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自分たちがつくったチーズがおいしいって言ってもらえると、やりがいを感じます|矢田就実

CHEESE STANDで働く"人"を通じてCHEESE STANDの魅力を発信する「STAFF VOICE」の第9回。今回は、チーズ製造のリーダー的存在としてチームをひっぱる矢田就実です。シャイなキャラクターですが、心にはブレない職人魂を宿すナリくん(矢田の愛称)に話を聞きました。

矢田就実(やだ・なりみ)、チーズ製造スタッフ
2020年8月入社

interview by Nozomi Yoneda

藤川のnoteを読んでチーズ職人に惹かれた

――まずは、CHEESE STANDに入社したきっかけを教えてください。

2020年3月にCHEESE STANDに入社が決まっていたんですが、コロナの影響で入社が延期になったんです。社会がどうなるかわからない時期だったので、しょうがないと思いながら、少しでも早く入社させてもらえるように、渋谷店にチーズを買いに行っていたら、人事も担当している成田(裕子)さんが店員をしていて、気付いてもらえたんです。それがきっかけで入社の話が再開しました。

――すごい行動力だよね。

それまではアパレルやチェーンの飲食店で店長代理などをしていました。販売をしたり店舗管理をしてみて、自分はどうも接客や営業が不得意なのと、デスクワークも好きではないことに気付いたんです。

それなら手に職をつけられた方がいいなと思ったのが転職のきっかけです。

CHEESE STANDのことは、友人の紹介で知りました。もともと職人として修業できるところを探していて、酒造りの職人なども探していたなかで、チーズが好きだったこともあって興味をもちました。

調べてみると、日本でほぼ初めて街中でチーズ工房を開いたことや、ブッラータを日本で初めて商品化していることを知って驚きました。それと、チーズ職人の1日は深夜3時に始まる」という藤川さんが書いたnoteに、朝3時からチーズづくりをしていることが書いてあったんです。それがとても心に響いて、入社したいと思いました。それに、筋トレにもなるようだし(笑)。

入社して1年半、チーズバットの重い蓋を移動させたりするので、背筋がついたと思っています。腰が痛かったのですが、筋肉ついて痛くなくなりました。筋トレは多少は筋肉ついたかなと思います。チーズ職人としての腕は、まだまだです(笑)。

いつも朗らかな表情で、なごやかなムードをつくるのが矢田の魅力だ。
筋肉を見せつけたがるのは、チーズ職人の共通?!

――筋トレの話は置いておいて(笑)、CHEESE STANDの仕事はどうですか?

やはり朝は早いですね。今は、家が富ヶ谷の工房から近いのですが、それでも朝というか、夜中の2時に起きて自転車で通勤しています。

確かに辛いですけど、早ければ12時半には仕事が終わるので、晴れていればそのままサイクリングに出かけられる。朝3時の出勤は早番ですが、遅番なら5時から14時まで。それでもまだ自分の時間は十分はあるので、日中に自分の時間がとれるという考え方をすればいいと思っています。

――同棲している彼女の支えもあるんだよね?

そうですね。夜中の2時にいっしょに起きてくれて、朝食を準備してくれます。ちなみに、最近のお気に入りはトーストにCHEESE STAND Lab. の新商品の「ホエイジャム」を塗って食べることです。ホエイジャムは、パッションフルーツのような香りがあって、なんにでもあうんですよね。

彼女は、夕方には帰ってくる仕事をしているので、夜も基本は一緒に食事をしています。僕は料理が得意ではないので、彼女にお願いしてしまっているのですが、夕食をとったら早番なら夜7時半、遅番なら9時半には寝てしまいます。

一般的には不規則な仕事で、まわりの人とも予定があわせづらい。彼女には、迷惑をかけていると思うのですが、チーズ職人の仕事を素晴らしい仕事だと思ってくれているので、仕事に打ち込めるように支えてもらえていると思います。

――ナリくんの彼女が、CHEESE STANDでの仕事を素晴らしいと思ってくれているのって、すごくいいよね。なりくんは、よく自宅用にチーズを買ってるけど、アレは彼女といっしょに食べてるんだよね。きっと、おいしいって思ってくれてるからなんじゃないかな。

そうかもしれないですね。買って帰って、彼女といっしょに食べながら「おいしいね」といって共有し合うのが好きなんです。チーズに合わせてワインを買って帰ることもあります。

彼女だけでなくて、自分の親や、彼女のご家族にCHEESE STANDのチーズを買ってもっていくんです。自分たちがつくったチーズがおいしいって言ってもらえると、やりがいを感じるし、続けてよかったと感じるんです

工房には自転車で通勤している。

ブッラータよりモッツァレラの方が難しい

――チーズ職人の一日を教えてください。

早番の時は、早朝3時に工房に着いたら、まず牛乳を受け入れる準備をします。3時半頃に、牛乳を積んだタンクローリーが店の前に着くので、牛乳の受け入れ作業をします。それを終えたら、ブッラータとモッツァレラの製造の準備として、包装袋を用意したりします。

牛乳を受け入れる矢田。時計を見ると針は3時23分を指している。

4時半頃から牛乳の低温殺菌、温度管理をはじめていると、5時に遅番の人が出勤してきます。遅番は、裏の作業といって、乾燥中のリコッタサラータやカチョカバロを反転させたり、硬さのチェックをしたり、「さけるモッツァレラ」のパッキングをしています。

6時から6時半に、いよいよチーズの製造の本番です。チーズのもとになるカード(チーズの元)を作って、それをカットし、モッツァレラやブッラータを作っていきます。ここからは製造終了までノンストップ、一気に作業を進めていきます。

製造終了は10時半厳守。というのも、渋谷店が11時にオープンするので、渋谷店からの受け取りの自転車が10時40分には到着するからです。これを「1便」と呼んでいるんですが、これに絶対に間に合わせないといけません。製造が終わったら、工房を隅々まで掃除して終わりになります。その日の状況にもよりますが、掃除が終わるのが12時半になるときもあれば、13時を過ぎるときもあります。

――10周年のチーム合宿でチームビルディングにおける性格診断をしたときに、動きながら考える藤川さんの対局だといわれたのが、慎重に考えて動くナリくんだったんだよね。同じチーズ職人でも性格が違う二人がいるのはチームとしては、いいことだと思うんです。自分では、チーズ職人としての手ごたえをどう感じていますか?

チーズ職人の仕事は、毎日牛乳やチーズの状態が変わっていくのですが、それに対処していくことは楽しいと感じています。藤川さんからはずっと「温度管理がすごく重要」といわれているのと、カードのカット次第で、良いチーズにもダメなチーズにもなるからこそ、良いカードが毎日できあがるようにしたいですね。

カードを作る容器は、まわりに高温の蒸気がまわるようになっていて、容器内の牛乳の温度をその量をレバーの開け閉めで行います。ちなみに、容器を冷やすときは、水を入れるレバーを開きます。目標の温度を目指して蒸気を入れたり、水を入れたりしてするのですが、温度が上り切らない、下がりきらないというのがある。このあたりの調整は、カードを作る際に難しいところです。

あとは、カードをカットする大きさも重要です。チーズハープと呼ばれるハープ状の針金の器具を使って切るんですが、切りすぎたりしてもだめ。最近は、自分で良い生地と思えるようになってきました。たまに藤川さんから、「まだうまくできていない子に、ナリが教えてあげて」と言ってもらえるようになって、うれしいですね。

――逆に難しいなぁと思っていることはありますか?

製造でいうと、ブッラータの方が難しそうに思われるかもしれませんが、じつはモッツァレラの製造の方が難しいと思っています

こう「ギュッ」とやるのが難しいんです。食べたときの繊維の感じを作れないないとおいしくない。それは、モッツァレラを練るときの行程が重要なんです。今は出来きるようになってきたかなと思っています。藤川さんからみたらまだまだなんですけどね(笑)。

――あ、でもね、卸先のレストランに食べにいって、「このモッツァレラおいしい」とかいっていて「オレは、この日製造に入っていないから、ナリたちが作ったんだな、やるなぁ」っていったりしているよ(笑)。

え、本当ですか?それは、直接聞きたかったですね!

自分の目標は、藤川さんに認められることが目標。藤川さんがチーズを作るスピードに早く追いつきたい。藤川さんの製造のスピードはすごく速くて、プロ一流選手だとしたら、僕はまだまだ草野球レベル。何ができたら追いつけるかといったら、経験と場数だと思っています。何度もくり返して、1回1回の仕事に集中して望んでいきたいです。

「早く帰れる」のもチームワーク
コミュニケーションを密に

――ナリくんは、製造スタッフでも一番勤務歴が長い、中心的な存在なわけだけど、何か気を付けていることはありますか?

掃除を製造の仕事と同じくらい大事な作業としてやっています。藤川さんが、とても衛生管理に関してすごく厳しいということもあって、ご自身自ら掃除を細かくやっているのを見ているからでもあります。はじめの頃は、ついつい掃除の手を抜いてしまうんです。そうすると、藤川さんが出勤したときにすごく注意されるんです。

――春に、ナリくんの先輩になる女性製造スタッフ2人が退職してからは、ナリくんが中心になって、しっかり衛生管理のレポートをきちんと報告しているよね。

はい。女性だからということではないのですが、先輩の二人は、どちらとも気配りができて掃除も丁寧でした。「男だけになったから掃除をしなくなった」と言われないようにとは思っています。

あとは、最近、いろいろなものが壊れてきているのが気になっています。たとえば、カードをカットするチーズハープの針金が切れたら、張り直さないといけなくて、余計な仕事が増えるんです。仮に自分たちで直せなかったら修理に出すために手配をしないといけなくて、また仕事が増える。アルバイトのスタッフが道具を雑に扱っているのを見ると、注意をするようにしています。

それと、「早く帰れる」のもチームワークだと思っていて、掃除のスピードをあげて、コミュニケーションとっていくのが製造と同じくらい大事。誰が何をやったとか、コミュニケーションを取りながら、おいしいチーズを作るだけでなく、早く仕事を終えるチームも作っていきたいと思っています。

――最後に、CHEESE STANDの好きなチーズと、そのおすすめの食べ方を教えてください。

カチョカバロが好きですね。焼いたらめちゃくちゃうまいんですよ。冬場には、キムチ鍋に入れてもおいしかったです。

モッツァレラなら、ちぎってサラダにのせたり。ナイフで切るのではなくて「ちぎる」のがポイントで、中の繊維を味わうには、ちぎったほうがおいしいんです。

あとブッラータは、デザートにするのがおいしい。甘いものが好きだというのもあるのですが、フルーツとあわせるのが僕は好きです。

――これからも、おいしいチーズをお客様のために作っていってくださいね。

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CHEESE STAND web : https://cheese-stand.com/

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構成・文=江六前一郎

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