二級ウイスキー原酒の調達先は? そして一升瓶ウイスキーの正体とは?? 《一升瓶ウイスキー⑤》
■前回までのおさらい
この「二級ウイスキー」の説明と、「ボトリング設備は高いよ!」というところまでが、前回のお話です。
そして、一升瓶ウイスキーの属していた二級ウイスキーについて、掘り下げてみたいと思います!
■二級ウイスキーのウイスキー原酒の調達先って?
③他社から購入の場合、ウイスキーの売上がうなぎ上りでウイスキー原酒に余裕がなかった国内大手メーカーからは購入ができなかったでしょうから、どのように調達したのでしょうか?
これは、日本の酒税法における「ウイスキー」の定義にウイスキー原酒の国産・輸入の区別がないため、輸入ウイスキー原酒を使用しても、国産ウイスキーとして、販売が可能だからです。
日本の酒税法ではこのような「ウイスキー」の定義となっているため、当時の二級ウイスキーでは、以下のスペックもかなり存在したのではないかと思います。
つまり、日本で製造されたウイスキー原酒は入っていなかった二級ウイスキーも存在したと邪推できるのです。
一方で、輸入ウイスキー原酒に自社製造のモルトウイスキー原酒をブレンドして、二級ウイスキーをつくっていた酒蔵もありました。
(現在は安積蒸溜所を運営する笹の川酒造など※1)
※1 ウイスキーライジング P208 ステファン・ヴァン・エイケン(小学館)
◾️日本のウイスキー業界の対応
この「日本国産原酒が入っていなくても、日本国産ウイスキーを名乗ることができる問題」はウイスキーの等級制度がなくなって現在でも、酒税法上は同様の状況です。
これではやはり問題が生じるため、それを解消するため、2021年に日本洋酒酒造組合が「ジャパニーズウイスキーの定義」を定めました。
この定義では、「ジャパニーズウイスキー」と名乗る際には、日本国産原酒100%を指定しています。
ただ、法律ではなく組合の内規ですし、「ジャパニーズウイスキー」と名乗る際の定義のため、いまだに日本国内では、輸入ウイスキー原酒のみを使用していても『日本国産ウイスキー』と名乗って販売することが可能です。
■スコッチ業界の原酒売買
歴史的にスコッチ・ウイスキー業界では、ウイスキー原酒の売買が行われて来ました。今も行われています。
これは、農民のお酒としてのウイスキーが流通し、ブレンデット・ウイスキーが発明される歴史的な流れの中で、自然と誕生した商慣習です。
色々な味わいの原酒を、色々な蒸溜所から買いつけて、目指す味わいにブレンドして仕上げるというのが当たり前のスコッチ・ウイスキーの製造工程なのです。
このように原酒売買の商慣習のあるスコッチのウイスキー原酒ですが、「昭和の地ウイスキー=一升瓶ウイスキー」が台頭した、1970~80年代には、困った状況に置かれていました。
■スコッチ不況
第二次大戦後、スコッチ・ウイスキーはその生産量を徐々に回復し、新規の蒸溜所が開設されました。
しかし、1970年代に入ると、「原酒在庫が過剰に積みあがった」のに加え、若者の「スコッチ・ウイスキー離れ」が進みます。
こうして、スコットランドには、行き場を失ったウイスキー原酒の在庫がダブつくようになります。
スコッチ・ウイスキー業界の苦境を伝える一例としては、1984年、日本企業としては初めて宝焼酎と大倉商事が共同で、一時は世界最大クラスのモルト原酒の生産量を誇ったトマーティン蒸溜所を買収しました。
それくらいスコッチ・ウイスキー業界は苦境でした。対する日本のウイスキー業界は超右肩上がりで、原酒不足だったのです。
そして、コッチ・ウイスキー業界の苦境を伝えるもう一つの例としては、
という状況があったそうです。
このように
両者の思惑が一致し、スコッチのモルト原酒が大量に日本へ輸入されたのです。
■一升瓶ウイスキーの正体
一升瓶ウイスキー誕生の背景を、あらためてまとめてみたいと思います。
なかなか興味深い流れです。
■一升瓶ウイスキーの終焉
次回へ続きます!
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