VTSやってみた2

ミルキクさんお題のVTS2回目


今回は、ミルキクさんの流儀に従わせていただきました。

初:絵を10秒だけみて感じたこと、気づいたことは何か

西洋的な理想的な構図から外れた、中途半端な構図。
絵画全体を俯瞰できるような構図ではないため、ぱっと見の印象を掴み取りづらい。
自分の生徒なら評価低いw
そして、中世の西洋絵画って、裸のオッサン好きだよなーと。
美術教師とは思えない、雑な感想だ。

実は自分の特性だと思うんだけど、絵画をぱっと見ても素直な感想って出てこないんだよね。情報が足りなすぎて。
だから、映画や小説を読んでても、先読みとかしない。そして、情報が足りる頃にはオチがくるとw
なんで、推理小説とかも、自分では推理しないので、それなりに楽しめるクチ。

① .絵に描かれていることを突き止めよう

まず目につくのは画面中央を縦にぶった切っている大きな川。そして、川の中央の船に乗った、ふたりの人物。
一人は男性で大きく、もう一人は性別不詳の小さい人物。親子か。
男性が異常に大きいように見えるが、巨人というわけではなく、男性が主人公だと誇示するためのデフォルメであろう。

男性が船を漕いでいるが表情は迷いというか、不安そうな顔つき。何に怯えているのか。
子供がそれを、さらに不安そうに見ている。

背景は奥から、左右の陸地が対比されている。

・青空が広がっている空 ⇔ 雲が厚く煙で煤けてしまっている空
・寒色が使われた静止しているような安定している世界 ⇔ 宙には竜が舞い激しく燃えている(爆発も見える)破壊的な世界
・緑豊かな自然 ⇔ 人工的な町
・羽の生えた天使 ⇔ 不気味な風貌の悪魔

ここまでで、左側は天国、右側が地獄のようだ。

そして、一番手前は両岸ともここから奥の世界に続いているので、ここはそれぞれの世界への入り口のようだ。

面白いのはここの対比だ。

左側の天国へ行ける岸は岩が露出しており、波も荒く接岸は難しそうだ。
一方、地獄への岸辺は、自然が豊かで果物も生っており接岸も容易に見える。

船に乗った男性は、どちらの岸に上陸するかを悩んでいるのか。

船の向きを考えれば、上から向かって来ているので、男性は両岸ともに見て来ており、左が天国だとわかっているはずである。
もし、男性が単身だったら迷わず左岸を選ぶだろう。
しかし幼い子供を乗せた船で岩礁に接岸できるのか、上陸する前に転覆してしまうのではないだろうか、そう考えているようだ。

男性はもしかしたら船を止めて考えたいのかもしれないが、船は風を受けて進んでおり、止まることは難しそう。
そして、舳先は右へ向いてしまっているため、即断が求められている。ここから、左側に進むには、かなりの覚悟を必要としそうだ。

② どのような感情、感覚(あれば教訓)が浮かんだか?

人生の選択について考えさせられる作品だ。
安易な選択により簡易な道を選ぶことを戒めとする、キリスト教的だけではない、普遍的な宗教観が見える。

人生において、家族(他人)の運命の責任を負った選択なのに、即断しなければならないこともある苦悩を描いているようだ。しかし、そのような状況でも安易な選択は身を滅ぼすということだろう。

③ 振り返り(最初の印象からの変化は?)

やっぱり、絵はよく見ないとダメですねぇ。最初は「なんだこのキタねぇオッサン」と思ってても、意味を考え「子供を連れた責任に苦悩している父親」に見えてからは、中年男性の苦悩に共感してしまう自分です。


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