コード進行:IV-V-III-VIについて色々

はじめに

以前Twitterで「IV-V-III-VIのコードはゲーム音楽職志望時には飽きられているから避けるべき」というのが流れてきました。

で、思ったのですが、、ゲーム音楽をやってきた身からすると、このコード進行使ったことあるかなぁ。。。無いかも。。というのが素直な感想。

IV-V-III-VIはハ長調で言うと「FM7-G7-Em7-Am7」となりますが、うーむ、思い出せないだけかもしれませんが、もう少し複雑なコードを含めた進行は意図的によく使うものの、このままの状態で使ったことは多分ありません、、。

で、このコード進行はJ-POPではかなり王道の進行だそうで、サビ頭でよく使われているとのこと。聴くと「あぁなるほどなぁ」と思います。

そうなると尚更サビの頭では使ったことは無いはず。というのはサビ前のコードはたいていV度なので、IV度に行くのは抵抗があるのです(クラシックではこのV-IVという進行は原則ありません)。

ただクラシック以外だと平気でV-IVは使いますけど、サビがある様な曲だと、というかサビがある曲をそんなに作ってないかもしれません。

加えて、特にゲーム中のBGMではサビっぽいサビを作らないので使い所がないイメージです(幕間やアトラクト、メインテーマなどでは使われてもおかしくないイメージ)。

そんな立場から見てみたこのコード進行、ダイアトニックコードのみで構成されていてそういう意味ではシンプルですが、個人的に言わせてもらえば中途半端なコード進行にみえます。

IV-V-VIにIIIを入れているのが一応「ひねり」ではありますが、それならばもっとひねろうよ、と思う訳です。
(もちろんこのままでも良い場合がありますし、実際良い曲、売れている曲も多数ありますが)

そこでここではIV-V-III-VIを展開して、もっと複雑なコード進行にしようという解説をしてみようと思います。
ただし以下の意味を理解している方は必要ないと思います:)

コードの機能(Tonicなど)
ドミナント・モーション
セカンダリ・ドミナント

もちろん、既にメロディが出来上がっている場合はひねりも限定されていきます。コードから作曲する場合ならこの解説が役に立つかもしれません。

ではちょっと書いてみましょう。

こちらに実際に音にした曲をupしましたので、聴きながら読んでみてください。

IV-V-III-VIのアレンジ

コードの機能

どうひねるか、というところで書いていきますがその前に、コードの機能を覚えておきましょう。
コードには主に3つの機能があって、以下のように区分けされています。
ついでに、これらの和音に7度の音「7th」を付け足します。実はこういう説明では7thをつけるほうが一般的で説明もしやすくなり、実際弾いても付けない時とあまり違いはありません。

Tonic(トニック): 安定をイメージした和音。起承転結でいうと「起」と「結」
→I、VI、条件付きでIII(ハ長調でいうとCM7、Am7、Em7)

Dominant(ドミナント):Tonicに移動しようとする和音。起承転結でいうと「転」
→V、条件付きでVIIやIII(G7、Bm7♭5、Em7)

Sub Dominant(サブドミナント) :TonicかDominantに移動しようとする和音。起承転結でいうと「承」
→II、IV(Dm7,FM7)

この区分けから、あるコードを別のコードに置き換えられる「代理コード」を導き出せます。

代理コード

代理コードで一番分かりやすいのは、IVの代わりにIIを用いることです(サブドミナント同士なので入れ替え可)。つまりFM7をDm9にします。
実はこれ、右手でFM7のコード(ファラドミ)を弾いた状態で、左手でレの音を足すだけです。
実際にFM7のところをDm9で弾いてもそれほど変わりません。またDm7でも問題ありません。

そして楽理上では、IV-V-III-VIとは雲泥の差になります。

ベースが「ファーソ」と二度上に移動していたのが「レーソ」と4度上に移動することによって、次の2つのコードのベース「ミーラ」と同じ4度上への移動になったのです。つまりここで反復が行われて、ちょっと纏まった訳です。
というわけで、まずDm9-G7-Em7-Am7が出来ました。曲でいうと23〜36秒です。

今度はEm7をCM7にします(トニック同士なので入れ替え可)。
FM7-G7-CM7-Am7(曲でいうと37〜49秒です

こうするとEm7の中途半端さがなくなって、CM7で安定感が出るので、もうすこしきっちりした動きになります。
こんな風に和音を入れ替える事で、ちょっと違ったコード進行にすることが出来ます。

ドミナント・モーション的進行

ドミナント・モーションとは、ある7thの和音は完全5度下の7thの和音に繋がり、さらに5度下の7th、さらに5度下の、、と延々巡って最初の7thに帰ってくる進行、またはその応用です。コードで書くと:
C7-F7-B♭7-E♭7-A♭7-D♭7-G♭7-B7-E7-A7-D7-G7-C7…
となります。

これは次の和音を弾くと同時に転調しています。C7はヘ長調(Fメジャー)のV度でF7はI度となり繋がるのですが、同時にF7は変ロ長調(B♭メジャー)のV度でもあるのでB♭に繋がります。この理屈で延々と転調していくんですね。これを踏まえてアレンジします。

先に紹介したDm9を使うのですが、ここではDm7のほうが分かりやすいのでそちらで書きます。
Dm7-G7はいわゆるII-Vという王道進行です。ここで残りのEm7-Am7を同じようにします。というわけでAm7からmを取ってA7にしちゃいます。
Dm7-G7-Em7-A7(曲でいうと50〜1分3秒です)

こうすると、Dm7-G7をそのまんま2度上にスライドしたEm7-A7となるのです。
一瞬転調してII-Vを連続させているという形になります。

Am7とA7の違いは「ドに♯がついているかいないか」。もしもこの位置のメロディにド♯が使われていなければ置き換え可能です。
(例えば平井堅さんの「瞳をとじて」のサビはこの方法が使えます)
響きとしては、「悲しくて泣きそうだけど踏みとどまってる」って感じでしょうか。。。?w Am7よりももっと複雑に響きます。

また、Dm7でもFM7でもどちらでも問題ありません。
個人的にこの進行は大好きですw。結構使っています。

他の調から導き出す

ある和音から次の和音に行くのは限定されています。逆に言うとある和音の前の和音も限定されているのですが、実はそれらの和音は代理や挿入がききます(主にセカンダリドミナントと呼ばれてるコードです)。
そこでAm7の手前にあるEm7、これをE7、つまりAm7から見た時のドミナントの和音に置き換えます(イ短調のV-Iにします)。
FM7-G7-E7-Am7(曲でいうと1分4〜1分17秒です)

こうするとAm7の悲しさがより一層引き立ちます。
ここでベース・ラインに着目。E7になったのでソが半音上がりました。これを上手く利用してベースラインを「(ファ)ーソーソ♯ーラ」にすると綺麗に半音ずつ上がっていくラインが出来あがります。

厳密にはFM7-G7-E7/G#-Am7となります。

今度はEm7をI度としたときのV度であるB7を、G7のところに入れます。
FM7-B7-Em7-Am7…最後はA7の方が綺麗かな?(曲でいうと1分18〜1分31秒です)

A7にすると最上音はミーミ♭ーレーレ♭と半音ずつ下降していくので、ここも魅力的です。

こんな感じで理論だけで色々引き出せるんですね。これらと比べるとFM7-G7-Em7-Am7は法則もなく美しさもなく、もっさりとした中途半端な進行だという事が分かって頂けると思います。

しかしまだまだ展開する方法はありますよ:)

その他の進行例

この間作った「ほしのわのおと♪(うたいり)」のサビの中盤に使ったコードは
FM7-B7♭5-Em7-A7(曲でいうと1分32〜1分44秒です)

です。上記のFM7-B7-Em7-Am7のB7をB7♭5(ファ♯をファ)にするだけでファンタジックな響きになります:)

今度は基本形からG7をFm7にします。
FM7-Fm7-Em7-Am7(曲でいうと1分45〜1分58秒です)

そうすると和音が下降していく感じが出ます。

ちょっと外れてきますが、この状態からAm7をE♭M7にしてさらに下降させます。
FM7-Fm7-Em7-E♭M7(曲でいうと1分59〜2分13秒です)

この次に続く(または繰り返す)コードはFM7よりDm7の方がそのまま下降するので気持ちよく響きます。

まとめ

さてここまで色々なコードを入れ替えてきました。

色々あってややこしいだろうと思いますが、総じて言えるのは、最初に紹介したコードの機能、つまり「次に続く和音は何か?」という感覚をしっかり持つこと

この感覚が身についていれば実は音楽理論は必要ありません。ですが一部の天才を除き、その感覚は養わないと身につきません。
しかしながら、こういった何かしらのヒントがあると手探りで探すよりももっと簡単に見つけることができます。そういった意味で音楽理論はある程度必要なのです。
しかしその理論を体で覚えるようになると、なんとなくではあっても自然と次に来る和音は頭の中で響くようになってきます。
こうなってくれば、後は自分で自分なりのコード進行を見つけることが出来るはずです。

ここに挙げただけではなく、もっと色々なIV-V-III-VIの変形はありますし、他のコード進行でもこの考え方の応用は効きますので、音楽を勉強している方、ぜひこの感覚を身につけてくださいね:)

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charly_jp

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コメント6件

音楽学校の先生達が全員バークリー上がりで授業がめっさ難しかったので、はじめはこのぐらい分かりやすい説明だと嬉しかったな〜っと思いました(笑)
おかげでテンションコードには強くなりましたが・・・。
音楽理論は厄介なもので、親切に教えようとすると教える側が大変になるんですよね。。w。学校だとグレードというかそれまでの課程でここからスタートって出来るかもしれませんが、大衆向けとなるとどうやって書こうか、といつも悩みます。。。w
サビにIVが来るのは多い、というか、ポップなものでは、サビは極論すればIVではいるかVIではいるかの二択だったりしませんか? IVで入るのは、最初の部分が一旦Iに解決している場合で、I7をつけて入るのが(陳腐ですが)王道だと思います。ここをVm7-I7-(IV)とするのもいかにもバークリーですが、効果的です。
Jun Yamamotoさん>I-I7-IVという流れはありますねー。結構好きです。個人的にはサビ頭はIが多い気がします。あとサビ手前のVは「はい次サビ入りますよ―」的によく聞こえていたのでその流れでこう解説した経緯もある、のかもしれません。
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