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ホーチミンに長期滞在するなら、狂犬病予防接種はとても大事、という話

狂犬病のワクチンとホーチミンにある意外な繋がり

当日にこの記事をリリースできなかったので、ちょっとタイムリーさに欠けますが。。。

1885年7月6日は、世界で初めて狂犬病のワクチンが人に接種された日なんだそうです。そのワクチンは、フランスの生化学者であり細菌学者でもある、ルイ・パスツール氏により研究が進められ、犬への接種での成功事例はいくつもあったそうですが、人への接種はとても慎重で、でもついにその最初の接種が為されたのが、7月6日だったのだそう。

この、ルイ・パスツールさん。アルファベットの綴りを見ると、Louis Pasteurさん。

おや。

ホーチミン在住者さんならお気づきになられたかもしれませんね。そう、Pasteurという綴り。これ、パスツール、という読み方以外に「パスター」という読み方も(英語読み?)。

そう、ホーチミンの中心街を貫く、おしゃれ雑貨やカフェが並ぶ有名な通り、Pasteur 通りと同じ綴りです。ガイドブックにも必ずと言って良いほど乗ってる通り名。

ホーチミンの道路の多くは、歴史上活躍された方や著名な方の名前が使われていると聞きますが、このパスター通りの「パスター」は、Pasteur 氏から来たものだったんですね。

地味なスポットなのであまり脚光をあびることはりませんが、そういえばホーチミンには「パスツール研究所」がありますね。世界各地にある研究所の一つで、1891年に作られたものだそう。はい、ごめんなさい。私こちらを訪れたことがありません。

が、狂犬病予防接種の話をしようとしたら、思わぬところでホーチミンと接点があったというお話でした。


狂犬病って何ですか?と聞かれる時代

日本にも、1920年頃には年間約3,500件もの発生があったそうです。しかし、1922年に家畜伝染病予防法が制定されて、犬にワクチン接種が義務付けられてから約10年で、年間数件の発生までに減少。

しかしその後、太平洋戦争で予防対策が疎かになったとたんに約1,000件の発生が復活。この時点でも犬へのワクチンが如何に大事かがわかりますよね。しかしその危機に当たり、1950年に狂犬病予防法が施行され、犬に年2回のワクチン接種が義務化。現在の日本国内での狂犬病の発生は全くない、と言えるまでになったとのこと。(1970年にネパールで犬に噛まれた青年が帰国後発病死した事例は除く)

しかし最近の日本では、狂犬病がとても遠いものとなり安全になりすぎたせいか、「ワンちゃんに注射をするのが可哀想」などの理由から、犬へのワクチン接種を拒否する人が出現しているという話がチラホラ。

犬へのワクチン接種をしなくなったらどうなるか、という顕著な過去事例があったにも関わらず、感覚が麻痺したのか、過去の惨状がなかったことにされるケースがあるのは、とても大変残念なことですね。そのワンちゃんにも危険が及ぶことだというのに。


で、狂犬病ってどんな病気なんですか?

そんな、あまりに無防備なことを言う人が出てきているくらいですから、狂犬病自体のことも、あまり知られなくなっているかもしれません。

噛まれる、傷のある部分を舐められる、等することで感染し発症すればほぼ100%、死に至ると言われている恐ろしい病気です。世界で数例だけ、発症したにも関わらず助かった例はあるそうですが、そのメカニズムは解明されておらず、発症したら手の打ちようがないというのが現状のようです。

症状としては(予告:ここの下りは怖いです)発熱、頭痛、倦怠感、筋肉痛、疲労感などで風邪かな?と思っている内に、咬まれた傷口の痛みの悪化や痺れなどが現、その後、自分ではコントロールできない興奮や不安状態から幻覚を見るようになったり錯乱状態になった上、攻撃的な状態となり、水怖がるなどの脳炎症状へ移行。最終的には昏睡から呼吸停止で死亡するという、想像するだけでもホラーな状態が待ち受けているのだとか。しかも打つ手なし。

恐ろしい。日本は、それがほぼ無くなっていると言って良い、世界でも数少ない国の一つ。それはとても素晴らしいことだと思うのですが、気にする必要がないためにウッカリしてしまいがちなのが難点。一歩海外に出たら、特にアジア圏・東南アジアに出向くと、その危険とはいつも隣り合わせ。

これだけ医療が発達した現代でも、年間5万5千人が狂犬病で亡くなっていると聞いたら、その凄まじさを少しをご理解頂けるでしょうか。ホーチミンに住む人にとっては他人ごとではないどころか、日々身近なところにある危機なのです。


狂犬病予防に対する日本人の現状

しかし日本の安全な環境により、危機感が薄い人が多いという現状を、私は数多く目にしています。とても怖いことなのに、日本国内にいる時の「危機感の不要さ」だけを持って、予防接種を受けていない、と。

▶︎▶︎▶︎ 万が一の時に払う代償は、命です。◀︎◀︎◀︎

それなのに不要と思ってしまうのは、あまりにも危険だと私は思います。ですが、周囲で見聞きする限り、接種を受けていない人は残念ながら結構いる様子。

個人の決断の領域にまで他人が入っていくことはできませんが、私なら、大切な人には予防接種を受けてほしいと思います。大切な人を大事にするためにも、自分は予防接種を打ちました。

日本にいる時とは状況が違うとういことを、せめて知ってほしいです。


狂犬病の予防接種は必要ないという日本の医者の理論

ところで狂犬病の予防接種の話をする際、こういう意見をよく聞きます。

「噛まれたら予防接種をしててもしなくてもワクチンを打たなきゃいけないから、予防接種は打つだけ無駄」

と、日本在住時に「医者から聞いた」「海外在住者から聞いた」「海外進出支援関係者から聞いた」ことを根拠に予防接種の必要性を否定するケース。

海外在住者進出支援者から聞いた、とかいう、医学においてはなんの保証にもならないことは置いておいて、医者から言われれば、ああ、大丈夫なんだなって思っちゃいますよね。そしてこれは間違いではないのです。噛まれたり感染が疑われる際には、どちらにしてもワクチン接種が必要です。

が。

まず「予防接種は無駄」は間違いです。予防接種を打っていると、感染後に必要な注射の数が違います。

予防接種を打っていなかった場合は、感染が疑われる事案後に5〜6回(!!)。予防接種を打っていれば2〜3回。身近にワクチンのあるところならまだしも、その回数差分の手間と費用はかなり違います。(保険の状況はここのケースにより、加味されることがあります)

それからもっと大事なことを、日本在住のお医者さんは忘れている・または知らないケースがあるんです。例えばベトナムを事例に取ると…

▶︎▶︎▶︎肝心のワクチンが常にあるわけじゃない
むしろないことの方が多い◀︎◀︎◀︎

感染が疑われる事案が起こった時には、状況によりできるだけ早く必要なワクチンを打たなければならないのですが、外国人が速やに・且つ比較的に安心して使えるベトナムの病院にはそれがないことが多いのです。医者に行けば良いという話じゃない。

※ベトナムは狂犬病発生率がとても高い国なので、ワクチンがあるところにはあり、貧しい方には無料でワクチンを提供できる制度があったりもする、すなわちベトナム国内にワクチンがないわけではないから、該当病院情報を更新して緊急時にはすぐに利用できるようにする方が良い、というご意見も頂いたのですが、それがローカルの病院である場合、外国人にはハードルが高い上に、別の懸念事項も発生するので(これはまた別の機会に)私からは強く勧めにくい、というのが現状です。

そこで予防接種をしていれば幾分の猶予があるのですが、予防接種をしてなかった場合は、それこそ刻一刻と過ぎる時間が命を賭けた運命の分かれ目。

そんな事態を、日本にいるお医者さんが想像できないのも無理はないですよね。彼らはこの地に住んだことがないのでしょうから。住んでても、関心がなければ知らない人が多いくらいですもの。

だから、それを告げたお医者様も、医療知識としては間違ってないのですが、世界各地での現状を知らないため「適切ではないアドバイスをしている」ことになってしまうのです。


犬やその他の動物に噛まれたらどうしたらいいの!!

なので私としては、「予防接種は大事ですよ」ということを強く主張したいのですが、たかが私一人が声をあげて、はいそうですかと皆さんがそうされるとは思っていません。

なので、不本意ではありますが、「予防接種をしていない前提」の話を少し。予防接種をしてない状態で犬や動物に噛まれたらどうしたら良いか、というお話を。

まず、自分でできる対処としては、石鹸・流水で傷口をきれいに洗いましょう。モノの記事によっては15分間流水で流す、など書いているものもありました。ただし、牙が皮膚深部に到達している場合、または歯牙の形状により傷口が複雑になっている場合は、そんなものでは追いつきません。

夜中だろうがなんだろうが、救急病院を即刻受診しましょう。しかしその場合でも、先ほどお伝えしたように、ベトナムにはいつもワクチンがあるわけじゃ無いので、なかった場合は、シンガポールやタイに搬送されることになるんですね。

時間も渡航費もかかる上に、予防接種を受けてなければ、我が身に起こっている危険がドンドン増す状態に晒されながら不安な時間を過ごさなければなりません。そしてそんな不安を抱える人の側にいる方のご心痛たるや、如何ばかりかと。

私なら、自分の旦那さんにそんな思いはさせたく無いです。お子さんがいらっしゃる方なら尚更だろうと想像します。死ぬ危険があるのは自分一人でも、そのことに胸を痛める人は周りに何人もいるはずです。無防備でいることは、彼らの気持ちをないがしろにすることでもある、と、私は考えます。

ちなみに、海外だと不安だから(日本語以外の医療を受けるのは不安なのに狂犬病の危険に関しては不安じゃなかったとういのは不思議な話ですが)、いざという時には日本に帰ろう、とか思ってる方、気をつけてください。

WHO(世界保健機関)は、感染が疑われる事案が発生した場合、狂犬病ガンマグロブリンと言う物質の接種を推奨しているのですが、この物質が、日本では製造も輸入もされていないのです(全く存在しないわけでもないと思ううが現状分からず)。日本に帰っても処置が受けられないケースがあり、諸々が無駄になりかねません。

無駄になるのがお金だけなら後から手の打ち様もあるかもしれませんが、刻一刻と手遅れになるかもしれない、リミットまでの時間を無駄にしたなんてことになったら…怖いですよね。

だから知っておいてください。
まさかの時にはまず受診。
そして先生の助けを借りて搬送先での必要処置を確保してから移動。

必要処置が確保されれば、日本だろうが東南アジアの他の国だろうが良いのです。そしてこの知っておくべきポイントは、自分が感染の危険にさらされた場合だけでなく、身近な人がそいう危険に瀕した際にも必要な知識。特に本人はショックを受けて冷静に判断できないことがあるかもしれませんから、誰もが知っておいてほしい知識です。

以上のことから、予防接種をしておくに越したことはない、というのが結論です。ここまでは、同意してくださる方も多いと思うのです。

が、ではなぜ、予防接種を受けない人が多いのか。


狂犬病の予防接種はお金も時間もかかります

狂犬病の予防接種、地域によって方式が違うケースがある様ですが、私が先日ベトナムで受けた場合は、一定期間ごとに3回の接種が必要でした。なので、海外旅行に来週行くからその前にちょっと予防接種打っておこう、では済まないことが多いのです。

例えば日本国内で接種する場合は、4週間隔で2回接種し、さらに6か月から12か月後に3回目を接種するそうです。長い。。。そんなスパンだと言われただけで面倒を感じるのは分からないではありませんし、そもそも海外赴任辞令が出てから、そんなに期間がないことだってあるでしょう。

その場合は、赴任先で接種する可能性も考えましょう。例えば私は日本で打ってきましたが、有効期限が切れたために、ベトナムで先日受けなおしました。その場合も3回でしたが、数ヶ月にて完了しました。扱う製剤によって違んですかね。結果として、完了までの期間はベトナムで受けた方が短かったです。

ただし、いつでもあるものではないので、別件で病院に伺った際に入荷の話を聞いて、即刻予約をした次第。3回分、確保しないと意味がないから、事前の確保が必要なんですよね。

これ、前回接種分の有効期限が完全に切れたので、初めて接種するのと同じ環境だったわけですが、1年後にブースターと呼ばれる接種を1回受けると、有効期限がグッと伸びる様なので、次回こそ、それ打って、のんびり期限を構えたいと思います。お薬手帳や受信手帳に、接種証明とともに保管・記録しておくと良いですね。

そして今回の費用は、前問診などの診療費も合わせると、夫婦で数万円。。。安くはないです。ここをカバーしてくれる会社ばかりじゃないだろうし、むしろ聞く話によると、予防接種関連は個人の任意とうことで、完全自費という方も多いはず。

時間がかかる上に費用もかかる。また、その危険が必ず及ぶとういものではなく、もしかしたら何も起こらないかもしれず、むしろその可能性の方が高いとなると…

予防接種が後回しになるのは、わからないではないのです。私だって自分一人だったら、ついつい後回しにしてしまっていたかもしれません。でも、「ちゃんと受けよう」と、旦那さんに言われて、そうだよな、と思い至った次第。

私は自分が危険な目にあうのも嫌だし、私が危険な目にあったことで旦那さんを悲しませるのも嫌です。だから優先順位を「予防接種を受ける」ことに置きました。どんな理由があっても自分の命を危険に晒すことと、自分の大好きな人を悲しませることは、良しとしません。それが私の価値観です。

みなさんは、どこに重きを置きますか?
もしまだ狂犬病の予防接種を受けていない、家族に受けてもらっていない方がいる場合は、今一度、考えてみてください。

私は、私の文章を日頃読んでくださって身近に感じてくれている人、みなさんに、元気で笑顔でいてほしいと願っています。決断はご本人に委ねるしかありませんが、ベトナムにいれば狂犬病は身近でとても危険な病気、ということを、今一度認識をして、考えてみてもらえたら幸いです。

参考:

2019年7月8日
ちぇり


その後、狂犬病暴露後接種な事案が発生しました

詳しくは、こちら。




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