社会面はどこに──四国4県紙の紙面構成の特徴
朝日、毎日、読売、産経の全国紙4紙(朝刊)は現在、共通して、おおむね以下のような紙面構成となっています。
1面に近い側に政治、国際、経済といった硬派面
最終面はテレビ番組表、ページをめくると社会面
中盤にスポーツ面と、文化、生活、オピニオンといった読み物系の紙面
しかし地方紙は全国紙と差別化するため、上記とは異なる紙面構成を採っていることがあります。
先日の記事で書いたように、このお盆の旅行で四国4県の県紙を購入しました。
これらの新聞を眺めていると、四国の各紙には紙面構成上の独自志向が強く見られます。特に「最終面からページを1枚目めくると社会面」という全国紙の常識が通用しません。
そこで今回購入した2023年8月12日(土)付紙面を見比べてみることにします。
県外で始まり、県内で締める徳島新聞
徳島新聞は、1面に近い側に県外ニュース、最終面に近い側に県内ニュースを配する構成です。「社会」を冠する面はありません。
総合面のうち2~5面が県外ニュースで占められる面です。詳しく見ると2、3面が事件事故を中心とした事実上の社会面で、4、5面が政治・経済・国際の硬派ニュースとなっています。
一方、県内ニュースは22、23面の「徳島総合」、20、21面の「地域総合」でカバーされています。11日に「選抜阿波おどり前夜祭」が行われ、12日が徳島市の阿波踊りの開幕日だったこともあり、「徳島総合」面はこの関連ニュースで占められました。
番組表や番組解説などは最終面ではなく中央の抜き取り可能な位置に固められています。これは東京新聞などと同じスタイルですね。
2、3面が「社会」面の高知新聞
高知新聞はこの日、24ページ建て。最終面に近い21~23面が「こうちワイド」面として県内ニュースの集積となっているのは徳島新聞同様です。
しかし22、23面に「事件・事故は2、3面」と明記され、2、3面が「社会」面を標榜し、3面タイトルの脇に「事件・事故」と添えられています。おそらく県内の事件・事故も「社会」面に位置することになるのではないでしょうか。ここは徳島新聞と違うところと言えそうです。
さて「おそらく」と書いたのは、この日の紙面で県内の事件・事故が一つも載っていないからです。「こうちワイド」面のうち22、23面はよさこい祭り関係のネタが占め、21面は県関連のスポーツに関する読み物系の紙面となっています。
4、5面の「総合」面は4面が国際、5面が政治関係中心となっています。面タイトルの脇には「政治・経済・国際」と添えられています。
放送・天気・生活がセットの四国新聞
香川県の四国新聞は、この日は22ページ建てでした。
最終面のテレビ番組表に続いて20、21面に番組解説や衛星・ラジオ番組表など、19面に「天気」、18面に「生活情報」を配置しています。実用的な紙面を終盤に固めるという紙面構成になっています。
総合面は2面が政治、3面が国際、5面が経済とすみ分けされており、2面の知事動静、3面の「うちの王様」(県内の誕生日の子ども紹介)、4面の生鮮・花市場市況欄を除くと県内ニュースはありません。
社会面では、17面では県内・県外のすみ分けがなく、混在しています。トップは県内帰省ラッシュピーク、カタには洋上風力開発をめぐる衆院議員汚職事件が並んでいます。
一方18面では、「県内の交通事故」欄(発生件数と死傷者数の表)を除けば県内ニュースはありませんでした。
名実ともに「総合」面の愛媛新聞
愛媛新聞は「社会」面が前半部に登場し、読み物系を除いて最もページ番号の大きいニュース面には「スポーツ」が配される構成です。
愛媛新聞の「総合」面は、まさにその名にふさわしく県内外、硬軟にかかわらずさまざまなニュースが盛り込まれています。
「総合」面の途中に位置する4、5面の「社会」面は、見開き右側の4面が県内、5面が県外とすみ分けされています。
番組表や番組解説の紙面が最終面付近に固められ、全国紙なら第2社会面が位置する26面は投書欄、続いて22~25面に「スポーツ」面が続きます。
新聞の両側を生ニュースで挟み、中央部に読み物系、という原則さえも超えており、全国紙に慣れた私には少々ごった煮感さえ感じます。
紙面構成はさながらスーパーの棚のよう
テレビニュースの場合は、天気やスポーツを除けば、取り上げるニュースの順番をジャンルによって決めるということはふつうありません。
視聴者が受動的に視聴するメディアである以上、重要度や注目度などの観点から、分野横断的にニュースを取り上げ、編集していくことが肝要とされます。
一方、新聞の紙面構成はスーパーの棚のようなものです。
青果、鮮魚、精肉、惣菜、乳製品、調味料、菓子などの商品分類ごとに棚が作られるのと同様に、新聞もニュースの分類ごとに紙面が作られます。
分類ごとに棚が作られているからこそ、客は目当ての商品を探しに行けるのと同様に、新聞の紙面構成のおかげで読者は関心のある話題に応じて紙面を検索できます。
スーパーでも基本的なレイアウトは店にかかわらず似通っているように、新聞の紙面構成も全国紙どうしでは同じような並びになっています。
日本の地方紙も、その地域のニュースに特化した専門紙というわけではなく、通信社配信の記事を利用するなどして全国・海外のニュースも広くカバーする総合紙としての性質を持つことがほとんどです。
したがって、地方紙でも、大阪在住の私にとって比較的なじみのある神戸新聞や京都新聞は、紙面構成はほぼ全国紙と似たようなものになっています。
しかし、四国4県の県紙は、ユニークな紙面構成を採っています。これらはそれぞれの県内シェアが高いためか、より地域のニーズに即する形での紙面づくりになっているように感じます。
どんな面があるかだけでなく、それらがどういう順番に配置されるかにも着目することで、新聞という商品の多様性が見えてくるのではないかと改めて思いました。
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