AI二次創作とモノマネとHIPHOP

前置きとして、この以下の内容は特定の絵を排出する人や行為、趣向を否定したりディスるものではありません
あくまで私個人のやりたい事との対比として用いるだけなので、悪しからず


先日、たった1枚の絵からでもある程度の要素を学習させられる機能が出たという記事を見た
以前からも、ローカル環境で学習をさせてまだデータベースにないアニメを覚えさせたり、mimicなるサービスで自分の絵柄を食わせるということはあったので、それ自体には特に違和感はない
まぁすぐ来るだろうと思ってた機能ではある

ソレを使ってるかはわからないけど、恐らく使ってるであろうレベルで
とある人気アニメのキャラを再現したAI絵がバズっていた
確かにそっくりというか、ほぼまんまで、公式が出したと言っても疑わないようなものだった

確かにすごいのだけど、見て思ったのは
二次創作なのに公式そっくりの絵を出しちゃうの?』
ということ

公式が出すものには犯してはいけない領域があって
消費者側はそのあたりを守りつつ(裏ではコッソリ破りつつ)
迷惑にならない範囲で楽しむのが同人活動なのではという認識がある

分かりやすい例で言えばアダルト二次創作
二次元コンテンツ自体、アダルトによって育てられた部分も多々あるので
多少は目をつぶって許されてることもある
ただ、あくまで“二次創作”の範囲であって、公式の模倣になると話は別なのではないか

ただでさえAIアートが“創作”なのかを疑問視する声もある中
公式絵を学習したAIが排出したものを商品としてしまっていいのか
人様が作ったものを我が物顔で売るのは
スーパーコピー詐欺や転売ヤーと本質変わらないんじゃないか?
というのが私の持論だ
※個人で楽しむ分には問題ないという認識も添えておきます

また、著作権関係についても疑問がある
『二次創作』をwikiで調べると、こう書いてある

著作権法における二次的著作物 (英: derivative work) とは、先に創作された第一の著作物 (原著作物) から著作権の発生する主要な要素を取り込んだ創作的表現のことである。
二次的著作物は第一の著作物から独立した、第二の別の著作物となる。
二次的著作物が創作的でありそれゆえ著作権で保護されるためには、著作物の変形、改変、または翻案が相当に含まれ、著作者の個性が十分に発揮されなければならない。
翻訳、映画化、及び編曲は二次的著作物の典型的な種類である。

wiki

つまるとこ
『ただ似てるだけなのは二次創作じゃないのよ』
ということが書いてある

また、著作権以外でも、例えばモノマネというジャンルにおいては
パブリシティー権だったり、名誉毀損の問題が浮上することも珍しくない
概念的にだけでなく、明確に違法となる可能性も孕んでいるのだ

アダルト同人にしても
「絵がそっくりでも脱がせば創作でしょwww」
はまぁ通用しないでしょうということ
AIに関わらず、こういった問題が今までなかったわけではないし
AIが精巧になればなるほど、より浮上してくるだろう


ここまでは二次創作の一般的な概念と法的な問題を
AI二次創作に照らした内容
以下は個人的なAIアート、及び二次創作に求める楽しみについて

私はHIPHOPが好きで
Dragon Ash(まぁあれはミクスチャーだけど)が流行する少し前
まだ世間的にラップもそんなに浸透してなかった頃からよく聴いていた

HIPHOPやR&Bではしばしば『サンプリング』という技法が使われる
既存曲のビートやメロディなど一部を抜き出して、そこにライムを乗せたり
別の歌を乗せたりする
よく知らない人からすれば「これパクリ?」となるかもしれない
幼い時分の私も「???」となった記憶がある

しかし、細かいことは省くが、これはきちんとリスペクトや礼儀の上に成り立つ行為であり、正式な技法なので、パクリとは明確に異なっている
広義ではアートとしての『二次創作』にも分類して差し支えないと思う

昔、とあるイベントでRHYMESTERの宇多丸御大が
「ラッパー以外にどんな仕事をしたかったか」という質問に対して
「映画の予告を作る仕事がしたかった」と答えていた

概要としては
内容の一部分を抜き出し、繋いで面白そうに見せる
既に価値のあるものを素材して、また別の価値を生み出す
これはHIPHOPのサンプリングに通ずるものがある

といった内容だった
この考えはとても腑に落ちたし、非常に共感できた

『別の価値を生み出す』
二次創作の面白さ・素晴らしさは、まさにこれなんだと思う

同人というカルチャーにおいても
ファンアートや、IF展開シナリオ
妄想からくるアダルトも、もちろん二次創作の範疇であり
一つの作品から派生して、様々な新しい価値が生まれたことが、サブカルマーケット拡大の要因であることに疑いはなく
公式からしても持ちつ持たれつな関係だったりもする

昨今の人気絵師が描くアニメのエンドカードなんかも
これと同じような感覚で価値をもつのだろう

しかし、これらが原作と同じ絵柄や、公式と誤認されるような内容なら
やや話は変わってくるだろう

公式が生み出した価値は絶対であり
その価値をそのまま利用してはいけない

これは界隈が暗黙的に守ってきたルールであり
前述の通り違法性もゼロではない

しかもAIで公式絵のみを学習させたのであれば
もはや創作ですらない、平たくいえばパクリと同義、無断転載とも取れる

そういった類のものは、いわば『裏モノ』的な扱いであって
SNSでバズっていい代物ではないと思う次第である

と、ここで一つ誤解がないように付け足しておくと…
私は二次創作における、いわゆる『同人ゴロ』については特に否定はない
「愛がないとダメ」とか「リスペクトがないとダメ」とか
そういった不明瞭な要素を商品価値に含めるべきという考えはない

まあもちろん、無いよりは有った方がいいんだろうけど
ドライな需給においては本質ではないわけで
原作が大好きな下手が描いたイラストより、
原作知らんでも上手な人が描いたエロ二次創作が売れる
それは当然であり、それで何の問題もない

原作の価値をインプットして、別の価値をアウトプットする

二次創作の工程としてはこれで問題なく
そこに作品愛はあってもなくても、どっちでも良いと思っている
ただ、最終的によく売れるのは、作品愛があるものなのかなぁ


さて、ここらでまとめておくと…

AIアートで
新しい価値を生み出すことは十分に可能で、それは創造(アート)といえる
愛やリスペクトだって、きちんと込めることができる
ただ
AIが学習した絵をそのまま排出するのは二次創作に非ず
原作と二次創作の良好な関係を保つことが絶対のルールである

AIはツールとして非常に多くの可能性を秘めているし、魅力的だ
これを二次創作に使うことは特に問題ではないし、これからどんどん使われていくはずで、もちろん自分も活用していこうと考えている
これはやりたい事を前提にしたポジショントークだと指摘を受けるかもしれないが
他人の技術を簡単に奪えてしまうからこそ
明確な理念をもった上で、AIアートと付き合っていきたい
という話

AIを利用した二次創作
本人を不愉快にせず、笑いや感動を作るモノマネ
リスペクトと礼儀ありきのHIPHOPのサンプリング

ジャンルは違えど、新しい価値を生むという共通点があり
そのどれもが、誰かに何かを与える『エンタメ』として存在していけるはず
そう思う次第だ


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