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SF要素をなるべく排してスター・トレックを語ってみる

はいちょっと無謀ですが、超有名シリーズ「スター・トレック」について書いてみようと思います。

スター・トレックの魅力は半分SFなんですが、もう半分はメッセージ性や教訓、つまり製作者のジーン・ロッデンベリーが伝えたかった事があると思うんです。

しかしながらSF好きでない方にはそのメッセージも届かないので、敢えてSF要素を抜いて、ストーリーなどの魅力を語っていこうと思いまして。

宇宙戦争の話ではない

「宇宙。それは最後のフロンティア。これは宇宙船エンタープライズ号が未知の世界を探索し、新しい生命と文明を求めて人類未踏の地に航海した物語である。」

スター・トレックのオープニングでは毎回こんな感じの言葉が語られます。

「スター・トレック」を日本語に直すと「宇宙探索」。あくまで未知の世界を探検して驚異の現象や新しい生命を発見したり、また他の宇宙人たちと出会い、平和的に交流することを目的として旅をするストーリーです。

たしかに一部の宇宙人とは確執があって領土問題などでトラブルが起こりますが、出来るだけ平和的に解決しようと努力します。

という訳で実は戦争の様な行為はほとんどありません(後のシリーズや一部映画では大規模戦がありますが)。

軍隊ではない

宇宙船の乗組員には確かに提督や大佐など色々な階級があって一見軍隊にも取れるのですが、上記のとおりあくまで宇宙探検が目的であり領土拡大や侵略が目的ではありません(ただし防衛はします)。その為兵器は最小限で、銃は(殺傷も出来るが)気絶させる為の機能があり、スターウォーズに出てくる様な小型戦闘機もありません。
また生命体に関しては生命を尊重するという鉄則があります。

未知の世界と生命体

スター・トレックには沢山の宇宙人や宇宙生物が出てきます。まだ知性のない生命体や原始的な生活を送ってる者、今現在の人間と同じくらいの文明をもつ者もいれば、宇宙を旅行出来るほどの文明をもつ者やそれ以上の者も。
性格も色々で、ミスター・スポックで有名な「論理重視」もいれば反対の「感情まかせ」「野蛮」「悪知恵が働く」「半分機械」などなど。

彼らと出会うことで、人類の過去を振り返ったり、未来への指標にする事で、人類の未熟な点や新たな可能性、または警鐘を探っていきます。

また時空の歪みなど、不思議な現象による未知の体験も起こります。同じ時間を何度も繰り返したり、過去や未来へ行ったりなどなど。それをどうやって解決するかというストーリーも多いですね。たまにコミカルな話もあります。

簡素化された問題提起

スター・トレックに限らずSFという架空のストーリーでは、人間のリアルな日常を取り込む必要がないばかりか、人間にとっては非常識やあり得ない要素を組み込めるという利点があります。

つまりこれを上手く用いれば、複雑な問題をシンプルにして問題提起できるんですね。
人種差別問題やジェンダーの捉え方、生命の権利などなど。

わかり易い例として、新スター・トレックのシーズン4の第23話「愛の化身オダン」のあらすじを。

人間の女性が、見た目は地球人男性とほぼ同じの宇宙人と恋に落ちます。彼の種族の一番の特徴は「外見の肉体」と「精神を司る寄生体」で構成される、いわゆる「共生生物」。
そんな彼が事故に遭い、肉体に致命傷を負います。
しかし寄生体を新たな肉体に移植すれば精神面だけは生き延びる。これは彼の種族では普通の事で、代わりの肉体もすぐに用意されます。そこで新しい肉体に移植されますが、その肉体は女性だった。
結局「地球人はこの変化に付いていけるほど、まだ進化していない」と言って別れる、というストーリー。

初回放送当時(1990年前半)は同性愛についてはまだ偏見があったということもあってこういう最後になったのもありますが、こんな感じで色々な問題提起や教訓になるストーリーが多数あります。

人類の可能性

「人類は大きな可能性を秘めた、素晴らしい生き物だ」
― ジーン・ロッデンベリー ―

製作者のジーン・ロッデンベリーの伝えたかった事はまさにこれで、スター・トレックを通して、人類に起こる様々な問題をクリアし、未知なる世界に勇気を持って進んでいって欲しい事を伝えている様に思います。

この事について語っているのが映画「ファースト・コンタクト」。
個人的にこの映画の中で重要なシーンは2つ。

一つはこの映画のテーマであり、ラストで描かれるファースト・コンタクト(異星人との初めての出会い)。西暦2063年の科学者コクレーン博士がワープドライブを開発し、実験に成功した事でファーストコンタクトに繋がります。この出会いから後のスター・トレックで描かれる全ての冒険が始まるのです。

そしてもう一つは、宇宙船エンタープライズ号から21世紀の人間リリーが見た地球の姿。
「リリーが見た」、つまりまだ(本格的に)宇宙に進出できていない21世紀の人類が未来の船から地球を見下ろした訳ですが、それが実現できたのはリリーおよびワープドライブを発明、成功したコクレーン博士たちの尽力の成果であり、それが巡り巡ってこのシーンに繋がるんですね。

新スター・トレックのシーズン3第4話「守護神伝説」にも似たようなシーンがあって、ピカード艦長が宇宙開発どころかやっと家や衣服を作れる程度の文明ををもつ異星人を(止むなく)宇宙船に乗せ、宇宙船の窓から惑星を見下ろすんですが、その時の会話にこういうのがあります。

艦長: 「私達地球人の祖先もあなた達の祖先と同じ様に、洞窟に住んでいた。そして家を建てる事を覚え、ついにはこのような船を造った」
異星人: 「いつか私達の種族も、空を飛べるようになる、と」
艦長: 「必ず出来るようになる」

この異星人の目を通して、人類がいつか宇宙を旅できるほどの可能性を持っている、と伝えています。

実際はドラマの様な光速の何倍ものワープ移動は無理かもしれません。しかし不可能が確定するまでは可能性があるわけです。

自分たちが思っている以上に人間には出来ることがある。
その事を宇宙の大スケールで疑似体験できるドラマでもあると思います。

さすがに全編を通して観るのはきついでしょうし、最初と最後を観れば大体分かる話が多いので、まぁ何か機会があったときにでも:)

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