見出し画像

いつか、あの夜を思い出すとき 

先日、WIRED合宿というイベントに参加してきた。            

WIRED合宿は、瀬戸内の兄弟デニムブランドEVERY DENIMの兄 山脇耀平さんと、WIRED CAFE等お洒落なカフェを国内に多数展開するカフェカンパニー株式会社の永井礼佳さんが主宰するMEET UPイベント。

イベントの概要は、山脇さんが、知り合いや、会ってみたい人に声をかけて、そこで集まったお互いほぼ初対面の人達が、主催者の2人と一緒にWIERD HOTEL浅草で夜通し語り合い、翌朝は浅草の街にくりだすというもの。去年の秋に初めて開催して、今回で3回目。毎回微妙にテーマや内容を変えて実験中らしい。

今回、僕は、たまたま主催者の山脇さんと仕事で知り合う機会があって、声をかけてもらった。他の参加者は、みんな同世代のそれぞれの界隈では既に名の知れた錚々たるメンバーで、初めは「凄い人に会える」みたいなミーハーな高揚感と「場違いなんじゃないか」という気後れが混ざりあってそわそわしていた。

でも、ひとたび、合宿がはじまり、数杯目の飲み物をオーダーする頃には、そんな斜めに構えた気分もどこかに消えて、これまではSNS等で間接的にしか知らなかった人達と、時を忘れて取り留めもなく語り合っていた。

上手く言葉で表現しきれないけど、ただひたすらに、最高のイベントで、最高の出会いだった。

そして、イベントを終えて、余韻も冷めやらぬまま乗り込んだ夜行バスの宇宙船みたいな車内で、楽しかった思い出を回想している内に、気が付けば「人と人が出会うことの意味」について考えていた。

詳細なイベントレポートは公式に譲るとして、このコラムでは、今回、WIRED合宿に参加して考えた「人と人が出会うことの意味」について書きたいと思う。

この世界で、何らかの接点を持つ人と出会う確率は24万分の1だという。そして友人と呼べる人と出会う確率が2憶4000万の1。さらに親友と呼べる人と出会う確率は24憶分の1。思いがけない巡り会いが何度も何度もやってくる。

僕が好きな「少女邂逅」という映画の冒頭に出て来る言葉である。ちなみに、この見慣れない「邂逅」という言葉は「カイコウ」と読み、「思いがけない巡り会い」を意味する。確率論的な話の真意はさて置き、人は一生の中で、毎日、数えきれない人とすれ違い、出会うなかで、天文学的な確率で、親友になったり、恋人になったりする。

この言葉に対する解釈は人によって分かれると思う。人と人との出会いは、多くの場合にそれほど親しい関係にはならない、言ってしまえばあまり意味のないものであるという考え方もあるかもしれない。でも、僕は、今回の経験を通して、改めて、人と人とが出会うということの「重み」、少し大げさに言えば「尊さ」みたいなものについて考えさせられた。

人と人が出会う時、その後のお互いの人生において二度と交わることのない場合が大半である一方で、常に、もしかすると仕事仲間や親友や恋人になるかもしれない奇跡的な可能性を秘めている。

そんな当たり前のことを今さら気付かされて、ちょっと感動した。


WIRED合宿の主催者の1人の永井さんは、WIRED合宿について、「出会わない人生が考えられない。そんな出会いをWIERD HOTELでの合宿を通して生み出せたら嬉しいです。」と語っていた。(えぶりシティメンバー紹介より)

「出会わない人生は考えられない」そんな風にお互いが思える出会いが生まれる確率は、やはり、天文学的な確率なのではないかと思う。普通であれば。奇跡でも起きない限りめったにないことだ。

ただ、主催者で毎回メンバーを集めている山脇さんは、同じ思いを持った人を惹き付ける不思議な魅力を持っていて、彼のまわりは、「出会わない人生は考えられない出会い」であふれている。これは、冷静に考えたら驚くべきことなのかもしれない。彼と接点を持った多くの人達は、彼を通して、出会わない人生は考えられない人と出会っている。傍目から見ていてもそれが分かるくらい、彼のまわりには、人の環が出来ている。少なくとも僕はそう思っている。

山脇さんが最近リリースしたEVERY DENIMのファンコミュニティー「えぶりシティ」にはこんな言葉が掲載されている。

「なんとなく」よりも「これがいい」自分の理由で選んだものには、いっぱい考えたその分だけ温かさが宿ってます。つくり手の想いをめいっぱい受け止め、誇りを持って使えること。それはすなわち「心を満たす」ということ。納得して手に入れた大好きなものができたら、誇らしげに教えてあげよう。「好き」の理由を語ってあげよう。あなたの好きがきっと誰かの好きになり、そうして人を想う気持ちが巡っていく。互いに心を満たし合う素敵な"環"ができあがる。

山脇さんはEVERY DENIMという製品を通して、人と人とを繋いで、さらにその人たちが安心して交流できるコミュニティーをつくろうとしている。そして、それは着実に形になりつつあって、山脇さんなら、そう遠くない将来、実現してしまいそうな気がしている。


今回のWIRED合宿で出会った人達と、僕がこの後の人生で再び交わることがあるかどうかはまだ分からない。もしかしたら、来月には、何か一緒にやっている人もいるかもしれないし、数十年後どこかの街ですれ違うまで出会うことのない人もいるかもしれない。

ただ、間違いなく、この出会いは、僕にとって特別な意味を持つ出会いになったと思っている。

そんな風に思える出会いを自然に生み出せてしまう山脇さんはやっぱり凄いと思うし、この場を設けてくれた主催者の2人と、出会った人達みんなに、改めてお礼を言いたい気持ちになる。


久しぶりに訪れた浅草は、永い歴史の面影を残しつつ2020年、あるいは、それよりもっと未来に向かって着実に変化していた。人も、街も、移ろいゆく生き物だと思った。街では、今日も、世界中から、数えきれない人たちが集まり、すれ違い、奇跡的な出会いが生まれているのだろう。

いつか、また、浅草の街を歩くとき。たまたま、デニムなんか履いていた日には、きっと、少しだけ、雑踏の中で立ち止まり、WIRED合宿でみんなと語り合った「あの夜」のことを思い出す。

そこで生まれた特別な出会いの意味を噛みしめて、そして、また、どこかに向かって歩き出すのだろう。

そのとき、どんな道を歩いていたとしても、「あの夜」の出会いは、僕の中で、ずっと特別な意味を持ち続ける。

そんな気がしてる。


#コラム #エッセイ #WIERD合宿

             

             





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?