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【『ビール・ストリートの恋人たち』公開記念】J.ボールドウィン"Sonny's Blues"翻訳2

おはようございます、チェ・ブンブンです。

ジェイムズ・ボールドウィンの"Sonny's Blues"翻訳その2です。

弟の逮捕を新聞で知って悲しみに暮れる学校教師は、中庭で弟の友達と出会い対話する。そして互いに傷を埋め合うように自問自答し、舞台はバーに移る。その後から翻訳を継続します。

【『ビール・ストリートの恋人たち』公開記念】J.ボールドウィン"Sonny's Blues"翻訳1

"Sonny's Blues"続き

「そんなもんだとはどういうことだ」
俺は知っていたそれがどういうことか
「それはつまり、、、そういうことなんだ」
彼は振り返り、口角を下げながら俺のことを見た。「俺の言うことがわからないのか?」彼はやんわりと言った。

「地獄があなたにとって何を意味するのか、俺は知っている。」俺は囁いた。なぜだかよくわからない。

「その通りだ」彼は虚空に語る。「彼はどうやって俺の言うことを知るのだろう?」彼は再び、私のところを振り返る。辛抱強く、落ち着いた雰囲気で、そしてどう言うわけか彼がまだ揺れているのを感じた。腹わたが凍り付くのをまた感じた。それは午後に感じた恐怖であった。俺は再びバーメイドの方を見た。彼女はバーカウンターでグラスを洗っていた。そして歌っていた。「聞くんだ、彼をそっとすることで最初からやり直すんだ。それが俺が意味することなのさ。」

「お前はつまり、、、彼をそっとしておいてくれということだな。彼はシャバに出たら仕事に復帰するんだな。それは彼が癖をやめることは決してないということだな。それがあんたが意味することだな?」

「その通りだ。」彼は、ニカッと告げた。「あんたは俺が言わんとしていることが分かっている。」
「教えてくれ。」俺はすぐさまこう言った。「何故彼は死にたがっていたんだ?彼は死にたがっていた、自分を殺したがっていた、なんで彼は死にたがっていたんだ?」
彼は驚いたように俺のことを見た。「彼は死にたがっていたんじゃない。生きたがっていたんだ。誰も死にたがっていなかったぞ。」
俺は彼に訊きたかった。多くのことを。彼は答えてくれなかった。だが彼がもし答えを持っていたとしても、俺は答えを見出すことができなかっただろう。俺は歩き始めた。「まあ、こんなのは仕事じゃないな。」

「昔のSonnyは荒んで行くだろう。」彼は言った。俺らは駅に向かった。「ここがあんたの駅かい?」彼は言った。俺は頷く。俺は階段を一段降りた。「くそ!」彼は突然叫んだ。俺は彼を見上げた。彼は再びにやけた。「もし俺が金を全て家に置いてこなかったら、あんたは金なんか手にしなかった。ほんの2,3日のことさ。」

一気に奥底から何かが与えられ、俺から流れるように脅された。俺はもう彼に憎しみを抱かなかった。俺は子供のように泣いてしまうのではと感じた。

「おいおい」俺は言う。「驚かせるなよ。」俺は自分の財布を見た。そして金が全然ないこと、たった5ドルしかないことを確認した。「ほれ」俺は言う。「これだろ?」

彼は見なかった。彼は見ようともしなかった。恐る恐る、彼の顔を覗き込んだ。彼は沢山の札束を隠し持っていた。「ありがとう。」彼は言った。そして死ぬような目で俺のことを見た。「ソニーのことは気にすんな。俺は彼について何か書くよ。」

「そうだね。」俺は言った。「あんたはそうするんだ。長い時間かけて。」
「じゃあね。」彼は言った。俺は階段を降りていった。

だが、俺はソニーについて書かなかった。だが彼に対して長い時間かけて何か送った。俺が最後にしたのは、俺の娘が死んだ後だった。彼は俺を邪魔者のように感じさせる手紙を送ってきた。そこにはこう書かれていた。

親愛なる兄弟よ
あんたは知らないとは思うが俺があんたからどれだけ訊きたかったかを。俺はだなあんたについて沢山の時間をかけて書きたかった。俺は散々あなたを傷つけたと思ったので書きはしなかった。だが、俺はある深みから登ろうとしている男に感じる。俺は外に出るようになったんだ。
俺は俺がどうしてこうなったかあんたに言うことができない。それはつまり、あんたにどう言えばいいのかわからないんだ。俺は怯えているのだろう、どこかに逃げようとしているのだろう。あんたは知っている。俺は賢くなんかなれなかったんだ(笑)。俺は今は亡きオカンとオトンに感謝している。そして息子がどういうことをしたのか直視することができない。俺がやることを知っていたら、俺はあんたを傷つけることをしなかったと心に誓う。あんたに、そして俺をいい奴だと信じていた者に対し。
俺がミュージシャンであることと何か関係あるんじゃないかと思わんでくれ。それ以上のものなんだ。もしかするとそれ以下かもしれない。俺は純粋に何も受け取ることができない。俺はシャバに出た時に何が起きるか考えないようにしているんだ。時折、俺は放り出されるつもりだが、決して外に出ることはない。でもいつか、俺は帰ってこられると思っている。俺はあんたに一つだけ言いたい。俺は人生をやり直すくらいなら脳天を吹き飛ばしたいんだ。奴らには言っているし、彼らも俺に言っていることだ。俺がニューヨークにきた時あんたに言うならば、あなたが俺に会えるのならば、俺はきっと感謝するだろう。俺のイザベルと子どもたちに対する愛を受け取るんだ。そして幼いグレイシーに対しては本当に申し訳ないと思っている。俺はママのようになり、あるじの行いがなされるであろうと言いたい。だが俺は知らないんだ止まる事のないであろうある問題に見えることが。あるじを前にどのように罪を償えば良いのかわからないんだ。でもあなたが信じてくれさえすれば、それはそれで良いんだ。
あなたの弟、ソニーより。

続きはWeb or『せつない話』で

てっきり日本では翻訳されていないと思ったら、山田詠美が『せつない話』で翻訳していたことが発覚しましたので、この辺でやめておきます。続きは、是非山田詠美の名訳でお楽しみください。一応、webには英語版が落ちているので、英語がわかる方は、是非下記よりお楽しみください。

Sonny's Blues原文

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