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日本語で書かれた化学の本が必要。

近年「日本語のよい本」が減ったと感じている。これは日本の化学を弱体化させると思う。これは勉強になる!詳しく書かれている!痒い所に手が届く!歴史がわかる!そんな化学の本の多くは,実は昭和に書かれているものが多い。僕が生まれた頃(昭和60年)の本なんかは,まだwordで書かれていないし,言い回しも独特なんだけど,すごく勉強になるし,わかりやすい本が多い。

そんなよい本がなんで減ってしまったんだろう?良質な日本語の本が減った理由はいくつか考えられるけど,ひとつはそのような本を書くべき大学教員が本を書いているような時間などないということだ。これは,自分が大学教員になって強く思う。お金の計算と運営の会議ばっかりだ。しかも運営の会議はほぼ決定事項を聞かされているだけ。

大学教員がもっとゆっくり考えて,調べて,本を書く。そんな時間が必要だと思う。むしろ,このような作業を大学教員がやらなくて誰がやるんだよって思う。

もうひとつ事情がある。日本の人口が減っていることである。せっかく書くならたくさんの人に読まれたいと思うのは自然で,日本語で書くより,英語で書いたほうがたくさんの人に読んでもらえる。

もちろん,日本の学生のために良質な本を書くという気持ちは潜在的にはある。だがそれは時間に余裕がないと生まれない。時間がなく,業績を求められている公務員にはこれが不可能で,本当によくない。

この状況は変えようがないと思う。一方でチャンスもある。引退したお年寄りが頭ははっきりしていることだ。

経験があり,文章も洗練され,日本を良くしようという気持ちがあり,若手・子どもを応援しようという気持ちがあり,何より時間もある。そのような先輩方が書く文章にはものすごい価値がある。先輩方には悪いが,趣味の範囲でもよいのでもうひと頑張りしていただきたい。

それが実現しているのが,触媒学会シニア懇談会だと思う。

このシニア懇談会NEWSがとてもおすすめである。ぜひ読んでいただきたい。美しい日本語,経験といまだに調査を続けることで生まれる気づきがあるはず。

超高齢化社会も,若手の成長を加速させるためには悪くないんじゃない?そんなことも思ってしまう。

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