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ヨコシマ相談室 #3. 熟女好きナンパ師に「若い男は意外と腐ってるので熟女はもっと警戒した方が良き」と教えてもらったので拡散しておく

ギャラの取り分を想定の半分にされたタロウは、自分よりも猫を大切にする彼女に一矢報いようとするが…。

1:美形ナンパ師、マーケティングを訓戒す

「で、タロウちゃん、どんなお葉書がきたかしら?」

梨畑の中の白い洋館。

マホガニーのベッドサイドデスクの上にはiPadと紅茶。

摩詠子は、iPad画面の中のタロウに向かって嫣然とほほ笑む。

「(葉書受け付けてねぇっつてんだろ…)だいぶ溜まってきたからね。メールで転送する。けっこう量あるけどパッと読んで答えられそうなのからでいいよ。」

「どんなご相談が来たかしら?」


「(これからメール送るって言ってんだろ!)そもそも摩詠子、ちゃんと解ってる?あのね、この対談、平和な家庭の主婦さんはメインのターゲットじゃないからな?」


「え?でも?そもそもわたくし自身が、かたくなに貞節を守る平和な家庭の主婦よ?」


「いやさ、摩詠子は例外。普通のおとなし~い主婦さんは、かたくなに貞節を守りつつ『猥談師のアルバイト』なんてふつうしません出来ません。ま、せ、ん」

職業柄、ひたすら毎日毎日マーケティング戦略を練っては、それを自分の父のような年齢の取引先の常務やら専務やらに偉そうに上から目線で指導するのがすっかり癖になっているタロウは、畳み掛けるように延々と摩詠子に喋り続ける。

「というより、どんなお客さんなら聞いてくれるかってことを考えるんだよ。ちゃんとターゲッティングしないと」

「?…たーげってぃんぐ…?」

「これは俺の分野だから任せて。たとえばさ、朝専用コーヒーが売れた理由知ってる?劇団ひとり効果じゃないよ?コーヒーなんていつ飲んでも一緒なのに、あえて”朝”だけにして一日の1/3をガサッと獲得したからなんだよ。そういうのをセグメントを切る、っていうの」

「せぐめんと…?」

「しかも世間は夜にコーヒーなんてほとんど飲まないから、実質朝か昼かの1/2でしょ。もうそうなったら大勝ちだ。昼以降は捨てて、朝だけに専念したら半分取れたんだぜ?つまりね…」

15分は経っただろうか。

摩詠子は全く聞いていなかった。

摩詠子の白い掌に挟まれていた彫刻の入った金色のマリアージュフレールのティースプーンが床に落ちてカツンと音を立てた。

ゆらゆらと首を傾け居眠りしていた摩詠子は、その音でつぶっていた目を開けてアクビを噛み殺す。

白地に滲む紺が美しいロイヤルコペンハーゲンのフルレースティーカップソーサーに入ったアッサムティーはすっかり冷めている。


2:美形ナンパ師、熟女愛を訓戒す

「えーとつまり、なんだっけ、メインターゲットはわたくしみたいな40代熟女にドキドキしちゃう60代のおじさま…だっけ?」

「ちょ、何聞いてたんだよ!もちろん60代70代も該当だが、あんがい数は少ないはずだ。摩詠子の属性からして、どう考えてもメインターゲットは『20代30代を中心に40代くらいまでのムンムンしてるやや若い男』だろ!次が、摩詠子とどこかしら似たキャラの肚の底に熱いものを秘めた40代から60代魔性の熟女連中だ!」

「はっ?そんな歳下の若者達がわたくしの相談室のターゲットに…ですって?」

摩詠子はポカンとした顔で首をかしげた。

「いや、そりゃGALの方が見た目は綺麗だし、20年後を考えると20代の男は50代の熟女と結婚したいとまでは一切思ってないだろう。それは事実。だが!純粋にゲスい意味でだけなら、若い男は内心で熟女をとんでもなくエロい目で見てるんだよ!特殊ロリ性癖を除く全員がな!熟女のHなお話が聞きたいのは何よりもまさに俺と同世代の20代30代の男さ!ヒャッハッハッハァ!」

「い、いゃぁ…いくら何でも…まっさかぁ…。それに…会社でも…さすがに20代とかの青年が猛烈に口説いてくるとかはさすがに…滅多にないよ…?」

「バカ。どんなに魅力的でも、自分の職場で、結婚指輪してるお堅そうな真っ当なカタギの『禁断の熟女妻』を堂々とワンナイトに誘うクルクルパーがどこにいる!たまにいるが!ふつうは全力で我慢してるんだよ!しかも会社にバレた瞬間、セクハラで失職だ。だから俺たちは特殊なナンパスポットでもない限り『禁断の人妻熟女』様には滅多に声掛けられねぇだけさ!若いのと熟女、どっちがいいとかじゃなくて、いいオンナなら み ん な 違 っ て み ん な い いッ!できれば 若→熟→若→熟→ くらいのローテーションでバランスよく○できれば最の高!グフ♥」

「…いや…ちょ、ちょっと待て…え…マジで…?でもそれは…タロウだけでしょう…相当にマニアな意見だわよ…ふつうの若い男の子は違うわよ…」

iPad越しに、菅田将〇似の美形が台無しのタロウの満面のゲスい笑顔を眺めながら摩詠子は失笑する。

「フッ、違うね。繰り返すが俺たち若い男はロリ専門でさえなければみんな熟女も大好きだ!ありとあらゆるジャンルの女性が好きだ!決まってんだろが!だがよ。俺たちは人前ではそんな事は絶対言わねえぜ?なにしろ周囲にうっかりマザコン認定でも受けたら男たるもの腹を切って死なねばならぬからな!まったく、この世には『尊き熟女沼』と『狂気のマザコン沼』の違いも理解できない知能の低い輩がいっぱいいて困るぜ!」

「は…はぁ…」

タロウは勢いが止まらなくなり普段は異性にも友人にも絶対言えないことまで弾丸のような勢いで自己開示し始める。

「たとえば既にいい歳だが…それでもいまだに美しすぎる小○百○子東○都○事様!もしSPとしてせめてお近くでそっと御守り差し上げられたら…って日々妄想してる20代男子は日本中に無限にいる!冴えた美貌!白いスーツ!東京都は死なないわ、私が守るもの…的な…堪らん!…変な事書いてサーセン、尊敬してます!応援してますッ!しゅきいッ!」

「そ、そ、そ、そ、そう…なの…」


3:美形ナンパ師、熟女に防犯を訓戒す

「そうそう。あのさ。本当に注意喚起してあげた方がいいんじゃないかといつも心配になるんだけど。ほらnoteで『セックスレス』とか『更年期』とか『オープンマリッジ』『不倫』etc…男から見たらとんでもねぇエロいテーマをマジメにつらつら書いてる記事がいっぱいあるじゃん!あれで『ならば俺が!』って思わない男がひとりでもいたら顔を拝んでみたいよ!あと『生理が終わった、女としての人生がどうたら』の記事書くのはメチャクチャ危険!!!一部のえぐい男性読者は『…えええ!!!この女性生理が終わったという事は〇〇〇しても妊娠しないという事でしかも現在の性生活に不満を抱いて居られるのですかそうですかそれまさに巷の熟女工口ビデオみたいな展開ですが…え?誘って…るの?』みたいな感じで、最低にゲスイ事を考えながら内心ドッキドキで読んでるんだからね!決して口には出さないけどね!アーッごめんなさい!ゲスくてごめんなさい!でもしゅきいっ!…40代~60代くらいあたりのステキなステキな熟女のみんな!とにかく絶対個人情報ばらさないようにね!noteリンクから飛んでTwitterダイレクトメッセージで絡んでくるゲス男なんか絶対無視だよ?あっ俺かそれ(๑˃̵ᴗ˂̵)テヘペロ!とにかく、油断して住所なんか教えちゃ死んでもだめだからね?グッヒョヒョヒョォッ!」

摩詠子は画面越しに、港区のワンナイト専門員タロウの菅田将○似の冴えた美貌がどサイテーにゲスくほころぶのを見ながら(…一体全体、この子、都会に出てから、夜の街で、どんなエグい経験をしてきたのかしら…)と思いを馳せていた。

「まぁとにかく、摩詠子!会社とかでも若い男には気ぃ付けんだぞ!意外とあいつら見境ないぞ!マジで!という訳でメインターゲットは30代の若い男!(同じく30代の「性生活のTips を知りたい女性群」もこっそりだがかなり来てくれるだろう)。そして…若い男と同じくらいの数の40-60代のイケてる魔性の美熟女様達がご来店だァ!アーッ!待ち遠しいです!ドゥフフフヒャヒャハ!」

「…わ、解った…わ…」


摩詠子はくらくらした頭を落ち着かせるためにもすっかり冷めた紅茶を一口飲んだ。

「そうだ。ねえ、タロウ。相談室のタイトルはどうするの?」


4:美形ナンパ師、おっさんギャグを訓戒す


「邪悪の”邪”って書く”ヨコシマ相談室”っていうのはどう?俺が大石圭先生の大ファンだってことは知ってんだろ?ほら、『呪怨』の作家さん。2007年の本で、『邪な囁(ささや)き』っていうサイコーな作品がある。主人公が邪悪な囁きに導かれてあっち側にイッちゃうっていうお話なんだけど、その”邪”。もうこの対談にピッタリじゃね?

摩詠子もヨコシマ、俺もヨコシマ、読んでる皆さんもヨコシマ。蛇の道はヘビィー,邪の道もFreakey,Yeah!!! みたいな」


(珍しく2021/4/28時点でkindle読み放題も対象です)


(…ねえそれ、日本語ラップ好きなタロウ的にはライム【=どうやら漢詩における「韻」のような意味らしいのである】とやらを踏んでるんだろうけど、おじさまたちはあなたのこと『ゆかいな昭和だじゃれ青年』と誤解してるかもよ…?あっでもそれならむしろ上司に好かれるカナ。ま、いいか)

「う…うん、素敵だと思うわ、『ヨコシマ相談室』ね」

 iPad画面ばかり見つめていて気付かなかったが、気が付けば窓の外は真っ暗だ。

タロウの熟女トーク(これでもあまりにも心臓に悪いエグ過ぎトンデモ箇所は今回は割愛した)があまりにも長かったせいであろう、摩詠子の住む白い洋館もすっかり夕闇に沈んでいる。

摩詠子はiPadを伏せてヘッドセットを外し、すっと姿勢よく席を立って、さっきからふくらはぎを軽く齧り擦り寄っている2匹の保護猫たちにカルカンパウチとニュートロワイルドレシピサーモン味を与えに行った。


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