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喫茶室かぐら

平成30年8月12日のこと。

飛騨市神岡図書館において、喫茶室かぐらが開催された。

これは、国立天文台の渡部潤一さんが喫茶店のマスターに扮し、常連客(と想定して)の小川洋子さん(芥川賞作家)、青野由利さん(毎日新聞科学担当論説委員)、大橋正健教授(KAGRA)がお店を訪れてお話しをするという趣向。

急ごしらえで作られたであろう喫茶店のドアには、しっかり「ちりんちりんと」なるような仕掛けも施されていたり、普段は図書館なのだけれど今日は喫茶店だからとコーヒーも配られて、気分が上がる。

そんなゆったりした雰囲気の中、マスターの渡部潤一さんが常連客それぞれに話題を振り話が進むのだけれど、まずは前日に訪れたと言うスーパーカミオカンデの感想から。

そう。いまスーパーカミオカンデは次の実験のためにメンテナンスを行っているので、観測中は絶対に開かない50,000トンのタンクが12年ぶりに開いていて、タンクの中に入り360度光電子増倍管に包まれることができる。そして前日このメンバーで見学をしてきたというわけだ。そもそもなぜ、このメンバーなのかと言う話も大橋先生からKAGRAの命名委員会と伝えられ納得。

話は進む。

たぶん参加申込書に書けるようになっていた事前質問から話題が選定されていたのだろう、スーパーカミオカンデから宇宙、重力波のさざなみ、超新星爆発、ベテルギウス、彦星と織姫から宇宙人は実在するか、星々から届く光りの時間差の話し、チェレンコフ光のキャッチ、科学をわかりやすく伝えるジャーナリズム、そして、それらを紡ぐ言葉の力まで。

楽しすぎる。

こんな喫茶店があったら毎日入り浸って、話を聞きたいし話したいという妄想にかられる。

会場からの「小説家として文章が降りてきますか?」という質問に、無限にあるだろう言葉の中から、苦労しながら最適な一言を選んで一行を書いていますと応えられたのは小川洋子さん。

私の中に、カミオカンデのように純水を満たし、チェレンコフ光を発し去っていくその光をキャッチしたい。とも。

科学と文学。一見関わりのないようにも思えるそれぞれの分野が交差しながら語られているのを聞いていると、なんだか、ニュートリノが見えてくるような、さらには重力波が聴こえてくるような、そんな素晴らしいひと時となりました。


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