しの甲羅があるんだが、そこの生き物に匂いを嗅がせてみてごらん。楽しいから」

熊「『そこの生き物』って言い方がふるってますね。どこに生き物がいますか?」

大家「そこだよ。見えないのかい?ほら、熊さんの足元に」

熊「足元?あ、これ?これ塀じゃないんですか?生き物だったの?どれどれ、ほれ海老の甲羅だぞ。どうだ?」

すると大きな石塀の端っこだと思っていたのは大きなナマズのアタマで、そこに海老の甲羅を近づけると今までじっとしていたナマズ=石塀の全身がぶるっと震えました。と同時に電動コーヒーミルのけたたましい音で目を覚ましました。
おしまい。

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