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2018年の映画を振り返る

おはようございます、チェ・ブンブンです。
今年も残すところ今日入れて4日となりました。
Twitterをみると、様々な人が今年のベストテンを発表しています。

チェ・ブンブンも毎年、ベスト映画をブログで発表しており、今年は下記の日程で発表することとなっています。


12/29(土):2018年新作映画ベスト20
12/30(日):2018年旧作映画ベスト20
12/31(月):2018年ワースト10
1/1(火):2018年個人賞

さて、今年は映画館で192本鑑賞しました。ただ、今年は下半期にて映画祭に力を入れ過ぎ、また海外の流行に時差なく乗りたいが為に米国iTunesや輸入DVDでの鑑賞が多くなってしまった為、新作映画ベストテンに日本一般公開作品が3本しか入らない結果となりました。普通の映画のオフ会や職場で到底発表できないラインナップとなってしまいました。

そこでnoteでは日本一般公開された作品からベストテンを発表し、今年の映画のトレンドを振り返っていきたいと思います。

・2018年新作ベストテン(一般公開作に限る)

1位:バーフバリ 王の凱旋
2位:カメラを止めるな!
3位:君の名前で僕を呼んで
4位:ちはやふる -結び-
5位:若おかみは小学生!
6位:ファントム・スレッド
7位:寝ても覚めても
8位:犬猿
9位:未来のミライ
10位:リズと青い鳥

・2018年映画総評

1.映画と向き合った2018年

今年は、《映画》とは何かを強く考えさせられる年でした。

ここ数年、NetflixやAmazon Primeビデオ等のVODが映画ファンの間でも浸透し、『ROMA/ローマ』や『アナイアレイション -全滅領域-』のようなNetflixでしか観られないような作品、それも傑作が相次いで登場した。かつては、映画館と対立する存在であった輸入DVDも、今となっては海外公開と同時期にVOD配信され、もはやビデオスルーという言葉すら死語になりつつある。

ただ、VODが盛り上がれば盛り上がるほど、映画館で映画を観る体験を意識するようになってくる。VODは確かに、自分の好きなタイミングで、コンビニで買ったお菓子やジュースを持ち込んで観られる。映画の中で分からないことはスマホで調べたり、見逃したシーンを巻き戻したり自由自在だ。変な客と遭遇するリスクもないし、席選びで失敗して苦痛を味わうこともない。音響や画質も人によっては最高の機材を導入すれば解決できる。圧倒的メリットしかない。ただ、どうも家のテレビやPCで観る映画は、映画としての楽しみが半減してしまう。怠惰に映画と向き合っている後ろめたさが強く残ります。さらに、映画製作にも意欲的なNetflixが作る作品はどうも海外ドラマのダラダラしたノリを引きずっている印象が強い。2時間で物語る。ストイックに制約と向き合うことから逃げている感じがします。

なので、今年のベストテンは必然と《映画らしさ》を追求した作品となりました。

2.日本のアニメ映画が凄い!

まず、特記しなければいけないのは、今年は2016年に次ぐ日本アニメ大躍進の年でした。特に、『映画 聲の形』で普段アニメ映画を観ないようなシネフィルからも注目された吉田玲子が3本の傑作を今年放っていたことが大きな功績といえるであろう。今回のベストテンでは『若おかみは小学生!』と『リズと青い鳥』を選出しているのだが、どちらも既存のコンテンツの魅力を最大限引き出しつつ、《映画》として物語ることに対しストイックに向き合った作品です。誰かが、吉田玲子はロベール・ブレッソンだと誇張していたが、あながち彼女のストイックな脚本づくりを見ると間違いではない気がする。

『若おかみは小学生!』では少女おっこの成長譚として儀式をクライマックスに置くことから逆算してエピソードを抽出する。おかみ修行するおっこの前に現れるのは、大人でも強烈すぎる過酷な試練ばかり。しかし、我々の想像する《おかみ修行》とは違いゆるいタッチで描かれ、重い内容にも関わらず颯爽と乗り越えていく。そして大胆なことに、いきなり数ヶ月の行間を敢えて挿入することで、おっこの著しい成長を神格化させることに成功しています。普通の脚本家ならあれもこれもとエピソードを盛り込みすぎて冗長になってしまっているものを、必要最低限レベル最小公倍数で描いてみせるこの超絶技巧に痺れました。

『リズと青い鳥』では、陰と陽の少女によるコントラストでもって思春期から脱し、アイデンティティが形成される様子をまるでベルイマンの『仮面/ペルソナ』のように描いている姿に畏れおののきました。

同様に、日本では酷評されましたが『未来のミライ』もわがまま放題の楽園を失った少年が外のコミュニティに行くのか、うち秘めた欲に溺れるのかの惑いを歪な建築構造と幻覚でもって魅せていくスタイルに『アイズ ワイド シャット』を観た時のような興奮を覚えた。

いずれも短い時間の中で、映画、この場合アニメという表現でどこまでユニークに人間の心理を描けるかに全力を注いでいたことに共感を覚えました。

もちろん、ディズニー、ピクサーのアニメも今年はレベルが高く、ポリティカル・コレクトネスに雁字搦めになりつつも前衛的な語り口で老若男女を楽しませた。娯楽性を持ちつつ、社会問題と向き合い、その社会問題を斬新すぎる形で暗号置換していく様はやはり凄い。

『インクレディブル・ファミリー』では『セールスマンの死』を思わせる老害に成り果てる父親像からイクメンを語り、そしてロビイストのメカニズムについて語っていくスタイルは実写の社会派映画でも観ない光景だ。

先日公開された『シュガー・ラッシュ:オンライン』では、いきなり難民問題をゲームの世界に置換するところから始まり、スパムやウイルス等抽象的なインターネット用語の徹底した可視化/分析をした上でディズニープリンセスと社会の関連性について言及する。そしてしまいにはスピルバーグ論にまで行き着き、『レディ・プレイヤー1』に隠されたバグ(=欠点)まで修復種てしまう、まるで論文な作品となっていました。これでしっかり娯楽に徹しているのだから、恐るべし!と言わざる得ない。

3.映画の本質に迫る

その他の映画に関しては、今年『バーフバリ 王の凱旋』と出逢えた喜びについて言及する必要がある。凡庸なインドアクション大作であった『バーフバリ 伝説誕生』に対して、ギリシア神話のような王道中の王道な物語にインド映画ならではの豪華絢爛な歌と踊りを重ね合わせ、ハリウッド超大作の面白さを活かしつつ、今までに何千本と映画を観てきたハードコアシネフィルも驚かざる得ない演出しか魅せない造りに阿鼻驚嘆した。あまりの衝撃に、後日応援上映にも参加し、高校時代の友だちを誘ってインド完全版を観に行く程熱狂しました。そしてNetflixでヒンディー語版を鑑賞したのですが、改めて本作は映画館で観ることに意味があると痛感させられました。

2位に選んだ『カメラを止めるな!』は公開当時、東京都内2館でしか上映されていなかったのが、まさかあそこまで社会現象になるとは思いもしませんでした。やはりこの成功は、近年のコメディ映画が忘れてしまった本当の喜劇をユニークさ込みで描けたことにあると思います。最近のコメディ映画はアメリカもそうですが、時事ネタ、メタネタをてんこ盛りにするスタイルが主流となっている。元ネタを知らないと笑えないということがあまりに多い。果たしてそれでコメディ映画は良いのか?『カメラを止めるな!』には偏ったコメディ映画の風潮を是正する働きがあると思います。

3位の『君の名前で僕を呼んで』は確かにダラダラした作品であるとは思う。しかしながら、徹底的にこだわり抜かれた映像美と音によって映画を観る喜びを観客の心から引きずり出すものがありました。

4位の『ちはやふる-結び-』は、軽視されがしな漫画原作×青春きらきらものですが、狂っているとしか思えない作劇に胸ぐらを掴まれました。最終章にも関わらず、増殖する登場人物。そして出てくる役者の魅力を500%引き出し、2つに分裂させた物語を綺麗に終着点に向かって収斂させていく。それをたった2時間8分でやり遂げてしまう小泉徳宏監督は素晴らしい!巨匠でしかないと思いました。

6位の『ファントム・スレッド』は、よくよく考えたら古臭い話だし、恋のシーソーゲームという凡庸な話なのだが、ポール・トーマス・アンダーソンの人を撮ることに対する執着が、映画を圧倒的に面白くする。ポール・トーマス・アンダーソンの往年の名作からのサンプリングの妙も興味深いものがありました。

7位の『寝ても覚めても』は、本能的《好き》と理性的《好き》を並列に且つドライに描く、常軌を逸した世界を魅せてくれた喜びがありました。

8位の『犬猿』では、エンタメに特化したホン・サンスという感じでひたすらに嫌な人間ドラマのドライブを魅せてくれ、さらに兄弟喧嘩、姉妹喧嘩のコントラストというネタを見つけた吉田恵輔、江上敬子を見つけた吉田恵輔の完全勝利だと感じました。

・おわりに

明日は、ブンブンの本当のベスト20をじっくり1万5千字かけて語っていきます。今晩0時に『チェ・ブンブンのティーマ』にて発表するので、よかったらのぞいてみてください。

では、最後に今年映画館で観た映画リストを載せて終わりとします。

それではまた!

【1月】


1.夜明け告げるルーのうた
2.旅歌ダイアリー2 後編
3.ジャコメッティ
4.キングスマンGC
5.嘘八百
6.5パーセントの奇跡
7.バーフバリ 王の凱旋(国際版)
8.映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ
9.かぼちゃとマヨネーズ
10.わたしたちの家
11.ライオンは今夜死ぬ
12.パディントン2
13.ジオストーム
14.ガーディアンズ
15.デトロイト
16.サファリ

【2月】


17.スリー・ビルボード
18.RAW
19.羊の木
20.バーフバリ 王の凱旋(応援上映)
21.マニラ・光る爪
22.どん底(メンドーサ監督版)
23.グレイテスト・ショーマン
24.パンとバスと2度目のハツコイ
25.リバーズ・エッジ
26.ビガイルド
27.犬猿
28.ナチュラルウーマン
29.BPM

【3月】


30.15時17分、パリ行き
31.ブラックパンサー
32.ダウンサイズ
33.聖なる鹿殺し
34.アイスと雨音
35.パジャマを着た男の記憶
36.ザ・シークレットマン
37.ラブレス
38.触手
39.のび太の宝島
40.アナと雪の女王/家族の思い出
41.リメンバー・ミー
42.ちはやふる 結び
43.ペンタゴン・ペーパーズ

【4月】


44.ジュマンジ WTJ
45.ヴァレリアン
46.ウィンストン・チャーチル
47.クソ野郎と美しき世界
48.クレヨンしんちゃん2018
49.いぬやしき
50.レディ・プレイヤー1
51.ダンガル
52.タクシー運転手
53.リズと青い鳥
54.アベンジャーズIW
55.ザ・スクエア
56.パシフィック・リムUR

【5月】


57.君の名前で僕を呼んで
58.希望のかなた
59.モリーズ・ゲーム
60.四月の永い夢
61.孤狼の血
62.ピーターラビット
63.騎士の名誉
64.鳥の歌
65.キューバ・リブレ
66.ランペイジ
67.海を駆ける
68.名探偵コナン2018
69.友罪
70.ファントム・スレッド
71.犬ヶ島
72.ゲティ家の身代金
73.恋は雨上がりのように
74.デッドプール2

【6月】


75.万引き家族
76.アデュー・フィリピーヌ
77.ホース・マネー
78.VISION
79.それから
80.WONDER
81.オルエットの方へ
82.バーフバリ 王の凱旋(国際版)
83.ブリグズビー・ベア
84.カメラを止めるな!

【7月】


85.ハン・ソロ
86.メーヌ・オセアン
87.菊とギロチン
88.鱒
89.ファントマ
90.ファントマ対ジューブ警部
91.ファントマの逆襲
92.ファントマ対ファントマ
93.ファントマの偽判事
94.君が君で君だ
95.志乃ちゃんは自分の名前が言えない
96.ブエナビスタソシアルクラブ アディオス
97.未来のミライ
98.ルル
99.私たちは一緒に年をとることはない
100.BLEACH
101.コロッサル・ユース
102.ストリート・オブ・ファイヤー(応援上映)
103.センセイ君主
104.ジャネット、ジャンヌ・ダルクの幼年期

【8月】


105.ミッション:インポッシブル FO
106.インクレディブル・ファミリー
107.バオ
108.EL CAIRO
109.アンパンマン2018
110.ペンギン・ハイウェイ
111.銀魂2
112.七つの大罪
113.オーシャンズ8
114.ちいさな英雄
115.マンマ・ミーア!HWG
116.検察側の罪人
117.タリーと私の秘密の時間

【9月】


118.ひとつのバガテル
119.暁の石
120.寝ても覚めても
121.きみの鳥はうたえる
122.のんのんびより ばけーしょん
123.君の膵臓をたべたい(アニメ版)
124.SUNNY
125.アントマン&ワスプ
126.若い女
127.ボルグ/マッケンロー
128.コード・ブルー(4DX)
129.MEG ザ・モンスター
130.フリクリ オルタナ
131.映画 おかあさんといっしょ
132.カメラを止めるな!
133.累
134.1987、ある闘いの真実
135.泣き虫しょったんの奇跡
136.ザ・プレデター
137.HIBIKI
138.スカイスクレイパー
139.プーと大人になった僕
140.判決、ふたつの希望
141.3D彼女 リアルガール
142.若おかみは小学生!
143.愛しのアイリーン

【10月】


144.散り椿
145.マンタレイ
146.The Prey
147.Arctic
148.The House that Jack Built
149.High Life
150.バーニング 劇場版
151.CLIMAX
152.アンダー・ザ・シルバー・レイク
153.ノン・フィクション
154.我らの時代
155.13回の新月のある年に
156.第三世代

【11月】


157.ブラ物語
158.悪魔の季節
159.SEARCH
160.ボヘミアン・ラプソディ
161.マンディ
162.川沿いのホテル
163.草の葉
164.象は静かに座っている
165.アイカ
166.ロング・デイズ・ジャーニー、イントゥ・ナイト
167.エルサレムの路面電車
168.ガザの友人への手紙
169.盆唄
170.華氏451(2018)
171.アッシュ・イズ・ピュアレスト・ホワイト
172.盗馬賊
173.アルファ、殺しの権利
174.タングスィール
175.ハーモニカ
176.あなたの顔
177.ヨーロッパ横断特急
178.囚われの美女
179.恐怖の報酬 オリジナル完全版

【12月】 


180.来る
181.暁に祈れ
182.牢獄
183.海にのせたガズの夢
184.ドラゴンボール超 ブロリー
185.グリンチ(アニメ版)
186.ミニオンのミニミニ脱走
187.メアリーの総て
188.熱狂宣言
189.ソルフェリーノの戦い
190.ニセコイ
191.シュガー・ラッシュ:オンライン
192.アリー/スター誕生


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