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彼との約束

10年後、結婚しよう

そう言って彼は彼女を見送った。
大学卒業の春。

彼女は海外でどうしても仕事をしたくて
でも、彼とは別れたくない
そんな気持ちを抑えながら
彼の言ってくれた言葉を勇気に変えて日本を発つ。

彼は彼女の情熱に影響されて
自分も就職した会社で海外勤務を希望。
ほどなくして海外担当を任されるようになる。

仕事も住む場所も全く違うところで
二人の気持ちはずっと変わらずに育っていた。


担当の国は彼女が仕事をしている国とさほど遠くない。
離れてしまったと思った距離は、実はすぐそこにあって
誰にも見つからずに誰にも邪魔されずに
相手だけを見る時間も作ることができた。

つらいと思った海外の仕事も、現地に住んでまで頑張る彼女のことを思えば大したことはない。
彼女のがんばりが自分のやる気につながった。

そして、
10年後。
海外で会うことは終わって、日本で二人で生活を始める10年はあっという間にやってきた。
世界がコロナで混沌としていることもあって、
海外に行かなければならないという使命感は無理なく横に置けた。

すでに海外で会って気持ちを確かめているから
結婚することで改めて何かをすることなどはない。
自然な結婚でき、自然な形で一緒に住むようになった。

10年後。

お互い、がんばったね。
お互い、待ったね。

お互い、気持ちが変わってなくて
本当に嬉しいよ

結婚しよう。

ありがとう。


10年後に結婚する約束をしていたノンフィクション。
好きな人が待っているということが
こんなにいろんなことに影響していく。