架空の映画予告編『名前のない遺体』

監督chavoの架空の予告編

アナザーストーリー
映画「ドライブ・イン・マイカー」を見た翌日に描いた簡単なプロットから再構築し、制作しました。
最後に最初に書いたプロットを載せておきます。

『無題』
彼が死んでから
彼が戸籍を持っていなかったことを知った

ー美しい景色ー

「かくれんぼで鬼が勝手に帰ると監禁罪になるって知ってた?」
町で話しかけてきた第一声がそれだった
ニコニコとした表情の裏にちょっと危険な匂い
お返しに「人は一生のうち、寝ている間に10匹以上のクモを食べている」
という根拠のない雑学を教えてあげたら
すごく大袈裟にリアクションをするから
その笑顔に釣られて
まんまとお持ち帰りをされた

それから1年くらい
別に付き合うとかそういうことじゃなく
頻繁に彼の家に通っていたある日
彼のスマホの通話履歴から警察に呼ばれた

事故死だったらしい
警察署に呼ばれて色々聞かれて全部正直に答えた
「本当にこの人のことを何も知らないんだ」
遺体も見せてくれないしムカつくし
捨て台詞のように彼の好きな体位や性癖を言って帰ったら
担当刑事から下心丸出しの連絡が来て
めちゃくちゃ気持ち悪かった

警察の公式サイトには、身元不明死者の一人として身長や事故当時の服装などが掲載された
間違いなく彼のものだった

すでに彼の家には東南アジア系の外国人が住んでいて
話も通じないし訳が分からないし大泣きしてしまった
シャボン玉が弾けたように彼の存在は急に世界から消えていた
東南アジア系の外国人はなぜかスイカをくれた

ー海でスイカを横に置いたまま夜ー
彼が何の仕事をしていたか全然知らないけど、まともではなさそうだった
戸籍がないならきっと通帳すら作れない
法律に反した事しか生きる術がなかったのかもしれないし、そうじゃなかったかもしれない
「夢とは現実から逃げる事だ」と私が言ったら
「夢とは現実と戦う事だよ」と彼は珍しく笑わずに言った
その目は私を見ているようでずっと遠くを見つめているようだった
存在を証明する手立てがなければ
自分や隣り合う人の本当の存在を誰もが知らないんだ
全てを塗り潰して今日も日が昇る
ー徐々に寝ながら朝が明けるー

ーあの担当刑事から電話があって起きるー
「お、やっと電話とってくれたね!心配してたんだよ!」
「ねぇ、、、」
「ん?なに?」
「スイカの季語は実は秋って知ってる?」
「ん?あーそうなの?ところでさ、今日の夜食事にいって相談に、、」
「つまんない奴」
ー何か話し続ける刑事ー
ースマホを海に捨てるー

一美しい景色余韻ー

ースイカを地面に叩きつけるー
ーバクバク頬張るー

世界はどこまでも美しく、とてもずるく思えた

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/ @chavophoto

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