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【南大沢土木構造物めぐり】No.33 「歩道on歩道」 ~様々な立体交差~

今回は、地形の起伏が大きく、歩車分離が実現した街ならではの、少し変わり種の立体交差を紹介します。表紙の写真、特になんの変哲もない歩道橋かと思いますが、何が変わり種かというと、ずばり、

「歩道の上に架かる歩道橋」

なのです。少し英語っぽく書くと、

「歩道 on 歩道」

とでも言いましょうか。(←この表現、Web上の飲み会等で最近懇意にさせていただいている、福島県のトンネル工事を中心に活躍されている寿建設の森崎社長のこのブログの表現を拝借しました。)

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何のためにこんな歩道同士の立体交差があるかというと・・、谷部を通る南北方向の歩道を横切るように、丘の上の高さにある団地同士を連絡する橋、という役割です。

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【歩道専用橋 1989年8月 住宅・都市整備公団
 施工:タカハタ建設株式会社】
この周辺の歩道橋は、東京都が施工していることが多いので、この橋はあくまで団地を建設した「住宅・都市整備公団」(現:UR都市機構)が整備する、「団地の一部のような施設」だったのでしょうか。

ちなみに、この橋の行く先には、もう1本同じような歩道を横切る歩道橋があり、この橋の向こう側は、「三徳プラザ」と言われるショッピングセンター(ニュータウンの地区拠点)になっています。つまり、団地と地区拠点とを結ぶ歩道、ということなのでしょう。
これはご覧の通り、土のないカルバートのような構造形式である、門型ラーメン橋となっています。

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【歩道専用橋 1989年9月 住宅・都市整備公団 施工:(株)富士工】
2つの橋、いずれも公団が作っていることと、施工時期が一緒で、(なぜか)橋の名前がついていないことも共通しています。

では、ほかにどんな「立体交差」があるか、南大沢周辺で少し考察してみたいと思います。先ほどの英語表現でいうと、

A on B といえば、AがBの上にあるイメージと考えてください。

ちょっと面白い変わり種が出てきます。まずはオーソドックスなところから・・。

■①歩道on道路
これは本当にオーソドックス。No.17で紹介した、「桜歩道橋」です。

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■②道路on歩道
これもたくさんあります。No.18で説明した「カルバート」が代表例です。

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■③道路on道路
これも実は南大沢では珍しくありません。一例として、上柚木公園近くの「神子沢橋」を挙げたいと思います。丘の上に位置する上柚木公園と同じ高さを走る東西に走る道路と、南北に丘の上から急な坂道を下り、谷底の由木街道につながる道路とが立体交差する橋です。多摩ニュータウンでは、カーナビ上で交差していても、高さが合わなくて立体交差して曲がれない、というようなことがたまに起きてしまいます。

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【1993年3月 東京都建造 下部施工 川田建設株式会社】

■④鉄道on道路
これも少なくありません。一例は、京王堀之内駅のすぐ脇の都道を跨ぐ鉄道橋です。

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■⑤道路on鉄道
これもあります。代表例は、No.14で紹介した、南大沢大橋でしょうか。

■⑥鉄道on歩道
これもありました。No.32で紹介した「めがね橋」に続く、京王線が上を通る架道橋(カルバート)がそうです。ちなみに、カルバートには、はっきりと「京王堀之内第5架道橋」と書いています。トンネルに見えるカルバート、やはりこう見ても「橋」に分類されるのですね。

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■⑦歩道on鉄道
これもNo.2紹介した、「見晴歩道橋」がこれにあたります。

■⑧鉄道on鉄道
南大沢から少し離れるのですが、橋本駅の手前で、JRと京王線が交差するのがこれと言えます。また、多摩センターでは、京王・小田急と多摩都市モノレールが交差する場所があります。

■⑨道路on水路、⑩歩道on水路
これはオーソドックスですね。一例は、大栗川に架かる大田平橋や、山下歩道橋をNo.31で紹介しました。

■⑪鉄道on水路
これは町田市に入ったところの境川の上に京王線が交差する部分や、多摩センター駅付近で乞田川を渡る多摩都市モノレールの橋が挙げられます。

さあ、だんだんマイナーなものが出てきます。

■⑫水路on道路
まさか、水路は道路の上に乗らないのでは・・・。と言いながら、実はあります。(ちょっとイメージとは違うと思いますが・・)長池公園から京王堀之内方向にある「せせらぎ緑道」と道路が交わるところに、何と「歩道橋の上にせせらぎを流してしまったのです。その名も「せせらぎ橋」。せせらぎ緑道は、散策するのには実に楽しい道なので、紹介はまた改めてするとして、せせらぎを道路の上に乗せてしまう発想はなかなか斬新だと思います。

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■⑬水路on歩道、水路on水路、水路on鉄道
これらは、南大沢ではまだ見つけられていないです。水路on歩道や水路on鉄道は、滋賀県の草津川の川跡とJR東海道本線や旧東海道の交差部を想像し、水路on水路は、新潟の西川の交差部を想像します。

【終わりに】
今回は、歩道の上に歩道、という交差を契機に、立体交差する構造物を取り上げてみましたが、様々な構造物同士のユニークな交差があります。踏切や車道を交差する歩道が少ないこのニュータウンでは、立体交差が多用されるので、それを探訪するのも、楽しいのではないかと思います。

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